#author("2019-11-21T23:14:35+09:00","default:obata","obata") #author("2019-12-22T16:36:53+09:00","default:obata","obata") CENTER:[[前回>2019年度/冬学期/第9講]]<<冬学期/第10講>>[[次回>2019年度/冬学期/第11講]] ------- #qanda_clearckl #qanda_setstid(2019-11-21 16:10:00, 90) #qanda_who #katex ------- CENTER:&size(22){&color(orange,navy){ コ ン ピュ ー タ と 労 働(5)};}; ------- *今回のポイント [#oac3b144] -経済学における「労働」の考え方を基礎に、コンピュータの発達が「労働」のすがたをどう変えつつあるのか、これまでのまとめをおこなう。 -そのまえに、前回の講義の続き。 -計算の道具(ソロバン、電卓、計算機)から、論理操作の道具としてコンピュータへ -論理操作の対象はデジタル化されたデータ全般に広がる。 -文字情報は、デジタル化の第一弾。 *コンピュータによる文字情報処理(続き) [#y5374bee] **文字情報のデジタル化[#f5c9f211] #qanda_set_qst(10,1,0){{ <p>コンピュータのキーボードから「A」と入力すると、メモリ上に「A」の文字に対応する画像が記録され、それがディスプレイに映される。</p> <p>この説明は正しいか、誤りがあれば、訂正せよ。</p> }} #qanda(10,1) #divregion(解答,admin,lec=10,qnum=1) -メモリ上に記録されるのは二進数の1000001(ascii codeの場合) -「A」の表示は、ソフトウェアによるディスプレイ装置の操作による #enddivregion #divregion(解説,admin,lec=10,qnum=1) -文字情報は、一字ごとバラバラにされ(!)、それぞれに対する文字コード=数値として処理されます。 --活字の処理と似ています。 --文字列は、この段階で「意味」を失います。 -デジタル化というのは、さまざまな情報を離散的な数値(基本は整数値)に対応させること。 --文字は[[数値化>https://www.pahoo.org/e-soul/webtech/encode/encode02-01.shtm]]されます。 -ソートや検索などによる文字情報処理が可能になる --たとえばアイウエオ順に並べる --整列されて記憶されたデータは拾い出しやすい(索引のように) #enddivregion #qanda_set_qst(10,2,0){{ <p>トランプのカードを並べるとき思い浮かべてください。文字も数字もおなじことです。</p> <p>カードが6枚配られたきた。り、か、だ、い、が、く、 だった。アイウエオ順に並べようと思う。どのようにして並べかえますか?</p> }} #qanda(10,2) #divregion(解答,admin,lec=10,qnum=2) -トランプだったら、カードを扇形に開いて、順番に引きだして、 -左側に小さいものがくるように、適当な位置に挟んで移動するとか、 -もっとうまいやり方があるかもしれませんが...depend unpo the case #enddivregion #divregion(解説,admin,lec=10,qnum=2) -20世紀型の労働には、この種の操作がつきものでした。 -力仕事かといえば違いますが、アタマの力仕事のような感じの作業です。 -コンピュータと接点をもつのは、この種の作業です。 -郵便配達も、半分は配送先順に、並べてから出発するのでしょう。 -事務労働はこの種の作業の複雑なカタマリでした。 -大学事務もそうです。みなさんの答案の採点処理も大半はこれ... #enddivregion #qanda_set_qst(10,3,0){{ <p>り、か、だ、い、が、く、 というデータをアイウエオ順に並べようとするとき、うえの問題で考えた人間のやり方がなかなか通用しません。どこがむずかしいのでしょうか?</p> }} #qanda(10,3) #divregion(解答,admin,lec=10,qnum=3) -「いちどに」6枚を見渡して、その位置を「判断」すること -コンピュータは2枚の比較はできるが、6枚のなかからいちばん小さいものは?という操作はできない。 #enddivregion #divregion(解説,admin,lec=10,qnum=3) -人間も、「いちどに」見渡しているようにみえるが、実は2枚しかみていない、この繰り返して、いちばん小さいのを見つけだしているのだ、ということもできます。 -でも、こんなことを意識的にやっている人はいないでしょう。 -コンピュータをつかうというのは、こうしたことを意識的に分析することなのです。 #enddivregion #qanda_set_qst(10,4,0){{ <p>り、か、だ、い、が、く、 を、二つの比較だけで並び替える手順を考えよ。</p> <p>ちなみに文字コードは <ul> <li>り:12426</li> <li>か:12363</li> <li>だ:12384</li> <li>た:12383</li> <li>い:12356</li> <li>が:12364</li> <li>く:12367</li> </ul> です。 </p> }} #qanda(10,4) #divregion(解説,admin,lec=10,qnum=4) -人間の「やり方」とコンピュータの「させ方」の違いを実感してください。 -このギャップを意識することが、コンピュータと労働の関係の根本を探るカギになります。 #enddivregion **文書処理[#x5f51753] #qanda_set_qst(10,5,0){{ <p>ワープロは、ワードプロセッサのこと。ではプロセスといえば、一般には加工処理の意味でしょう。では、ワープロは何をどう加工しているのでしょうか?</p> }} #qanda(10,5) #divregion(解答,admin,lec=10,qnum=5) -文字列。 -しかし、ただ文字列を並べ替えるといっただけではなく、 -文字の大きさとか、段落設定とか、いろいろな表示形式=書式=フォーマット。 #enddivregion #divregion(解答,admin,lec=10,qnum=5) -「内容」から独立に「書式」を扱える点がポイントです。 -文書から徹底的に「意味」を取りさり「書式」だけを扱うことかたちです。 #enddivregion #qanda_set_qst(10,6,0){{ <p>いま、あなたがみているWEBのページのこの一文の、書式要素を拾いだしてみよ。</p> }} #qanda(10,6) #divregion(解答,admin,lec=10,qnum=6) -これは現場で... #enddivregion #divregion(解説,admin,lec=10,qnum=6) -コンピュータによる文字情報の処理は、文字情報をバラバラの文字に分解し、意味を取りさり、デジタルデータとして、処理加工することにあります。 -これはインターネット上で、文字情報がやりとりされる場合も同じです。 #enddivregion **通信技術と情報処理技術の結合 [#d7d3af94] --デジタル化することで、コンピュータ間で文書情報の送受信が可能になる。 --送信のための文字コードの圧縮変換 #qanda_set_qst(10,7,0){{ <p>手紙にはハガキにない封筒がある。封筒の役目はなにか。コンピュータを媒介にした通信では、この役目は何がどのように果たしているのだろうか?</p> }} #qanda(10,7) #divregion(解答,admin,lec=10,qnum=7) -暗号化 #enddivregion #divregion(解説,admin,lec=10,qnum=7) -暗号はデジタルデータに特有な暗号技術のメリットがあります。 -見えるけれども読めない。これは意味と形式の分離によるものです。 -暗号化は見えなくする技術(封筒のような)ではありません。 -P->Q but not Q -> P という不可逆性を、等号ベースの数の世界 3 × 4 = 2 × 6 にインプリメントする試みです。 #enddivregion **20世紀型労働 [#a7fa871d] -20世紀後半に、可変的な「判断」をおこなう道具(コンピュータ)が登場 -文字情報を処理することで、コンピュータは情報通信技術として発展 -ただ、それはいくつか画期はあったが、基本的に漸進的な発展だった。 -人間の「判断」能力をベースとする20世紀型の労働 > +手先の器用さを活かした組立型 +機械の操縦・操作・運転型 < に、一挙に取って代わることはなかった。 **新たな転換点 [#c3ea4508] -2010年代にはっいて、「AI化」というかたちで注目されるようになった画期に突入。 -今までも、何度か、画期をへてきた。画期はいつも、これこそ本物の、と宣伝されるが... ------------ &color(white,red){ 宿 題 }; 問題8および9 〆切は第11講開始時点 -------- #qanda_set_qst(10,8,0){{ 「部品組立」「操作操縦」「運転」など、20世紀型の労働の構造を転換させた要因はなにか、思考力とか、高速化、とかなるべく一般的な用語でキーワードをつくり、その意味を解説せよ。 }} #qanda(10,8) #divregion(解答,admin) #divregion(解答,admin,lec=10,qnum=8) +知覚=センサーの発達 +手先の器用さ=アクチュエーターの発達 +データ量の激増=2から派生+インターネットによる共用 +パターン認識のソフトウェア技術=3から派生。 -「判断」のアタマははやくから具わっていたが、カラダがついてゆけなかった。 #enddivregion #divregion(解説,admin) #divregion(解説,admin,lec=10,qnum=8) -基本をなすのは「知覚」と「器用な動作」。 -いずれも「身体」に埋め込まれている基礎機能。 -コンピュータに対するデータの入力は人間の「知覚」にたより、 -コンピュータからの出力は、人間が読みとり解釈して、動作させてきた。 -入出力における革新が、データの激増をうみ、人間の知覚に依存してきたパターン認識をコンピュータにさせることができるようになった。 -パターン認識を中心に、状況を判断し、対象をコントロールしてきた、操縦型、運転型労働が、広範囲にコンピュータに転換されようとしている。 #enddivregion #divregion(補足,admin) #divregion(補足,admin,lec=10,qnum=8) -ただ、労働不要化論はこの一面を虫眼鏡で拡大したような議論。 -コンピュータのパターン認識は、人間の認識とは本質的に異質なアプローチによるもの。 #enddivregion #qanda_set_qst(10,9,0){{ <p>人間の知覚の基本は、パターン認識ではない。たくさん三角形のかたちをみせないと、「三角形なるもの」がわからないということはない。</p> <p>三角形と四角形は、一対みただけで区別できるはず。どうしてだろうか?</p> }} #qanda(10,9) #divregion(解答,admin) #divregion(解答,admin,lec=10,qnum=9) -生まれながらに空間のイメージをもっているから。(空間概念の先天性、悟性の超越性、ただしこんなむずかしい言葉は棄却) -「直観」がはたらくから。(ただし直観の説明はむずかしい) #enddivregion #divregion(解説,admin) #divregion(解説,admin,lec=10,qnum=9) -カントその他の哲学者のいったこと(言説)を参考にするのはよいが、ともかく自分の言葉で語ろう。 -AIを語る人が「学習」で「概念」に到達できると信じているとすれば、それはドグマ。 -コンピュータをつかっていると、逆にコンピュータにできないことがみえてくる。それがこれからの労働の中心になるのだ。 -たとえば、1から10までの奇数の和を計算する問題。コンピュータにやらせようとすれば、 s = 0 i = 0 while ( i < 10 ): i += 1 if ( i % 2 != 0 ): s += i print(s) といったコードをかく。 -しかし、人間ならもっとマシな計算のしかたをすぐ考えつくはず。たとえば s = 1 + 3 + 5 + 7 + 9 s = 9 + 7 + 5 + 3 + 1 だから、$s = 10\times 5 \div 2$ とかやるはず。 -この「工夫」がコンピュータにはできない。 -コンピュータは、プログラムコードをかけば、それにしたがって高速に動く。 -しかし、上のプログラムコードを下のやり方(アルゴリズムという)に書き換えることはできない。 -これは人間の仕事。 -人間は、コンピュータには期待できないような新しいやり方を「発見」できる。どうしてだろうか? -この問題は、長い視点で、これからの労働のすがたを考えてゆく手がかりになる。 #enddivregion ----- #divregion(まとめ,admin) #divregion(まとめ,admin,lec=10,qnum=9) -「AI化」の本質は、「人工知能」にはない。これは派生態。 -センサとアクチュエーターの発達:工学的発展がベース。 -文字情報中心の世界から飛躍 -情報の種類がふえ、量が増大 -プラス インターネットによってデータの共有が進む(結果的に増大と同じ効果) -ビッグ・データを全体に、パターン認識に関するプログラミング的発展:ここが人工知能とよばれている内容 -20世紀に支配的だった「ふつうの労働」(操作・組立型の労働)が、コンピュータをつかった装置に置き換えられる(可能性がたかまりつつ)。 #enddivregion