#author("2020-08-09T14:35:46+09:00","default:obata","obata") #author("2020-08-15T02:02:10+09:00","default:obata","obata") CENTER:[[前回 ◁ >2020年度/夏学期/第13講]]&color(#447CFF){第 &size(32){14}; 講}; ---- #qanda_mathjax #qanda_setstid(2020-08-09 14:14:00,90) #qanda_who #qanda_points_chart #qanda_points_hist ✔ REC &color(red){ON}; ? #qanda_set_qst(14,20,0){{ <p>✔接続状態をおしえてください。</p> <p>✔なお、前回学生証番号を登録した人で、今回「氏名不詳」になってしまった人は「再登録」と書いてください。</p> }} #qanda(14,20) #qanda_solution(14,20){{ 夏学期 最後の講義になります。 }} ----- CENTER:&size(25){&color(yellow,navy){ 補足:外国為替と物価};}; ---- **外国為替と物価 [#q3d462ba] -外国為替は、異なる通貨の''交換''レート(この講義で厳密に定義した「売買」ではありません)。 -ドル円(1ドル105円)のような比率(レート)。円ドルなら1円$\displaystyle\frac{1}{105}$ドル。 #qanda_set_qst(14,1,0){{ <p>もう一度、三つの地域で異なる価格体系が成立している例でにもどって考えてみよう</p> <dl> <dt>イギリスの価格体系</dt> <dd> \begin{equation} \begin{aligned} 砂糖1ポンド & = £ 4 \\ 綿布1ヤール & = £ 1 \\ \cdots & = \cdots \end{aligned} \end{equation} </dd> <dt>アンティール諸島の価格体系</dt> <dd> \begin{equation} \begin{aligned} 砂糖1ポンド & = \$ 2 \\ 奴隷1人 & = \$ 100 \\ \cdots & = \cdots \end{aligned} \end{equation} </dd> <dt>西アフリカの価格体系</dt> <dd> \begin{equation} \begin{aligned} 綿布1ヤール & = 1\,bal \\ 奴隷1人 & = 100\,bal \\ \cdots & = \cdots \end{aligned} \end{equation} </dd> </dl> <p>輸出輸入で利益がでないとする。このとき、外国為替(があったとして)$bal$, $\$ $は何£になるか。</p> <p>£ は P, $bal$ は B, $\$ $ は D と表記してかまいません。</p> }} RIGHT:2 min #qanda_solution(14,1){{ <p><font color="#008000">解答:</font></p> <p>$$ 1bal = £ 1$$ </p> <p>$$ \$ 1 =£ 2 $$</p> <p><font color="#008000">解説:</font></p> <div style="font-size:14px"> <p>質問のとおりに答えれば、うえの正解のようになるが</p> <p>自国通貨£がいくらになるか(円が何ドルになるかという円ドル型の表示)でいれば、 <p>$$£ 1 =1 bal$$ </p> <p>$$£ 1 =\$ 1/2$$</p> <br/> <p>イギリスと西アフリカの貿易品は綿布のみ。</p> <p>綿布1ヤール が イギリスで$£ 1$ で買える(売れる)、また、西アフリカで $1 bal$で売れる(買える)</p> <p>だから、$$£ 1 =1 bal$$ならイギリスで買い(売い)西アフリカで売い(買い)して</p> <p>輸出(輸入)代金を為替で取り立て自国通貨に変換しても利益はでない。</p> <p>逆にこの比率からズレていれば、綿布の輸入輸出でもうかる。</p> <p>輸入輸出で得られた $£ や bal$ を $£ \to bal\,(bal \to £)$ に交換する需要と供給で 交換レートは $£ 1 =1 bal$に引きつけられる。</p> <p>これと同様にして、イギリスとアンティール諸島では、砂糖1ポンドが $£4$と $2ドル$なのだから</p> <p>$$£ 1 =\$ \frac{1}{2}$$</p> <p>これがもっとも単純化した、貿易による為替レートの決定原理になります。</p> <p>でも、<span style="font-weight:bold;font-size:140%;color:#000077">現実</span>はこんなに単純じゃない... って、それはモチのロン。</p> <p>あくまでも、この講義で強調してきた<span style="font-weight:bold;font-size:140%;color:#000077">原理</span>の話です。</p> </div> }} #qanda(14,1) #qanda_scorechart(14,1) #qanda_set_qst(14,2,0){{ <p>問題14-1 の続き。</p> <p>£-bal £-ドルの為替レートが成立すると三角貿易の利益はなくなる。</p> <p>真か偽か。判断の根拠を述べよ。</p> }} RIGHT:4 min #qanda_solution(14,2){{ $\def\pounds{ {\it\unicode{xA3} } }$ <p><font color="#008000">解答:</font></p> <div style="font-size:14px"> <p>偽</p> <ol> <li>三角貿易の利益は、綿布:奴隷、奴隷:砂糖、砂糖:綿布の交換レートの不整合による。</li> <li>イギリスにおける $\pounds 1 =1 bal, \pounds 1 =\$ 1/2$ の為替レートは、この交換レートに影響を与えない。</li> <li>ゆえに、為替レートがどうきまっても、三角貿易の利益はなくならない。</li> </ol> </div> <p><font color="#008000">解説:</font></p> <div style="font-size:14px"> <p>$\pounds/bal$ レートと $\pounds/\$ $ レートから計算すると</p> <p style="padding:4px"> $$\frac{\$}{bal} =\frac{£}{ bal} \times \frac{\$}{£} = 1\times \frac{1}{2} =\frac{1}{2} $$</p> <p>つまり イギリスでは、$1 bal$ で $\$2ドル$が手に入る。</p> <p>ところで、西アフリカとアンティール諸島で奴隷を売買しても利益が出ない為替レートが成立していたとすると、$奴隷1人 = 100 bal = \$100$ なので $1bal=\$1$ になるはず。</p> <p>もし、西アフリカとアンティール諸島の間で、$1bal=\$1$ の為替レートが成りたっているなら、ロンドンで $\pounds 1 \to 1 bal$ にして、西アフリカか $1bal \to \$1$ にして、ロンドンで $\$1 \to \pounds 2$ にできる。 <p>つまり、綿布、奴隷、砂糖間の実物の交換レートを反映して$\pounds, bal, \$$ 間の為替レートが成立すれば、為替取引でも利益がでる。</p> <p>したがって、もし、たとえばロンドンできまる $1 bal \rightleftarrows \$2ドル$ というレートに一致するように、西アフリカないしアンティール諸島の奴隷価格が変われば(eg. $奴隷1人=100bal \to 奴隷1人=200bal$)、三角貿易の利益は消える。<p> <hr style="width:300px; height:3px; background-color:#aadddd;"> <p>三角貿易という、昔々のお話、しかも奴隷貿易という馴染みのないものが登場する例だったので、あまりピンとこなかったかもしれません。しかし、国際間、あるいは地域間の取引というのはずっと存在してきたことです。特定の名詞を外し思い切り<span style="font-weight:bold;font-size:140%;color:#000077">抽象化</span>して考えれば、同じ<span style="font-weight:bold;font-size:140%;color:#000077">原理</span>が貫いているわけです。</p> <p>為替のように通信技術が発達すると、取引に時間がかからなくなるものとことなり、地域間、国家間の、さまざまな商品の価格の間には、単一の世界市場があって、そこですべての価格が一元的に決まるわけではありません。</p> <hr style="width:300px; height:3px; background-color:#aadddd;"> <p>転売でマージンをつくりだす方法として、ふつうに考えられているのは、同じ商品を安く買って高く売る、直接型のマージン形成です。</p> <p>しかし、これは別に、価格体系の間の不整合をみつけて、現地では等価交換をしながら、マージンをつくりだす、間接型があるワケです。</p> <p>たいていの教科書は、資本は G---W---G' でマージンを稼ぐ、と書いてあります。つまり、同じものが100円で買えて120円で売れるという、一物一価に反する現象を想定しているわけです。</p> <p>...で、これはやっぱりムリだよネ、といって、G---W---G' はすぐに産業資本 G---W ... P ... W' ---G' にならざるをえないんだ、と説明しています。</p> <p>間接型なら、一物一価に反せず、直接型と違って長続きする、といっているのでは、モチロンありません。</p> <p>間接型も全部まとめてみれば、不等価交換によってマージンを得ているわけで、不等価交換には持続性がない、という命題を認めるかぎり、同様に、商人資本は長続きしない、産業資本だけが自立した資本だ、という通説(俗説)で、ハイ終わり。</p> <p>ただ、この講義の教科書は、いろんなところで標準とズレていますが、ここもある意味、そうで、個々にみれば、市場は不等価交換のチャンスを本質としてしている、という市場観になっています。全体をみればムリ、個々をみればチャンスあり、...で、この先は水掛け論になります。</p> </div> }} #qanda(14,2) #qanda_scorechart(14,2) #qanda_set_qst(14,3,0){{ $\def\pounds{ {\it\unicode{xA3} } }$ <p>綿布が輸出され砂糖が輸入された結果、価格体系が次のように変わった。</p> <dl> <dt>昨年のイギリスの価格体系</dt> <dd> \begin{equation} \begin{aligned} 砂糖1ポンド & = £ 4 \\ 綿布1ヤール & = £ 1 \\ \end{aligned} \end{equation} </dd> <dt>今年のイギリスの価格体系</dt> <dd> \begin{equation} \begin{aligned} 砂糖1ポンド & = £ 3 \\ 綿布1ヤール & = £ 2 \\ \end{aligned} \end{equation} </dd> </dl> <p>このとき</p> $$\frac{\pounds4+\pounds1}{2}=\frac{\pounds3+\pounds2}{2}=\pounds2.5$$ <p>だから、イギリスの物価は去年と今年で変わっていない。</p> <p>真か偽か。判断の根拠を述べよ。</p> }} RIGHT:2 min #qanda_solution(14,3){{ <p><font color="#008000">解答:</font></p> <div style="font-size:14px"> <p>偽なり。物価は単純平均に非ず。</p> <br /> <p><font color="#008000">解説:</font></p> <p>物価というのは英語でいえば prices</p> <p>価格ベクトル$$p = (4,1)$$ と$$p' = (3,2)$$ の「大きさ」を比べようというわけ。</p> </div> }} #qanda(14,3) #qanda_scorechart(14,3) #qanda_set_qst(14,4,0){{ <ul> <li>昨年の価格体系:$(£4,£1)$</li> <li>今年の価格体系:$(£3,£2)$</li> </ul> <ul> <li>昨年の価格体系による取引量:$(4 億ポンド,6 億ヤール)$</li> <li>今年の価格体系による取引量:$(5 億ポンド,4 億ヤール)$</li> </ul> <p>今年の取引金額は、昨年の何倍か?</p> }} #qanda(14,4) #qanda_solution(14,4){{ <p style="padding:4px">$$\frac{(3,2)(5,4)}{(4,1)(4,6)}=\frac{15+8}{16+6}=\frac{23}{22}$$</p> }} RIGHT:2 min #qanda_scorechart(14,4) #qanda_set_qst(14,5,0){{ <p>問題14-3の続き</p> <p>物価の変化は、同じ数量を買うのに必要な金額を比べればわかる。</p> <p>昨年と同じ取引数量を買うと、今年は何倍の金額になるか?</p> <ul> <li>昨年の価格体系:$(£4,£1)$</li> <li>今年の価格体系:$(£3,£2)$</li> </ul> <ul> <li>昨年の価格体系による取引量:$(4 億ポンド,6 億ヤール)$</li> <li>今年の価格体系による取引量:$(5 億ポンド,4 億ヤール)$</li> </ul> }} #qanda(14,5) #qanda_solution(14,5){{ <p style="padding:4px">$$\frac{(3,2)(4,6)}{(4,1)(4,6)}=\frac{12+12}{16+6}=\frac{24}{22}=\frac{12}{11}$$</p> }} #qanda_scorechart(14,5) #qanda_set_qst(14,6,0){{ <p>問題14-3の続き</p> <p>今年と同じ数量を昨年買ったとしたら必要な金額をもとにすると、今年の取引金額は去年の何倍になるか?</p> <ul> <li>昨年の価格体系:$(£4,£1)$</li> <li>今年の価格体系:$(£3,£2)$</li> </ul> <ul> <li>昨年の価格体系による取引量:$(4 億ポンド,6 億ヤール)$</li> <li>今年の価格体系による取引量:$(5 億ポンド,4 億ヤール)$</li> </ul> }} RIGHT:2 min #qanda(14,6) #qanda_solution(14,6){{ <p style="padding:4px">$$\frac{(3,2)(5,4)}{(4,1)(5,4)}=\frac{15+8}{20+4}=\frac{23}{24}$$</p> }} #qanda_scorechart(14,6) #qanda_set_qst(14,7,0){{ <p>物価が上がったか下がったかは、個々の商品価格を正確に把握すればわかる。</p> <p>真か偽か。根拠を述べよ。</p> }} RIGHT:2 min #qanda(14,7) #qanda_solution(14,7){{ <p>偽</p> <p>物価は価格ベクトルの比較。共通の物量ベクトルでスカラー化しなければ比較できる。</p> <p>しかし、スカラー化に必要な物量ベクトルは一義的に定義できないから。</p> }} #qanda_scorechart(14,7)