#author("2021-10-21T13:51:16+09:00","default:obata","obata")
CENTER:[[前回 ◁ >2021年度/冬学期/第2講]]&color(#447CFF){第 &size(32){3}; 講}; [[▷ 次回>2021年度/冬学期/第4講]]
#qanda_mathjax
#qanda_setstid(2021-10-21 16:10:00, 90)
#qanda_who
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✔RECONチェック&br;
✅接続チェック

#qanda_set_qst(3,20,0){{
<p>&#x2714;接続状態をおしえてください。</p>

<p>&#x2714;なお、前回学生証番号を登録した人で、今回「氏名不詳」になってしまった人は「再登録」と書いてください。</p>
}}
#qanda(3,20)

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CENTER:&size(25){&color(yellow,navy){&nbsp;社会的生産&nbsp;};};
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**今回のネライ [#w9f16f16]
+複数の生産過程が連鎖して再生産がおこなわれる現象にアプローチする方法を学ぶ。
+複数の関係を「抽象化」する方法を考える(「抽象化」は単純な単純化ではない)。
+依存関係を分析する手法を考える。
+依存関係のもつ経済学的な意味を理解する(これが大事です)。

**社会的生産の概念 [#q603b513]
***「社会的」の意味 [#y351781e]
#qanda_set_qst(3,1,0){{
<p>さまざまな種類の生産物があり、それぞれを生産するたくさんの生産過程が存在する。</p>
<p>しかし、それだけではない。それぞれの生産過程の(A)が他の生産過程の(B)となっている。</p>
<p>このため、どの生産過程も単独では再生産をおこなうことはできない。(C)を維持する生産過程の集合 set が必要である。この依存関係を「社会的」とよび、この(C)を社会的(C)とよぶ。</p>
<h4>問題</h4>
<p>(A)(B)(C)に、
再生産、
自然環境、
商品生産物、
純生産物、
粗生産物、
生活物資、
生産手段、
労働力、
から適当な一語をいれよ。</p>
}}
#qanda(3,1)
#qanda_solution(3,1){{
  <h4>解答</h4>
  <p>(A)粗生産物(B)生産手段(C)再生産</p>
  <h4>解説</h4>
  <p>社会的再生産の「社会的」という修飾句が指す「依存」の概念をシッカリ理解しよう。</p>
}}

***抽象化 [#kf41efb9]
-現実の経済における再生産は非常に規模が大きく、産業間の関連も多岐で複雑になる。
-ちなみに[[スマホのBOM(部品コスト表)>http://touchlab.jp/2012/09/iphone-5-16gb13200/]]をみてみよう。この部品をつくる生産過程、そのまた部品を... と際限なく広がる。

#qanda_set_qst(3,2,0){{
<p>一国の経済などを考えると、関連する生産過程が膨大な数になるため、生産過程の間の関係はたいへん複雑になる。しかし、極限まで抽象化すればその基本は三つになる。この三つは何か。</p>
}}
#qanda(3,2)
#qanda_solution(3,2){{
  <h4>解答</h4>
  <ol>
    <li>双方向依存型:生産過程Aは、直接間接に生産過程Bを必要とし、生産過程Bは直接間接に生産過程Aを必要とする。</li>
    <li>一方向的依存型:生産過程Aは、直接間接に生産過程Bを必要とし、生産過程Bは直接間接に生産過程Aを必要とする。</li>
    <li>相互独立型</li>
  </ol>
  <h4>解説</h4>
  <p>複雑な関係もその本質を失わないように数を減らすことで、基本的な性格を捉えることができる。</p>
  <p>これを「抽象化」という。あるいは「2を聴いてNを知る」とも。</p>
  <p>実地にやってみよう。</p>
}}

#divregion(2を聴いてNを知る, lec=3 , qnum=2 ,admin)
#qanda_raw{{
    <p style="margin-left:6em;font-size:120%;">生産物の数を<span class='num' id="ten">10</span>,から
    <span class='num' id="nine">9</span>,
    <span class='num' id="eight">8</span>,
    <span class='num' id="seven">7</span>,
    <span class='num' id="six">6</span>,
    <span class='num' id="five">5</span>,
    <span class='num' id="four">4</span>,
    <span class='num' id="three">3</span>,
    <span class='num' id="two">2</span>
    へと抽象化してゆく。
  </p>
    <div id="social_reproduction"></div>
    <script src="https://unpkg.com/konva@7.0.7/konva.min.js"></script>
    <script src="./js/konva/coordinate.js"></script>
    <script src="./js/konva/2020/social-reproduction.js"></script>
}}
#enddivregion
#divregion(二人の関係でいえば,admin,lec=3,qnum=2)
赤とオレンジの二つに「抽象化」すれば三タイプは次のようになる。
>
+双方向依存型:「(赤)+オレンジ → 赤」かつ「赤+(オレンジ) → オレンジ」
+一方向依存型:「赤+オレンジ → 赤」かつ「オレンジ → オレンジ」または...
+相互独立型:「赤 → 赤」かつ「オレンジ → オレンジ」
<
&br;
-こういうのは人間関係でもありそう。
+両想い
+片思い
+無関心
-数が増えると、間接的な依存関係がふえ複雑になるが。三角関係?
#enddivregion

#qanda_set_qst(3,21,0){{
<p>「抽象化」の意味はOKですか。</p>
<p>疑問があればどうぞ....</p>
}}
#qanda(3,21)

**依存関係の分析 [#lbfff596]
#qanda_set_qst(3,3,0){{
  <p>つぎのような投入産出の関係がある。</p>
  <p>Oはゼロの意味。たとえば1行目は「AとCでAが生産される」と読む。</p>
  <p>一方的依存関係(従属関係)にある生産物を選べ。どのようにそれを見つけたのか、見つけ方、考え方を書け。</p>
\[
AOC \to A \\
ABO \to B \\
AOO \to C \\
\]
}}
#qanda(3,3)
#qanda_solution(3,3){{
  <h4>解答</h4>
  <p>\(B\)</p>
  <h4>考え方1</h4>
  <p>AにはCが必要、CにはAが必要、でもAもCもBを必要としていない、とたどった。</p>
  <p>コメント:でも、どうして、こんなことがわかったのでしょう。コンピュータのプログラムを書こうとすると、どういう手順で、という「アルゴリズム」を見つけないとできません。「解ける」と「解き方がわかる」とは別です。</p>
  <h4>考え方2</h4>
  <p>\( A \to A \) のような自己循環の有無は依存関係に関係ないので無視。</p>
  <p>1行目から5行目まで、\( C \to A \)  のような矢印を書いて、つながりをたどってみた。</p>
  <p>コメント:なるほど、これなら一目瞭然。とはいうものの、それは人間にとっての話。コンピュータにこの画像データを入れると、画像は表示できますが、関係は表示できません。</p>
}}

#qanda_set_qst(3,4,0){{
  <p>つぎのような投入産出の関係がある。</p>
  <p>Oはゼロの意味。たとえば1行目は「AとCでAが生産される」と読む。</p>
  <p>一方的依存関係にある生産物を選べ。どのようにそれを見つけたのか、見つけ方、考え方を書け。</p>
\[
AOCOO \to A \\
OBODE \to B \\
AOOOE \to C \\
ABOOO \to D \\
OOCOE \to E \\
\]
}}
#qanda(3,4)
#qanda_solution(3,4){{
  <h4>解答</h4>
  <p>\(B,D\)</p>
  <p>「1行目から5行目まで、\( C \to A \)  のような矢印を書いて、つながりをたどってみた。」</p>
  <h4>解説</h4>
  <p>図を書いて、そのあと、実際に、どうやって従属的な生産過程を見つけたのだろうか?</p>
}}

#divregion(描いてみよう,admin,lec=3,qnum=4)
#qanda_raw{{
  <div style="margin: 20px; padding:6px">
  <form id="form1" action="#">
    <label for="item_number">生産物数:</label>
    <input type="text" id="item_number" maxlength="2" size="2">
    <input type="button" onclick="getItemNumber()" value="click">
  </form>
  </div>
  <div id="prod-dependency"></div>
  <script src="https://unpkg.com/konva@8/konva.min.js"></script>
  <script src="./js/konva/2021/coordinate.js"></script>
  <script src="./js/konva/2021/prod-dependency.js"></script>
}}
#enddivregion

#qanda_set_qst(3,5,0){{
<p>従属的な生産過程を見つける手順(アルゴリズム)のポイントはなにか。</p>
<p>「この点に着目すれば必ずみつかる」という、その点を簡明に指摘せよ。</p>
}}
#qanda(3,5)
#qanda_solution(3,5){{
  <h4>解答</h4>
  <p>相互依存的な生産過程にを一つのグループにまとめてしまう。</p>
  <h4>解説</h4>
  <p>アルゴリズム的にいえば次のようなイメージになる。</p>
  <ol>
    <li>上から順にたどって、\(A \to B \to C \to A\) というループを \(X\) という一つの生産過程にまとめる。</li>
    <li>そして、\(A \to I\) や\(B \to J\) などがあれば、\(X \to I\) \(X \to J\)をつけ加える。</li>
    <li>グループ化した\(A ,B , C \)はリストから消す。</li>
    <li>これを相互依存的なループがみつからなくなるまで、1-3を繰り返す。</li>
    <li>\(P \to Q\) のような矢印が外に向かってでていないノードを探す。このノード(グループ)が従属的な生産過程(のグループ)である。</li>
  </ol>
}}

#divregion(数学,admin,lec=3,qnum=4)
-数学をつかって、形式的に考えるという手もある。
-投入があれば1、なければゼロに形式化。
\[
\begin{pmatrix}
1&0&1&0&0\\
0&1&0&1&1\\
1&0&0&0&1\\
1&1&0&0&0\\
0&0&1&0&1
\end{pmatrix}
\to
\begin{pmatrix}
1&0&0&0&0\\
0&1&0&0&0\\
0&0&1&0&0\\
0&0&0&1&0\\
0&0&0&0&1
\end{pmatrix}
\]
-2行目と5行目、2列目と5列目を入れ替える。
\[
\left(
\begin{array}{ccc|cc}
1&0&1&0&0\\
0&1&1&0&0\\
1&1&0&0&0\\
\hline
1&0&0&0&1\\
0&1&0&1&1
\end{array}
\right)
\to
\begin{pmatrix}
1&0&0&0&0\\
0&0&0&0&1\\
0&0&1&0&0\\
0&0&0&1&0\\
0&1&0&0&0
\end{pmatrix}
\]
-これで1,2,3行目、つまり\(A,E,C\)は、4,5行目\(D,B\)の生産物を生産手段としていないことがわかる。
-[[有向グラフの理論>https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%95%E7%90%86%E8%AB%96]]が一般に使える。しかし、数学ばかりにたよると、経済学的な意味を直観する能力が態買うするので注意しよう。
#enddivregion

**依存関係の意味 [#w872b378]
#qanda_set_qst(3,22,0){{
<p>グラフの理論について、学んだことがありますか?</p>
<p>学んだことがあれば、生産過程の依存関係はグラフ理論のなかの何が、いちばん関係ありそうだと思いましたか?</p>
}}
#qanda(3,22)

#qanda_set_qst(3,6,0){{
<p>各生産過程がそれぞれ一産業に該当するとしよう。</p>
<p>「さまざまな産業は、たとえば原料の節約によるコストダウンが、他のすべてに直接間接に影響を与えるコア産業(たとえば問題3-3 ではA,C,E)と、自分自身のコストダウンをもたらすだけで、他にいっさい影響を与えない周辺産業(たとえば B,D)に分かれる。」
</p>
<p>上の命題の誤りを指摘せよ。</p>
}}
#qanda(3,6)
#qanda_solution(3,6){{
  <h4>解答</h4>
  <p>「他にいっさい影響を与えない」が誤り。</p>
  <h4>解説</h4>
  <p>ここは素直に「他のすべてに直接間接に影響を与える」の「すべて」を否定して、「他のすべてに直接間接に影響を与えるわけではない」とすべき。「いっさい他に」が強すぎるのです。</p>
  <p>影響は他に及ぶのですが、それが部分的で全体には及ばない周辺産業''群''が存在するわけです。</p>
  <p>BはDに、DはBに影響を与えるのですが、それは両者の相互作用で閉じている、ということです。</p>
  <p>''複雑''なものをみると、すぐ「相互作用」を連発する''単純''な人がいます。関係ときくと''何でも''すぐに「相互作用」のせいだで片づける人は''何にも''考えていない人です。「相互」といっても二種類あることが全然みえていないのです。</p>
  <p>「二種類ある」ことがポイントです。「たくさんある」では、だから複雑なんだ、ということになってしまいます。二種類まで絞れるかどうかはともかく、たくさんではなく、できるだけかぎられた数に「抽象化」できるかどうか、これが原論的思考力のデキを左右するのです。</p>
}}

#qanda_set_qst(3,7,0){{
<p>問題3-6のコア産業は、相互依存的な生産過程グループのうち、そのメンバーが最大多数のものである。</p>
<p>真か偽か、理由を述べよ</p>
}}
#qanda(3,7)
#qanda_solution(3,7){{
  <h4>解答</h4>
  <p>偽。コア産業かどうかは、投入産出で示される「技術」の連鎖構造できまる。</p>
  <h4>解説</h4>
  <p>上の解説で示したマトリクスをよくみれば、1産業がコア産業で他のすべてが周辺産業群になる極端なケースもありうることがわかります。</p>
  <p>ボーとしてると「多数派が影響力をもつ」のは当然だと思い込みがち。しかし、これも根拠なし。</p>
  <p>「多数派が影響力をもつ」という思い込みは、さらに多数派は平均であり、「平均値が何かをきめるのだ」「個々の事象ではなく全体の平均に(見えない)法則ははたらいているのだ」という、これまた根拠のないドグマになってゆきます。</p>
}}

#divregion(今回のまとめ,admin,lec=3,qnum=7)
+全体の性格を保存しながら要素の数を減らすことを「抽象化」といいます。代表的な要素をピックアップして要素の数を減らす、単純な「単純化」とは違います。全体を縮小するのです。
+生産過程の依存関係は、大きくいって支配型と従属型がある。
+依存型の生産過程は、他から影響をうけるが、他に影響を与えることはない。
+たとえば、従属型でのインプットの節約という効果は、その生産過程(グループ)内にとどまる。これに対して、支配型での効果は、全体に及ぶ。
#enddivregion

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