#author("2021-12-25T08:18:21+09:00","default:obata","obata") #author("2021-12-25T08:27:00+09:00","default:obata","obata") CENTER:[[前回 ◁ >2021年度/冬学期/第8講]]&color(#447CFF){第 &size(32){9}; 講}; [[▷ 次回>2021年度/冬学期/第10講]] #katex #qanda_setstid(2021-12-16 16:10:00, 90) #qanda_who ------- ✔RECONチェック&br; ✅接続チェック #qanda_set_qst(9,20,0){{ <p>✔接続状態をおしえてください。</p> <p>✔なお、前回学生証番号を登録した人で、今回「氏名不詳」になってしまった人は「再登録」と書いてください。</p> }} #qanda(9,20) ----- CENTER:&size(25){&color(yellow,navy){ 生産価格 };}; ----- **今回のネライ [#c53a35bd] **原価 [#b41c12eb] -第8講と同じ、次の社会的再生産を想定する。 \begin{equation} \begin{cases} (小麦8kg,鉄12kg) + 労働6時間 &\to& 小麦36kg\\ (小麦16kg,鉄4kg) +労働12時間 &\to& 鉄24kg \end{cases} \end{equation} \begin{equation} (小麦 3kg, 鉄6kg) \to 生活 \to 18時間の労働 \end{equation} -次に違いをしっかり心に刻んでおこう。 --上の二つは技術的客観性をもつ確定的なモノの再生産、を表す。 --これに対して、三番目は本源的に弾力性をもつ労働力の維持、を表す。 -そのうえで価格の世界に進む。 --小麦、鉄の価格をそれぞれ $p_1, p_2$ 円とする。 --労働力の価格である賃金を $w$ とする。ディメンジョンは 円/時間。 #qanda_set_qst(9,1,0){{ <p>小麦36kgを生産するのに必要な費用は何円か。</p> <p>$p_1, p_2,w$ を用いた式で表せ。</p> }} #qanda(9,1) #qanda_solution(9,1){{ <h4>解答</h4> <p>\begin{equation}(8,12)(p_1,p_2) + 6w\end{equation}</p> <h4>解説</h4> <p>同様に鉄24kgを生産するに必要な費用は</p> <p>\begin{equation}(16,4)(p_1,p_2) + 12w\end{equation}</p> <p>この費用をマルクス経済学では伝統的に「費用価格」とよんできた。ドイツ語のKostenpreissの直訳で英語ならcost priceになる。cost price の普通の日本語訳は「原価」であるから、要するにいま式で表した値は小麦36kgや鉄24kgの原価である。36や24で割れば、単価ベースの原価となる。</p> <p>単価を表すのに @ 記号 を使う。個数が $x$ なら $$@p\times x$$円と表示される。</p> }} **マージン [#t6606228] -売値から原価を引いた値をマージンという。 -売値が原価の何パーセントアップになるか、この比率は上乗せ率とか、値入率とか、英語だと mark-up ratio とよばれている。 #qanda_set_qst(9,2,0){{ <p>小麦生産での上乗せ率を $R_1$ とおく。</p> \begin{equation}(小麦8kg,鉄12kg) + 労働6時間 \to 小麦36kg\end{equation} <p>を等式で表せ。</p> }} #qanda(9,2) #qanda_solution(9,2){{ <h4>解答</h4> \begin{equation}((8,12)(p_1,p_2) +6w)(1+R_1) = 36p_1\end{equation} <h4>解説</h4> <p>同様に次の等式も成りたつ。</p> \begin{equation}((16,4)(p_1,p_2) + 12w)(1+R_2) = 24p_2\end{equation} }} **賃金率 [#u1e71512] -単位時間あたりの賃金額を「賃金率」という。 -上記の労働力の価格である賃金率 $w$ である。 -$w$の単位(ディメンジョン)は$円/時間$である。簡単に言えば時給、日給など。 -労働時間を$T$とすれば、$w$は労働の単価にあたるもの。 $$総賃金所得\,Y = @w \times T$$ -所得 $Y$ がふえ生活が豊かになったように見えても、雇傭がふえ労働時間 $T$ が延びたせいで、賃金率 $w$ は下がっていることもあるわけだ。 #qanda_set_qst(9,3,0){{ <p>はたらく人々が18時間はたらいて、その所得で生活物資$(小麦 3kg, 鉄6kg)$を買えるときの賃金率を、価格を用いて表せ。</p> }} #qanda(9,3) #qanda_solution(9,3){{ <h4>解答</h4> \begin{equation}w = \frac{1}{18}(3,6)(p_1,p_2)\end{equation} }} #qanda_set_qst(9,4,0){{ <p>未知数を一つ減らし、次の式を簡単にせよ。</p> \begin{equation} \begin{cases} ((8,12)(p_1,p_2) +6w)(1+R_1) = 36p_1\\ ((16,4)(p_1,p_2) + 12w)(1+R_2) = 24p_2 \end{cases} \end{equation} }} #qanda(9,4) #qanda_solution(9,4){{ <h4>解答</h4> \begin{equation} \begin{cases} (9,14)(p_1,p_2)(1+R_1) = 36p_1\\ (18,8)(p_1,p_2)(1+R_2) = 24p_2 \end{cases} \end{equation} <h4>解説</h4> <p>「簡単に」というのは、あなたの主観で違ってくるのですが、たぶん多くの人が\(w\)を消去するのではないか、と期待します。</p> <p>数学の問題を解くというのは、この「簡単に」の意味がわかり、簡単な方向へ変形する能力に依存しています。コンピュータにはこの判断が「簡単に」はできないのです。</p> }} **上乗せ率の均等化 [#qec04944] -生産や販売に関わる他の条件が同じなら、商品1個を売ったときのもうけの割合が高いほうがよいだろう。 -競争がスムースにおこなわれれば、もうからない商品の生産から、もうかる商品の生産に移るものがでる。 -どれを生産しても上乗せ率 $R_i$がみな同じ$R$になる価格が存在するはず。 #qanda_set_qst(9,5,0){{ \begin{equation} \begin{cases} (9,14)(p_1,p_2)(1+R_1) = 36p_1\\ (18,8)(p_1,p_2)(1+R_2) = 24p_2 \end{cases} \end{equation} <p>$R_1=R_2=R$となるとき、$R$を求めたい。 <p>解を求めるための出発点になる式を示せ。</p> }} #qanda(9,5) #qanda_solution(9,5){{ <h4>解答</h4> \begin{equation} \frac{36p_1}{(9,14)(p_1,p_2)} = \frac{24p_2}{(18,8)(p_1,p_2)}\end{equation} <h4>解説</h4> <p>未知数が3つ、方程式は2つ、どうすれば「簡単に」なるかは、なかばセンスの問題です。</p> <p>ここでは$1+R_1=1+R_2$に着目した。</p> <h4>After</h4> <p>この解答と同じ解き方しかでなかったのですが【別解】を示しておきます。</p> <p>$x=\displaystyle\frac{1}{1+R}$とおいて整理すると</p> \begin{equation} \begin{cases} (9-36x)p_1+14p_2 = 0\\ 18p_1+(8-24x)p_2 = 0 \end{cases} \end{equation} <p>ともに原点をとおる直線。$(p_1,p_2) = (0,0)$という自明の解をもつ。それ以外に、価格比がきまる不定の解をもつケースがある。不定になるのは傾きが等しい次のとき。</p> \begin{equation} \frac{9-36x}{14}= \frac{18}{8-24x} \end{equation} <p>$x$ を求め $R>0$ の条件のもとで、$R=1/x - 1$と解く。</p> <p>「これって、固有値を求めるときの$\qquad\det(A-\lambda\,I)=0$ じゃない?」「Maybe so.」</p> }} #qanda_set_qst(9,6,0){{ \begin{equation} \frac{36p_1}{(9,14)(p_1,p_2)} = \frac{24p_2}{(18,8)(p_1,p_2)}\end{equation} のときの価格比 \(p = p_1/p_2\) の値を求めよ。 }} #qanda(9,6) #qanda_solution(9,6){{ <h4>解答</h4> $$p_1/p_2=2/3$$ <h4>解説</h4> <p>\(p=p_1/p_2\) とおいて整理すると</p> \begin{align} 27p^2+3p-14 &= 0\\ (3p-2)(9p+7) &= 0 \end{align} $$\therefore\, p_1/p_2=2/3\,\,(\because p>0)$$ <p>これは「どこかでみたことがあるな」と思った人もいるでしょう。Deja vu</p> <p>実は<a href="https://gken.jp/tus/index_ctl.php?2021%E5%B9%B4%E5%BA%A6/%E5%86%AC%E5%AD%A6%E6%9C%9F/%E7%AC%AC4%E8%AC%9B">問題4-8</a>で、もう解きました。</p> <hr/> <p>今回は<a href="https://live.sympy.org/">sympy</a>で解いてみよう。</p> <ul> <li>p_1,p_2,R_1,R_2 = symbols('p_1,p_2,R_1,R_2 ')</li> <li>R_1 = (36*p_1)/(9*p_1+14*p_2) -1</li> <li>R_2 = (24*p_2)/(18*p_1+8*p_2) -1</li> <li>f= R_1-R_2</li> <li>simplify(f)</li> <li>factor(f)</li> <li>solve(f,p_1)</li> <li>solve(f,p_1)[1]</li> <li>R_1.subs(p_1,solve(f,p_1)[1])</li> <li>R_2.subs(p_1,solve(f,p_1)[1])</li> </ul> <p>要するに p1/p2 = 2/3 のとき、小麦生産でも鉄生産でも、原価の20パーセントのもうけがでる。</p> <p>もちろん p1/p2 > 2/3 なら小麦の価格が高くなるわけですから、小麦のマークアップ率は20パーセント以上になりますが、同時に鉄のほうは20パーセント以下になります。</p> }} #divregion(snip,admin,lec=9,qnum=6) -以下をsympy live にコピペ p_1,p_2,R_1,R_2 = symbols('p_1,p_2,R_1,R_2 ') R_1 = (36*p_1)/(9*p_1+14*p_2) -1 R_2 = (24*p_2)/(18*p_1+8*p_2) -1 f= R_1-R_2 simplify(f) factor(f) solve(f,p_1) solve(f,p_1)[1] R_1.subs(p_1,solve(f,p_1)[1]) R_2.subs(p_1,solve(f,p_1)[1]) -固有ベクトルと固有値を求める -A の output が 1 になるようにして... A = Matrix([[9/36,14/36],[18/24,8/24]]) A.eigenvects() #enddivregion ------- -&color(red){12月16日の講義はここからはじめます。}; ------ **生産価格 [#ica0873f] -この講義で考えている「上乗せ率を等しくする価格」と「生産価格」の違いを知っておくことは非常に重要。 -教科書183-192ページ「費用価格と利潤」。 -およそのイメージをつかむには、185ページの図III.1.1が便利。 ------ -さまざまな産業において、利潤率を均等にする価格を「生産価格」という。 -「生産価格=費用価格(=原価)+平均利潤」となる。 -「上乗せ率が均等になる価格」と「生産価格」は原価をベースとしている点は共通。 -ただし、上乗せ率が均等でも利潤率が均等になるわけではない。 \begin{align} 利潤率 &= \frac{フローとしての費用の支出と回収の差額}{ストックとしての投下資本額} \\[10pt] &=\frac{(売値-原価)\times販売数量-流通費用総額}{(原材料+機械等)+(在庫+準備金)}\\[20pt] 上乗せ率&=\frac{売値-原価}{原価} \end{align} -したがって > +機械等が存在しない +流通費用がかからない +在庫も準備金もいらない < 等々の条件を追加すれば、「生産価格=上乗せ率を均等にする価格」となる。 -しかし、ここで単純化のために切り捨てた条件は、資本主義の市場を理解するうえで必須、無視してよいものではない。 -教科書では、これらの条件をもとに、資本主義における市場の特徴が説明されている。 -この講義では時間がないので、教科書の第三編「機構論」には立ちいることはできません。 **生産に必要労働時間との関係 [#q4d6d0a5] -[[すでにみたように>2021年度/冬学期/第7講#valueEq]]「生産に直接間接に必要な労働時間」 $\Bbb{t}$ は \begin{equation} \begin{cases} 8t_1 + 12t_2 + 6 &=& 36t_1\\ 16t_1 + 4t_2 + 12 &=& 24t_2 \end{cases} \end{equation} できまります。 -$(18)$式で $R_1=R_2=R$ として、両辺を$w$で割ると \begin{equation} \begin{cases} \displaystyle(8\frac{p_1}{w} + 12\frac{p_2}{w} + 6)(1+R) &=& \displaystyle36\frac{p_1}{w}\\ \\ \displaystyle(16\frac{p_1}{w} + 4\frac{p_2}{w} + 12)(1+R) &=& \displaystyle 24\frac{p_2}{w} \end{cases} \end{equation} になります。 -連立方程式(42)と(44)はよく似ています。 #qanda_set_qst(9,7,0){{ <p>連立方程式(44)にでてくる$\,\displaystyle\frac{p_1}{w}\,$のdimension(単位)はなにか?</p> <p>$\displaystyle\frac{p_1}{w}\,$の値は何を意味するか、簡単に述べよ。</p> }} #qanda(9,7) #qanda_solution(9,7){{ <h4>解答</h4> <p>時間</p> <p>その商品を買うのに何時間はたらく必要があるかという時間</p> <p>購買に必要な労働時間</p> <h4>解説</h4> <p>円$\div$円/時間 $\to$ 時間</p> <p>時給が1000円のとき、一杯500円のラーメンを食べるのには何時間はたらく必要があるか?500円 $\div$ 1000円/時間 = 30分 という話。</p> <p>1万円のスニーカーがほしいなら10時間はたらかなきゃならない。つまり1万円のスニーカーは10時間労働に値するわけだ。</p> }} #qanda_set_qst(9,8,0){{ <p>$p$のディメンションは円/kgである。</p> <p></p> <br/> <p>$\displaystyle\frac{w}{p_1}\,$のディメンションは何か。</p> <p></p> <br/> <p>またこの値は何を意味するか、簡単に述べよ。</p> }} #qanda(9,8) #qanda_solution(9,8){{ <h4>解答</h4> <p>kg/時間 kg/hour</p> <p>1時間の労働で買える小麦の量</p> <h4>解説</h4> <ul> <li>時給1000円というのは貨幣の量で1000円と表示されるわけですが、この1000円の価値は?といわれると...</li> <li>貨幣の価値というのはその「購買力」です。つまり、商品がどれだけの量、買えるか、です。</li> <li>購買力ですから、一定だとはかぎりません。たしかに1000円札の1000円の文字は今日も、昨日も変わりません。でも、それで買える商品の量は、商品の価格が上がれば減り、さがればふえます。名目は1000円でも実質の購買力は変わります。</li> <li>解答の「1時間の労働で買える小麦の量」というのは、小麦ではかった「実質賃金率」なのです。</li> <li>ただ「実質」というのはちょっと面倒です。</li> <li>「鉄ではかったら?」「$\displaystyle\frac{w}{p_2}$ でしょう。」</li> <li>商品は無数にあるのだから、どれを基準にするかで「実質賃金率」はあがったりさがったりします。価格のなかには上がるものもさがるものもあるわけで、それに応じて実質賃金率も上がったようにも下がったようにも表せます。どうしますか?</li> <li>「平均で...」と答えた人、気持ちはわかりますが、バラついたものをみると、すぐに「平均をとればよい」と考えるのは甘い!複数の要素の変化をどうやってはかるのか、という「集計問題」って、けっこう厄介なのです。</li> <li>とはいえ、「購買に必要な労働時間」の逆数が、幾通りもある「実質賃金率」のうちの一つだ、ということはたしか。「購買に必要な労働時間」という概念をもちだす意義はここにあります。</li> </ul> }} #qanda_set_qst(9,9,0){{ <p>次の文の【A】【B】【C】に適当な関係子を入れよ。</p> \begin{equation} \begin{cases} 8t_1 + 12t_2 + 6 &=& 36t_1\\ 16t_1 + 4t_2 + 12 &=& 24t_2 \end{cases} \end{equation} \begin{equation} \begin{cases} \displaystyle(8\frac{p_1}{w} + 12\frac{p_2}{w} + 6)(1+R) &=& \displaystyle36\frac{p_1}{w}\\ \\\displaystyle (16\frac{p_1}{w} + 4\frac{p_2}{w} + 12)(1+R) &=& \displaystyle24\frac{p_2}{w} \end{cases} \end{equation} <p>$R=0$なら連立方程式(2)と(3)は同じ解をもつ。つまり$$t_i 【A】\displaystyle\frac{p_i}{w}$$ となる。 </p> <p>$R>0$なら</p> <p>$R=0$なら二組の連立方程式は同じ解をもつ。つまり$$t_i 【A】\displaystyle\frac{p_i}{w}$$ となる。 </p> <p>$R>0 $なら</p> \begin{equation} \begin{cases} \displaystyle8\frac{p_1}{w} + 12\frac{p_2}{w} + 6 &【B】& \displaystyle36\frac{p_1}{w}\\ \\ \displaystyle16\frac{p_1}{w} + 4\frac{p_2}{w} + 12 &【B】& \displaystyle24\frac{p_2}{w} \end{cases} \end{equation} <p>となる。「小麦の生産に使われる小麦」は「それで生産された小麦」よりは少ないはずだし、「鉄の生産に使われる鉄」は「それで生産された鉄」よりは少ないはずだから、$R>0$のもとで連立方程式(3)が成りたつなら必ず$$t_i 【C】\displaystyle\frac{p_i}{w}$$となる。</p> <p>となる。</p> <p>ところで「小麦の生産に使われる小麦」は「それで生産された小麦」よりは少ないはずだし、「鉄の生産に使われる鉄」は「それで生産された鉄」よりは少ないはずである。</p> <p>したがって、$R>0 $のもとで第二の連立方程式が成りたつなら、必ず$$t_i 【C】\displaystyle\frac{p_i}{w}$$となる。</p> }} #qanda(9,9) #qanda_solution(9,9){{ <h4>解答</h4> <p>【A】 = ,【B】 <,【C】 < </p> }} &aname(lecEnd20211216); #qanda_set_qst(9,10,0){{ <p>次の文の【A】【B】【C】に適当な用語ないし数値を入れよ。</p> <p>次の関係が成りたつことが確かめられた。</p> \begin{equation}\displaystyle R > 0 \to \frac{p_i}{w} > t_i \end{equation} <p>これは「どの商品も【A】以上の価格で売れる」なら、「それをつくるのに直接間接にかかった労働時間以上、労働しなくては買えない」ということを意味する。</p> <p>思い切り単純化して考えてみよう。たとえばラーメン一杯が600円、時給1200円なら、それを食べるには【B】分はたらかなくてはならない。ところが、それをつくには20分しかからない。この20分には、直接調理に必要な労働だけではなく、材料の生産、その材料の生産手段.... といった間接の労働も含んでいる。それら全部に時給1200円が支払われたすると、【A】は400円になる。売値と【A】の差である200円のもうけは、20分でできるラーメンを【B】分はたらいて食べる、という労働時間の差に対応しているのだ。</p> <p>どのような社会でも、「生産に必要労働時間」と「それを手に入れるのに必要な労働時間」の間に差があり、【C】生産物は存在するといってよい。資本主義の経済では、この純生産物の生活物資と【C】生産物への分割が、「賃金をもらってはたらき、必要な生活物資を買う」という商品売買で媒介されているため、この関係が見えにくいが、市場を通じた純生産物の分割、所得の分配こそ、資本主義の根本をなしているのである。</p> }} #qanda(9,10) #qanda_solution(9,10){{ <h4>解答</h4> <p>【A】 原価 ,【B】 30,【C】 剰余 </p> }} **今回のまとめ [#g3faedfe] +生産に直接間接に必要な労働時間$t$は ++生産技術($原材料+労働 \to 粗生産物$ の束)だけ できまる(前回)。 +均等な上乗せ率$R$とそれを実現する価格$\bf{p}$(必要な条件を加えれば「一般的利潤率と生産価格」)は ++生産技術($原材料+労働 \to 粗生産物$ の束)と ++賃金率$w$の決定方法と できまる。 +もうけが出る($R>0$)のは、商品を「買うためにはたらく時間 $p_i/w$ 」が「つくるための時間 $t_1$」を上まわるときである。 +需要の増減は、生産規模を変化させる。しかし、生産規模が変化しても、$R$と$p$は変化しない。 #divregion(補足,admin,lec=1,qnum=1) + 3. は、資本主義は、どの社会でも存在する純生産物の分割を、市場を通じた「見えない分配 distribution 」として実現している、ということだ(これはマルクス経済学が「搾取」exploitation とよんできたもの)。 + 4. は、資本主義が、市場を通じてさまざまな産業の規模を調整することができるということ(調整方式は通俗的な「市場価格の変動を通じて」によるのではなく、同じ技術で再生産可能な商品の場合、「在庫の増減を通じて」おこなわれると教科書には書いてあるが、この講義の範囲を超える)。市場を通じた資源の「配分」allocation +資本主義の二つの顔:市場による allocation の合理性 + 市場による distribution の隠蔽性 +「新しい資本主義」? -そもそも「資本主義」とは何か、などというヤボな話はぬきにして... -前の政権も、そして前の世紀の終わりころからトレンドとして、第一の顔を強調する「新自由主義」を信奉。 -ところが、第二の顔である distirbution は、市場にまかせると、賃金所得が圧縮される可能性が大。これが表面化。 -戦後の資本主義は「福祉国家」的な介入でなんとか切り抜けてきたが、新自由主義はその制度的枠組みを自ら次々に破壊。 -現政権はややノスタルジック。「新中間層」は歴史的な産物。高度成長全盛期の日本に戻れるのか? -「新しい資本主義」が何か、はともかく、 -はたして、back to the future はできるのか? -少なくとも、第二の顔をはっきり見定め、所得の分配全体を体系的に検討することが前提。 -選挙の得票目当てで支給金を配布しているようでは、新自由主義以下、お粗末! #enddivregion