#author("2022-11-30T08:54:05+09:00","default:obata","obata")
#author("2022-12-01T16:06:24+09:00","default:obata","obata")
CENTER:[[前回◁>2022年度/冬学期/第9講]]&color(#447CFF){第&size(32){10};講};[[▷次回>2022年度/冬学期/第11講]]
#qanda_setstid(2022-11-24 16:10:00,90)
#qanda_who
#qanda_mathjax
------
✔  REC ON&br;
✅ 接続チェック

#qanda_set_qst(10,20,0){{
<p>&#x2714; 接続状態をおしえてください。</p>
}}
#qanda(10,20)

CENTER:&size(25){&color(yellow,navy){&nbsp;情報通信技術と労働(1)&nbsp;};};
#qanda_points_chart
#qanda_points_hist
------
#contents

#qanda_set_qst(10,1,0){{
<p>確認問題です。</p>
<p>労働とは何か、この講義での定義をできるだけ簡潔に述べよ。</p>
}}
#qanda(10,1)
#qanda_solution(10,1){{
  <h4>解答</h4>
  <ul>
    <li>「AをCでBにする」こと</li>
  </ul>
  <h4>解説</h4>
  <ul>
    <li>労働を内部に属性やメソッドをもつオブジェクトとして規定</li>
    <ol>
      <li>B:目的物</li>
      <li>A:労働対象</li>
      <li>C:労働手段</li>
      <li>「する」: 意識=知覚+(...+記憶+判断+....)+意図</li>
    </ol>
  </ul>
}}

#qanda_set_qst(10,2,0){{
<p>もう一つ、確認問題です。</p>
<p>個々の労働が結合する基本原理をできるだけ簡潔に述べよ。</p>
}}
#qanda(10,2)
#qanda_solution(10,2){{
  <h4>解答</h4>
  <ul>理論的には二つの結合原理が抽出できる。</ul>
  <ol>
    <li>協業タイプ:目撃物の形成における意志の結合</li>
    <li>分業タイプ:モノ(労働手段・労働対象)による結合</li>
  </ol>
}}

**ねらい [#vb57ece6]
+情報通信技術の特徴を明らかにする。問題8-8,8-9で考えた産業革命にはじまり20世紀を通じて進んだ自動化の技術との区別。
+情報通信技術が「オブジェクトとしての労働」をどのように変容させるか、考える。

**情報通信技術 [#yc07b422]
-現代の情報通信技術は、起源を異にする次の二つの技術の融合である。
+数値計算に由来する情報処理技術の発達(処理というのはバラバラのものを整理し秩序づけること)
+遠隔地に情報を伝える通信技術の発達

#qanda_set_qst(10,3,0){{
<p>コンピュータの登場によって情報処理技術と通信技術が融合する。</p>
<p>これはコンピュータが情報処理技術と通信技術に共通のなにかを用いているためである。</p>
<p>この共通の基礎としてもっとも重要なものは何か?</p>
}}
#qanda(10,3)
#qanda_solution(10,3){{
  <h4>解答</h4>
  <ul>
    <li>デジタルデータ</li>
    <li>電荷のon/offで区別される2進数型の数値データ</li>
  </ul>
  <h4>解説</h4>
  <ul>
    <li>デジタルの意味はこの後詳しく見てゆきます。</li>
    <li>ここでは違う経路で発展してきた技術が、共通の要素を基礎に連結したという点に注意してください。</li>
  </ul>
}}
***計算技術 [#o8b2d49e]
#qanda_set_qst(10,4,0){{
  <p>コンピュータは電子計算機とよばれることもあるので、計算について考えてみる。</p>
  <p>「ソロバンはアタマ(思考能力という程度の意味で)を使って計算するが、電卓はアタマを使わない。」</p>
<p>適切かどうか。理由を述べよ。</p>
}}
#qanda(10,4)
#qanda_solution(10,4){{
  <h4>解答</h4>
  <ul>
    <li>アタマを使うか使わないかで、違うわけではない。ソロバンもアタマを使わずに手で計算するための道具。</li>
  </ul>
  <h4>解説</h4>
  <ul>
    <li>純粋に思考の世界だけで計算をするのはむずかしい。</li>
    <li>人間は昔から、ちょっと複雑な計算になると、モノを”操作”して計算してきた。筆算だって紙と鉛筆という道具が必要です。</li>
    <li>その意味ではソロバンと電卓にそれほど決定的な違いはありません?!</li>
    <li>とはいえ、これは加減算でのこと。乗除算ではスピードの差は歴然となる。</li>
  </ul>
  <h4>After</h4>
  <ul>
    <li>ソロバンには馴染みがないのか、「電卓も....という点でアタマを使う」という回答ばかりでした。「ソロバンは....アタマを使う」という主張に対する吟味が必要でしょう。</li>
    <li>「ソロバンも電卓もアタマを使う」という結論ではなく「ソロバンも電卓もアタマを使わない」という結論を期待していたのです。つまり「アタマだけを使うか道具を使うか」ということで、正解のカナメはソロバン=道具です。</li>
  </ul>
}}
#qanda_set_qst(10,5,0){{
<p>ソロバンと計算尺との決定的な違いは何か。</p>
}}
#qanda(10,5)
#qanda_solution(10,5){{
  <h4>解答</h4>
  <ul>
    <li>ソロバンはデジタル計算</li>
    <li>計算尺はアナログ計算</li>
  </ul>
  <h4>解説</h4>
  <ul>
    <li>ソロバン→電卓→コンピュータとデジタルの計算の道具が発展</li>
    <li>乗除算では、アナログ(長さ)を使った計算の道具=計算尺が、デジタル型のソロバンより優位だった。</li>
    <li>この関係は電卓の登場で逆転。</li>
  </ul>
  <h4>After</h4>
  <ul>
    <li>アナログ vs デジタルの区別、関係を理解してもらうことが目的の問題です。</li>
    <li>1/3はアナログでは正確に表現できますが、デジタルでは概数になってしまいます。この点は、コンピュータのデータの性格を知るうえで重要です。「デジタル化」とかよくききますが、なにをデジタル化するのか、デジタル化されるものはアナログのデータです。デジタル化するときには切り捨てられる部分があるのですが、これをノイズととるか、本来無視できないリアルととるか、考えてみる必要があります。</li>
    <li>フィルムを現像した写真はアナログデータですが、これをデジタル化すると、連続的な色の変化はブツブツのデジタル値(eg. #ffeedd) の並びになります。情報量は増えたのでしょうか、減ったのでしょうか?</li>
  </ul>
}}
#qanda_set_qst(10,6,0){{
<p>計算機としてみたとき、電卓とコンピュータとの決定的な違いは何か。</p>
<p>その「決定的」の意味を説明せよ。</p>
}}
#qanda(10,6)
#qanda_solution(10,6){{
  <h4>解答</h4>
  <ul>
    <li>プログラムが書けるかどうかが違い。</li>
    <li>決定的なのは、電卓では計算の順序を、操作する人間が記憶して操作するが、コンピュータでは計算の手順を外部装置に記憶させることができるため、計算の手順を考えてプログラムを過程と、そのプログラムの実行過程が分離されるため。</li>
  </ul>
  <h4>解説</h4>
    <ul>
      <li>$5*(6+7)$を電卓で計算するには「6,+,7,M,5,*,R,=」のような手順を人間が記憶し順番に実行しなくてはならない。括弧があるときには、単純に上からボタンを押すだけではダメ。「6,+,7,M,5,*,R,=」はプログラムといってよいが、これは人間のアタマのなかにある。</li>
      <li>コンピュータでだと順に「a=5;b=6+7;console.log(a*b); 」と順に実行させられる。プログラムはコンピュータの記憶装置に記録されている。</li>
      <li>ソロバンでも電卓でもプログラムに当たるものが意識の側にあるのに対して、コンピュータではプログラムがモノの世界に移されている。これが決定的な違い。</li>
    </ul>
}}
#qanda_set_qst(10,7,0){{
<p>コンピュータが「電子計算機」ではなく情報処理機になるうえで決定的なのは「意識=知覚+(記憶、判断)+意志」と簡略化したモデルの「判断」に相当する機能である。</p>
<p>もっともシンプルな判断は「同じか違うか」だ。</p>
<p>では、コンピュータのプログラムで、「同じか違うか」の「判断」はどのようにおこなわれるのか。</p>
}}
#qanda(10,7)
#qanda_solution(10,7){{
  <h4>解答</h4>
  <p>引き算で値がゼロになるかどうか。</p>
  <h4>解説</h4>
  <p>引き算といっても、マイナスの数に反転して足すわけですが。</p>
  <p>判断を計算でおこなうわけです。</p>
}}
#qanda_set_qst(10,8,0){{
  <p>同じか違うかがわかっても、それだけでは意味がない。この結果によって操作を切り替えることである。</p>
  <p>コンピュータのプログラムで、この条件分岐はどのようにおこなうことが可能になっているのか。</p>
}}
#qanda(10,8)
#qanda_solution(10,8){{
  <h4>解答</h4>
  <ul>
    <li>操作の実行順序を変更する</li>
  </ul>
  <h4>解説</h4>
  <ul>
    <li>
      次のコードでは、どこで実行の順序が切り替えられているのか?<br>
        n=10;<br>
        sum=0;<br>
        while(1==1){<br>
          console.log(n);<br>
          sum +=n;<br>
          n--;<br>
          if (n < 0 ) {break};<br>
        }<br>
        console.log("sum=",sum);
    </li>
    <li>if のところで条件分岐。大昔のBASICという言語では while もなくて goto 110 のように実行する行 110 にジャンプしていた。アセンブラではjmpコマンである。if と jump さえあれば、繰り返し iteration は実行できる。</li>
    <li>実行するコマンドの記録されているメモリの番地を使って、条件分岐することで、人間が状況を判断して変更してきた操作が、コンピュータという外部装置に移せる。これが根本。</li>
    <li>実際ははるかにずっと複雑だが、どんなに複雑な判断でも、分解してゆくと二値演算に還元できる。</li>
    <li>人間労働の「意識」における「判断」のコア部分は、複雑で明示できない要素が多々あるが、少なくともその一部ないし外周部分に、単純な二値演算が含まれている。情報処理装置としてのコンピュータは、この部分から人間労働に浸透し、外部の装置に移すようになる。</li>
  </ul>
}}

#qanda_set_qst(10,9,0){{
<p>「コンピュータでは三角形の内角の和が180度であることが証明できない。」</p>
<p>真か偽か、理由を述べよ。</p>
}}
#qanda(10,9)
#qanda_solution(10,9){{
  <h4>解答</h4>
  <ul>
    <li>真</li>
    <li>無数の三角形を発生させて繰り返し180度になることを確かめることはできるが、そこから一般法則を抽象する方法がコンピュータにはないから。</li>
  </ul>
  <h4>解説</h4>
  <ul>
    <li>別解もありそうです。解答ももう少し良いものがありそうですが、考えてほしい点は、コンピュータで処理するのに適した問題と適さない問題がある、という点です。さしあたり、それが偏りをもちオールラウンドではないことがわかればよいのです。</li>
    <li>繰り返し処理に有利なのは、大量の事象の整理です。ズレを含むビッグデータは得意。でも、すべてに一意に成りたつことがらの「理由」を論理的に推論するプログラムを書くことは、数値の計算機あがりのコンピュータではむずかしい。</li>
    <li>突き詰めれば、コンピュータは自らプログラムまでつくって、それを実行するわけではない点、自動プログラミンも、自動のバグ修正さえもできない、人間が使わなくてはならない「道具」。</li>
    <li>人間の労働に対するコンピュータの影響を考えるとき、この偏りを知ることが「はじめ」にしてたぶん「終わり」でしょう。</li>
    <li>コンピュータで、このような一般的な命題に判断をくだすことは無理です。理由を述べよというタイプの、解答が一つになることを期待していないこの講義の問題は、コンピュータには不向き、だからこそ、みなさんに尋ねてみる意味があると思います。</li>
  </ul>
}}
#qanda_set_qst(10,10,0){{
  <p>情報処理技術の発展としてみたコンピュータは、労働のどの側面に強く作用するか。</p>
  <p>なお要素というのは、大きくいて労働対象、労働手段、目的物、身体、意識(知覚、判断、記憶、意志)だった。</p>
}}
#qanda(10,10)
#qanda_solution(10,10){{
  <h4>解答</h4>
  <ul>
    <li>知覚によるパタン認識をもとに、判断し、意志による身体の動きを通じて、労働手段の操作・操縦を繰り返す側面</li>
  </ul>
  <h4>解説</h4>
  <ul>
    <li>複雑な実の現象を、このように一つに単純化するのは無理があることは重々承知で、基本中の基本を考えれば、というのが解答です。</li>
    <li>モノとモノの物理化学的な法則を基礎にしたタイプの自動化は、コンピュータの出現以前に、紡績機のような自動機械の登場ではじまっていました。</li>
    <li>シリンダー弁とか発火プラグとか、バイメタルとか、モノどうしの反応で動作を切り替える自動装置は19世紀から20世紀にかけて次々に開発された。</li>
    <li>コンピュータは、労働対象と労働手段の間の自動性をより高度なかたちで促進する面をもちます。条件を変えることで異なる動きをするような、1970年代のマイコン搭載の機械は、こうした自動化を極限まで進めた。</li>
    <li>しかし、それでもボタンを押して動作を切り替える操作操縦までなくすものではなかった。</li>
    <li>現局面で進んでいるのは、この操作操縦型の労働の分解である、この操作操縦のコアは、同じような(完全に同じではない)現象を知覚し判断し労働手段の動きを変化させることだ、というのが解答の主旨です。</li>
    <li>ここではふれませんでしたが、操作操縦を自動化するうえで重要な役割を果たしたのは、情報処理装置としてのコンピュータ本体だけではなく、センサー(身体でいえば感覚器官)、アクチュエータ(手足)の発達が果たした役割が無視できないと思います。</li>
  </ul>
  <h4>After</h4>
  <ul>
    <li>労働手段という回答が多数でした。今回の講義でみなさんに期待したのは、コンピュータが労働手段をあつかう主体の意識(とりわけ「判断」)に関わる新しい技術である、という発見でした。</li>
    <li>「意識」「判断」に言及したものに2点としました。20世紀の機械装置型(=労働手段)のオートメーション化の完成という面もないではないので、労働手段としてものには1点。</li>
    <li>コンピュータを「分析」することで、コンピュータ=自動機械という通俗的な見方を乗りこえてほしかったのですが、なかなかむずかしようでした。ちょっと残念...</li>
  </ul>
}}

**まとめ [#q0bbd443]
-情報通信技術=情報処理技術+通信技術:情報処理技術について
-道具をつかった計算:ソロバンと電卓
-計算と判断:電卓とコンピュータ
-プログラムのコア:条件分岐と繰り返し

#qanda_set_qst(10,21,0){{
<p>ここまでの内容で、質問があればどうぞ。</p>
}}
#qanda(10,21)

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