#author("2020-12-17T21:52:28+09:00","default:obata","obata") #author("2020-12-17T22:03:50+09:00","default:obata","obata") CENTER:[[前回 ◁ >2020年度/冬学期/第12講]]&color(#447CFF){第 &size(32){13}; 講}; [[▷ 次回>2020年度/冬学期/第14講]] ---- #qanda_setstid(2020-12-17 16:10:00,90) #qanda_who #qanda_points_chart #qanda_points_hist #qanda_mathjax #qanda_set_qst(13,20,0){{ <p>✔ 接続状態をおしえてください。</p> <p>✔ 前回学生証番号を登録した人で、今回、「氏名不詳」になっていた人は「再登録」と書いてください。</p> <p>簡単なlatexで数式が書けるようにした(つもりな)ので、実験してみてださい。</p> }} #qanda(13,20) ----- CENTER:&size(25){&color(yellow,navy){集計問題};}; ---- *今回のトピック [#o85d674f] -生産物が複数あるときの分配率は? -増え方のはかり方は?まず、生産物が一つのケース(あとは次回) *集計問題 [#w945b69d] RIGHT:2 mini #qanda_set_qst(13,1,0){{ <p>生産物が小麦一種類であれば、分配関係はクリアです。</p> <p>労働者がトータル10時間労働で形成した純生産物が、リンゴが10個、ミカンが10個からなっていたとする。</p> <p>労働者がリンゴ7個、ミカン4個を生活物資として受けとった(残りの3個と6個を資本家が手にした)。</p> <p>このとき労働者は、 $$(リンゴ7個+ミカン4個)\div(リンゴ10個+ミカン10個)= 11/20$$ つまり純生産物の55パーセントを受けとった。</p> <p>真か偽か、理由をのべよ。</p> }} #qanda_solution(13,1){{ <p>解答</p> <p>偽</p> <p>リンゴやミカンのようなモノを直接足すことはできないから。</p> <p>リンゴやミカンを共通の量に換算しなくては比較ができないから。</p> }} #qanda(13,1) #qanda_set_qst(13,2,0){{ <p>労働者がトータル10時間労働で形成した純生産物が、リンゴが10個、ミカンが10個からなっていたとする。</p> <p>労働者がリンゴ7個、ミカン4個を生活物資として受けとった(残りの3個と6個を資本家が手にした)。</p> <p>リンゴ1個を生産するの必要な労働時間が1/4時間、ミカン1個のほうは 3/4時間だったとする。</p> <p>このとき、労働者は T = 10時間はたらいて、何時間分の生産物を受けとったことになるか?</p> }} #qanda_solution(13,2){{ <p>解答</p> $$ 7\times 1/4 + 4 \times3/4 = 19/4 時間$$ <p>つまり、はたらいた総労働時間のうち、$19/4 \div 10 = 47.5$ パーセントしか、賃金を通じて取り戻していないことになる。</p> <p>『資本論』の用語法では、$m=1-47.5 = 52.5$ が「剰余価値」、$v= 47.5$が「必要労働時間」、$m/v = 52.5 \div 47.5$ で、「搾取率」は約 110 パーセントとなります。</p> }} #qanda(13,2) RIGHT:2 mini #qanda_set_qst(13,3,0){{ <p>次のような社会的再生産を想定する。</p> <p>小麦10kg + 鉄 3kg 労働 3時間 → 小麦25kg</p> <p>小麦6kg + 鉄 5kg 労働 6時間 → 鉄15kg</p> <p>小麦1kgを生産するのに必要な労働時間 $t_1$, 鉄1kgを生産するのに必要な労働時間 $t_2$ を求めよ。</p> <p>計算式も示せ。</p> }} #qanda_solution(13,3){{ <p>■解答■</p> <p>$10t_1 + 3t_2 + 3 = 25t_1$</p> <p>$6t_1 + 5t_2 + 6 = 15t_2$</p> <p>$t_1 = 4/11, t_2 = 9/11$</p> <p>□解説□</p> <p>数値が違っているだけで問題10-6ですでにやった問題です。復習です。</p> }} #qanda(13,3) #qanda_set_qst(13,4,0){{ <p>次のような社会的再生産を想定する。</p> <p>小麦10kg + 鉄 3kg 労働 3時間 → 小麦25kg</p> <p>小麦6kg + 鉄 5kg 労働 6時間 → 鉄15kg</p> <p>労働者は小麦6kg, 鉄3kgを生活物資として消費し9時間の労働をおこなう。</p> <p>剰余価値率は?計算式も示せ。</p> }} #qanda_solution(13,4){{ <p>■解答■</p> <p>剰余価値率の定義は</p> $$\displaystyle m'= \frac{T-Bt}{Bt} = \frac{T}{Bt}-1$$ <p>$t_1,t_2$は前問でもとめたらから</p> $$\displaystyle \frac{3+6}{(6,3)(\frac{4}{11},\frac{9}{11})} -1 =\frac{16}{17}$$ <p>□解説□</p> <p>煩瑣な数値例になりましたが、これは次回のための布石なのでかんべんしてください。ポイントは</p> <ol> <li>労働量で集計することで、何時間はたらいて何時間取り戻したは明確に規定できること</li> <li>集計につかった$t_1,t_2$が「技術」$\mathcal{P}$だけできまり<span class="tooltip">「分配」$\mathcal{Q}$に左右されないこと<span class="dscp"><span class="text">もし分配率がかわると$t_1,t_2$が変わるとすると、それで計算した分配率がかわり、またそれで計算すると... という面倒なことに...</span></span></span></li> </ol> }} #qanda(13,4) RIGHT:2 mini #qanda_set_qst(13,5,0){{ <p>剰余価値率が上昇するのはどういうときか?</p> }} #qanda_solution(13,5){{ <p>解答</p> <ol> <li>生産技術が進み生産力が上昇して$t$がさがる</li> <li>労働者が同じ生活物資$B$を消費しながらより多くの労働$T$をおこなう</li> <li>労働者の生活物資$B$が減少する</li> </ol> <p>解説</p> <p>剰余価値率の定義式をよくみればわかります。</p> $$\displaystyle m'= \frac{T-Bt}{Bt} = \frac{T}{Bt}-1$$ <p>$T$ と $B$ と $t$ の三つの要因できまるのです。</p> <ul> <li>ポイントは 2 と 3 の関係です。$T$と$B$が相対的に独立であること、これが分配問題のコアです。</li> <li>そしてこのシビアでハードな直接的な分配に手をつけなくても、1 の間接的なやり方がある、ということ、ここに資本主義のウマ味があります。</li> </ul> }} #qanda(13,5) *利潤率 [#b027deb2] #divregion(定義, lec=13 , qnum=5 ,admin) -社会的再生産を構成する生産過程を資本がおこなったとする。 -資本は生産手段と労働力を買い、生産物を売る。 -売買にもいろいろな費用がかかるが、ここでは全部無視。 -生産期間もまちまちだが、これも無視。 -無視、無視、無視... で生産手段と労働力で一定の生産物が生産できる資本を想定 -そのうえで次のように定義する。 +費用 = 生産費 = 生産手段の価額 + 賃金総額 +利潤 = 売上高 - 総生産費 +利潤率 = 利潤 / 生産費 #enddivregion RIGHT:2 mini #qanda_set_qst(13,6,0){{ $$\mathcal{P}\,:\, 小麦10kg + 労働10時間 \longrightarrow 小麦30kg$$ $$\mathcal{Q}\,:\, 小麦12kg を消費して10時間\,労働する$$ <ol> <li>小麦1kgを生産するのに必要な労働時間は(計算式)?</li> <li>労働者が受けとる生活物資の生産に必要な労働時間は(計算式)?</li> </ol> }} #qanda_solution(13,6){{ <p>解答</p> <ul> <li>$\displaystyle 10 時間 \div (30 - 10) kg = \frac{1}{2} 時間/kg$</li> <li>$\displaystyle \frac{1}{2}時間/kg \times 12 kg = 6時間$ </li> </ul> <p>解説</p> <p>12の1と同じです。</p> }} #qanda(13,6) RIGHT:2 mini #qanda_set_qst(13,7,0){{ $$\mathcal{P}\,:\, 小麦10kg + 労働10時間 \longrightarrow 小麦30kg$$ $$\mathcal{Q}\,:\, 小麦12kg を消費して10時間\,労働する$$ <p>小麦$1kg$の価格を$p$円、時給を$w$円とする。これを用いて以下の値を表記せよ。</p> <ol> <li>粗生産物である小麦30kgの生産費用</li> <li>利潤総額</li> <li>利潤率</li> </ol> }} #qanda_solution(13,7){{ <p>解答</p> <ol> <li>$10p + 10w$</li> <li>$30p - (10p + 10w) = 20p -10w$ </li> <li>$\displaystyle \frac{20p -10w}{10p + 10w}$</li> </ol> }} #qanda(13,7) RIGHT:2 mini #qanda_set_qst(13,8,0){{ $$\mathcal{P}\,:\, 小麦10kg + 労働10時間 \longrightarrow 小麦30kg$$ $$\mathcal{Q}\,:\, 小麦12kg を消費して10時間\,労働する$$ <p>$\mathcal{Q}$は、労働者の収入と支出が等しいことを意味する。</p> <p>利潤率$R$の値を求めよ。</p> }} #qanda_solution(13,8){{ <p>解答</p> $$\displaystyle R = \frac{20p -10w}{10p + 10w} = \frac{2p/w -1}{p/w + 1}$$ <p>$\mathcal{Q}:$ なら $Tw = Bp$</p> $$10w = 12p$$ $$p/w = 10/12 = 5/6$$ $$\therefore R = \frac{2\times 5/6 -1}{5/6 + 1} = \frac{4}{11}$$ <p>解説</p> <ul> <li>集計問題がなければ利潤率もすごくシンプルに計算できます。</li> <li>じつはこの問題、価格や時給をつかわなくても、物量でみれば利潤率は一目瞭然!余計な回り道をしましたが、これは生産物のが複数あるときを考えるための布石です。</li> <hr style="align:center;width:400px;"></hr> <li>さてここで、もう一歩ふみこんで考えてみましょう。 $$\displaystyle 利潤率 R = \frac{売上げ - 費用}{費用} $$ $$\displaystyle 費用 \times (1+R) = 売上げ $$ です。 </li> <li>次の二つの式を見くらべてみてください。一つ目は小麦生産における利潤率の決定式です。二つ目はお馴染みの小麦の生産に必要な労働時間を求める式です。 $$(10p+10w)(1+R)=30p$$ $$10t+10=30t$$ </li> <li>一番目の式の両辺を $w$ で割ってみれば、両者の関係はもっとハッキリします。 $$\displaystyle (10\frac{p}{w}+10)(1+R)=30\frac{p}{w}$$ $$10t+10=30t$$ </li> <li>つまり、利潤率 $R$ がゼロのとき、生産に必要な労働時間 $t$ と $p/w$ は等しくなります。 $$\displaystyle R = 0 \,\rightleftarrows \, t = \frac{p}{w}$$ </li> <li>$p/w$ って何?</li> <li>ディメンションを考えてみましょう。$p$ は「円」 $w$ は一時間何円という時給ですから「円/時間」。したがって $p/w$ のディメンジョンは「時間」になります。そう、$p/w$ はなにかの時間なのです。</li> <li>なんの時間でしょうか。ちょっと思いつきにくいのですが、小麦が1kg $p$円で時給が$w$円なのですから、その1kgを買うには何時間労働する必要があるか、というと、$p/w$ 時間。つまり$p/w$は小麦1kgを「買うのに必要な労働時間」です。</li> <li>じゃ、その小麦1kg を生産するのには何時間かかったのか?これが、この前の問題で計算した 「生産に必要な労働時間」$t$ です。</li> <li>これで $p/w$ と $t$ の正体はわかりました。</li> <li>そして、利潤率がゼロなら、二つの労働量、つまり「買うのに必要な労働時間」と「生産するのに必要な労働時間」は等しくなります。逆もいえて、「買うのに必要な労働時間」と「生産するのに必要な労働時間」が等しいと、利潤率はゼロになります。</li> <li>では、利潤率がプラスであるふつうのケース $R>0$ のときは、 $t > p/w$ でしょうか、$t < p/w$ でしょうか?</li> </ul> }} #qanda(13,8) //なにか欲しい商品があって、いま価格が $p$ 円だとします。時給 $w$ 円ではたらいてこの商品を買うには何時間はたらかなくてはならないのか .... $p/w$時間。4万円のジャケットほしいけど、時給1000円のバイトをして買おうと思えば、40時間労働!というお話。 //このジャケットを生産するのに必要な時間は?糸を紡ぎ布におり染色し縫い合わせ...さらにそのための針やハサミも生産し...といういろいろな労働が関わってきますが、その全部を合計して何時間か、という問題です。その総量を計算したのが、あの(連立)方程式の解「生産するのに必要な労働」$t$ だったのです。