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: 預かり証書と信用貨幣 : 商品貨幣説と貨幣数量説 1 : 貨幣の不足について

商品貨幣説について

商品貨幣説という場合には、金属貨幣を含めて、貨幣はあくまで特殊な商品であると主張する諸説がこう総称され、一般には金属主義的貨幣観がその典型をなすとされ、紙券や象徴が貨幣の本質だと捉える表券主義的貨幣観に対置されるようである。この場合、商品を物財と混同すると、ただ金か紙かといった即物的な外観による区別となり、あえて商品貨幣<説>とよぶほどの<理論>的内容も霧散する。一般に商品貨幣説といわれる場合は、商品が基礎になって貨幣が説明できるという論理的先行性、物財一般から商品を区別する価値の存在に着目し、商品価値の発展した形態として貨幣を説明しようとする論理的基底性を根底にする立場を含意するものといってよい。したがって逆に、商品貨幣説に対立する立場を厳密にとると、それ自身商品ならざるもの、本来価値をもたぬものが貨幣になる、という外在説、外形はなんであれ、価値尺度なり交換の媒介なり、貨幣の本質と考える役割を果たすものが貨幣なのだ、という機能論的規定の方向に狭められ、実際の境界線は曖昧となる。



obata 平成18年10月18日