#author("2022-11-17T15:24:34+09:00","default:obata","obata")
#author("2022-11-17T16:09:31+09:00","default:obata","obata")
CENTER:[[前回◁>2022年度/冬学期/第7講]]&color(#447CFF){第&size(32){8};講};[[▷次回>2022年度/冬学期/第9講]]
#qanda_setstid(2022-11-10 16:10:00,90)
#qanda_who
#qanda_mathjax
------
✔  REC ON&br;
✅ 接続チェック

#qanda_set_qst(8,20,0){{
<p>&#x2714; 接続状態をおしえてください。</p>
}}
#qanda(8,20)

CENTER:&size(25){&color(yellow,navy){&nbsp;労働の構造&nbsp;};};
#qanda_points_chart
#qanda_points_hist
------
#contents

**ねらい [#vb57ece6]
+労働の構成要素間の関係を明らかにする(構造化する)。
+問題:「技術発展は労働のすがたをどのように変えるのか」に答えるための分析方法を考える。

**意識の内部構造 [#ofbd731f]

RIGHT:3分
#qanda_set_qst(8,1,0){{
  <p>「する」という行為は、実際に「する」何か(A)と、そう「させる」何か(B)で成りたっている。</p>
  <p>つまり、$B - [command] \to A$のようなかたちになっている。commandを発するほうが(B)でcommandをうけるほうが(A)</p>
  <p>(A)(B)に適当な漢字二字をあててみよ。</p>
}}
#qanda(8,1)
#qanda_solution(8,1){{
  <h4>解答</h4>
  <ul>
    <li>(A)身体(B)意志</li>
  </ul>
  <h4>解説</h4>
  <ul>
    <li>ネーミングの問題なので、ある範囲でいろいろ考えられると思います。</li>
    <li>さらに身体が外界に対して及ぼす作用を「操作」operation とよぶことにします。</li>
    <li>$意志 - [command] \to 身体 -[operation]\to 外界$</li>
  </ul>
}}

#qanda_set_qst(8,2,0){{
<p>身体には 「操作」operation と対をなすもう一つのはたらき(機能)がある。</p>
<p>なんとよんだらよいか、漢字二字をあててみよう。</p>
}}
#qanda(8,2)
#qanda_solution(8,2){{
  <h4>解答</h4>
  <ul>
    <li>知覚</li>
  </ul>
  <h4>解説</h4>
  <ul>
    <li>これもある程度自由度がありますが、ここでは次のように定義しておきます。感覚でもよいのですが、次に述べる能動性を強調するために、ここでは知覚のほうを使います。</li>
    <li>「知覚」というのは五感による感覚で知ることです。考えて知るのではありません。第六感?微妙です。</li>
    <li>$知覚 \leftarrow[刺激]- 身体 \leftarrow[刺激]- 外界$</li>
    <li>「知覚」perception, five senses をどこにどう位置づけるか、いろいろあると思いますが、ここでは外界からの刺激を一つの像(イメージ)にまとめる場として「知覚」という用語を使うことにします。</li>
    <li>知覚はただ受動的に外界からの刺激を《反映》するのではなく、有意味な像 Gestalt に《構成》する能動的なはたらきをもつ点に注目します。<a href="https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%93%E3%83%B3%E3%81%AE%E5%A3%BA#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Face_or_vase_ata_01.svg">ルビンの壺</a></li>
  </ul>
  <h4>発展:「意識」</h4>
  <ul>
    <li>意志を出口にもち、知覚を入口にもち、両者を内部で関連させる場を「意識」とよぶことにします。</li>
    <li>意識の内部は、何層ものレイアで構成され、入力と出力が関係していると考えられますが、ここではこの内部構造を分析することはしません(というより、できません)。</li>
    <li>ただ、知覚から意志がダイレクトに結びついているのではない点は重要です。意識の内部には「記憶」とよぶべきデータストックがあり、これが参照され、同じ知覚でも異なる意志が生まれます。この講義ではこの分岐を「判断」とよぶ。</li>
    <li>意識には、このほかにもいろいろな機能が考えられるが、「する」=労働の考察に必要な範囲で最低限必要なのは、意識=意志+知覚+記憶+判断+... あたりでよいだろう。</li>
  </ul>
}}
#qanda_set_qst(8,3,0){{
<p>「見る」と「見える」、「聞く」と「聞こえる」の関係を、意識=意志+知覚+記憶+判断+...のモデルで説明せよ。</p>
}}
#qanda(8,3)
#qanda_solution(8,3){{
  <h4>解答</h4>
  <ul>
    <li>知覚に現われた「見える」像を記憶、判断....するため、意志によって顔を動かし視線を操作して再知覚するのが「見る」</li>
  </ul>
  <h4>解説</h4>
  <ul>
    <li>操作するのは、視線だけではないでしょう。手でもって向きを変えたり、いろいろやると思いますが、「見えるものをよりよく見る」というループが形成されるわけです。</li>
    <li>知覚と意志は、ループを構成している点が第一のポイント。</li>
    <li>しかし、このループは単純に一対一で結ばれているのではく、意識の場を通じて、記憶、判断、etc によって複雑な分岐を構成している点が第二のポイント。</li>
    <li>少しむずかしい説明になりましたが、センサー+CPU+アクチュエータのような回路をイメージしてください。</li>
  </ul>
  <h4>After</h4>
  <ul>
    <li>「見る」に「知覚」だけではなく「意志」が関わることまでは代替の人が指摘していました。これを1点としました。</li>
    <li>どのように関わるのか、まで踏みこんでいれば加点しました。</li>
    <li>「見ようと思って」という、この「思って」のことを、意志、意図と考えている人が多いかもしれませんが、不充分です。「意志」→「操作」なので、身体操作を通じて「見えている」->「よく見る」というフィードバックがかかることがポイントなのですが、これを指摘した回答はありませんでした</li>
  </ul>
}}

RIGHT:3分
#qanda_set_qst(8,4,0){{
  <p>「見る」「聞く」と「はかる」「数える」の関係は?</p>
}}
#qanda(8,4)
#qanda_solution(8,4){{
  <h4>解答</h4>
  <ul>
    <li>知覚された像を「モノ」として「はかる」「数える」。</li>
  </ul>
  <h4>解説</h4>
  <ul>
    <li>手で持って重いとか触って熱いとか、いうのが知覚です。</li>
    <li>重量計のメモリも目で読みとるので感覚によるですが、これは直接的な感覚ではなく、モノの状態を数量に変換しているのです。</li>
    <li>重量計や温度計を使わなくても、「数える」こと自体も、直接的な感覚をこえる操作をしています。</li>
    <li>要するに、人間は外界を物理化学的な刺激で直接「感じる」だけではなく、外界を「モノ」の世界として捉えているわけです。</li>
  </ul>
  <h4>After</h4>
  <ul>
    <li>”「判断・記憶のため」に「数える」「はかる」がある”というタイプの回答を1点としました。</li>
    <li>その「ために」どうするか、で、見えたままの像 image ではなく、それを加工すること=抽象化に関わる指摘があれば加算しました。</li>
    <li>ポイントは、知覚=イメージ 数量=モノの量で、イメージ ≠ モノをどこまで理解できているか、にあります。</li>
    <li>数や量は直接知覚できないのです。</li>
  </ul>
}}

#qanda_set_qst(8,5,0){{
意識=意志+知覚+記憶+判断+...のモデルで、「はかる」「数える」ことの効果を説明せよ。
}}
#qanda(8,5)
#qanda_solution(8,5){{
  <h4>解答</h4>
  <ul>
    <li>「意志+知覚」と「記憶+判断+...」の間を間接的に結びつける効果</li>
    <li>多いか少ないか、という方法で、モノの数量をつかった分岐ができるようになる。</li>
  </ul>
  <h4>解説</h4>
  <ul>
    <li>労働において、モノの量をはかる、モノの数をかぞえるというのは、重要な意味をもつ。なぜなら、労働は外部の自然過程をコントロールする作用であり、数量はコントロールに不可欠は条件となるから。</li>
    <li>言語の使用は「はかる」「かぞえる」と密接な関係がある。さて、ではたとえば「リンゴ」というコトバを使わなくても、リンゴなるモノの数を「かぞえる」ことはできるだろうか。きいてみたい問題ですが、これはむずかしいですね。</li>
  </ul>
}}

#divregion(意識の構造,admin,lec=8,qnum=5)
#qanda_raw{{
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  <script type="text/javascript" src="https://viewer.diagrams.net/js/viewer-static.min.js"></script>
}}
#enddivregion

**労働対象+労働手段 [#s34dbaf2]
RIGHT:1分
#qanda_set_qst(8,6,0){{
  <p>身体が作用するのは、労働対象か、労働手段か。</p>
}}
#qanda(8,6)
#qanda_solution(8,6){{
  <h4>解答</h4>
  <p>労働手段</p>
  <h4>解説</h4>
  <ul>
    <li>手で金づちをもち、金づちでクギを打つ。クギで金づちを打つことはできない。「AをCでBにする」という関係には「Cをやって次にAをやる」という順序構造がある。$$(手 \to (金づち \to クギ))$$という、入れ子の構造になっている。</li>
    <li>労働手段にはたいてい、人間が操作するための特定の部分が存在する。柄、ハンドル、レバー、ペダル、ボタン、キーボード etc みんな、広い意味での入力装置。</li>
  </ul>
}}

RIGHT:1分
#qanda_set_qst(8,7,0){{
  <p>労働対象と労働手段の関係を支配するものはなにか。</p>
}}
#qanda(8,7)
#qanda_solution(8,7){{
  <h4>解答</h4>
  <p>自然法則</p>
  <h4>解説</h4>
  <ul>
    <li>労働対象と労働手段の関係は、モノがモノと作用する過程です。つまり「自然過程」です。</li>
    <li>クギの頭に垂直にヘッドが当たるように、金槌の柄をコントロール「する」のは人間です。ここにはどの角度にどの強さでという自由度が存在します。</li>
    <li>しかし、打ち下ろされた金槌のヘッドと釘の間にはたらくのは物理法則で、人間の意志ではどう「する」こともできない客観的必然性があります。</li>
  </ul>
}}

RIGHT:3分
#qanda_set_qst(8,8,0){{
  <p>労働手段について、日常しばしば道具と機械の区別がなされる。</p>
  <p>区別の基準となっているのは「自動」という概念である。</p>
  <p>しかし、ただ人間が操作しているかどうかだけでは、自動の規定としては決定的ではない。金槌の例でみたように、モノとモノの作用過程は、自然法則に基づくが、これを「自動」とはよばない。</p>
  <p>人間が操作するかどうかだけではない、「自動」とよばれる過程に特有な性質はなにか?</p>
  <p>その性質が、どうなると「自動」とよべるのか?</p>
}}
#qanda(8,8)
#qanda_solution(8,8){{
  <h4>解答</h4>
  <ul>
    <li>同じパターンのくり返し</li>
    <li>①一つのパターンが終わったとき、人間が操作なしに、はじめにもどすこと。</li>
    <li>②さらに条件によってくり返しを終えること(制御すること)</li>
  </ul>
  <h4>解説</h4>
  <ul>
    <li>ふつう機械とよばれる労働手段をみると、基本になっているのは、回転・往復運動です。同じパターンを繰り返しています。</li>
    <li>これに作用のためのデバイスを取り付けると、金槌で何回も叩くとか、ノコギリを何度もひくとか、人間が同じことを何度もしなくてもすむようになる。</li>
    <li>人間は状況をみて、同じパターンを繰り返すのですが、繰り返すタイミングをモノとモノの関係に埋め込めば「自動」になる。つまり、人間がやらなくてはならないのは、1回、2回...と、繰り返し元にもどすタイミングの判断だったことになります。</li>
    <li>だだこの①だけではエンドレスのループになるので、さらに②のストップをかけるところまでモノの世界に移すことで、より強い意味での「自動」になるわけです。</li>
  </ul>
}}
#qanda_set_qst(8,9,0){{
<p>「自動車を自動運転にする」というときの「自動車」の「自動A」と「自動運転」の「自動B」の違いを簡潔に述べよ。</p>
}}
#qanda(8,9)
#qanda_solution(8,9){{
  <h4>解答</h4>
  <ul>
    <li>自動A:決まった方向への同じ早さで運動が持続すること</li>
    <li>自動B:目的にあわせて、外部の状況の変化に対応して、運動の変更がなされること</li>
  </ul>
  <h4>解説</h4>
  <ul>
    <li>一般的に説明しようとするとむずかしいところがありますが、問題13の①+②と同じ原理です。</li>
    <li>自動車といういうけれど、その自動は運転操作を必要とするものです。20世紀になって普及した自動機械の多くは、自動車型の運転・操縦という操作 operation を必要とするものでした。その意味で、この自動装置は労働をなくすものではない。自動車一台はかならず一人の運転手を必要とし、雇傭量は自動車台数に比例してふえるといってもよい。</li>
    <li>18世紀なかごろにはじまる英国産業革命では、巨大な水車や蒸気機関などの大出力を使った連続型自動機械による生産方法が誕生した。これは、同質大量の素材生産を飛躍的に増大させた。ここだけみると、労働の排除が急速に進んだようにみえる。しかし、その素材を消費可能なモノのかたちにするところでは、大量の操作型労働が必要となる。</li>
    <li>棉花から綿布を製造する過程では、手紡ぎ手織りの労働は不要となったが、大量に生産された綿布を衣服に縫製する過程では、ミシン sawing machine を操縦する大量の労働が必要となった。棉花から衣服を作るという全体を通してみると、自動化で労働が一方的に排出されるということにはならなかった。自動車の内部に含まれている、自動A+操作操縦労働という関係が、棉花 → 衣服 という関係全体に引き延ばされて再現されているのである。</li>
    <li>20世紀の鉄素材を典型とする重工業型機械装置産業でも基本原理は同じである。労働手段としての自動機械の登場とともに提起された「機械は労働を不要にする」という問題は「自動A+操作操縦労働」という原理で解くことができる。</li>
  </ul>
}}

#qanda_set_qst(8,21,0){{
<p>ここまでの内容で、質問があればどうぞ。</p>
}}
#qanda(8,21)

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