#author("2019-12-16T21:37:25+09:00","default:obata","obata")
#author("2019-12-19T16:11:18+09:00","default:obata","obata")
CENTER:[[前回>2019年度/冬学期/第12講]]<<冬学期/第13講>>[[次回>2019年度/冬学期/第14講]]
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#qanda_clearckl
#qanda_setstid(2019-12-12 16:10:00, 90)
#qanda_setstid(2019-12-19 16:10:00, 90)
#qanda_who
#katex
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CENTER:&size(22){&color(orange,navy){ 純生産物の 分配 };};
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*今回のポイント [#oac3b144]
-純生産物の分配のはかり方を説明します。
-この分配は、資本主義のもとでは、賃金と価格を通じておこなわれます。
-賃金、価格の関係は「購買に必要な労働時間」に反映されます。
-「購買に必要な労働時間」と「生産に必要な労働時間」の関係は、純生産物の分配関係に対応します。

*分配関係をはかる [#nd233711]
-前回の数値で分配の問題を考えてゆきます。
#ref(2019年度/冬学期/第11講/II-2-4.png)
#ref(2019年度/冬学期/第11講/スクリーンショット 2019-11-05 09.59.41.png)

-物量セットを直接、比較することはできない。
-(小麦,鉄)が、(6,12)kgと(10,8)kg とでは、どちらが大きいか?
-「価格で計算する」と考えるかもしれないが、その価格の決定原理はまだわからない。
-別の合算方式として、生産に必要な時間で比べてみるという手がある。
-価格のセットを比較することもできない。
-(小麦,鉄)の価格が、(6,12)円と(10,8)円 に変化したとき、価格は上がったのか下がったのか?[[物価指数>2019年度/第8講#v332a7af]]


#qanda_set_qst(13,1,0){{
粗生産物の生産に必要な労働時間を求めよ。
}}
#qanda(13,1)
#qanda_countdown(13,1)

#qanda_set_qst(13,2,0){{
純生産物の生産に必要な労働時間を求めよ。
}}
#qanda(13,2)

#qanda_set_qst(13,3,0){{
生産手段の生産に必要な労働時間 $C$ を求めよ。
}}
#qanda(13,3)

#qanda_set_qst(13,4,0){{
生活物資の生産に必要な労働時間 $V$ を求めよ。
}}
#qanda(13,4)

#qanda_set_qst(13,5,0){{
<p>純生産物から生活物資を取りのぞいた,残りの生産物を「剰余生産物」という。</p>
<p>剰余生産に必要な労働時間 $M$ を求めよ。</p>
}}
#qanda(13,5)

#qanda_set_qst(13,6,0){{
<p>$M/V$ を剰余価値率という。剰余価値率を求めよ。</p>
}}
#qanda(13,6)

**生産力の上昇 [#d4f14919]
-生産力が上昇するということは、同じ時間のより多くの原料を加工できるようになるkと。
-たとえば、小麦の生産で、この定義による生産力が2倍になったとしてみよう。
$$(12,8) + 6 \to (40,0)$$

#qanda_set_qst(13,7,0){{
小麦の生産で生産力が2倍になったとき、小麦1kg, 鉄1kg を生産するのに必要な労働時間t1, t2 を求めよ。
}}
#qanda(13,7)

#qanda_set_qst(13,8,0){{
小麦の生産で生産力が2倍になっても、労働者の生活水準は変わらないとする。剰余価値率を求めよ。
}}
#qanda(13,8)

**買うのに必要な労働時間 [#b081139f]
-つまり、ある商品を「買うためにはたらく時間」のことです。

-&color(white,red){ 宿題 }; 13-9 から 13-15 まで。〆切 2019-12-19 16:10

#qanda_set_qst(13,9,0){{
<p>牛丼並盛りが400円で、時給が1000円だとする。</p>
<p>400÷1000ででてくる0.4にはどんな意味があるだろうか?</p>
<p>ヒント:単位に注目</p>
}}
#qanda(13,9)

#divregion(解答,admin,lec=13,qnum=9)
-購買に必要な労働時間
#enddivregion

#divregion(解説,admin,lec=13,qnum=9)
-時給の単位は 円/時間
-時給にかぎらず日給でも月給でも 単位時間あたりの賃金を「賃金率」といいます。
-賃金率という字面にひっぱられて、剰余価値率のことだと勘違いしやすいので注意。
-剰余価値率は、たとえば1時間はたらいたとき、その付加価値のうち、どれだけが労働者のものでどれだけが資本家のものになるか、分配(搾取)関係を表す比率で、単位はありません(無名数)。
-賃金''額''(円)=賃金''率''(円/時間) × 労働時間(時間) となります。
#enddivregion

#qanda_set_qst(13,10,0){{
<p>牛丼1パイを食べるためにはたらく0.4時間=24分は、労働者の立場からみた時間である。牛丼を売る立場にある資本家からみると、この24分はどういう意味をもつだろうか?</p>
<p>ヒント:牛丼には労働者に対してなにかできる能力があるようにみえる。どんな力か?</p>
}}
#qanda(13,10)

#divregion(解答,admin,lec13,qnum=10)
-24分間だけ、労働を雇える力
-労働者の労働を自由に使える力
#enddivregion

**搾取 [#vc44a0d6]

#qanda_set_qst(13,11,0){{
<p>牛丼一杯つくるのに、直接間接に何分くらいかかっているのだろうか?米を作ったり牛肉を作ったり、その牛肉を作るのにもエサとか、いろいろ生産手段が必要で、それもあわせてナンボということですが ...</p>
<p>かりに20分だとする。これがいままで考えてきた「生産に必要な時間」 t です。</p>
<p>また、牛丼の生産に間接的にたずさわる人もみんな、店員さんと同じように時給1000円ではたらいているとしよう。</p>
<p>さて、このとき牛丼の原価はいくらで、一杯あたりのもうけ(マージン)はいくらになるか?</p>
}}

#qanda(13,11)

#divregion(解答,admin,lec=13,qnum=11)
-原価は1000円×(20/60)≒333円。
-マージン(一杯あたりのもうけ)= 400 - 333 ≒ 77円
#enddivregion

#qanda_set_qst(13,12,0){{
<p>牛丼の価格が400円に据え置かれたまま、時給が上昇してゆけば一杯あたりのもうけ(マージン)はへってゆく。</p>
<p>さて、マージンがゼロになる時給は何円か?</p>
}}
#qanda(13,12)

#divregion(解答,admin,lec=13,qnum=12)
-1200円
#enddivregion

#divregion(解説,admin,lec=13,qnum=12)
-1時間にできる牛丼の量は60分÷20 分で 3 杯
-1時間の賃金が1200円になると、この3杯の売り上げ1200円が全部賃金として支払われて店のもうけはゼロになる。
#enddivregion

#divregion(もうけの正体,admin)
- ということは、このとき、まだ店にもうけが残るとすれば、それは牛丼1杯が 20分以下でつくれるからなんだ...
- もし、もし 15分でできるようになれば1時間に 4杯できる。
- それなら1時間ははたらいてもらうと、牛丼は4杯できるできる。
- でも、はたらいて食べられる牛丼は 1200円÷400円で 3杯だけ。
- このギャップの 1 杯が牛丼をベースに量った店のもうけか...
- 1時間はたらいて牛丼3 杯。それにかかったのは 3杯× 15分= 45分、労働時間は60分...って?
- 目の前で、4杯つくって 3杯しかもらえないなら、 1 杯、資本家にとられたのは一目瞭然。
- でも、時給 1200円で牛丼が1杯400円といわれただけでは、この関係はわからない。
- 労働時間でみると、牛丼1杯を買うのに必要な時間は20分、つくるに必要な時間は15分。だから1杯あたり、5分、取り戻せていないことがわかる。
#enddivregion

#divregion(価格と賃金率,admin)
- この牛丼1杯を買うのに必要20分は、ちょっと見方を変えると、牛丼1杯で、労働者を20分、雇える、ということになる。
- その雇った労働者が、15分で牛丼をつくるのだから、20分なら、20/15 =  1杯と1/3杯つくることになる。
- 1杯の牛丼を与えて、牛丼 $4/3$杯を手に入れる方法があるのか!
- 価格ベースで見ているかぎり、「等価交換」にしかみえない。
- ましてや、いろんな商品を買っているとなると、牛丼だけの世界より、ずっとこの関係はみえないものになるだろう。
- しかし、資本が利潤をあげているという背景には、「等価交換」の背後で、労働時間ベースでのギャップが生じている。
- 「搾取」といわれているのは、商品経済の陰に隠された純生産物の分配関係のこと。
#enddivregion

***「数値例3」に戻って、再確認しておこう。 [#ae6ed0bb]

#qanda_set_qst(13,13,0){{
<p>「数値例3」で(小麦1kg, 鉄1kg) の価格が(1500円,1200円)であるとする。</p>
<p>労働者が生活物資を購買できる賃金率(時給)を求めよ。
}}
#qanda(13,13)

#divregion(解答,admin,lec=13,qnum=13)
-時給を $w$ 円/時間とすると、支出=収入となるのは
$$(5,5)(1500,1200) =  10w$$ 
$$\therefore w =1350$$
#enddivregion

#qanda_set_qst(13,14,0){{
<p>(小麦1kg, 鉄1kg) を「買うのに必要な労働時間」t'=(t'1,t'2)と「つくるのに必要な労働時間」t=(t1,t2)の差をあらわすベクトルt'-tを求めよ。</p>
}}
#qanda(13,14)

#divregion(解答,admin,lec=13,qnum=14)
$$(t_{1}',t_{2}') = (1500/1350,1200/1350) = (10/9,8/9)$$ 
$$(t_1,t_2) = (7/12,13/24) $$
$$(t_{1}',t_{2}')-(t_1,t_2) = (10/9,8/9) -  (7/12,13/24) = (19/36,25/72)$$
#enddivregion

#qanda_set_qst(13,15,0){{
<p>労働者が、生活物資(小麦5kg, 鉄5kg) を買うために、それをつくる時間以上にはたらいた時間  S と、剰余生産物(小麦1kg, 鉄7kg)を生産するに必要な労働時間 M ではどちらが大きいか?</p>
}}
#qanda(13,15)

#divregion(解答,admin,lec=13,qnum=15)
-「生活物資を買うために余計にはたらいた時間」と「剰余生産物を生産するにはたらいた時間」は等しい。
$$S = (5,5)(19/36,25/72) = (38/72+25/72) \times 5 = 63/72 \times 5 =  7/8 \times 5 =35/8$$
$$M=(1,7)(7/12,13/24) = 7/12+91/24 = 14/24+ 91/24 = 105/24  = 35/8$$
$$\therefore S = M$$
-生活物資の物量ベクトルを$b$,剰余生産物の物量ベクトルを$m$とすると
$$Tw=bp$$
$$T=b(p/w)=bt'$$
$$T=(b+m)t$$
$$bt'=(b+m)t$$
$$\therefore mt =b(t'-t)$$
#enddivregion
&br;
**賃金率と生活物資の価格を通じた分配 [#w520764c]
#divregion(二つの労働時間の意味,admin)
- 同じ時給$w$円が支払われる労働だけの社会を考えてみると、
- 直接間接生産にかかった労働時間$t$がわかれば、
- 生産にかかった費用は $tw$ となる。
- これ以上の価格$p$ で売れば $p-tw$のマージンがでる。
- $t$を考えることは分配を考える手がかりになる。
- ただ趣味で $t$を計算している、っていうわけはない。
- 商品には値札$p$がついているが、労働時間$t$のラベルは貼ってない。
- その意味で$t$は、直接にはわからない量だが、社会的再生産の全体をまとめて(''集計''して)みるとき、けっこう役にたつ。
#enddivregion

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