#author("2019-09-19T16:08:11+09:00","default:obata","obata")
#author("2019-11-27T23:51:34+09:00","default:obata","obata")
CENTER:冬学期/第1講>>[[次回>2019年度/冬学期/第2講]]
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#qanda_clearckl
//#qanda_setstid(2019-09-12 14:10:00, 90)
#qanda_setstid(2019-09-12 16:10:10, 90)
#qanda_who
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-今回は初回で未登録の人もいますので、解答の採点はしません。正解もすべて0点になっています。

*冬学期の概要 [#p443a350]
**I 労働 [#vfde4ab0]
-労働という人間の活動について考えてゆきます。
-通常の「労働」のイメージを見なおしてゆきます。
-現代社会の特徴を理解するためには、工場労働より、もっと広い労働を考える必要があります。
-この広い意味の労働が、いま大きく変わろうとしているのです。
**II 生産 [#pf44a4ba]
-社会全体を対象に、生産のための条件を考えてゆきます。
-そのなかで賃金の決まり方、所得配分の捉え方を考えてゆきます。
**III 価格機構 [#b774baeb]
-生産物の価格の基準はどのようにきまるのか、
-この価格の基準と市場における価格現象はどういう関係になるのか、考えてゆきます。

CENTER:&size(25){&color(yellow,navy){労働と生産};};


*第I部「労働」の目標 [#a0837c98]

-さて、とりあえず、次の問いに答えてみてください。
#qanda_set_qst(1,1,0){{
<p>つぎの命題は正しいでしょうか。</p>
<p>「AIが発達する結果、今後人間の労働は減少してゆく。」</p>
}}
#qanda(1,1)

-本当の問題は....
#qanda_set_qst(1,2,0){{
<p>次の命題が正しいかどうか、推論するには、どのようにしたらよいか。何が必要か。</p>
<p>「AIが発達する結果、今後人間の労働は減少してゆく。」</p>
}}
#qanda(1,2)

>
#divregion(解答)
-「答え」ではなく、「答え方」です。
-問題文自体がいろいろな意味に読めるので、それによって答えは変わってきます。
-たとえば、この問題だと「 AI 」と「人間の労働」というのが、ボーヨーとしています。これをハッキリさせるのが第一の仕事。
-推論のかたちは、if(Xがふえる), then(Yがへる)のかたちですから、ちゃんと推論できているかどうか、チェックするのが第二の仕事です。
#enddivregion
<

-たとえば....
#qanda_set_qst(1,3,0){{
<p>「AI」というけれど、それはなになのか?</p>
<p>....では答えにくいと思うので、質問をつぎのように変えてみます。</p>
<p>「AI」とコンピュータの関係は?</p>
}}
#qanda(1,3)

>
#divregion(実は....)
-日本語ではコンピュータが定着していますが、むかしは「電子頭脳」といっていました。
-中国語ではいまでも「電脳」です。
-AI は「人工知能」なんですが、「電子頭脳」とどこが違うの?って聞かれたら迷いますよね。
-なんとなくイメージしているのは、AI のほうがコンピューターより発達(最近は「進化」というようですが)しているということ。
-'''むかしの「コンピューター」じゃできなかったけれど、いまのAIならできる''' という思っているので、逆に
-最近新しくできる用になったこと、たとえば自動車の自動運転とか、顔認識とか、.... を、AIのせいだ、といっているだけです。
-「逆は必ずしも真ならず」。単純な推論のミスです。
- AI → 労働の代替、ではなく、労働の代替 → AI というのは、意味不明のラベルAI をはってるだけで、中味はカラッポの命題です。
-実は「労働がなくなる」論は、コンピュータが登場すると同時に登場しました。
-そして「労働がなくなる」論は、経済学の歴史のなかで繰り返されてきたのです。
-その典型は「機械によって、人間の労働はいらなくなる」という機械→失業論です。
-『資本論』の第1巻に「機械と大工業」という長い章があります。19世紀のイギリス綿工業を舞台が舞台ですが、そこでの現象は「資本構成の高度化」という概念(後で説明します)をつかって「理論的に」解き明かしています。
-しかし、20世紀の長い歴史をみると、単純に労働不要とはならなかった、むしろ人間の労働は膨脹してゆきました。
-そうしたなかで、ただの機械ではダメだけれど、???によって労働はいらなくなる、という主張が繰り返し現れたのです。
#enddivregion
<

-もっと基本的な問題になりますが...
#qanda_set_qst(1,4,0){{
<p>コンピュータと「機械」の関係は?</p>
<p>同じか?違うとすればどこがどう違うのか?</p>
}}
#qanda(1,4)

-もう一つ、別の基本問題になりますが...
#qanda_set_qst(1,5,0){{
<p>なくなるといわれている労働ですが、その正体がわかない。</p>
<p>いきなり「労働」となにか、ときかれても、一言で答えるのはむずかしいでしょう。</p>
<p>そこで、あらためてたずねます。</p>
<p>「労働」というとき、これだけは欠かせない、これがない限り、労働はよべない、という必須要素はなにでしょうか。</p>
<p>単語でいいです。一つ、二つ、できるだけ少なく絞って答えてください。</p>
}}
#qanda(1,5)

>
#divregion(教科書をみると....)
-索引で「労働」をひくと103ページ、そこをみると
-「人間に特有な目的意識的活動を''労働''とよぶ」と書いてあります。
-「目的意識的」というのがわからない、という人は、ちょっと上の方を読むと
-「目的を設定し、それを意識的に追求し達成することを、''目的意識的''とか、''合目的的''とかよぶ」と書いてあります。
-'''エッ、それって広すぎない'''
-そう、まずひろく捉えることが重要なのです。
-この広い意味での労働だから、その内部の変化を考えることができるのです。
-''(お金もらわなければ、はたらいたことにならない、そんなケチな概念はこだわっていてはダメ、
-広い意味では、ボランティアだってチャンとした労働です。家で料理をしていたって立派な家事労働です。
#enddivregion
<

-ということで、[[このような文章>http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd145210.html]]を読んだとき'''フムフム、なるほどネ'''、などと満足しなくなれば合格です。

*生産と労働 [#n57cbfbe]
-生産という用語は広くつかわれていますが、さて....
#qanda_set_qst(1,6,0){{
<p>「生産」の<対>をなす用語は何ですか。</p>
<p><対>というのは、ある基準、尺度、メルクマール、観点からみたとき、反対になるからです。</p>
<p>ではこの場合、ある基準、尺度、メルクマール、観点とは何ですか。</p>
<p>単語一つに絞って答えてください。</p>
}}
#qanda(1,6)

>
#divregion(教科書をみると....)
-索引で「労働」をひくと102ページを見よとある、そこをみると
-「投入と産出を比較して、増大している場合を''生産''と呼び、減少している場合を''消費''という」と書いてあります。
-生産の対は''消費''
-メルクマールはモノの増減です。
#enddivregion
<

-考えるといろいろむずかしいことがでてきそうですが、とりあえず「生産」との関わりで....
#qanda_set_qst(1,7,0){{
<p>リサイクルに関わる活動は労働とよべるか。</p>
}}
#qanda(1,7)

>
#divregion(要するに....)
-生産の外にも、労働の世界は広がっているんだ。
-「労働 ⇄ 生産」という固定観念を打ち破ること、できますか?
-経済学の歴史を振りかえってみると、この問題は当初から取りあげられていたことがわかります。
-生産的労働・不生産的労働論です。不生産的でも労働だ、といっています。
-しかし、はじめに生産的労働のほうで労働の定義を与えておいて、あとから不生産的労働を追加するから、ヘンテコなことになるのです。
-あれこれ現象をさぐるまえに、まず論理的に考えるって、けっこう重要なのです。
#enddivregion
<

-&color(blue,red){ 宿 題 }; 「労働」という概念の本質にふれるという意味で....
#qanda_set_qst(1,8,0){{
<p>「生産する」 produce と 「つくる」make、よく知っている(はずの)言葉です。</p>
<p>労働しても、必ず生産したことにはなりません。</p>
<p>でも労働すれば、何かを「つくる」ことにはなりそうです。</p>
<p>ところで、この「つくる」にあたる英語の make には、「させる」も意味があります。</p>
<p>そこで質問です。「つくる」と「させる」に共通する「何か」はなんでしょうか。</p>
}}
#qanda(1,8)

-教科書の104-5ページに「生産と労働」の関係がまとめられています。読んで整理しておいてください。

>
#divregion(''目的意識的活動'',h2)
「動物のカラダはモノの反応過程という性格をもち,人間
もこの面を共有している.しかし,人間の活動には他の
動物にみられない特徴がある.内的な欲求というレベルでは,人間も他の動
物と大差ない.しかし,人聞は何を欲しているかを意識し,対象として自覚す
る.空腹感の充足は,生肉にかじりつくようなかたちで充足されるのではな
く,何かしら特定の料理のかたちを経由する.欲求は目的として客観化され,
その目的を実現することで満たされる.
~
このような欲求の対象化・客観化は,(1)個々の主体の間で,目的の共有
や調整をはかることを可能にする.これには,人聞が広義の言語を発展させ,
弾力的なコミュニケーションの能力を具えていることが深く与っている.さら
に,(2)欲求を意識することは,目的と手段の分離を促す.この分離は,何
層にも深化する.目的に対する手段もまた目的化され,その実現のための下位
の手段が生みだされ,さまざまな手段は複雑な連鎖をつくりだす.両効果は,
後に述べるように,(1)協業と(2)分業という労働組織の座標軸をきめる.
このように目的を設定し,それを意識的に追求し達成することを,目的意識
的とか,合目的的とかいう.他の動物では,このような目的と手段の分離は明
確ではない.刺激と反応という,本能的行動に支配されている.むろん人間の
活動にもこうした側面はある.人間も睡眠中や休息時には,目的を意識するこ
とから解放される.授業中など何となくボーッと過ごしていることもある.し
かし,24時間,これで過ごせる幸せな人はいないだろう.ただ,目的が
労働主体の欲求と直結している場合には,その目的は必ずしも強く意識されな
い.自分の食欲を満たすために,調理し食事をする活動では,何をつくり,ど
う食べるかなど,いちいち考えなくてもすむが,お客様をもてなすとなるとこ
うはゆかない.目的意識的な活動は,直接的な欲求から距離のある手段を生み
だす場合に強く求められる.不測の事態に備えて食料を備蓄する場合には,直
接的な欲求なしに,将来の状況を想像して活動する.こうした場合に活性化す
る,人間に特有な目的意識的な活動を労働とよぶ.」102-3頁
#enddivregion
<

#ref(labour-production-relation.png)

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