#author("2019-07-11T14:18:09+09:00","default:obata","obata") [[前回>2019年度/第1講]]<<第2講>>[[次回>2019年度/第3講]] #author("2019-07-11T14:18:23+09:00","default:obata","obata") CENTER:[[前回>2019年度/第1講]]<<第2講>>[[次回>2019年度/第3講]] CENTER:&size(25){&color(yellow,navy){ 貨幣について(2)};}; //講義開始前に一度だけ実行:cookie log の初期化と自分用クッキー //#qanda_initlec #qanda_who #qanda_setstid(2019-07-10 09:49:00, 0) *概要 [#vb43e250] **貨幣とは... [#x5d19819] -今回から、「貨幣について」話をします。いきなりですが、質問です。 //--[[質問&number(問題);>問題:lec=2&qnum=1]] //--[[回答>回答:lec=2&qnum=1]] #qanda(2,1) //--[[出題>出題:lec=2&qnum=1&question=たとえばいま、「貨幣ってなに?」と中学生に聴かれたらなんと答えますか?]] -だれでも見知っているはず「貨幣」ですが、あらためて「それがなにか?」と問われるとわからなくなる。 -お金を使うことは何でもないですが、「それはなにか」という問われると100円玉をみせて「たとえば、これです」としかいえない。「じゃ、スイカは?」「????」 //--[[質問&number(問題);>問題:lec=2&qnum=2]] //--[[回答>回答:lec=2&qnum=2]] #qanda(2,2) //--[[出題>出題:lec=2&qnum=2&question=貨幣は目に見えるものか?]] -「〜のようなもの」がいろいろあって定義がむずかしいのです。 -わかったようでわからない、何かヘンテコな感じ、この種の「むずしさ」は経済学ではよくあることです。 **さかのぼって考えると... [#i2854e5e] -貨幣とよばれている何かをとりだして、それをいくらひねくりまわしても正体はわからない。 -考えてみれば当たり前。貨幣はそれだけ単独で意味をもつものではないのだから... -相手があってこその貨幣。では、その相手とは... -貨幣は、何を「買う」ことができるもの。 -だから、この買われるものの側から、まずはっきりさせておくのがよい。 -「買われるもの」は「売られるもの」でもあります。 -この「売買」されるものをXとおきます。 //--[[質問&number(問題);>問題:lec=2&qnum=3]] //--[[回答>回答:lec=2&qnum=3]] #qanda(2,3) //--[[出題>出題:lec=2&qnum=3&question=このXは一般になんとよばれていますか?]] **売買されるものの正体 [#c3de8f60] -ところが、このXの正体がさらにむずかしい。Xの外面はだれでも知っているのですが、内面が複雑なのです。 //--[[質問&number(問題);>問題:lec=2&qnum=4]] //--[[回答>回答:lec=2&qnum=4]] #qanda(2,4) //--[[出題>出題:lec=2&qnum=4&question=①「リンゴはXである」と②「このリンゴはXである」の違いないし関係は?]] //--[[質問&number(問題);>問題:lec=2&qnum=5]] //--[[回答>回答:lec=2&qnum=5]] #qanda(2,5) //--[[出題>出題:lec=2&qnum=5&question=Xは目に見えるものか?]] **否定形を使った定義 [#r00072cb] -このリンゴはXだが、あのリンゴはXじゃない、という文が成りたつようなXの定義って、かなりむずかしい.... ということがわかってきましたか? -こういうとき、本源的な定義を与える、一つのやり方があります。 -だれでもわかる、疑問がでないものYをつかって、 -XはYではあるが、ただのYでは「ない」というかたちで定義する手です。 -位置だけあって長さも幅も「ない」ものを「点」という... 感じに似ているかな? -ここでは、この否定形の定義を二つ組み合わせて、Xの定義を、三段階でやります。 > +まず広く「モノ」の定義をしてみます。 +それからただのモノではない「財」goods の定義をします。 +最後にただの「財」ではないXの定義 < -「モノ」 --> 財 goods --> X **モノの定義 [#jdbe402a] -教科書21ページの第二パラグラフを読んで、モノの定義を考えてみます。 -教科書の定義: -- def モノ:主体が「「あれ」とか「これ」とか、指し示して特定できる外的対象」 //--[[質問&number(問題);>問題:lec=2&qnum=6]] //--[[回答>回答:lec=2&qnum=6]] #qanda(2,6) //--[[出題>出題:lec=2&qnum=6&question=この教科書を書いた人は、この定義だけでは何か足りないと感じたようで「明確な境界が存在し、その間に重複がない」などとちょっとボケた補足をしているのですが、もっとビッシとした限定の仕方を教えてあげてください。そういうことをいいたいのなら、この一語で「決まり」だって....]] //--[[質問&number(問題);>問題:lec=2&qnum=7]] //--[[回答>回答:lec=2&qnum=7]] #qanda(2,7) //--[[出題>出題:lec=2&qnum=7&question=「私のこの愛」とか「彼女のあの愛」ということはいちおうできるが、やはり「愛はモノではない」。愛が「モノであるための必要十分条件」を満たしていないためだ。さて、この必要十分条件はなんでしょうか?]] **情報はモノか [#t0f736e0] -抽象的であまり役にたちそうにないことを考えている、形而上学だ、という声が聞こえてきますが、 -たとえば情報の問題などを経済学で考えるときの基礎の基礎になります。 -この基礎の基礎が曖昧なまま、むずかしいことを考えると、ほんとうにメチャクチャなことになります。 //--[[質問&number(問題);>問題:lec=2&qnum=8]] //--[[回答>回答:lec=2&qnum=8]] #qanda(2,8) //--[[出題>出題:lec=2&qnum=8&question=情報はコピーでいくらでも生産することができる。この命題は真か偽か?]] -教科書の問題5について考えてみます。 -問題5は重要です。コンテンツとメディアの問題です。 **「ある」の定義と属性 [#z356ade6] -モノにはモノの属性が「ある」。この「ある」がむずかしい。 -哲学の世界では、存在 exist とは何か、はむかしから大問題ですが、「ある」にはどうも > +知覚できる(五感でわかる)対象として、そこに「①ある」 +特定の性質が「②ある」 < の二種類があるようです。 //--[[質問&number(問題);>問題:lec=2&qnum=9]] //--[[回答>回答:lec=2&qnum=9]] #qanda(2,9) //--[[出題>出題:lec=2&qnum=9&question=「ある」の定義に「ある」がでてきてしまった。「二種類がある」の「ある」は、①でしょうか、②でしょうか?]] -さて、次のようになります。 > +モノは「①ある」 +モノには「属性」が「②ある」 < -教科書22-3ページの「属性」のところを読んで説明します。 -「属性」というのは、コンピュータのプログラミングの世界でプロパティとよんでいるものです。 -少しプログラムの世界に足を踏み入れたことがあるひとのなかには、 -[[is-a 関係とhas-a関係>https://ja.wikipedia.org/wiki/Is-a]]というのをきいた人がいるかもしれません。 -属性とそれららの振るまい方(メソッド)を具えた対象をオブジェクトというようなので、ここではこの用語を借用しましょう。 -オブジェクトは共通のタイプであるクラスと、そのタイプを具えた個々の実例(インスタンス)として扱うことができますが、メソッドの話はこれからあとでやってゆきます。とりあえず、モノをクラスとして捉えると -モノの属性は、うえの質問6の「この一語で決まり」だといった「あの一語」です。 -class 名のあとに ( )で is-a 関係を示し:をつけ、その後に属性を列記するとすると次のようになる class モノ(Object):「あの一語」 **財 goods の定義 [#f4297ec2] -定義の仕方がわかったので、あとは簡単。 -財はモノだが、ただのモノではない。 //--[[質問&number(問題);>問題:lec=2&qnum=10]] //--[[回答>回答:lec=2&qnum=10]] #qanda(2,10) //--[[出題>出題:lec=2&qnum=10&question=財 is a モノ, but 財 has a P. さてPは?]] < class Goods(モノ) : P ** X の定義 [#n95b4131] -X は財だが、ただの財ではない。 //--[[質問&number(問題);>問題:lec=2&qnum=11]] //--[[回答>回答:lec=2&qnum=11]] #qanda(2,11) //--[[出題>出題:lec=2&qnum=11&question=X is a 財, but X has a Q. QはPに修飾句をつけて限定するかたちでOKです。さてQはどんなPでしょうか?]] < class X(Goods) :Q ** まとめ [#ae042f1b] -ちょっと面倒な話をしましたが、ポイントは次の3点でした。 > +目に見える(=知覚可能な)世界と目に見えない世界: +モノと情報の関係 +「ある」の二つの意味 +モノと財とX の関係 < //--[[質問&number(問題);>問題:lec=2&qnum=12]] //--[[回答>回答:lec=2&qnum=12]] #qanda(2,12) //--[[出題>出題:lec=2&qnum=12&question=今日の講義はむずかしかったですか?わからなかったことがあったら、どうぞ....]] //-- [[質問&number(問題);>問題:lec=2&qnum=5]] //[[回答>回答:lec=2&qnum=5]] //--[[出題>出題:lec=1&qnum=5&question=モノ、財、X、有用性の4項目を、 is a と has a で関係づけてください。P is a Q とか,P has a Q とか....]] //-財 is モノ. X is 財. というサブクラスになります。 //-これに対して、役に立つという属性=有用性 =「使用価値」はどう表現したらよいか。 //-財 has 使用価値 であって、財 is 使用価値 ではありません。 //-X にはたしかに使用価値がありますが、それはただの使用価値ではありません。 //-特殊な制限を受けた使用価値です。持ち主にとっては「非使用価値」Nicht Gebrauchtwert ??? 簡単いえば //#region //他人のための使用価値:自分にとってはまったく役に立たないが、誰かとってはとてもだいじな役には立つ有用性なのです //#endregion //-X is 財 ですから、有用性を「継承」しますが、同時に、X has P //#region //交換できるという性質:つまり交換(可能)性:「価値」 //#endregion //なのです。 //-要するにX とは //#region //「価値 」という性質をもつ財 //#endregion //ということになります。 //今回の必須アイテムは //#region //使用価値、価値 でした。この二つのタームを厳密に使えるようにしておいてください。 //#endregion //-次回は使用価値と価値の関係について、教科書で詳しく説明してゆきます。 //-重要なのは、「貨幣をつかった交換」=「商品売買」は、「財と財の交換」=「物々交換」と同じではないことををハッキリ理解することです。 *配付資料 [#d9b27b2a] --[[ハンドアウト>http://gken.sakura.ne.jp/tus/pub/2018/handout2.pdf]] &new{2018-04-18 14:02:50}; --[[中国のキャッスレス化>https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190411-61726782-business-cn]] --[[その2>https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190411-61726782-business-cn]]