#author("2021-01-23T12:00:00+09:00","default:obata","obata")
#author("2021-01-23T12:00:49+09:00","default:obata","obata")
CENTER:[[前回 ◁ >2020年度/冬学期/第8講]]&color(#447CFF){第 &size(32){9}; 講}; [[▷ 次回>2020年度/冬学期/第10講]]
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#qanda_setstid(2020-11-19 16:10:00,90)
#qanda_who
#qanda_points_chart
#qanda_points_hist
#qanda_mathjax

#qanda_set_qst(9,20,0){{
<p>&#x2714; 接続状態をおしえてください。</p>
<p>&#x2714; 前回学生証番号を登録した人で、今回、「氏名不詳」になっていた人は「再登録」と書いてください。</p>
}}
#qanda(9,20)

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CENTER:&size(25){&color(yellow,navy){&nbsp;再生産の基本構造&nbsp;};};
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*今回のネライ [#x1c3ea54]
-無数の資本が互いに連鎖して多種多様な生産物をつくっている複雑な生産全体のすがたをもっとも単純な=純粋なかたちに絞り込む。
-それは二つの基本的な関係になる。
+再生産
+社会的生産
-両者の関係を理解することが今回のネライです。

*前提となる知識 [#f658936e]
RIGHT:2 mini
#qanda_set_qst(9,1,0){{
<p><span class="tooltip">モノ<span class="dscp"><span class="text">もちろん、この講義のおけるカタカナ表記の「モノ」です</span></span></span>の定義を述べよ。</p>
<p>時給1000円で雇われる労働はモノか?理由を述べよ。</p>
}}
#qanda_solution(9,1){{
<p>だれがはかっても同じ結果になる、客観的にはかれる対象をモノという。</p>
<p>この労働は、時間という単位で客観的にはかれるからモノである。ただし、一時間の労働の効果は客観的にはかることはできない。この場合は、効果が売られているのではなく、一時間利用する権利が売られているのである。</p>
}}
#qanda(9,1)
RIGHT:1 mini
#qanda_set_qst(9,2,0){{
技術とはなにか、定義を与えよ。
}}
#qanda_solution(9,2){{
<p>解答</p>
<p>だれがやっても基本的に同じ結果になるとき、技術が存在するという。</p>
<p>解説</p>
<p>人によって結果が異なるとき、そこには熟練の差があるという。</p>
<p>これがこの講義のことばの使い方のお約束でした。</p>
}}
#qanda(9,2)
RIGHT:2 mini
#qanda_set_qst(9,3,0){{
生産とはなにか、定義を与えよ。
}}
#qanda_solution(9,3){{
<p>解答</p>
<p>ある過程でモノがふえることを「生産」という。</p>
<p>解説</p>
<p>逆に減ることを消費という。これもこの講義のお約束です。</p>
<p>当然、この「ふえた・減った」いえるのは、モノだからで、生産も消費もモノに関わる事柄である。</p>
}}
#qanda(9,3)

*再生産 [#p57e64b5]
#divregion(定義,lec=9 ,qnum=3 )
-前提:生産技術の存在(だれがやっても基本的に同じ結果になる客観的なやり方がある。)
-定義1:生産に使われる原材料、機械などを投入(物) input といい、生産でつくりだされるものをまとめて産出(物) output という。
-定義2.0:産出の一部が再び投入されると考えると,帰結から出発点に戻る関係として捉えることができる. 時間の流れのなかで進行する生産を,復帰を伴う循環として捉えたものが再生産である. 教科書 142頁
-定義2.1:産出の一部がその産出を生みだした過程に再投入されることを再生産という。
-時間の流れにそっていえば、左から右に連続的に伸びてゆく過程
$小麦20kg \to $ 小麦30kg \to 小麦45kg \cdots$
&br;
を
#ref(再生産1.png)
のように循環する過程に抽象化して考察する。
-再生産という概念は、人間の経済の持続可能性を考える基礎の基礎になる。
#enddivregion

RIGHT:3 mini
#qanda_set_qst(9,4,0){{
<p>①「再生産とは生産が繰り返されることである」と②「再生産とは産出の一部がその産出を生みだした過程に再投入されることである」とは同じではない。</p>
<p>①ではあるが②ではないケースがあるからである。どのようなケースか、該当する事例をあげよ。</p>
}}
#qanda_solution(9,4){{
<p>解答</p>
-天然資源の採取:たとえば金の採掘。
-とはいえ、これは微妙。たとえば、石炭を掘るのに石炭を使うことはある。
-魚を捕る。天然の果実を採る。
<p>解説</p>
-この後説明する「社会的生産」が一般的であることを考えると、再生産でない生産の存在は実際にはなかなか見つからない。
-ただ、「再生産」ということばに引きずられて、「生産が繰り返されること」という程度で広くぼかして使うことは避けよう。
-$output  \to return input $ が決定的。古典派経済学、マルクス経済学のコアです。ミクロ経済学の需要供給均衡論では失われる見方です。
}}
#qanda(9,4)

*粗生産物・純生産物 [#k2f1360a]
#divregion(定義, lec=9 , qnum=3 ,admin)
-産出が投入を上まわる自然過程を「生産的」であるという.
-このとき,投入され たモノを生産手段といい,産出の総量を「粗生産物」,粗生産物から投入を引きさった残りを「純生産物」という.
-再生産が持続するには、純生産物がマイナスにならない生産技術の存在が前提となる。
#enddivregion
RIGHT:1 mini
#qanda_set_qst(9,5,0){{
<p>100キロの小麦のタネをまいて300キロの収穫があった。</p>
<p>純生産物は?</p>
}}
#qanda_solution(9,5){{
<p>解答</p>
<p>300-100=200キロ</p>
<p>解説</p>
<p>小麦のタネは一粒が何百粒にもなるので、この例はヘンなのですが...</p>
}}
#qanda(9,5)


*社会的生産 [#j8bc88a2]
RIGHT:5 mini
#qanda_set_qst(9,6,0){{
<p>①サプライチェーンを考えてみる。自動車の生産に必要な材料、その部品生産に必要な材料、さらにその材料の生産に必要な材料 ... というようにさかのぼってゆくと、無限の材料を生産をする無限の産業が必要になりそうだ。②しかし、世の中、そんな無限の産業があるはずがない。</p>
<p>①の説明のどこがおかしいのだろうか。</p>
}}
#qanda_solution(9,6){{
<p>解答</p>
<p>各材料の材料が、それだけに使われると考えるからどんどんふえてしまう。</p>
<p>A Aの子、Aの孫、Aのひ孫 .... というように、単一の系列でサプライチェーンが構成されているわけではないから。</p>
<p>Aの子は、同時に Bの子、Cの子、... であり、Aの孫も同様にBの孫、Cの孫、... でもあるから、さかのぼると企業の数がうなぎ登りに増えるわけではない。</p>
<p>A Aの子、Aの孫、Aのひ孫 .... とさかのぼってゆくと、やがて、Aが、Aのひ孫.... のひ孫という関係でもどってきてしまう関係があるから。</p>
<p>解説</p>
<ul>
  <li>世の中、ある限りの産業の数が n 種類だとして、n × n のマス目をつくってみよう。</li>
  <li>1行目には、第1の生産物の原料になる産業であればゼロでない量、そうでなければゼロが記入されている。</li>
  <li>2行目には .... と、以下同様となり、n行にはn番目の産業の原料がならんでいる。</li>
  <li>どの産業も、他の産業の生産物を直接間接に材料にする複雑な依存関係にある。サプライチェーンは、目につく部分を取りだしだけ。</li>
  <li>この相互依存関係を考えるには、馬鹿正直に、n x n の組み合わせを、一般的に考えてもよいが、それには行列の数学をやる必要があり、メンドー。</li>
  <li>でも、n x n の依存関係をもっとシンプルに考える手もある。つまり、n x n を 2 x 2 に「抽象化」してしまう手だ。
</ul>
}}
#qanda(9,6)


#divregion(サプライチェーン, lec=9, qnum=6 ,admin)
-左側の複数の材料をつかって右側の生産物をつくる。
-生産物の一部は材料になる。
-材料の種類は、もっともっと多いが、
-$output \to input$ の連鎖をたどると、繰り返し同じ材料がでてくる。
-問題9-4 のように $output \to input \to \cdots$ とどんどん未知の材料がでてくるわけではない。

#qanda_konva(width=800,height=800){{
  const layer = new Konva.Layer();

  const boxSize = 30;//箱のサイズ
  const boxSep = 10;//箱の間隔
  const boxStartPoint ={x:150,y:150};
  const productsNumber = 10; //生産物、産業の数
  const colorInc = Math.floor(360/productsNumber); //産業の色

  let sl = ''; // hsl の sl
  for(i=0; i< productsNumber; i++){
    for(j=0; j< productsNumber; j++){
      // 原材料の箱を1/3 の確率でfillする
      Math.random() < 0.33 ? sl='100%,50%' : sl='0%,100%';
      // 原材料の箱
      const rect = new Konva.Rect({
        x: boxStartPoint.x + (boxSize + boxSep) * j,
        y: boxStartPoint.y + (boxSize + boxSep) * i,
        width: boxSize,
        height: boxSize,
        stroke: 'hsl(' + colorInc * j + ',0%,40%)',
        fill: 'hsl(' + colorInc * j + ',' + sl + ')',
        draggable: true,
      });
      layer.add(rect);
    }
    // →
    const arrow = new Konva.Arrow({
      x: boxStartPoint.x + (boxSize + boxSep) * j,
      y: boxStartPoint.y + (boxSize + boxSep) * i + boxSize * 0.5,
      points:[boxSep,0,boxSize*2,0],
      stroke:'hsl(0,0%,40%)',
      fill:'hsl(0,20%,40%)',
    })
    layer.add(arrow);
    // 生産物の箱
    const rect = new Konva.Rect({
      x: boxStartPoint.x + (boxSize + boxSep) * j + boxSep + boxSize*2 + boxSep,
      y: boxStartPoint.y + (boxSize + boxSep) * i,
      width: boxSize,
      height: boxSize,
      stroke: 'hsl(' + colorInc *j + ',0%,40%)',
      fill: 'hsl(' + colorInc *i + ',100%,50%)',
      draggable: true,
    });
    layer.add(rect);
  }
  // add the layer to the stage
  stage.add(layer);
}}

#enddivregion

RIGHT:3 mini
#qanda_set_qst(9,7,0){{
<p> n x n で成りたつことが 2 x 2 で成りたたないことはない。n x n で分かることは、2 x 2 ですべて分かる。</p>
<p>真か偽か、理由を述べよ。</p>
}}
#qanda_solution(9,7){{
<p>解答</p>
<ul>
  <li>真</li>
  <li> nは任意の数だから2を含む。n x n で成りたつことは、当然2 x 2 で成りたつ。</li>
</ul>
<p>解説</p>
<ul><li>ただ逆に2 x 2 だと成りたつが、n x n で成りたたないことはあるから、あまり 2 x 2 で分かったことを一般化しない方がよいのはたしか。</li>
  <li>ということで、教科書は n x n の世界を 2 x 2 の世界から想像するように勧めています。</li>
</ul>
}}
#qanda(9,7)

#divregion(定義, lec=9 , qnum=7 ,admin)
-定義:複数の生産物が、他の生産物を投入物とすることで結びつき連鎖した生産を社会的生産という。
-「社会的」というのは、ただ単に、複数の生産過程がある、という意味ではなく、産出物を投入物とするかたちで、間接的に、そして相互に依存しているという意味である。
-小麦の生産系列、鉄の生産系列、.... といった独立の生産系列が複数併存していても社会的生産にはならない。
-小麦が鉄の、鉄が小麦の原料になるかたちで、相互に依存しているという条件が「社会的」というには必須である。
#ref(社会的生産2.png)
#ref(社会的生産1.png)
#enddivregion

#divregion(二人の世界, lec=9 , qnum=7 ,admin)
#qanda_raw{{
    <p style="margin-left:6em;font-size:120%;">生産物の数を<span class='num' id="ten">10</span>,から
    <span class='num' id="nine">9</span>,
    <span class='num' id="eight">8</span>,
    <span class='num' id="seven">7</span>,
    <span class='num' id="six">6</span>,
    <span class='num' id="five">5</span>,
    <span class='num' id="four">4</span>,
    <span class='num' id="three">3</span>,
    <span class='num' id="two">2</span>
    へと抽象化してゆく。
  </p>
    <div id="social_reproduction"></div>
    <script src="https://unpkg.com/konva@7.0.7/konva.min.js"></script>
    <script src="./js/konva/coordinate.js"></script>
    <script src="./js/konva/default.js"></script>
    <script src="./js/konva/2020/social-reproduction.js"></script>
}}
#enddivregion

*社会的再生産 [#f27f0754]
#divregion(図解, lec=9 , qnum=7 ,admin)
-「社会的」の意味は、次のような「相互依存性」
--小麦の生産には鉄が必要であり
--鉄の生産には小麦が必要である。

#qanda_raw{{
<iframe scrolling="no" title="" src="https://www.geogebra.org/material/iframe/id/e9TFm1JP/width/1164/height/653/border/888888/sfsb/true/smb/false/stb/false/stbh/false/ai/false/asb/false/sri/false/rc/false/ld/false/sdz/false/ctl/false" width="1164px" height="653px" style="border:0px;"> </iframe>
}}
#enddivregion

*まとめ [#y1f5f000]
#divregion(まとめ, lec=9 , qnum=7 ,admin)
-現実の生産は、多数の資本が原材料を通じて、直接間接に、相互に結びついている複雑な全体である。
-しかし、それは基本的に二つの原理に還元でされる。すなわち
--再生産
--社会的生産
&br;
の二つの要因である。
-その基本原理は、二つの生産物が相互に原料となる簡単な構造で捉えることができる。
#enddivregion

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