#author("2019-07-11T14:17:48+09:00","default:obata","obata")
#author("2019-07-11T14:21:12+09:00","default:obata","obata")
CENTER:[[前回>2019年度/第2講]]<<第3講>>[[次回>2019年度/第4講]]
CENTER:&size(25){&color(yellow,navy){ 貨幣について(3)};};
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//#qanda_initlec

#qanda_who
//#setstid
//#qanda_setstid

*概要 [#hf640e87]

-&color(red){①商品の特性を分析する};ことにより、
-&color(red){②貨幣の本質を明らかにする}; ことが課題です。


-今回もかなり抽象的で、たぶんむずかしい話をします。
-むずかしいといっても、考え方がちょっと馴染みにくいというだけです。
-すでに「知っている」と思っている用語を、厳密に定義しようとすると直面する困難です。
--ユークリッドの幾何学原理の公理や、ニュートン力学の質点の定義とか、思い浮かべてみてください。

**まとめ:モノ・財・商品のレイア [#n15c557f]
次のレイアの区別が参考になるかもしれません。
|BGCOLOR(blue):COLOR(yellow):|CENTER:|CENTER:|CENTER:|CENTER:|c
|>|>|>|>|BGCOLOR(yellow):↓ 物 象 層 ↓|
|人 - 人 relation|COLOR(red):''商 品''|非商品||Expression|
|人 - モノ relation|>|財|非財|Recogniton|
|モノ-モノ relation|>|>|モノ|Perception|
|>|>|>|>|BGCOLOR(yellow):↑ 物 理 層 ↑|

**商品とは [#b7c9acd3]
-商品とは
#region
-特殊な「財」:財は役に立つという性質、つまり「&color(blue){使用価値};」をもつが...
-その使用価値が、自分には役に立たないが、だれか他の人の役には立つという状態、つまり「&color(red){他人のための};&color(blue){使用価値};」になりきったものが「商品」です。
#endregion
//--[[出題>出題:lec=3&qnum=1&question=自分のもっているものを考えてみると、非常に役にたつものもあれば、もういらなくなったものもある。役立ち方にはグラデーションがあって、その末端に「他人のための使用価値」らしきものが存在する。財を「他人のための使用価値」とそうでないものとに、はっきり分離するのは無理なのではないか、という人がいるとしよう。この人に対して、分離できる理由、すべき理由を説明してみよう。]]
//--[[出題>出題:lec=3&qnum=1&question=自分のもっているものには、非常に役にたつものもあれば、もういらなくなったものもある。財を「他人のための使用価値」とそうでないものとに、はっきり分離するのは無理なのではないか、という人がいたとしよう。この人に対して、分離できる理由、すべき理由を説明してみよう。]]
--[[質問&number(問題);>問題:lec=3&qnum=1]]
--[[回答>回答:lec=3&qnum=1]]
#qanda_on(3,1)
#qanda(3,1)

-商品の使用価値は
#region
-「他人のための使用価値」。これは自分には役に立た「&color(blue){ない};」という&color(blue){ネガティブ};な言い方です。
#endregion
-商品を所有することは、持ち主にとってどんなメリットが&color(blue){ある};のか?&color(blue){ポジティブ};にいうと、自分にとっては....?
#region
-自分にとって役に立つ別の商品と「交換&color(blue){できる};」=交換&color(blue){可能性};をもっている。
-この交換可能性を「&color(red){価値};」とよぶ。この定義は重要です。
#endregion
//--[[出題>出題:lec=3&qnum=2&question=①この仏像には国宝級の価値がある。②100均のアイテムはみんな同じ価値をもっている。①②の「価値」は違いは?]]
--[[質問&number(問題);>問題:lec=3&qnum=2]]
--[[回答>回答:lec=3&qnum=2]]
#qanda_on(3,2)
#qanda(3,2)

-まとめると、商品には二つの相反する属性がある。「商品の二要因」すなわち
#region
-使用価値
-価値
#endregion
である。

#region(交換価値という言葉は要注意!!)
-よく「価値」のことを「交換価値」といってしまう人がいますが、
-この講義ではNGとします。理由は....
-「交換価値」という用語は「交換比率」と同じ意味で使われます。
-比率としてみると、「リンネル20ヤール=1着の上衣」なら「1着の上衣=リンネル20ヤール」となる。
-「価値」は「交換価値」=「交換比率」ではありません。
-「交換できるという性質」で、「リンネル20ヤール=1着の上衣」とリンネルの「価値」を「1着の上衣」で表現しても、
-この比率ですぐに、直接交換できるとは限りません。
-この点はこの後、もう少しちゃんと説明しますが、ともかく、何も考えずに「価値」のことを「交換価値」と呼んでしまうのはNGです。
-商品の価値から、貨幣を説明する方法を台無しにしてしまうので....
#endregion

//--[[出題>出題:lec=3&qnum=3&question=同じ大きさの価値をもつ商品どおしなら、いつでも交換できるか?]]
--[[質問&number(問題);>問題:lec=3&qnum=3]]
--[[回答>回答:lec=3&qnum=3]]
#qanda_on(3,3)
#qanda(3,3)


-原理論の出発点になるのは、「純粋な商品」
-商店の棚に並んだ商品をイメージしよう。
-自分の身に周りのモノについて考えてみよう。

//--[[出題>出題:lec=3&qnum=4&question=物々交換サイトで交換されているモノは、ここで定義した商品と同じか違うか。]]
--[[質問&number(問題);>問題:lec=3&qnum=4]]
--[[回答>回答:lec=3&qnum=4]]
#qanda_on(3,4)
#qanda(3,4)

//--[[出題>出題:lec=3&qnum=5&question=第3講の説明でわからないところ、ありましたか?]]
--[[質問&number(問題);>問題:lec=3&qnum=5]]
--[[回答>回答:lec=3&qnum=5]]
#qanda_on(3,5)
#qanda(3,5)


**商品からみた貨幣 [#c6a929f3]
***商品価値の「表現」 [#ye177cbc]
-ここがいちばん難しいけれど、だいじな点です。
-商品の価値は、性質ですので、モノの重さのように、直接「はかる」ことはできません。
-私のもっている、この量の商品は、あなたのもっているその量の商品に「等しい」というかたちで「表現」する必要があります。
-リンネル20ヤール = 上衣1着のように....
-リンネル20ヤールの「価値」は目に見えません。その大きさは、上衣の1着という目に見えるモノの量である、というのが「表現」です。
-「表現」というのは、直接目に見えない(五感で感じることのできない)性質を目に見えるすがたで示すことです。
-「等しい」equal というのは「同じ」same ということではありません。
//--[[出題>出題:lec=3&qnum=6&question=次の文の( )に適切な言葉を入れてください。「私のもっているリンネル20ヤールのどの1ヤールもみな( A )だが、見えるモノとしては、リンネル20ヤールと上衣1着は( B )ではない。しかし、目に見えないリンネル20ヤールの( C )の大きさは、目に見える1着という( D )に( E )。」]]
--[[質問&number(問題);>問題:lec=3&qnum=6]]
--[[回答>回答:lec=3&qnum=6]]
#qanda_on(3,6)
#qanda(3,6)
-教科書32頁問題13 の解答も是非よんでみてください。
-価値の表現形態の発展を段階を追って理論的に説明する理論が価値形態論です。講義では扱いませんが、教科書1.3.2 を読んでみてください。

***貨幣とは [#w8695221]
-商品の価値は、他のさまざまな商品の物量で表現される。
-すべての商品が、共通の商品でその価値を表現するようになったとき、この共通の商品を貨幣とよぶ。
-貨幣の本質は、すべての商品がもつ価値に、共通の統一された表現を与えること。
--貨幣である要件として①単一かつ②持続(今日も明日も....)の二点を追加する。
-商品が存在すれば、かならずその価値が表現され、この発展した究極の姿が貨幣による表現である。
-商品だけ存在して貨幣が存在しないということは論理的にありえない。

***価値と価格 [#j31a4931]
-この二つの言葉はだれでも知っている。
-英語でも value and price と区別。
-日本語でも昔から「ねうち」と「ねだん」は別。「これがこの値段ならお値打ちだ」とかいう。
-では、価値と価格の関係は?
#region
商品には価値がある。この価値は価格とは違う。価格は何かに「付ける」もの、「付けられる」何かが価値だ。別にむずかしい話ではない。ところが、「価値があるというけれど、そんなもの、どこにあるのだ」ときかれるとちょっと困る。価格な
ら目にみえるが、価値となると、だれもじかにみることはできない。だから価格を付けるわけで、できれば、わざわざ値付けをしたりはしない。だから、何かしら、価値のようなものはありそうだ。でも、ありそうなものをちゃんと説明しようとすると途端にむずかしい問題になる。
//~
//この厄介な問題を追求してゆくと、やがて貨幣が実在する市場のすがたが浮かびあがってくる。そしてさらに進めば、資本の運動もちょっと見えてくる。しかし、このような基礎の基礎を明かすことは容易ではない。そもそもどう考えたらよいのか、それがわからないのである。(『価値論批判』2013年弘文堂)
#endregion

#region(缶ジュース1本 = 100円というのは...)
-缶ジュースがもつ、ほかのどの商品とも交換できるという性質を100円と表現した形態である。
#endregion

#region(単位の問題)
-モノの量を計測するには、共通の単位が用いられる。基本は、重さのグラムとか長さのメートル、時間の秒など。そのほかに、いろいろな呼び方があり、リンゴ1個2個など個数もあるし、1着とか....
-基本的な単位は、法律で決まっている。この単位を使えば、だれがはかっても同じなる。
-貨幣にも特別な単位が法律で決められている。日本の場合は円。
-現在の法律では、貨幣の単位は円とすると定義するのみ。
-純金0.75グラムを円と呼ぶという定義がなされたこともあった。
-貨幣の単位を金の重量で定義するのが、広い意味での「金本位制」である。
-ただ、共通単位を定めるだけで国はそれ以上何かをするわけではない。
-狭い意味での金本位制は、実際に、この一円に当たる金貨を国が鋳造し普及させることまで含む。
-といっても、国がおこなうのは、民間人がもってきた金0.75グラムを鑑定して、刻印をおすこと。
-金貨をつくっても、金の量を殖やすことはできない。
-地球の円周の何分の1を1メートルと定めるという法律と同じで、国がそれ以上のことを何かするわけではない。
-国が貨幣の単位を定めることができるということを、国が貨幣をつくることができると勘違いしてはならない。
#endregion



-今日の内容は、たぶんいちばん難しいところでした。最後の確認です。
//--[[出題>出題:lec=3&qnum=7&question=「価格とは商品の価値を貨幣の量で表現したものである。」という文の意味がハッキリわかりますか?価格、商品、価値、貨幣、表現の5つの言葉がちゃんと使い分けられればOKなんですが...]]
--[[質問&number(問題);>問題:lec=3&qnum=7]]
--[[回答>回答:lec=3&qnum=7]]
#qanda_on(3,7)
#qanda(3,7)


*配付資料 [#d9b27b2a]
--[[ハンドアウト>http://gken.sakura.ne.jp/tus/pub/2018/handout3.pdf]] &new{2018-04-24 (火) 23:03:42};

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