#author("2019-07-11T13:12:54+09:00","default:obata","obata") #author("2019-07-11T13:13:35+09:00","default:obata","obata") CENTER:[[前回>2019年度/第10講]]<<第11講>>[[次回>2019年度/第12講]] CENTER:&size(25){&color(yellow,navy){ 資本について(3)};}; ------ #qanda_who -注意: --講義に30分以上遅れると、質問に回答する資格がなくなります。 --「訪問者:氏名不詳」として処理します。 ~ #qanda_setstid(2019-07-011 16:10:00,80) ------ *講義の概要 [#k627729d] -前回、「資本とは...」まではなしたので、その続きで、資本の基本概念の拡充をしてゆきます。 -到達目標は''産業資本''、そして''資本主義''です。 -...ということで、前回に戻ります。 **「資本の多態化」 [#j899fd26] -教科書の86頁から -多態化 ポリモーフィズムという用語はちょっとむずかしいけれど、考え方はそれほどのことはありません。 > #divregion(たとえば) -同じピカチュウでも、ルビー・サファイア・エメラルドとか、ハートゴールド・ソウルシルバーとか、いろいろな種類になる。 -プログラムを書くときに、基本的なデータ(属性)や動き方(メソッド)などをきめた一般的なものをまず書いておき、種類ごとにその内容を上書きしてやればよい。 -各種類ごとに別々に書くのではなく、共通な仕様を決めておき、この仕様をそれぞれの特性に合わせて実装するのです。 -教科書は、資本というのも、プログラミングでモンスターを記述するときと似たような書き方ができるんだ、といっているようです。 #enddivregion < -資本の場合、基本的な枠組み、満たすべき要件(親クラス super class)は共通でも、実際のもうけ方(子クラス sub class)にはいくつかのやり方があります。 -基本的な枠組みのほうは、いま前回のところでみてきたとおりです。もう一回おさらいしておくと... ~ #qanda_set_qst(11,1,0){{ 粗利益の計算では二回の記帳が前提となる。どういうときに記帳されるのか?また、この記帳にもっとも深く関係する貨幣の機能は何か。この機能が記帳に固有の特性を与えているのだが、それは何とよんだらよいか。これも漢字三字で。 }} #divregion(ヒント, admin) > +貨幣がでてゆくときと、はいってくるときです。これを何というか、漢字二字です。 +売り手の価値表現に対して、買い手はこれを承認して確定します。 +覆水盆に返らず、という意味の確定です。''不可逆''性といいます。 < #enddivregion #qanda(11,1) #qanda_set_qst(11,2,0){{ <ol> <li>資本は特殊な貨幣である。</li> <li>資本は特殊な商品である。</li> <li>資本は単なる貨幣でも単なる商品でもない。</li> </ol> 「特殊な」「単なる」の意味をよく吟味し、 この限定詞を含まない、 「資本は....である」という 肯定形の命題を考えよ。 }} #qanda(11,2) #divregion(ヒント,admin) > +「資本は、あるときは貨幣の''かたち'' shape をとり、あるときは、商品の''かたち''をとる。」 + ''かたち'' shape というのは、目に見える(=知覚できる)''かたち''のこと。 +ということは、資本は''かたち''をかえるもの。 +''かたち''はかわっても、それらはどちらも(X)の''かたち''なのだ。 +商品にもあり、貨幣にもあるもの、それは..... < #enddivregion **資本とは計算システム [#zb9a7b51] #divregion(極限まで絞り込んでしまえば...) 一種の[[計算システム>https://www.bulldog.co.jp/company/pdf/190514_IR.pdf]] ---結損益計算書:P/L プロフィット&ロス ---貸借対照表:B/S バランスシート --計算のドキュメントの作り方には、技術的な問題もあり、時代や国によって違いがあるが、 #enddivregion --基本的な考え方は > +資本投下によるストックの表 +貨幣の支出、収入によるフローの表~ < をきちんと分けて、ストックの増加をフローの利益と関係づけるものです。 -- G--W--G' という個別のマージンをすぐに資本が増えたと考えてしまうのは愚です。 ~ #qanda_set_qst(11,3,0){{ 利益の計算には必要だが、資本の計算には必要でないものはなにか? }} #qanda(11,3) **もうけ方 三態 [#kf49d472] ***1. 安く買ってもうける法 [#b075b0e5] #qanda_set_qst(11,4,0){{ <p>転売 G -- W -- G' を、よく「安く買って高く売る」という人がいますが、これには適切でないところがある。</p> <p>どこが問題なのだろうか?どう言いえば適切なのだろうか?</p> }} #divregion(ヒント,admin) - 同じ種類の商品を周囲より高く売ることはむずかしい。 -売るのに偶然性が伴うので、安く買うチャンスはある。 -「安く買って相場で売る」でどうだろうか。 - 同じ種類の商品が多数存在するとすると、それはたいてい、同じコストで大量に生産できるためだ。 -- 同じ種類の商品が存在しない、骨董品美術品などは、資本主義の全体像を考えるうえでは除外してよい。 - しかし、同じ種類の商品を多数の売り手が競争的に売るなかでは、予想外に販売に時間がかかり、値引き販売を迫られる者がでてくる。 - そのかぎりでは、安く買うチャンスのほうはある。 -ただこのチャンスをものにするには、そのための費用が必要となる。 - 売るのに時間がかかるということは、その間、商品を運んだり保管したりするため費用がかかる。 - 売買そのものにも、売買契約を結び、送金や支払を促すなどにも経費がかかる。 #enddivregion #qanda(11,4) ~ -売買にかかる費用を''流通費用''という。 #qanda_set_qst(11,5,0){{ 「流通費用をかければ商品の価値はそれだ高まる。」真か偽か?理由も... }} #qanda(11,5) - 流通費用をかけたからといって、その分、人より高く売れるわけではない。 -売買差額、マージンの総額である''粗利益''(教科書では粗利潤となっていますが)から、かかった''流通費用''はキチンとまとめて引いておこう。 -この最後の差額が''純利潤''である。 -同じ商品の価格差を利用して増殖する資本を資本を''商人資本''という。 -古い時代からずっとあった資本です。 < ***2. 売買の費用を節約してもうける法 [#k936064d] - 結果的には1.の安く買う法と同じだが、 - 販売にかかる経費ほうほうを節減する方法がある。 - 多数の売り手から販売を集中的に引き受ければ、効率化して経費が節減できそうだ。 - 「いつでもすぐに買い取るよ」と広報すれば、 --売り手は販売のための資材や労力を負担しないですむから、 --その分、相場よりも多少低い価格で売ってもよい -と考えるので、安く買える可能性がある。 -資本は、この資材や労力を、利潤の計算システムのなかで、''流通費用''として合理的に管理することができる。 -単純な商品売買をおこなうものは、流通費用に該当する支出をしているが、この計算システムをもたない。見えるのはマージンだけ。 -この資本も、安く買って相場でることで増殖する''商人資本''である。 < ***3. 安くつくってもうける法 [#h58e533a] -費用をかけて調べれば、できあがった商品Wを買うチャンスはあるが、 -商品Wがつくられる過程にチャンスを求める手もある。 -Wの原材料を安く仕入れることができれば、それを組み立て安く完成品Wを手に入れることができる。 -完成品をただ安く買うのではなく、安くつくるかたちで安く買う法である。 -これは費用と収入の枠組みのなかに、原料を買って完成品を売るというかたちで、生産を取りこめることを意味する。 -この資本を商人資本と区別して''産業資本''とよぶ。 -''産業'' industrial という言葉は、異なる意味をもち複雑である。ここでは、生産で増殖するという意味で「産業資本」というこの言葉を用いる。