#author("2021-12-25T21:23:53+09:00","default:obata","obata")
#author("2021-12-25T21:26:53+09:00","default:obata","obata")
CENTER:[[前回 ◁ >2021年度/冬学期/第7講]]&color(#447CFF){第 &size(32){8}; 講}; [[▷ 次回>2021年度/冬学期/第9講]]
#katex
#qanda_setstid(2021-12-09 16:10:00, 90)
#qanda_who
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✔RECONチェック&br;
✅接続チェック

//-11月25日の講義では、いったん全員に学生証番号をいれて登録しなおしてもらいます。
//-やり方を大きく変えたので、もしかしたらという.....一抹の不安もありますが、教育で大事なのは、失敗をおそれず、何事も新しいことにチャレンジすることです。

#qanda_set_qst(8,20,0){{
<p>&#x2714;接続状態をおしえてください。</p>

<p>&#x2714;プログラミングをしたことがありますか。多少とも知っているコンピュータ言語があれば教えてください。</p>
}}
#qanda(8,20)

#qanda_set_qst(8,21,0){{
<p>どんな仕掛けで回答できる人を識別しているのか、推測してみてください。</p>
}}
#qanda(8,21)

#qanda_set_qst(8,22,0){{
<p>前回 11月18日の講義の回答数、正答するが予想したより少なかったのですが、みなさんの側からみて、原因は何でしょうか?</p>
<p>計算に時間がかかった、とか、そもそも「生産に必要な労働時間」というのがないか、概念がわからなかったとか.....</p>
}}
#qanda(8,22)
-------
-&color(red){12月2日の講義はここからはじめます。};
------
#qanda_set_qst(8,10,0){{
<p>前回 11月25日のまとめの復習問題です。</p>
<hr/>
<p>次の文のA,B,Cにはいる適当な用語を、次の用語群のなかから選べ。</p>
<p>用語:画像 表現 実現 判断 検索 データ 情報 シンボル 原因 手段 目的 結果</p>
<hr/>
<ul>
  <li>
    コンピュータで方程式の「数値解を求める」方法は、私たちがふだん方程式を「解く」方法とはだいぶ違う。
  </li>
  <li>
    私たちは、まだわからない値を x,y などの(A)で表した等式を、論理的に首尾一貫した規則にしたがって変形し、「簡単な」かたちにしてゆくことで、「最終的に」 x=,y= という解をえる(「解けない」場合はその理由を知る)。この「簡単な」とか「最終的に」とかというのは、(B)に即して人間が(C)することである。要するに(B)意識的に抽象的な(A)を操作する能力があるから、人間は方程式を「解く」ことができるである。
  </li>
  <li>
    これに対してコンピュータで「数値解を求める」場合には、一定の規則で数値を入れてゆき、等式が誤差の範囲に収まる値を探しだす方法がとられる。この場合も、どういう規則で数値を入れるか、収まったかどうかをどう(C)するのか、などはプログラムを書いてしてその手順を指定する必要がある。
  </li>
  <li>
    このプログラムは、「未知数」とは違うが、さまざまな値を入れることができる「変数」 x,y などをやはり(A)として使って書く必要がある。コンピュータはプログラムにしたがって一定の動作を繰り返すが、シンボルを操作するためのプログラムは、(B)を意識し、その(B)に向けて(A)を操作できる人間が書く必要があるのである
  </li>
  <li>
    たしかに、数式の変形のような(A)の操作をするプログラムを書けば、ある範囲でコンピュータに(A)を操作させることはできる。しかし、このためのプログラム自体はやはり人間が書かなくてはならないのである。
  </li>
  <li>
    このプログラムを書くという行為は、はじめから終わりまで、すべて一人でやらなくてはならないわけではない。それは、他人の書いたプログラムを利用するというかたちで、社会的再生産の構造として示したのと同じような、複雑な連鎖を構成することになる。そして、私たちがマウスを操作したり、入力画面に書き込んで送信ボタンを押したりしている行為も、ふだん意識することはないだろうが、やはりコンピュータにはできない(A)の操作であり、広い意味でのプログラムを書く流れの一端を担っているのである。
  </li>
  <li>
    私たちが方程式を「解く」ことと、コンピュータで「数値解を探す」こととの間にひそむ、この深い溝を意識することは、(B)意識的な活動としての人間の労働がコンピュータの発達のなかでどのように変わってゆくのかを考えるうえで重要なヒントとなる。
  </li>
</ul>

}}
#qanda(8,10)
#qanda_solution(8,10){{
  <h4>解答</h4>
  <p>(A)シンボル (B)目的 (C)判断</p>
}}

-----
CENTER:&size(25){&color(yellow,navy){&nbsp; 純生産物の分配 &nbsp;};};
-----
//-11月18日の講義は、このホームページの[[第7講>2021年度/冬学期/第7講]]のところからはじめます。

**労働力の維持 [#m2b4d8fb]
***今回のネライ [#rcc829a3]
-生産に必要な労働時間を基準にして、純生産物の分割(所得の分配)の原理について考える。

***生活物資 [#b74dc3f4]
-労働する能力すなわち労働力は、労働する人々が生産物を消費し生活することで、''維持''される。
-生活するには一定の生産物が必要となる。この生産物を「生活物資」とよぶ。
-ここでは、たとえば一国規模の経済全体を考えている。1億2000万あまりの人々がおり、そのたとえば半分、6000万人が生産に従事しているとする。
-8時間労働で週5日、年間50週はたらくとすると、一人あたりの年間労働時間2000時間。時給1000円なら年収200万円となる。
-6000万人の総労働時間は、2000時間*6000万人で 12000億時間で、総所得は120兆円となる。
-この収入によって生活物資を獲得して、1億2000万人が生活しているという想定。
-実際には時給に当たる部分はこの倍 2000円くらいになると考えられる。そうすると、総所得は240兆円。
-純生産物にあたる国民所得は500兆くらいだが、このうち100兆くらいは機械設備など過去の支出の移転で、ここで考えている純生産物に相当する[[総所得は400兆円くらい>https://www.soumu.go.jp/main_content/000666674.pdf]]ということになる。(表1-1参照)
-このような大きな規模の経済をギュッと圧縮して、その基本的な関係を、生産物は小麦と鉄の2種類、総労働時間は6+12=18時間で考えようというわけである。
-ここで、社会的再生産
\begin{equation}\begin{cases}
(小麦8kg,鉄12kg) + 労働6時間 &\to& 小麦36kg\\
(小麦16kg,鉄4kg) +労働12時間 &\to& 鉄24kg
\end{cases}\end{equation}
に生活物資の量が小麦、鉄のベクトルで  $(3,6)$ である、という仮定を追加する。
\begin{equation} (小麦 3kg, 鉄6kg) \to 生活 \to 18時間の労働 \end{equation}


***生活過程 [#b577fb7b]
-労働する人々の生活は、生活を共にする人々との協力のもとで、''社会的に''営まれる。この営みを「生活過程」とよぶ。
-個々の労働者が自分の労働で得た生活物資を一人で消費して孤独な生活を送っているわけではないことに注意しよう。こうした孤立した労働者のイメージが経済学では定着しているが。
-ましてや、生活物資(いまの説例では小麦と鉄からなる $(3,6)$ )を原料としてインプットすることで、「労働力という生産物がアウトプットされる」などと考えてはならない。
-労働力は生産物ではない。"労働力を「生産」「再生産」する"という表記はここではしない。
-なぜなら、モノの「生産過程」を特徴づける''技術''という概念が「生活過程」には適用できないから。労働力は生活過程を通じて''結果的に維持''されるのである。
-生活物資の量を増やすと、それに比例して、労働量が増大する、ということはない(これは経済学のお伽噺)。生活物資の量と、総労働時間は、相対的に独立した関係にある。


**分配 [#e2b51aa3]
***純生産物の分割 [#w97d86c2]
-生活物資の分量の決定は、純生産物の''分配''の問題である。
\begin{equation}\begin{cases}
粗生産物 & = 生産手段+純生産物 & \gets 技術の問題\\
純生産物 & =  生活物資+剰余生産物 & \gets 分配の問題
\end{cases}\end{equation}
-「あまり」「残り」「残余」は二種類、2回にわけて計算される。
\begin{equation}\begin{cases}
純生産物 & = 粗生産物 - 生産手段 & \gets 生産手段を補填した残り\\
剰余生産物 & =  純生産物 - 生活物資 & \gets 生活物資を取得した残り
\end{cases}\end{equation}
-残余の存在を認める経済学と認めない経済学がある。

***分配の率をはかる [#c8512ea4]
-この分配の率をはかる方法を考えてみよう。
-純生産物$ (12,8) $ と 剰余生産物  $(12,8)-(3,6) =(9,2)$ の比率は?
-ベクトルをどう比較するか、 これが「集計問題」
-なんでもすぐに「価格で」というのは通俗経済学の悪いクセ。その価格がどう決まるのか?どういうタイプの価格なのか?が未解決。

***補填と取得 [#da841b78]
#divregion(補填と取得の図解,admin,lec=7,qnum=2)
-社会的再生産のなかで、生産手段と生活物資は根本的に&qanda_tooltip(違う原理){技術があるかないか};で処理される。
-そこで次のように用語を区別する。
--生産手段は補填される
--生活物資は取得される

#ref(補填と取得.pdf)
#qanda_raw{{
    <script src="https://unpkg.com/konva@7.0.7/konva.min.js"></script>
    <div id="surplus-value"></div>
    <script src="./js/konva/coordinate.js"></script>
    <script src="./js/konva/default.js"></script>
    <script src="./js/konva/2021/surplus-value.js"></script>
}}
#enddivregion

***生活物資の生産に必要な労働時間 [#oe1aeebb]
#qanda_set_qst(8,1,0){{
  \begin{equation}\begin{cases}
  (8,12) + 6 &\to& 36\\
  (16,4) +12 &\to& 24
  \end{cases}\end{equation}
  <p>小麦1kgを生産するのに、<strong>直接・間接に</strong>必要な労働時間を$ t_1 $、鉄1kgのそれを$ t_2 $とする。ベクトル$ (t_1,t_2) $を用いて、この社会的再生産における純生産物全体を生産するのに直接間接に必要な労働時間を表し、何時間になるか、値も求めよ。</p>
}}
#qanda(8,1)
#qanda_solution(8,1){{
  <h4>解答</h4>
  \begin{equation}
    ( t_1,t_2 )(12,8) = (33/46,27/23)(12,8) = 18
  \end{equation}
  <h4>解説</h4>
  <p>「純生産物=粗生産物 - 生産手段」だから</p>
  \begin{equation}
    (36,24) - (8,12) - (16,4) = (12,8)
  \end{equation}
  <p>このように計算してもよいが....</p>
  \begin{equation}\begin{cases}
  8t_1 + 12t_2  + 6 &=& 36t_1\\
  16t_1 + 4t_2 + 12 &=& 24t_2
  \end{cases}\end{equation}
  <p>二つの方程式を足して整理すると</p>
  \begin{equation}
    6 + 12 = (36-8-12)t_1 + (24-12-4)t_2
  \end{equation}
  <p>この問題に答えるには、実はわざわざ$( t_1,t_2 )$を求める必要はなかったのだ。</p>
}}

#qanda_set_qst(8,2,0){{
<p>ベクトル$( t_1,t_2 )$を用いて、労働者の生活物資を生産するのに必要な労働時間を表せ。値は計算しなくてよい。</p>
}}
#qanda(8,2)
#qanda_solution(8,2){{
  <h4>解答</h4>
  \begin{equation}
    ( t_1,t_2 )(3,6)
  \end{equation}
  <h4>解説</h4>
  <p>値を計算すると</p>
  \begin{equation}
    ( t_1,t_2 )(3,6) = (33/46,27/23)(3,6) = 423/46 \fallingdotseq 9.20
  \end{equation}
}}

***二重のあまり:純生産物と剰余生産物 [#scc01efe]
#qanda_set_qst(8,3,0){{
<p>問題 8-3,8-4で計算した二つの値(18時間と9.2時間)の差は何を意味しているか。次の式を文章で表記してみよ。</p>
\begin{equation}
  ( t_1,t_2 )(12,8) - ( t_1,t_2 )(3,6) \fallingdotseq  18 - 9.2 = 8.8 時間
\end{equation}
}}
#qanda(8,3)
#qanda_solution(8,3){{
  <h4>解答</h4>
  <p>はたらく人々は、全体として、18時間労働し、生産物のかたちで9.2時間、取り戻した。</p>
  <p>はたらく人々は、全体として、9.2で生産できる生活物資を手に入れるために、18時間、労働した。</p>
  <p>はたらく人々は、8.8 時間だけ、はたらかない誰かのために、労働している(搾取された)。</p>
  <h4>解説</h4>
  <p>生活物資の生産のために必要な労働時間を「必要労働時間」とよび、これをこえる労働時間を「剰余労働時間」とよぶ。</p>
  <p>剰余労働時間÷必要労働時間を「剰余価値率」とよぶ。この比率の上昇は、労働時間で計った場合の分配の程度が、労働者側に不利になったことを意味する。</p>
  <h4>After</h4>
  <p>問題文が不適切だったようで、残念ながら、期待した解答はなかった。</p>
  <p>「剰余生産物を生産するに必要な労働時間」とは何か、その意味をききたかったのですが...</p>
}}

#qanda_set_qst(8,4,0){{
<p>労働者全体の生活物資のベクトルが(3,6)から(6,3)に変わった。</p>
<p>このとき剰余価値率は上がったか、さがったか?</p>
<p>どのように考えて、結論に達したか、簡単に述べよ。</p>
}}
#qanda(8,4)
#qanda_solution(8,4){{
  <h4>解答</h4>
  <p>上がる。</p>
  <p>理由:</p>
  <p>$(t_1,t_2) = (33/46,27/23)$</p>
  <p>$t_1 < t_2 $ だから、$(3,6)(t_1,t_2) > (6,3)(t_1,t_2)$</p>
  <p>必要労働時間 down $\to$ 剰余労働時間 up</p>
  <p>剰余価値率=剰余労働時間/必要労働時間は up</p>
  <ol>
    <li>$(t_1,t_2) = (33/46,27/23)$</li>
    <li>$t_1 < t_2 $ だから、$(3,6)(t_1,t_2) > (6,3)(t_1,t_2)$</li>
    <li>必要労働時間 down $\to$ 剰余労働時間 uli</li>
    <li>剰余価値率=剰余労働時間/必要労働時間は uli</li>
  </ol>
  <h4>解説</h4>
  <p>$(3,6)( t_1,t_2 )$と$(6,3)( t_1,t_2 )$の大小関係を考えればよい。</p>
  <p>$( t_1,t_2 ) = (1,1)$だったら、両者は同じ。</p>
  \begin{equation}
  (t_1,t_2) = (33/46,27/23)
  \end{equation}
  <p>$t_1 < t_2 $だから、$(3,6) \to (6,3)$のとき、生活物資の生産に必要な労働時間は減少し、剰余価値率は上がる。</p>
  <hr>
  <p>分配をはかるには、複数の生産物で構成されるセットを比較しなくてはならない。</p>
  <p>ところが、ベクトルの比較は共通のなにかで標準化しなくてはできない。 </p>
  <p>これは、共通のベクトルの内積をとりスカラー化することで可能となる。</p>
  <p>これが「集計問題」である。</p>
}}
-------
-&color(red){12月9日の講義はここからはじめます。};
------
#qanda_set_qst(8,5,0){{
  <p>$t_1 , t_2 $は、分配関係をはかる共通のベクトルとして優れた点がある。それは何か?</p>
}}
#qanda(8,5)
#qanda_solution(8,5){{
  <h4>解答</h4>
  <p>労働者の生活物資が変化しても、その影響をうけない点。</p>
  <p>$t_1, t_2 $は生産技術だけできまり、分配関係から独立している点。</p>
  <h4>解説</h4>
  <p>もし$(3,6) \to (6,3)$のとき、$(t_1,t_2) \to (t_1',t_2')$のように変わるとしたら?</p>
  <p>$(t_1,t_2)$と$(t_1',t_2')$のどちらではかるかで、分配関係が有利になったように見えたり不利になったように見えたりする可能性がある。つまり</p>
  <ul>
    <li>$(3,6)(t_1,t_2) > (6,3)(t_1,t_2)$</li>
    <li>$(3,6)(t_1',t_2') < (6,3)(t_1',t_2')$</li>
  </ul>
  <p>ところが、$(t_1,t_2)$は分配関係に左右されないから、それで集計して一義的に有利か不利かが判定できるのだ。</p>
}}

**今回のまとめ [#gb99c923]
+生産技術がきまれば、生産に直接間接に必要な労働時間 $t$ がきまる。
+この時間は純生産物の分割に左右されないので。
+分配関係は、$t$を使って客観的に規定することができる。

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