#author("2020-12-20T20:18:21+09:00","default:obata","obata") #author("2021-01-05T10:19:44+09:00","default:obata","obata") CENTER:[[前回 ◁ >2020年度/冬学期/第9講]]&color(#447CFF){第 &size(32){10}; 講}; [[▷ 次回>2020年度/冬学期/第11講]] ---- #qanda_setstid(2020-12-03 16:10:00,90) #qanda_who #qanda_points_chart #qanda_points_hist #qanda_mathjax #qanda_set_qst(10,20,0){{ <p>✔ 接続状態をおしえてください。</p> <p>✔ 前回学生証番号を登録した人で、今回、「氏名不詳」になっていた人は「再登録」と書いてください。</p> <p>簡単なlatexで数式が書けるようにした(つもりな)ので、実験してみてださい。</p> }} #qanda(10,20) ----- CENTER:&size(25){&color(yellow,navy){ 生産に必要な労働量 };}; ---- *今回のネライ [#g3ff3664] -純生産物の分配を考える基礎として「生産に必要な労働時間」 -「生産に必要な労働時間」の二通りの計算方法 **補足的注意1 [#qd5bbbe7] -考察対象は、日本経済とかアメリカ経済とか、大きな「社会的再生産」。 -無数の産業、生産物があるが、これを極端に単純化して考えていることを忘れずに。 -国内総生産 GNP などとの関連は、あとで触れますが、だいたい500兆円くらい。これが「純生産物」にほぼ対応。講義の数字例は小さいですが、兆倍してイメージしてください。 **補足的注意2 [#w0cf2cfd] -労働について、ここでは互換的な労働に単純化して、労働量は、すべての職種で同じ時間単位で集計できるものと仮定します。 -対象は、一定の「技術」が存在する「生産」を「コントロール」する「労働」です。適正にコントロールすれば、だれがやっても基本的に同じ結果になる労働なので、生産物の量と労働量の間には比例関係が成りたちます。 --正しく運転すれば、一定の荷物を一定の距離、輸送するにかかる時間はきまる、ミシンをチャンとあつかえば一定時間の労働で生産できるTシャツの枚数はきまる、などなど。 -賃金についても、時給1000円のような同じ賃金率(労働力の時間あたりの価格)を仮定します。 -純生産物から、労働で所得を得ている者がどれだけ受け取り、資本(営利企業)の側にどれだけ、あまりが残るのか、という一国規模の大きな分配の原理を考えるための単純化です。 -この目的のため、外国との取引や、政府の財政もないものと仮定します。 -かなり強い仮定ばかりですが、焦点を資本と賃労働の関係に絞るためのものです。 *生産に必要な労働時間 [#e36636ca] RIGHT:2 mini #qanda_set_qst(10,1,0){{ <p>小麦のタネ2トンをまいて10トンの小麦を収穫するまで、100日かかった。</p> <p>タネは1人で播き、1日8時間労働で3日で播いた。</p> <p>収穫は5人で、1日8時間労働で1日で完了した。</p> <p>これ以外の要素はないものとして、次の値を求めよ。式も書くこと。</p> <ol> <li>小麦1トンを生産するのに必要な労働時間</li> <li>小麦1トンを生産するのに必要な生産期間</li> </ol> }} #qanda_solution(10,1){{ <ol> <li>$(8×3 + 8×5)\div(10-2) = 8時間$</li> <li>$24×100 = 2400時間$</li> </ol> }} #qanda(10,1) RIGHT:2 mini #qanda_set_qst(10,2,0){{ <p>上の問題の二つの時間のズレはなぜ生じるのか?</p> }} #qanda_solution(10,2){{ <p>労働のおこなわれていない生産期間が存在するから</p> <p>生産は自然法則に支配されるモノとモノとの反応過程という面をもつから</p> }} #qanda(10,2) RIGHT:2 mini #qanda_set_qst(10,3,0){{ <p>生産期間は、労働によって左右されることはない。</p> <p>真か偽か。理由を述べよ。</p> }} #qanda_solution(10,3){{ <ul> <li>偽</li> <li>生産期間は労働期間を含み、労働期間は労働のしかたで変化するかあら。</li> <li>種をまくのに1人だと5日かかったが、5人でまけば1日で完了。単純に計算して生産期間は100日から96日に短縮する。</li> </ul> <p>これは「労働組織」のところで話した<span class="tooltip">アレ<span class="dscp"><span class="text">協業の原理です。</span></span></span>です。</p> }} #qanda(10,3) RIGHT:2 mini #qanda_set_qst(10,4,0){{ <p>靴職人が一人で右足を1日で仕上げ、左足を次の日に仕上げると、生産期間は2日。二人の職人が右足、左足を別々につくれば生産期間は1日になる。</p> <p>生産に必要な労働時間はいずれにおいても2日で変わらない。</p> <p>このように生産期間は「協業にもとづく分業」によって労働量に還元できる時間である。</p> <p>真か偽か、理由を述べよ。</p> }} #qanda_solution(10,4){{ <p>■解答■</p> <ul> <li>偽</li> <li>労働期間は協業の原理で短縮できても、労働期間をこえる生産期間が存在するから</li> </ul> <p>□解説□</p> <p>組立型の工場生産、アセンブラリーラインをイメージすると、すべてが労働期間=生産期間のような錯誤に陥り、労働期間さえ考えればよい、と思い込んでしまいます。</p> <p>さらに労働期間が長かろうと短かろうと、その間におこなわれる労働量は同じなのだから、けっきょく「生産に必要な労働時間」だけを考慮すればよい、と妄信することになるので注意。</p> <p>...注意したうえで、以下では、生産期間、労働期間はすべて等しいと仮定して、「生産に必要な労働時間」だけを考えます。<span class="tooltip">なぜって....<span class="dscp"><span class="text">純生産物の分配が課題。分配の尺度は原則「生産に必要な労働時間」になるから。...って?あとで分かりますから安心してください。</span></span></span></p> <p>After</p> <p>「小麦のように」とか「農業では」という回答が目立ちましたが、別に農業にかぎった話ではありません。酒造りなどはまだ、酵母菌がはたらくので農業なのかもしれませんが、鉄が溶けるのだって、化学コンビナートで精製するのだって、みんな同じ、労働を多く投入すれば短縮できるような期間でない期間が存在するのです。</p> <p>思いきって抽象化すれば、「技術」が存在するというのは、それがモノとモノとの反応過程(化学反応にかぎりません、金槌が釘をたたくのもモノとモノの反応です)で、そこに客観的な自然法則が存在するから。やり方を変えれば反応に必要は時間を変えることはできますが、それは労働を投入したからではありません。コントロールに必要な労働時間は、基本的に技術できまる生産期間に依存するので、逆に労働時間によって生産期間のほうがきまるわけでありません。</p> }} #qanda(10,4) #divregion(期間と時間, lec=10 , qnum=4 ,admin) -1時間の「期間」に一人がはたらけば、労働「時間」は1時間。 -でもn人が同時にはたらけば、1時間の「期間」におこなわれる労働「時間」はn時間。 #qanda_raw{{ <script src="https://unpkg.com/konva@7.0.7/konva.min.js"></script> <div id="time-period" style="font-weight: normal;"></div> <script src="./js/konva/coordinate.js"></script> <script> konvaContainer ={ width:600, height:400, }; const stage = new Konva.Stage({ container: "time-period", width: konvaContainer.width, height: konvaContainer.height, }) /////////// 以下に追加 //// const layer = new Konva.Layer(); //原点を移動 konvaOrigin = { x:100, y:300, } //描画領域にグレーの背景色 layer.add( new Konva.Rect({ x:0,y:0, width:konvaContainer.width, height:konvaContainer.height, fill:"#eee", }) ) const O = new Coordinate(0,0); const x = new Coordinate(400,0); const y = new Coordinate(0,200); // tooltip schelton var tooltipSchema = new Konva.Label({ // x: 170, // y: 75, opacity: 0.75, draggable: true, name: 'tooltip', }); const tagSchema = new Konva.Tag({ fill: 'black', // pointerDirection: 'down', pointerWidth: 10, pointerHeight: 10, lineJoin: 'round', shadowColor: 'black', shadowBlur: 10, shadowOffsetX: 10, shadowOffsetY: 10, shadowOpacity: 0.5, }); const textSchema = new Konva.Text({ fontFamily: 'Calibri', fontSize: 18, padding: 6, fill:"white", }); // [x,y]座標の配列を渡して Coordinate オブジェクトを返す関数 const cd = (arr) =>{return new Coordinate(arr[0],arr[1])}; const equations = []; // equations.push({text:'T = 1 x t', xy:[30,25], pointerDirection:"left"}); // equations.push({text:'T = 4 x t + a', xy:[390,120], pointerDirection:"right"}); // equations.push({text:'T = 0 x t + a', xy:[200,60], pointerDirection:"down"}); // equations.push({text:'時間 T', xy:[y.cx,y.cy+10], pointerDirection:"down"}); // equations.push({text:'期間 t', xy:[x.cx+10,x.cy], pointerDirection:"left"}); // equations.push({text:'T = 1 x t', xy:[30,25], pointerDirection:"left"}); // equations.push({text:'T = 4 x t + a', xy:[390,120], pointerDirection:"right"}); // equations.push({text:'T = 0 x t + a', xy:[200,60], pointerDirection:"down"}); // equations.push({text:'時間 T', xy:[y.cartisian().x,y.cartisian().y+10], pointerDirection:"down"}); // equations.push({text:'期間 t', xy:[x.cartisian().x+10,x.cartisian().y], pointerDirection:"left"}); equations.push({text:'T = 1 x t', xy:new Coordinate(30,25), pointerDirection:"left"}); equations.push({text:'T = 4 x t + a', xy:new Coordinate(390,120), pointerDirection:"right"}); equations.push({text:'T = 0 x t + a', xy:new Coordinate(200,60), pointerDirection:"down"}); equations.push({text:'時間 T', xy:y, pointerDirection:"down"}); equations.push({text:'期間 t', xy:x, pointerDirection:"left"}); // for(let equation of equations){ equations.forEach((equation,key) =>{ var tooltip = tooltipSchema.clone(); tooltip.id = "tooltip"+key; // tooltip.position(cd(equation.xy)); tooltip.position(equation.xy); tooltip.add(tagSchema.clone({pointerDirection:equation.pointerDirection})); tooltip.add(textSchema.clone({text:equation.text})); layer.add(tooltip); // tooptips.push(tooltip); } ); // ここでstage.add しておかないとstage.findがはたらかない。 stage.add(layer); // name class をつかってtooltipの配列をえることができる // id tooltip2 などで find できず。error this.id not undefined ...? const tooptips = []; tooltips = stage.find('.tooltip'); tooltips.forEach((e) =>{ e.on('mouseenter', ()=>{ console.log(e.children[1].fill("red")); console.log(e.children[1].fontSize(18)); layer.draw(); }) e.on('mouseout', ()=>{ console.log(e.children[1].fill("white")); console.log(e.children[1].fontSize(18)); layer.draw(); }) }) layer.add( // x軸 new Konva.Arrow({ //points: points(O,x), points: O.points(x), stroke:'#aaa', fill:'#aaa', }), // y軸 new Konva.Arrow({ //points: points(O,y), points: O.points(y), stroke:'#aaa', fill:'#aaa', }), ) const xday= 20; const ywork=20; const P = O.add(new Coordinate(3 * xday,3 * ywork)); const Q = x.add(new Coordinate(0,9*ywork)); const R = Q.add(new Coordinate(-1* xday, -6*ywork)); const timePeriodPoints =[ O.x,O.y, P.x,P.y, R.x,R.y, Q.x,Q.y ] const timePeriodLine = new Konva.Line({ points: timePeriodPoints, stroke: 'black', }); layer.add(timePeriodLine); layer.draw(); // grid(50); // mark(0,0); ///////// 以上に追加 ///// // add the layer to the stage // stage.add(layer); </script> <script src="./js/konva/2020/time-period.js"></script> }} #enddivregion RIGHT:1 mini #qanda_set_qst(10,5,0){{ <p>問題10-1で、小麦1トンを生産するのに必要な労働時間を t 時間とおき、t に関する等式をたてよ。</p> }} #qanda_solution(10,5){{ <p>■解答■</p> <p>$2t + 64 = 10t$</p> <p>□解説□</p> <p>誤りようがないですが、でも、わざわざこんな式をたてて解いた人は、maybe いないはず。</p> <p>生産と労働は直交する関係にある!と10回注意したうえで、問題10-1の過程を次のように表記することにします。</p> <p style='align:center'>小麦2トン + 労働 64時間 → 小麦 10トン</p> }} #qanda(10,5) **社会的再生産のもとでの労働時間 [#g4f80c87] RIGHT:2 mini #qanda_set_qst(10,6,0){{ <p>次のような社会的再生産を想定する。</p> <p>小麦6kg + 鉄 4kg 労働 6時間 → 小麦20kg</p> <p>小麦8kg + 鉄 4kg 労働 4時間 → 鉄20kg</p> <p>小麦1kgを生産するのに必要な労働時間 t1, 鉄1kgを生産するのに必要な労働時間 t2 を求めよ。</p> <p>計算式も示せ。</p> }} #qanda_solution(10,6){{ <p>■解答■</p> <p>$6t_1 + 4t_2 + 6 = 20t_1$</p> <p>$8t_1 + 4t_2 + 4 = 20t_2$</p> <p>$t_1 = 7/12, t_2 = 13/24$</p> <p>□解説□</p> <p>今度はこんなふうな連立方程で解いたはず。でも、10-1でたぶんやったやり方で解くこともできるはずです。どうやって...</p> }} #qanda(10,6) RIGHT:2 mini #qanda_set_qst(10,7,0){{ <p>次のような社会的再生産を想定する。</p> <p>小麦6kg + 鉄 4kg 労働 6時間 → 小麦20kg</p> <p>小麦8kg + 鉄 4kg 労働 4時間 → 鉄20kg</p> <p>小麦の生産過程をs1倍,鉄の生産過程をs2倍し、小麦10kgだけが純生産物になるようにしたい。このための s1,s2 を求めよ。</p> }} #qanda_solution(10,7){{ <p>■解答■</p> <p>$6s_1+8s_2 = 20s_1 -10$</p> <p>$4s_1+4s_2 = 20s_2$</p> <p>$s_1=5/6,s_2=5/24$</p> }} #qanda(10,7) RIGHT:2 mini #qanda_set_qst(10,8,0){{ <p>小麦10kgだけを純生産物として産出する社会的再生産でおこなわれた労働の総量から、小麦1kgを純生産するのに必要な労働時間を求めよ。</p> }} #qanda_solution(10,8){{ <p>■解答■</p> $$6s_1+4s_2=35/6$$ $$35/6 \div 10 = 7/12$4 <p>□解説□</p> <p>この値は$t_1$に一致します。こっちは、問題10-1で小麦の純生産物から、生産に必要な労働時間を求めたのと同じやり方です。</p> }} #qanda(10,8) RIGHT:2 mini #qanda_set_qst(10,9,0){{ <p>次のような社会的再生産を想定する。</p> <p>小麦6kg + 鉄 4kg 労働 6時間 → 小麦20kg</p> <p>小麦8kg + 鉄 4kg 労働 4時間 → 鉄20kg</p> <p>小麦の生産過程をs1倍,鉄の生産過程をs2倍し、鉄10kgだけが純生産物になるようにしたい。このための s1,s2 を求め、鉄1kgの純生産に必要な労働の総量を求めよ。</p> }} #qanda_solution(10,9){{ <p>■解答■</p> <p>$6s_1+8s2 = 20s_1$ </p> <p>$4s_1+4s2 = 20s_2 -10$</p> <p>$s_1=5/48,s_2=5/84$</p> <p>$(4×5/48+6×5/84) \div 10 = 13/24$</p> <hr width=80% align=center> <p>□解説□</p> <p>生産物が1単位になるように生産過程を標準化して、投入される生産手段のマトリックスを $A$, このときおこなわれる労働量のベクトルを$l$(小文字のエルです), 1単位を生産するに必要な労働量のベクトルを$t$とすると</p> $$At + l = t$$ <p>単位行列をEとすれば</p> $$(E-A)\,t = l$$ $$t =(E-A)^{-1}\,l$$ <p>となるわけです。</p> }} #qanda(10,9) RIGHT:2 mini //#qanda_solution(10,10){{ &color(white,red){ 宿 題 }; 次回のはじめに書き込めるようにします。あらかじめ回答を用意して貼り込めるようにして待機してください。 //}} #qanda_set_qst(10,10,0){{ <p>生産物 $i$ 1単位だけを純生産物とするような生産過程の縮小拡大を実現するベクトルを$s=(s_1,s_2,\cdots,s_n)$ とする。</p> <p>$t =(E-A)^{-1}\, l$ できまる$\,t_i \,$と 内積 $s_i\,l$ が一致することを示せ。 }} #qanda_solution(10,10){{ <p>前問より </p> $$ t =(E-A)^{-1}\, l$$ <p>$s$ をよこベクトルにもつ行列 $S$ とすると</p> $$S(E-A)=E$$ $$S=(E-A)^{-1}$$ $$S\,l = (E-A)^{-1}\, l = t$$ $$s\,l = t$$ }} #qanda(10,10) *まとめ [#rcfa069e] #divregion(違うけれど同じ..., lec=10 , qnum=10 ,admin) -さまざまな生産手段を用いる生産に必要な労働時間は、それぞれの生産手段の生産に必要な労働時間(間接的な労働時間)とその生産で直接おこなわれた労働時間を足す方式で求められる。$t-system$ -同じ労働時間は、さまざまな生産手段を生産する生産過程の規模を縮小拡大し、その生産物だけを純生産物とする社会的再生産を構成することでも求められる。$s-system$ -$s-system$ をみると、それぞれ目的とする生産物に応じてきまる異種の労働が、結果的に他の生産物の生誕の労働の一部になっていることが分かる。 -人間の労働は。ある目的物にむかって合目的的になされるだけで、同時にさまざまな生産物の生産に必要な労働たる属性をもつのである。この意味で、人間の労働は外形はどんなに違ってみえても、原理的に同質なのである。 #enddivregion