#author("2023-01-20T22:41:14+09:00","default:obata","obata") #author("2023-01-21T17:21:31+09:00","default:obata","obata") CENTER:[[前回◁>2022年度/冬学期/第13講]]&color(#447CFF){第&size(32){14};講};[[▷次回>2022年度/冬学期/第15講]] #qanda_setstid(2022-01-19 16:10:00,90) #qanda_who #qanda_mathjax ------ ✔ REC ON&br; ✅ 接続チェック #qanda_set_qst(14,20,0){{ <p>✔ 接続状態をおしえてください。</p> }} #qanda(14,20) CENTER:&size(25){&color(yellow,navy){ 利潤率 };}; //#qanda_points_chart //#qanda_points_hist ------ #contents **ネライ [#e1745266] -単一生産物の世界で、利潤率を定義する。 -利潤率と賃金率、生産力の関係を理解する。 ***利潤率 [#yd8e09ba] +資本主義の経済:::資本家が原材料を仕入れ、賃金労働者を雇って生産をおこなっている:::を考える。 +賃金額だけではなく、原料の仕入れ額も、投下資本に含まれる。 +ある期間に投下資本が何パーセント増加したかを表わす比率を利潤率とよぶ。 -ここでは「商品は費用をかけず即座に販売できる」とものと仮定する。 -貨幣が実在する市場では、商品の売買が逆に制約をうける。このことは、前期の講義で、マルクス経済学の市場論として強調した。 -しかし、ここでは、資本と労働の基本関係を考えるために、この市場の本質を括弧に入れる(販売の制約を重視した、価格機構に興味があれば教科書第3篇第1章をみよ)。 -要するに、ここでは「費用価格総額=投下資本総額」となる世界を想定。 $$費用価格総額=原材料費総額 + 賃金総額$$ $$利潤総額=販売価格総額 - 費用価格総額$$ $$\displaystyle 利潤率=\frac{利潤総額}{投下資本総額}=\frac{利潤総額}{費用価格総額}$$ #qanda_set_qst(14,1,0){{ <ol> <li>$小麦120_{トン} + 労働 180_{時間} \longrightarrow 小麦240_{トン}$ </li> <li>小麦の価格が$900_{円/トン}$</li> <li>時給が$450_{円/時間}$</li> </ol> <p>このとき利潤率を求めよ。式も書くこと。</p> }} #qanda(14,1) #qanda_solution(14,1){{ <h4>解答</h4> $$R =\frac{240\times900-(120\times900+180\times450)}{120\times900+180\times450} =\frac{240\times900}{120\times900+180\times450} -1 =1/7 = 0.1428$$ $$約 14\%$$ <h4>解説</h4> <ul> <li> $A_{トン} + L_{時間} \to B_{トン}$ のとき $$R = \frac{Bp-(Ap+Lw)}{Ap+Lw} = \frac{Bp}{Ap+Lw}-1 = \frac{B}{A+L(w/p)}-1$$ </li> <li>したがって、同じ技術$(A,L) \to B$ もとで、小麦の物量ではかった実質賃金率 $w/p$ が下落すれば、利潤率 $R$ は上昇する。名目賃金率$w$ が一定のまま小麦価格 $p$ が上昇すれば $$p^{\uparrow} \Longrightarrow (w/p)^{\downarrow} \Longrightarrow R^{\uparrow}$$ </li> </ul> }} --------- --------- &color(white,red){ 最終第15回目の講義はここから }; -昨年の講義が前提となります。 -第12,13,14講 のページに目を通しておいてください。 --12講の「復習」と13講の「この講義の例解」の図解が理解できるか?チェック --14講の利潤率の定義が理解できているか?チェック --------- --------- ***物量・価格・労働時間タームの利潤率 [#lbdcbae8] +価格タームの利潤率 $$R = \frac{B_{トン}\times p_{円/トン} }{A_{トン}\times p_{円/トン}+L_{時間}\times w_{円/時間} }-1 =\frac{Bp}{Ap+Lw}-1$$ +物量タームの利潤率 $$R = \frac{B_{トン} }{A_{トン}+L_{時間}\times(w/p)_{トン/時間} }-1 =\frac{B}{A+L(w/p)}- 1$$ +労働時間タームの利潤率 $$R = \frac{B_{トン}\times t_{時間/トン} }{A_{トン}\times t_{時間/トン}+L_{時間}\times(w/p)_{トン/時間}\times t_{時間/トン} }-1 =\frac{Bt}{At+L(w/p)t}-1$$ -単一生産物の世界では、どのタームでも簡単に計算可能。 -複数生産物の世界は、$p$や$t$がベクトル $p=(p_1,p_2,\cdots)$ や $t=(t_1,t_2,\cdots)$ になる。 #qanda_set_qst(14,2,0){{ <ol> <li>$小麦120_{トン} + 労働 180_{時間} \longrightarrow 小麦240_{トン}$ </li> <li>小麦の価格が$900_{円/トン}$</li> <li>時給が$450_{円/時間}$</li> </ol> <p>命題:小麦価格 $p$ が$10$ パーセント上昇しても、賃金率 $w$ が$10$パーセント上昇すれば利潤率はかわらない。</p> <p>うえの命題は真か偽か、理由を述べよ。</p> }} #qanda(14,2) #qanda_solution(14,2){{ <h4>解答</h4> <p>真</p> <p>利潤率は実質賃金率の変化に応じて変化するが、小麦価格と賃金率が同じ比率で変化すれば、実質賃金率 $w/p$ は変化しないから。</p> <h4>解説</h4> $$w/p=1.1w/1.1p$$ }} #qanda_set_qst(14,3,0){{ <ol> <li>$小麦120_{トン} + 労働 180_{時間} \longrightarrow 小麦240_{トン}$ </li> <li>小麦の価格が$900_{円/トン}$</li> <li>時給が$450_{円/時間}$</li> </ol> <p>小麦価格の$10$パーセント上昇に対して、時給が $8$パーセント上昇した。利潤率は $2$ ポイント上昇する。</p> <p>真か偽か、理由を述べよ。</p> }} #qanda(14,3) #qanda_solution(14,3){{ <h4>解答</h4> <ul> <li>偽。</li> <li>実質賃金率$w/p$ は 約$10-8=2$ポイント下落するが、利潤率を決定する式の分母$A+L(w/p)$で、単項の$L(w/p)$ではないから、同じポイントで上昇するわけではない。</li> </ul> <h4>解説</h4> <h5>「実質賃金率$w/p$ は 約$10-8=2$ポイント下落する」話</h5> <ul> <li>第13講で解説したように、分数の分子分の変化がパーセント値で与えられたとき、分数は ほぼ「分子のパーセント マイナス 分母のパーセント」のポイント変化する。</li> <li>実際に計算してみる。 $$\frac{w\times(1+a/100)}{p\times(1+b/100)}\div(w/p) \fallingdotseq a-b$$ $$(450\times 1.08)/(900\times 1.10) = 0.9818181818181818... \fallingdotseq 0.98$$</li> <li>つまり、約 $2$ パーセント低下した。$0.0018181\cdots$ が誤差の範囲といえるかどうか?は微妙。</li> <li>因みに $4$ パーセントと $2$ パーセントなら $$(900\times 1.02)/(400\times 1.04) = 0.9807692307692307$$ </li> <li>で、ズレは$0.000769230\cdots$ に縮小。ズレを生む要因が$8$パーセントから$2$パーセントに縮小したからだ。</li> <li>$10-8$も$4-2$も、同じ$2$ ポイントの変化ですが、誤差はダイブ違うので、話がコマイことになったときには注意しよう。</li> </ul> <h5>「実質賃金率が$2$ポイント下落しても、利潤率が$2$ポイント上昇する」わけではない話。</h5> <ul> <li>$\displaystyle \frac{B}{A+L(w/p)}$と$\displaystyle \frac{B}{L(w/p)}$とは違う。</li> <li>《$A$ がゼロならば「実質賃金率が$2$ポイント下落しても、利潤率が$2$ポイント上昇する」》が真であっても、《$A$ がゼロでなければ「実質賃金率が$2$ポイント下落しても、利潤率が$2$ポイント上昇する」》が真か偽かはわからない(真であるとは限らない)。</li> <li>対偶は《「実質賃金率が$2$ポイント下落しても、利潤率が$2$ポイント上昇する」でないなら、$A$ がゼロではない》かな?</li> <li>$R(w,p)$と考えて、全微分するほうがわかりやすかもしない。 $$\displaystyle \frac{\mathrm{d} R}{\mathrm{d} t} = \frac{\partial R}{\partial p} \frac{\mathrm{d} p}{\mathrm{d} t} + \frac{\partial R}{\partial w} \frac{\mathrm{d} w}{\mathrm{d} t}$$ </li> <li>実際に計算してみると $$R_1 = \frac{240}{120+180(450/900)}-1 = 1/7 = 0.1428571428571428$$ $$R_2 = \frac{240}{120+180(450\times 1.08/900\times 1.10)} - 1 = 0.15183246073298418$$ $$R_2 - R_1=0.008975317875841382$$ </li> <li>つまり、約 $0.9$ ポイント上昇したことになる。</li> </ul> }} #qanda_set_qst(14,4,0){{ $$R =\frac{Bp}{Ap+Lw}-1$$ <p>[労働の生産力の上昇①] 「同じ$L$時間に、2倍の小麦$A$を播くことができるようになり、収穫$B$が2倍になる」とき、利潤率$R$は上がるか下がるか。理由を述べよ。</p> }} #qanda(14,4) #qanda_solution(14,4){{ <h4>解答</h4> <ul> <li>上昇する。</li> <li>労働者が取得する小麦の量 $Lw/p$ は変わらない。純生産物 $B-A$は2倍になる。物量タームで利潤率を決める式の分子$B$は2倍になるが、分母は2倍にならない($A$ は2倍になるがLw/p$は2倍にならないから)。故に、$R$は上昇する。</li> </ul> <h4>解説</h4> <ul> <li>$$R =\frac{(B/A)}{1+(L/A)(w/p)}-1$$</li> <li>$(B/A)$ は一定。$(w/p)$も一定。$(L/A)$ は下落。故に、$R$は上昇する。</li> </ul> <h4>After</h4> <ul> <li>とてもクレバーな回答がありました。</li> <li>「Lも2倍になった時に同じとなるから、分母でAだけ2倍になるとより分子の小さい場合では」</li> <li>「L時間も二倍になったらRは同じだが、Lは変わらないから」 very good!!</li> </ul> }} #qanda_set_qst(14,5,0){{ $$R =\frac{Bp}{Ap+Lw}-1$$ <p>[労働の生産力の上昇②] 「小麦の品種改良で、同じ小麦$A$で2倍の小麦$2B$が収穫できるようになった」とき、利潤率$R$は上がるか下がるか。理由を述べよ。</p> }} #qanda(14,5) #qanda_solution(14,5){{ <h4>解答</h4> <ul> <li>上昇する。</li> <li>投入$(A,L)$が一定$B$が2倍になるので、$R$は上昇する。</li> </ul> <h4>解説</h4> <ul> <li>$$R =\frac{(B/A)}{1+(L/A)(w/p)}-1$$</li> <li>$(w/p)$も一定。$(L/A)$ は一定。$(B/A)$ は上昇。故に、$R$は上昇する。</li> </ul> <h5>生産力と利潤率</h5> $$At+L=Bt$$ $$(Ap+Lw)(1+R)=Bp$$ <p>$ L =(B-A)t$ を二番目の式に代入して整理すると</p> $$R = \frac{1}{A/B + t(1-A/B)(w/p)} -1$$ <p>したがって、生産力の上昇=生産に必要な労働時間$t^\downarrow$ は必ず$R^\uparrow$ となる。 </p> <h4>まとめ</h4> <p>利潤率を変化させる要因には、次のものが考えられる。 <ol> <li>実質賃金率の低下 $(w/p)^\downarrow$</li> <li>生産力の上昇① 生産に必要な労働時間 $t^\downarrow$</li> <li>生産力の上昇② 原材料の相対的減少 $(A/B)^\downarrow$</li> </ol> }} **資本の蓄積 [#b2fe2e1a] -利潤はすべて消費されるわけではない。 > +生産手段$A$を購買するため +労働力$L$を購買するため < に生産に追加される。利潤(剰余生産物)が再投下されることを「''資本の蓄積''」という。 --注意:資本の蓄積以外にも、再生産の規模が拡大することはある。例えば、植民地からの掠奪とか。資本額は増加するが、これは「資本の蓄積」ではない。 --資本による生産がいったん軌道に乗ると、資本の蓄積によって、資本主義経済は自分自身の内部から利潤を生みだしそれを蓄積することで、自立して拡張できる。 --しかし、出発点となった資本は、資本の蓄積によって生じることはない。それは、資本の蓄積以外の方法で、獲得される必要がある。 --資本の蓄積以外の方法による資本の形成を、「''資本の原始的蓄積''」とよぶ。資本主義は、"資本の原始的蓄積によってはじまる"というようにいうのだが、紛らわしい用語法だと思う。 -資本の蓄積によって、生産規模は拡大する。この増大率が成長率にあたる。 #qanda_set_qst(14,6,0){{ <p>利潤率と成長率は、基本的に一意する。</p> <p>利潤率と成長率は、基本的に一致する。</p> <p>真か偽か、理由を述べよ。</p> }} #qanda(14,6) #qanda_solution(14,6){{ <h4>解答</h4> <ul> <li>偽</li> <li>利潤のどれだけを投資に回すかという比率(蓄積率)によって、成長率は左右される。</li> <li>$成長率=利潤率 \times 蓄積率$</li> </ul> <h4>解説</h4> <ul> <li>資本主義のもとでは、利潤率だけではなく、蓄積率をも高めようとする圧力が強く作用する。</li> <li>これは資本主義の限界(これは、あくまで理論ではなく、講師の考えです。)。</li> <li>事実、成長率を一定に保つことは、指数関数的な爆発を招く。</li> <li>成長率をプラスの範囲で徐々に低下(傾向的逓減)さればよい、というのでも不充分。</li> <li>超長期にみれば、経済成長も人口の増加も、絶対的な前提ではない。</li> <li>地気球規模の環境を考えれば、どこかで成長率を下げること、マイナス成長の経済に進むことは必要。</li> <li>ただし、低利純率の結果、低成長になるのではない。高利潤率で低成長率の経済もあり得る。</li> <li>「高利潤率でゼロ成長の経済」というのは、利潤が生産規模の拡大以外の目的に使われること。</li> <li>資本家の「浪費」のためではなく、租税として徴収され、社会的福祉のために消費される必要がある。</li> <li>まず成長しないと、先に進まない、というのは資本主義が自然に生みだすイデオロギー。</li> <li>効率のよい経済(高利潤率)のもとで、マイナス成長(高福祉)が実現できない、ところに、資本主義の限界がある。</li> </ul> }} ------- #qanda_set_qst(13,21,0){{ <p>ここまでの内容で、質問があればどうぞ。</p> }} #qanda(13,21)