#author("2019-11-07T17:13:01+09:00","default:obata","obata")
#author("2019-11-07T17:13:32+09:00","default:obata","obata")
CENTER:[[前回>2019年度/冬学期/第7講]]<<冬学期/第8講>>[[次回>2019年度/冬学期/第9講]]
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#qanda_clearckl
#qanda_setstid(2019-11-07 16:10:00, 90)
#qanda_who
#katex
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CENTER:&size(22){&color(orange,navy){ コ ン ピュ ー タ と 労 働(3)};};
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**コンピュータの原理 [#y364d8e1]
-コンピュータをきちんと理解するにはそれなりの勉強が必要ですが、
--ここではコンピュータを使うことで、労働のすがたがどのように変わてゆくのか、考えることが目的。
--この目的に必要なかぎりで、「コンピュータの基本の基本」をおさえておこう。
--コンピュータに関する最低限の技術的理解なしに、その影響だけをレポートする現象論の虚しさ。
-ソロバン・電卓・コンピュータ
--計算はアタマでするものと考えがちだが、実は人間は、昔から道具をつかって計算をしてきた。道具自身が計算し、人間は結果を読みとるという面がある。
--その意味では、ソロバン$ \to$ 電卓$ \to$  コンピュータ には連続性がある。
--しかし、コンピュータの登場は、ソロバン$ \to$ 電卓$ \nrightarrow$  コンピュータ という強い不連続性をもたらした。
-今回の講義をきいて、
>
+コンピュータは、ソロバン→電卓とどこが違うか、この断絶面がハッキリいえるようになり、
+それが、目的意識的な活動という人間の労働の本質にどう影響するのか、
<
わかればOKです。

**似たものどうし(電卓とコンピュータ) [#m8182ffe]
#qanda_set_qst(8,1,0){{
メモリ [M] [RM]ボタンがたくさんついた電卓がないのはなぜか?きっと不便なのでしょう。どこが?
}}
#qanda(8,1)

#divregion(解説,admin,lec=8,qnum=1)
-メモリボタンが10個とか20個とかあれば、便利そうです。
--たとえば、$7+8$ を$M1$ にしまい、$9-6$を$M2$ にしまい、$M1$ をよびだして、÷ を押し、M2 を呼び出して、=をおす。
--これなら、あとの$9-6$を先に計算するなんて、コンガラかったことをせずに、式の順番に計算ができます。
-しかし、$M1,M2,M3,.... $にしまった数値がなんの数だったか?人間が記憶するのは大変、かえってコンガラかっちゃいそうです。
-けっきょく、これはどの式の計算結果か、紙にメモしておくほうが、使い勝手がいいのでしょう。
-それなら、メモリボタンに、例えば$sum1$,$sum2$とか、しまうたびに適当な名前をつけることできればいいのでは?と思うかしれませんが、
-これも名前を指でインプットしなくてはらなず、たいへんそう。
-.... というわけであまり利用されていないメモリボタンですが、計算機能をするレジスタ=半導体素子のほかに、データを書き込み読みだすことができるメモリが存在するという事実は、コンピュータとはないか、知るうえで重要です。
#enddivregion

#qanda_set_qst(8,2,0){{
ここまでくれば、(7+8) ÷ (9-6) という計算の手順も覚えさせたくなります。
<ol>
<li>7+8 M1</ii>
<li>9-6 M2</li>
<li>M1 / M2</li>
</ol>
<p>
このように順番にボタンを押すと、これが記憶されてゆき、最後に = をおしたとき、計算がはじまって、15と表示されるようにする。</p>
<p>さて、この計算のボタンを押した順序も記憶できるようになった電卓。便利そうですが、ないですね。どうしてでしょうか。</p>
}}
#qanda(8,2)

#divregion(解答,admin,lec=8,qnum=2)
-使い切りだから。
-長い計算手順を記憶しても一回=を押したらおジャンになるなんて...
-じゃ、もう少し、改良して、メモリに名前をつけられるようにして、さらに計算手順も記録できるようにしたらどうだろう。
たとえば、
 sum1 = 7+8
 sum2 = 9-6
 print sum1/sum2
と書いておくと、問題7-3 のようなボタンを押したのと同じような動作をする仕掛けにするというのは。
これ、いちおうプログラム・コードですが。
#enddivregion

**コンピュータらしさ [#j5476857]
#qanda_set_qst(8,3,0){{
1から10までの奇数をしたらいくらになりますか。カンタン!答は25です。

では、その計算、自分がどのようにしたのか、説明してみてください。
ちゃんと説明してもらうため、自分の記憶力がゼロ(なにも覚えられないから暗算はナシ)としてみます。
ぜんぶメモ用紙(ただしたとえば、1と書いてある紙に2を足したとき、1を消しゴムで消して、3と書くことができる)に記録しておかなくてはならないものとします。
このメモ用紙に書いてない数は使ってはいけません。

このメモ用紙4枚 M1,M2,M3,M4 をつかって、計算の手順を書いてみましょう。
<ol>
  <li>M1 に0と書く(ここに合計値が書かれてゆきます)</li>
  <li>M2 に1と書く(「1から」というのだから)</li>
  <li>M3 に2と書く(「2ずつ」足すのだから)</li>
  <li>M4 に10と書く(「10まで」というのだから)</li>
  <li>M1 にM2を足した値を書く</li>
  <li>M2 に①を足した値を書く</li>
  <li>② がM4 以下なら ③行目にもどり、M4以上なら終わりにする。</li>
  <li>M1 に書いてある値を答とする。</li>
</ol>
①②③はなんでしょうか。順番に答えのみでOKです。
}}
#qanda(8,3)

#divregion(解答,admin,lec=8,qnum=3)
① M3 ② M2 ③ 5
#enddivregion

#divregion(解説,admin,lec=8qnum=3)
+M1の値は $0,1,4,9,16,25....$と変化する。
+M2の値は $1,3,5,7,9,....$と変化する。
+むずかしいのは、10以下でしょう。繰り返し計算$5 \to 6 \to 5 \to 6....$ は計算機には簡単です。
問題はいつやめるかの判断です。7行目の「どこでやめるか」の''判断'です。
-コンピュータらしいのはここです。
#enddivregion

#qanda_set_qst(8,4,1){{
#qanda_set_qst(8,4,0){{
電卓とコンピュータの本質的な違いはなにか?
}}
#qanda(8,4)

#divregion(解答,admin,lec=8,qnum=4)
-条件分岐の有無
#enddivregion

#divregion(解説,admin,lec=8,qnum=4)
-例によって、Xとはなにか?という定義問題はむずかしい。
--実際につかっているコンピュータは、ずっーとずっと複雑。
--いろいろなタイプのものもある。スマホは?デジカメは?....もちろんパソコンは?...
-原論的アプローチでゆきますか....
--考え方として、これがないとコンピュータとはいう意味がない、という最小限の要素を絞り込む。
--電卓をコンピュータと定義すべきか?
---解答①:電卓も立派なコンピュータだ。というのは、どんなコンピュータも最低限もっているあるものをチャンともっているから。それは... on/off のbitが組み合わさった繰り上がりできるレジスタCPUをもっているから。
---ただCPUだけではなにもおこらない。
---そうですね... では、定義1:コンピュータ=CPU +入力装置+出力装置。これを定義として、電卓も立派なコンピュータだ、ということにします。
---解答②:いや、その定義はあまい。演算ができるレジスタがあればOKというだけでは広すぎる。半導体素子のレジスタだって、ソロバン玉だって、物理的な装置。人がソロバン玉を機械的に操作するのと、電卓のボタンを押すのと、基本的な違いはないでしょう。
---コンピュータ=操作手順を人の指から離せる計算の道具。7と8を入れれば、+や=のボタンをおすという操作をしなくても、画面に15がでてくるとき、コンピュータとよぶ。つまり、入力のまえに、操作の手順を指定できる計算の道具。要するに、プログラミンができること。これで、労働者=ユーザーの視点から、ソロバンや電卓 vs コンピュータという区別がハッキリする。
---解答③:いやいや、解答②ではまだあまい。ただあらかじめ手順をプログラムしておくか、アタマのなかのプログラムにしたがて、ボタンを押すか、だけでは決定的な違いにはならない。
---じゃ、どう区別するの?
---労働者がおこなっている「判断」(の一部)ができるかどうかだ。
---たとえば、その数が10以下かどうか、で計算を続けるかどうか、判断するように.....
---労働者の「注意力」というのは、状況を観察して「判断」すること。
---だからこの「判断」つまり、「条件分岐」が可能かどうか、がポイントになります。
---同じ道具(「演算装置」)でもソロバン、電卓と、コンピュータはこの点が決定的に違います。
#enddivregion

#divregion(補足,admin,lec=8,qnum=4)
-むずかしいのは、ある条件によって、Aにするか、Bにするか、切り替えることです。
-xとyで、どっちが大きいか小さいかは、引き算してみればわかります。
-同じなら x- y = 0 となります。
-コンピュータが条件分岐ができるかどうか。
-if P then Q という論理操作ができるか。
-もし ① x と y の比較。もし同じ(でない)値なら ② 操作に戻る(移る)という二つのことをレジスタをつかってやれるようになったとき、コンピュータとよぶ。
-この「判断」の部分の一部を代行させることができるようになった電子装置がコンピュータ。だから、ソロバンとも電卓とも違う。
-計算機ではなく、論理装置になったとき、コンピュータとよぼう。これが解答③のなかみです。
-この講義ではこれから、解答③の意味でコンピュータという用語をつかっていきます。
#enddivregion

**なぜ人間の労働が必要なのか(だったのか) [#b16dcf2b]
#divregion(目的意識的とは,admin)
***労働の基本構造 [#k134c4ed]
-[[労働能力>2019年度/冬学期/第3講#t9fae67f]]とは
>
+モヤモヤした欲求をハッキリした目的として設定し、
+目的に対する手段を体系化し、
+手段としての身体を意識的にコントロールして実現する
<
ことである。
#qanda(3,1)
***コントロールのコントロール:新たな自動化の波 [#q9ac7330]
-2010年代に顕著な自動化(自動運転や音声入力など)の多くは、3の「手段としての身体」の外延によるところが大。
>
+センサ
+アクチュエータ
<
--これらの装置は「&ruby(degital){数えられる};」信号によってコントロール((電圧の変化で調整するのとは違う))。
--コンピュータの中核部分の直接的な結果ではない。
---''AI''の発展だといわれているが、基本は if then else の分岐を可能にするコンピュータの基本原理。
--無視できないのは、入出力の技術の目覚ましい発展。
--その影響は、ずっと古いレイアで以前から進んでいる。
--コンピュータの原理である、プログラムの条件分岐は、3における人間の「判断」(の一部)を外部化することを可能に。
---従来の「自動化」オートメーションのベースは、単純な円運動:往復運動 or 連続的な化学反 or 熱移動。
---停止や切り替えは手動。
---エラー処理は人間がおこなう。調整労働。
---監視モニターリングという労働。
--操作操縦型労働の縮減:
>
+''自動''車の''自動''運転。
+工場内におけるさまざまな機械操作の自動化。
<
--調整監視労働の変型化
---じつは、コンピュータのモニタリングに変換されてたのであり、縮減かどうかは?
***手段の手段はやはり手段:目的知らずの道具 [#gab74846]
-しかし、これは2の「手段の体系化」には及んでいない。
#qanda(2,6)
--コンピュータは、条件分岐の積み重ねで複雑な動作をおこなうことができても、「プログラム」にしたがって動くもの。現段階のコンピュータは、自分で自分のプログラムを書いて動くものではないのはもちろん、プログラムを部分的に修正して動作を変更することもできない。
--プログラマーが侵したミス(入力ミスや変数型の勘違いなど)さえ、自動的に修正することさえできない。可能なのは、エラーメッセージをだすだけである。これもプログラマーが仕込んでおいたものである。
--コンピュータも、労働''主体''に操作される''受動的な''道具である。
--プログラミングをはじめ、コンピュータを世話する労働が必ず必要になる。
-プログラミングの基本は、
+プログラミングコードから、意味や目的を取り除くこと
+意味を知るのは、プログラマのみ
という「分断」にある。
--$lec = 8$というとき、変数名$lec$は実行れべるではメモリ上のアドレス#f3e4を指し示すだけ。これが第8講を意味するのはプログラマーが脆弱な記憶力をなんとか補い目的に合うように意味づけているだけ。
***欲求の対象化は夢のまた夢:コンピュータは夢をみない [#y1ad8674]
-1の欲求の対象は、身体を持たないコンピュータには叶わぬ夢。
-ただ、コンピュータ・ネットワークを介して、人の欲求を操作しようとする活動が活発化するのみ。
-これは人の人に対する間接操作であり、プロパガンダ。宗教の世界では、古くからおこなわれてきたこと。
-インターネットの成果はこれが拡散。
-このはなしは来週文字コードの操作から、もう一度考えてゆきます。
#enddivregion

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