#author("2022-11-23T09:52:46+09:00","default:obata","obata") #author("2022-11-26T09:19:44+09:00","default:obata","obata") CENTER:[[前回◁>2022年度/冬学期/第8講]]&color(#447CFF){第&size(32){9};講};[[▷次回>2022年度/冬学期/第10講]] #qanda_setstid(2022-11-17 16:10:00,90) #qanda_who #qanda_mathjax ------ ✔ REC ON&br; ✅ 接続チェック #qanda_set_qst(9,20,0){{ <p>✔ 接続状態をおしえてください。</p> <hr> <p>コンピュータの数値計算について学んだことは...</p> <p>8ビットの演算装置で$$11 = 2^3 \times 1 +2^2 \times0 + 2^1 \times 1 + 2^0\times 1$$ なので8ビットの演算装置では2進数で$$00001011$$</p> <p>では$-11$は2進数ではどう表現されますか?</p> }} #qanda(9,20) #qanda_solution(9,20){{ <p>本日の講義は、労働結合のエッセンスだけ話して、次回の「情報通信技術と労働」に進みたいと思います。そのための予備情報としてちょっときいてみました。</p> <p>$11110100$</p> <p>$11110101$</p> <hr> <p>$00001011$のビットをすべて反転して加えると</p> $$ \begin{align} &00001011\\ &11110100(+\\ &11111111 \end{align} $$ <p>さらに1ビットシフトすると</p> $$ \begin{align} &11111111\\ &00000001(+\\ [1]&00000000 \end{align} $$ <p>となる。先頭の$[1]$は桁あふれするので捨てられて$00000000$となる。したがって、反転して1ビットシフトした値を加えると</p> $$ \begin{align} &00001011\\ &11110101(+\\ [1]&00000000 \end{align} $$ <p>$00001011$に足してゼロになるのは$11110101$.</p> つまり$-11$は二進数表記で$11110101$ <hr> <p>引き算用のレジスターがあるわけではありません。マイナスの数とプラスの数を別扱いするのではなく、ビットのon/off という一つの原理で処理する。はじめてこれを知ったとき「シンプルでスマートな方法だな!」と感心しました。</p> }} #qanda_points_chart #qanda_points_hist ------ #contents **ねらい [#vb57ece6] +前回のやり残した「目的物」について説明します。この項は、講義題目としては「労働の構造」に属します。 +「労働の構造」全体のまとめとして、オブジェクトとしての労働という考え方も図解します。 +労働の結合原理について、エッセンスを話します。詳しくは教科書の「労働組織」の項をみてください。おもしろい問題がいろいろあるのですが、今夏の講義では時間の都合でカットします。 **目的物 [#q44c3f92] #divregion(目的物のはどのように形成されるのか,admin,lec=8,qnum=9) -「〜を〜で〜にする」というときの「〜に」はどのように決まるのか。この問題はむずかしいが、情報通信技術の発展と労働の変容の関係を考えるポイントとなる。この後の講義で具体的に説明するが、その基本は教科書の「他人のための労働」の項(p.109)に示されている。 労働概念のコアに位置する意識は,最終目的を主体の直接的欲求に基づいて設定するだけではない.他人に よって逐一指図されなくても労働を継続できるのは,意識が自律性をもつからであるが, 自律的に追求される目的自体を,意識は外部から受け取ることもできる. 直接的欲求と切り離して, 目的そのものを意識的に追求できるという労働の特性は,他人との関係において強く現れる. その意味で,相手の意図を理解するコミュニケーション能力は,労働に欠かせない. (1) 自然過程を分節化して制御する能力と, (2) 直接的欲求という刺激なしに,中間目的を独立に追求できる能力とが結びつくことで,労働力には他人の目的を自分の目的として引き受けて自主的に遂行できるという独自の特性が生じる. このような目的の受容は,他人の構想内容を直接聞き取り,それを主体的に 追求するというかたちで実現されるだけではない.目的となる完成品を示して,これと同じモノをつくれと命じるというかたちでも可能である. さらに, 労働の内容を具体的に特定するためには,労働手段や労働対象を与え,このなかで労働力を支出させるというかたちもある. 労働力は自律性をもつが,それは主体を取りまくモノの世界で発揮される. モノの世界を条件づければ,そこで発揮される労働の内容もそれによって方向づけられる. 労働の環境が,労働の様態を指示するのである. とりわけ,主体が内的自然たる身体を外的自然に接合する労働手段は,指示力に卓越する. 金槌は叩く動作を,包丁は切る動作を無言のうちに指示する. このため多くの場合,(1) 主体に最終目的を明確 に伝え,(2) 労働の場を設定すれば,外部から逐一指示を与えなくても,労働力は所期の労働となって現れるのである. #enddivregion #qanda_set_qst(9,1,0){{ <p>次の文で<<外部>>と同じ意味で使われている単語は?</p> <p>「労働概念のコアに位置する意識は,最終目的を主体の直接的欲求に基づいて設定するだけではない.他人に よって逐一指図されなくても労働を継続できるのは,意識が自律性をもつからであるが, 自律的に追求される目的自体を,意識は<<外部>>から受け取ることもできる. 直接的欲求と切り離して, 目的そのものを意識的に追求できるという労働の特性は,他人との関係において強く現れる. その意味で,相手の意図を理解するコミュニケーション能力は,労働に欠かせない. (1) 自然過程を分節化して制御する能力と, (2) 直接的欲求という刺激なしに,中間目的を独立に追求できる能力とが結びつくことで,労働力には他人の目的を自分の目的として引き受けて自主的に遂行できるという独自の特性が生じる.」</p> }} #qanda(9,1) #qanda_solution(9,1){{ <h4>解答</h4> <p>「他人」「相手」</p> <h4>解説</h4> <ul> <li>この講義では明確なかたちをもたない欲求=ニーズ=必要に対して、それを満たす「モノ」を「目的物」とよぶことにします。</li> <li>「欲求」→「目的物」は、漠然としたイメージを仕様を定め実現可能なモノに作りあげる過程です。</li> </ul> }} **オブジェクトとしての労働 [#r353f402] -労働は内部に複数の属性とそれらのふるまいをもつオブジェクトとなる。 #divregion(オブジェクトとしての労働,admin,lec=9,qnum=1) #qanda_raw{{ <div id="lp-layer3"></div> <script src="https://unpkg.com/konva@7.0.7/konva.min.js"></script> <script src="./js/konva/coordinate.js"></script> <script src="./js/konva/connect-node.js"></script> <script src="./js/konva/2022/lp-layer3.js"></script> }} #enddivregion CENTER:&size(25){&color(yellow,navy){ 労働結合 };}; **協業と分業 [#d5ac103c] -労働は互いに連結する。 #qanda_set_qst(9,2,0){{ <p>「オブジェクトとしての労働」の図から、労働が連結する二つのやり方が考えられる。</p> <p>二つのやり方が重ならない対をなすように規定せよ。</p> }} #qanda(9,2) #qanda_solution(9,2){{ <h4>解答</h4> <ol> <li>目的の側面での結合:同じ目的を共有して協力する</li> <li>モノの側面での結合:相手が使える労働対象や労働手段をつくる</li> </ol> <h4>解説</h4> <ul> <li>一番目が「協業」cooperation です。ただ、協業というコトバは、最近は、異業種の連繋の意味に使われるので、ここでは(というかマルクス経済学のなかでは)労働におけるcooperation の意味です。</li> <li>二番目が「分業」になります。このコトバも、多様な意味に使われます。</li> <li>分業はdivision of labour の訳語です。文字通り、一つの労働をいくつかの作業に分けて、何人かで手分けをすることですが、これを<a href="https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E5%AF%8C%E8%AB%96">アダム・スミス</a>が、実はこの方式が工場のなかだけではなく、町全体を見れば、国全体を見れば、違う工場の間でも広くおこなわれている、そして工場のなかでも間でも分業は生産力を高めるのだ、それがどこまで広がるかは、生産物の市場の広さによるのだ、というように視点を拡張して、市場のメリットを強調するキーワードとして「分業」を用いたのです。</li> <li>このため、分業から労働の分割・結合という側面が薄れ、サプライチェインというような、部品・完成品のつながりを意味するようになっています。</li> <li>教科書の「1.2 労働組織」(p.110-122)のエッセンスです。</li> <li>ちゃんと説明すると長くなるのですが、ポイントだけ、教科書の図を使って説明します。</li> <li>いちばんむずかしい問題は「協業はなぜ生産力を高めるのか?」「分業はなぜ生産力を高めるのか?」に一般解を与えること、つまり原理的な説明です。事例はいくらでもあげられるでしょうが、それでは「なぜ」の答えにはなりません。</li> </ul> }} #qanda_set_qst(9,3,0){{ <p>工場の内部での分業と、工場の間の分業には決定的な違いがある。</p> <p>前者にあって後者にないものは何か?</p> }} #qanda(9,3) #qanda_solution(9,3){{ <h4>解答</h4> <p>計画、生産技術、比率の事前決定...</p> <h4>After</h4> <ul> <li>コミュニケーションや意思疎通を指摘した回答が多くありました。</li> <li>講義では「分業」と「協業」を「対」になるように定義しました。</li> <li>分業はモノとモノの連鎖、いわば「無言」の結合です。</li> <li>問題文意に「分業」の一語がなければ、「協業」の面で、つまりコミュニケーションによる意思形成の側面でも、工場内と工場間で決定的な違いが生じるでしょう。</li> <li>しかし、ここでは「分業」にかぎって尋ねているのです。</li> </ul> }} #qanda_set_qst(9,4,0){{ <p>「工場でもオフィスでも、協業だけがおこなわれることはない。協業は分業を前提にしておこなわれるのがふつう。だから、分業と切り離して協業を考えるのは無意味だ。」</p> <p>この主張について論評せよ。</p> }} #qanda(9,4) #qanda_solution(9,4){{ <h4>解答</h4> <p>現実に存在する対象を合成物とみて、その構成要素を抽象化して分析するのは、理論的アプローチの基本である。</p> <h4>After</h4> <ul> <li>正答には二つのタイプがありました。</li> <ol> <li>「協業は分業を前提にしておこなわれるのがふつう。」に対して、分業を前提にしない協業、つまり「純粋な協業」が存在するから、不適切だという回答。</li> <li>「協業は分業を前提にしておこなわれるのがふつう。」であることを認めて、協業と分業の結合体を分析するためには、両者が交わりをもたない、純粋な協業概念、純粋な分業概念を理論的に構成しする必要があるという回答。</li> </ol> <li>この講義の流れは、協業と分業の理論的概念構成にありました。この点をふまえて、1番目は2点までとし、2番目を3点としました。</li> </ul> }}