![[PukiWiki]](image/sugar_bowl_s.png "[PukiWiki]")
#author("2022-05-20T10:04:50+09:00","default:obata","obata") #author("2022-05-31T08:36:59+09:00","default:obata","obata") CENTER:[[前回 ◁ >2022年度/夏学期/第2講]]&color(#447CFF){第 &size(32){3}; 講}; [[▷ 次回>2022年度/夏学期/第4講]] ----- #qanda_setstid(2022-05-12 16:10:00,90) #qanda_who #qanda_mathjax ------ CENTER:&size(25){&color(yellow,navy){ モノと商品 };}; //#qanda_points_chart //#qanda_points_hist ✔ REC ON&br; ✅ 接続チェック ------ #qanda_set_qst(3,20,0){{ <p>✔ 接続状態をおしえてください。</p> }} #qanda(3,20) -はじめに今年度の二つの講義「経済学」「経済理論」の概略を説明します。 #divregion(講義全体の構成,admin,lec=3,qnum=1) +前期：市場とは ++第一の課題は「貨幣とはなにか」を明らかにすること。 ++第二の課題は「資本とは何か」を明らかにすること。 ++教科書の第１篇「流通論」に第３篇「機構論」の「信用機構」を先取りして説明。 +後期：生産とは ++第一の課題は「労働」と生産の関係を明らかにすること。 ++第二の課題は価格の決定原理を明らかにすること。 ++第２篇「生産論」から第３篇の「生産価格」まで説明。 -前期＋後期で、資本を中心とする市場が社会的再生産を編成処理する「資本主義経済」のしくみが明らかになる。 -------- ***この講義でわかること [#db402109] +資本主義の基本的なしくみ（貨幣と資本が実在する市場＋社会的再生産） +経済理論の組み立て方 -この講義でやらないこと +特定の経済現象の解説：経済ニュース早わかり「ＮＹ・東京市場株価急落を単純に「0.5%利上げ懸念」で片づけてよいのか？」... +知識の寄せ集め：「フィンテックって？」「イーサリアムって？」... #enddivregion **モノと商品 [#h941d3aa] -「貨幣」というものが実際に存在する「市場」が最初の大きなテーマです。 -しかし「貨幣」とはなにか、これを明確にするのはけっこうむずかしい。 #qanda_set_qst(3,1,0){{ <p>「貨幣とは」でweb検索してみるといろいろでてくる。そのなかのひとつ、</p> <p> <a href="https://dictionary.goo.ne.jp/word/貨幣/">「商品の価値尺度や交換手段として社会に流通し、またそれ自体が富として価値蓄蔵を図られるもの。鋳貨・紙幣のほかに、当座預金などの信用貨幣を含めていう場合が多い。」</a> </p> <p>という説明を吟味（批判）せよ。</p> }} #qanda(3,1) #qanda_solution(3,1){{ <h4>解答</h4> <ul> <li>前半は機能の羅列。「商品」「価値尺度」... など意味不明。</li> <li>後半はアレコレ例をあげて「....のようなもの」と定義をぼかす辞書の常套手段。「似てる」と「同じ」は違うのに！</li> </ul> <h4>解説</h4> <ul> <li>こういう基本的な用語に関して、辞書を引くのはそもそもムダなことが多いのです。さらに「....によれば」なんて、これをコピペするのは思考力をどんどん低下させるだけ。</li> <li>「貨幣」を説明するのに貨幣以上の説明が必要な言葉がいくつも登場する。これをさらにweb検索すると累乗で説明が必要な言葉が爆発。</li> <li>もっと基礎的な言葉から、最低限必要な定義を順々に積み重ねて説明する必要があるわけです。</li> <li>でも子供に<span class="tooltip">「おカネってなに？」<span class="dscp"><span class="text">「おカネちょうだい」という子はいますが、「おカネってなに？」なんてきく子に、これまであったことはありません。）</span></span></span>ときかれたら、どう答えますか。まじめに答えてあげましょう。</li> <li>毎日使っているものだし、いまさら知らないとはいえないでしょう。ということで、私が辞書を書くとすれば<span class="tooltip">....<span class="dscp"><span class="text">お店のものを買えるもの。子供には「商品」といってもわからないでしょう。「買う」が大事。貨幣の説明に「交換」は禁物。ポイントは「売買」です。</span></span></span></li> <li>貨幣は、それ自身、単独で定義すべきものではありません。相手から説明する必要があるのです。</li> <li>ともかく、$$貨幣 := (X)を(Y)するもの$$ という定義になります。この$(X)$と$(Y)$に、紛れのない定義を与えてゆきましょう。</li> <li>先に答えをいっておくと(X)は「商品の価値」です。</li> <li>まず「商品」の定義が必要で、つぎにその属性として「価値」の定義を与えることにします。</li> <li>ただし「商品」もまた、何かをもとに説明すべきものです。</li> <li>ここでは、①「モノ」の定義を与え、②その部分集合として財の定義を与え、③さらにその部分集合として商品の定義を与えるという三段構えで説明します。</li> </ul> <h4>After</h4> <ul> <li>問題2-4の「解説」でのべたように、「吟味」「解釈と批判」というのは、「正確に読んで問題点を指摘する」ことです。</li> <li>「《商品の価値尺度や交換手段として社会に流通し》、また《それ自体が富として価値蓄蔵を図られる》もの。鋳貨・紙幣のほかに、当座預金などの信用貨幣を含めていう場合が多い」という説明の「論理の組み立て方」を分析してほしかったのです。</li> <li>「《AとBとしてXし》、また《CとしてYするもの》」という構造の適否を考えてほしかったのです。</li> <li>ただ、この「AとBとしてXし」というのはちょっとヘンで、「商品価値の尺度としてはたらき、交換手段として社会に流通し、....」といいたかったのかもしれません。それなら、「AとしてXし、BとしてYし、またCとしてZするもの」という構造になります。であれば、こう解釈して批判することになります。</li> <li>ともかく説明文の問題点を指摘しようとしているものに1点、説明文全体のしくみの分析に進んでいれば2点、批判の内容が適切なら3点。</li> <li>要するに、Webで検索して「まーまー、あってる」「ほぼよい」という曖昧な態度でコピペするのは、この講義ではナシです。</li> <li>キッチリ分析して、100パーセントあっているのか、真なのか偽なのか、判断する力をつけましょう。</li> </ul> }} #qanda_scorechart(3,1) **モノ [#d2ed18ba] ***貨幣に迫る途（ロジック、方法） [#vf5e39a4] -「貨幣」は単独で存在するものではない。「貨幣」を定義には、その相手（ペア、「対」）を定義する必要がある。 -その相手とは「商品」。貨幣は「買う」もの。「売る」ものがあってはじめて意味をもつ。 -ところが「商品」という概念がまた、明確に定義しようとするとむずかしい。似 -「商品」を定義するには、その対象となる《もとのもの》を、まず明確にする必要がある。 -しかし《もとのもの》の《もとのもの》の.... とさかのぼると、キリがない。こういうとき、どうしたらよいか？ このロジックがうまく使えか？ #region(このロジックって？) -否定 - eg.点とは「位置をもち、部分をもた《ない》ものである」 #endregion -このロジックで、われわれを取り巻くあらゆる「ものごと」を、商品と「なり得る集合」と「なり得《ない》集合」に二分する。「なり得る集合」を「モノ」と名付ける。 -モノからはじめて、タダのモノで''ない''財、タダの財で''ない''商品と順繰りに否定形で定義。 #qanda_raw{{ <div id="monoGoodsCommodity"></div> <script src="https://unpkg.com/konva@7.0.7/konva.min.js"></script> <script src="./js/konva/coordinate.js"></script> <script src="./js/konva/2021/monoGoodsCommodity.js"></script> }} ***モノの定義 [#t71e4838] -「モノ」の定義は教科書に書いてあります。 //#divregion(教科書の定義,admin,3ec=1,qnum=1) 「まず，モノからはじめよう.ここでモノというのは，とりあえず「あれ」と か 「これ」とか，指し示し特定できる外的対象のことである. 指し示す側は， 漠然と人間とよぶかわりに，意志と行為を重視して，主体とよぶことにする. モノは主体の関心の対象であり，主体はモノに取り囲まれている. 主体に対し て，モノは客体をなすが，それは有体物に限られるわけでない. 無体物であっ ても， どの主体の目からみても，明確な境界が存在し，その間に重複がなけれ ば，モノといってよい. 土地のように連続した平面であっても，それが境界線で区切られれば，それぞれ独立したモノとして現れる. 知識なども，主体によって発見され，未知から既知になった対象として，モノとして性格をもつ.逆に， まったく手つかずの外的自然は， ここでいうモノにはならない. モノが主体との関連で社会性をもつことは， このあと，市場の拡張性を理解するうえで 一つのポイントとなる.」 //#enddivregion #qanda_set_qst(3,2,0){{ 教科書に即した「モノ」をできるだけ短く定義せよ。ポイントとなる単語は何か？その単語の意味を説明せよ。 }} #qanda(3,2) #qanda_solution(3,2){{ <h4>解答</h4> <ul> <li>特定できる外的対象</li> <li>特定</li> <li>その意味はAでもBでもあるという「重複」がないこと。</li> </ul> <h4>After</h4> <ul> <li>講義中、直前に読んだ上の教科書の文章の「解釈」です。できるだけ短く言って、モノとは何か、定義を読みとるのが第一歩。</li> <li>次にそのなかでポイントとなる言葉は何か。絞り込みが第二歩。</li> <li>その意味を説明することが第三歩。</li> <li>最後の段階は、「意味」なので、教科書にある用語意外を使ってもOKですが、</li> <li>ここでは「明確な境界が存在し，その間に重複がなければ」という部分から「重複」をえらび、</li> <li>それを「AでもBでもある」ことだと、自分の言葉で説明しました。</li> <li>ともかく三ステップを踏めたひとが数人いました。</li> </ul> }} #qanda_scorechart(3,2) -ただこの定義には少し不充分な点があるので -[[昨年の講義では>2021年度/夏学期/第2講#g4a58063]] > モノ := はかれる外的対象 < と再規定しました。「はかれる」という性質を強調したのです。 ***「はかる」とは [#p07f985b] -しかし、そもそも「はかる」とはどうすることでしょうか？ -理学部や工学部のみなさんなら、周知のことかもしれませんが... &aname(keiryouhou); -[[「計量」を規定した法律>https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=404AC0000000051]]がある。 #enddivregion #qanda_set_qst(3,3,0){{ <p>モノは、外的対象を「はかれる対象」と「はかれない対象」とに、つまり「モノ」と「非モノ」とに、二分するための概念である。</p> <p>さてモノとは、計量法にいう「物象の状態の量」を具えた（属性にもつ）対象である、と定義することは、「モノ := はかれる外的対象」と同義か否か。理由を述べよ。</p> }} #qanda(3,3) #qanda_solution(3,3){{ <h4>解答</h4> <p>同義ではない</p> <p>「はかる」という概念は、計量法にいう「物象の状態の量」を具えた対象より広い対象を含みうる。同義だとすると、「はかれるもの」が、「物象の状態の量」をもつものと、そうではないが「はかれるもの」にまた分かれてしまい、外的対象の「二分」にならないため。</p> <h4>解説</h4> <ul> <li>なんだか奥歯にものの挟まったような「解答」になってしまいました。</li> <li>次のように考えてみてください。</li> <li>「はかる」ということは、「単位」を用いて実数値で計量することだけか、と。何かぬけていませんか。</li> <li>前問題で生徒の数がでてきましたが、1人、2人と数えてるわけで、この「人」というのは「物象の状態の量」をはかる単位ではありません。</li> <li>離散的な量も、連続的な量も、ともに「はかれる」と考える必要があるのです。</li> <li>大きな区別は「はかれる」集合 $P$ と「はかれない」集合 $Q$ の分離で、$P$ が、正の実数値に対応する計量型の部分集合$R$ と、自然数に対応する計数型の部分集合$Z$にさらに二分されると考えるべきだというのが「解答」のココロでしょう。$P(R+Z)+Q$と構造化すべきで、単純に$R+Z+Q$と平板にならべるのでは、本質的な関係がわからないというのでしょう。</li> </ul> <hr> <p>「かぞえる」というのはかり方は、量をはかるのより単純に見えますが、実はずっと高度な能力が必要です。</p> <h4>After</h4> <ul> <li>計量法にいう「物象の状態の量」をつも対象が、モノの部分集合であることが、ちゃんと明示されていれば2点。結果的にそうなっているものは1点としました。</li> <li>モノは「物象の状態の量」だけではないんだ、ということがわかったとして、さて、では「「物象の状態の量」ではないが、はかれる」とはどういうことか、ここに踏みこんでいれば3点、と思いましたが、いませんでした。</li> <li>注意！「X だけとはかぎらない」という回答がよくでてくるのですが、「すべて」とか「かならず」とか、という言葉がはいった命題に対して、偽の理由として、こう答えるのは簡単。ただ重要なのは、「では not X とは何か？」「どう積極的に規定したらよいのか？」、もう一歩踏みこんで考えることです。一つ覚えの「...とはかぎらない」は卒業しよう。</li> </ul> }} #qanda_scorechart(3,3) #qanda_set_qst(3,4,0){{ <p>問題2-1,2-2で、1cm刻みで生徒の人数を5人とか6人とか数えました。</p> <p>160人の集合を31の部分集合に写像していているのです。</p> <p>さて、160人の生徒が1cm刻みで数えられるために、いくつか条件が必要です。</p> <p>「かぞえる」という観点からみて重要なものを二つあげよ。</p> }} #qanda(3,4) #qanda_solution(3,4){{ <h4>解答</h4> <ol> <li>重複がでないようなグループ分けの決まり（ルール）をつくること（部分集合に共通部分がないようにすること）</li> <li>個々の差違を無視して同種のグループとみなすこと（部分集合の元（要素）を同一と規定すること）</li> </ol> <h4>解説</h4> <ul> <li>二番目の操作は、実数の計測値では異なるものをグルーピングする能力が必要です。差違を無視して抽象化する能力です。</li> <li>個々にみれば少しずつ違っているものをひとまとめにしたグループを、この講義では「種」とよびます。「群論」だと「類」「同値類」なのかもしれませんが、生物学の「個体」と「種」をイメージしてください。「同種大量性」という概念がこの後商品の概念を考えるときに登場するので、覚えておいてください。</li> </ul> }} #qanda_scorechart(3,4) ***概念化の効用 [#y82b6f35] -かなりむずかしい話しになりましたが、理学部や工学部のみなさんが経済学をやるとき、おもしろいことかなと思います。ただ、この「モノ」の話しは普通の教科書には書いてありません。物理学でいったら、いきなり素粒子の話からはじめようか、という感じです。 -ただ、今日の市場を理解するときには、こうした基礎の基礎からきちんと考えておくことが重要なのです。厳密に定義した言葉を使うことの効果、概念のもつ効果です。例として、あと2問だけ... #qanda_set_qst(3,5,0){{ <p>情報を、ある内容（コンテンツ）と、それを伝える媒体（メディア）の結合と定義する。</p> <p>さて、情報はモノか否か？理由をのべよ。</p> }} #qanda(3,5) #qanda_solution(3,5){{ <h4>解答</h4> <p>情報は、メディアとしてモノであるが、コンテンツはモノではない。</p> <h4>解説</h4> <ul> <li>たとえば、本なら1冊、2冊と数えれますが、中身は数えられません。</li> <li>情報のようなものが、市場で取引されるようになると、この区別がつかないために、たとえば「情報はコピーすればどんどんふえる。だから、情報の価値は限りなくゼロに近づく」とか「コピーを制限することで情報の価値は高まる」とか、すぐに混乱した話しになります。</li> <li>情報＝コンテンツ＋メディアという考え方を念頭において、最後の問題にチャレンジ...</li> </ul> }} #qanda_scorechart(3,5) #qanda_set_qst(3,6,0){{ <p>時給1000円の労働力はモノか？理由を述べよ。</p> }} #qanda(3,6) #qanda_solution(3,6){{ <h4>解答</h4> <p>モノである。</p> <p>時間によってはかれるから。</p> <h4>解説</h4> <ul> <li>情報と似ているのですが、１時間の労働力がおこう労働の中身はいろいろでしょう。これははかれません。しかし、1時間の労働力という同じ外形をもつものとして、はかられているのです。</li> <li>労働はかたちのあるものじゃないので、たしかに物理的な「物」、有体物ではありません。しかし、ここで定義したカタカナの「モノ」は、かたちがある「物」かどうかは関係ありません。客観的にはかれるものはすべて「モノ」です。</li> <li>だから、労働にかぎらず、「物」対「サービス」といった区別もしません。「経済のサービス化」といった、理論的基礎を欠くイメージ的な説明は、少なくともこの講義ではしません。</li> <li>以下では「モノ」という概念をつかって、基礎の基礎から理論を組み立ててゆきます。</li> </ul> <h4>After</h4> <ul> <li>1000円のほうに注目した回答が多かったのですが、ポイントは「時給」のほうです。つまり時間を単位ではった労働力なのです。</li> <li>前問で、「情報 := メディア＋コンテンツ」（eg 本 = 紙製冊子 + 内容）という結合体について考えたが、この延長線上で 「時給労働 := 時間単位の労働力 + 労働内容」という結合構造を考えてほしかったのです。</li> <li>もちろん、1冊2冊と数えれる本のケースと、1時間労働2時間労働と数えられる時給労働とでは違いもあります。「どんな？」 って<span class="tooltip">...<span class="dscp"><span class="text">同じ本は1冊でも8冊でもコンテンツは同じ。しかし、同じ時給労働でも1時間と8時間とでは内容が違ってくる。</span></span></span></li> <li>この結合関係、二重性に気づいていると判断した回答に1点、これを根拠に「モノである」と推論できている回答に2点、プラス、時給の意味を1000円ではなく1時間単位と正確に述べられているなどに1点、加点しました。</li> </ul> }} #qanda_scorechart(3,6) #divregion(モノの概念,admin,lec=3,qnum=6) -境界のハッキリした外的対象のうち、はかれるものをモノという。 -はかるというのは、単位をきめて連続量を「計量する」だけはなく、自然数で「数える」ことも含む。 -はかれないコンテンツが、はかれるメディアと結合したタイプのモノも存在する。 #enddivregion #qanda_set_qst(3,22,0){{ <p>ここまでで、さらに説明が必要点があればどうぞ。</p> }} #qanda(3,22) **財 [#bb51eea7] #divregion(定義,lec=3,qnum=6,admin) -財はモノだが、ただのモノでは&color(red){ない};。 -財とモノの違いは、人間との関係を考えればハッキリする。 -モノの集合は人間にとって、&color(red){特定の};役立ちをするものと、しないものとに分かれる。 -この役立ちは、それぞれのモノの性質によってきまる。金槌は金槌、釘は釘、服は服，クツはクツ、それぞれ&color(red){特定の};機能がある。 -この役立ちを「''使用価値''」とよぶ。 -財とは、 > ''&color(blue){使用価値をもつモノ};'' < である。これが財の定義。 -よく「財・サービス」という表現ができてきます。有体物と無体物です。しかし、ここでは有体物であれ無体物であれ、計測可能な対象を「モノ」と定義し、そのモノに対して財の定義を与えたので、サービスも当然、「モノ」になります。「財・サービス」という用語はこの講義ではボツ、いっさい使用しません。 #enddivregion ** 商品 [#ea70545d] #divregion(定義,lec=3,qnum=6,admin) -商品は財だが、ただの財では&color(red){ない};。 -財なら何らかの使用価値をもつが、 -その使用価値が持ち主にはゼロである財が商品である。 -つまり商品とは > ''&color(red){他人のための};&color(blue){使用価値をもつモノ};'' < である、というのが定義です。 #enddivregion #qanda_set_qst(3,7,0){{ <p>「他人のため」といっても、持ち主にとってもある程度は使用価値をもつのが普通。</p> <p>完全に「他人のための使用価値」しかもたない財というのは、現実にはありえないものだ。</p> <p>この主張の適否を明らかにし、理由をのべよ。</p> }} #qanda(3,7) #qanda_solution(3,7){{ <h4>解答</h4> <p>不適切。</p> <p>コンビニの棚をみれば、売れなければ捨てるほかない、完全な商品で溢れている。</p> <h4>解説</h4> <ul> <li>いちばん大事なポイントです。</li> <li>現実の市場を構成しているのは、この完全な商品です。</li> <li>ただ、完全な商品も、買われたあとはただの財になります。買ったものを商品としてもう一度売るのはたいへんです。</li> <li>このあと、買うと売るでは大違い、売るのがたいへんな市場の話しをしてゆきます。</li> </ul> }} #qanda_scorechart(3,7) #qanda_set_qst(3,8,0){{ <p>商品は、他の商品を交換で手に入れるという「機能」をもつ。</p> <p>したがって、商品も一種の財である。</p> <p>この主張は適切か、理由を述べよ。</p> }} #qanda(3,8) #qanda_solution(3,8){{ <h4>解答</h4> <p>誤り。</p> <p>機能の意味が財の定義における「機能」から拡張されている。</p> <p>財の定義にでてくる「機能」は、モノの性質に基づく「特定の機能」である。</p> <p>たしかに手に入れた商品は、モノとして特定の機能をもち財であるが、「いろいろ」なモノを手に入れられるというのは「特定の」機能ではない。</p> <h4>After</h4> <ul> <li>「したがって、商品も一種の財である。」という結論は真。だからこの推論が「適切だ」とはいえません。ここに引っかかった回答が多くありました。</li> <li>「商品は、他の商品を交換で手に入れるという「機能」をもつ。」が、「使用価値」の定義からみて適切ではないのです。誤った拡張です。</li> <li>使用価値の「使用」の意味は、モノのもつ特定の機能を「使う」ことです。多くの場合「消費」することであり、モノ自体が消滅します。</li> <li>交換に「使える」だろうというのは、ここで定義した「使う」の誤用です。</li> <li>商品Xで手に入れた商品Yは、モノYの機能として「使われます」。しかし、商品Xが自分で「使えない」からです。</li> <li>上の「▶財」を開いて確認してください。</li> </ul> }} #qanda_scorechart(3,8) ***二つの市場像 [#xc71283f] ----- +市場 := 財と財の交換の場 +市場 := 商品の売買の場 ----- -「財と財の交換の場」というのは、 --それぞれ財は持ち主にとって満足度、効用をもつと考える。モノに即した機能、役立ちとはズレる面。 --相対的に効用が低い財を相対的に高い財と交換して、効用を高める場として市場を規定する。 --商品と財の区別を明確にしないミクロ経済学の立場です。 --財と財の交換となるので、特定の「貨幣」が実在しない市場像。 --すべての「財」に関して、すべての主体の効用が最大となる「交換比率」がきまる一般均衡論を想定。 --すなわち、すべての「財」に関して、需要と供給が一致するケース。 --このとき、「間接的な&qanda_tooltip(物々交換){財と財の交換のこと};」を通じて、すべての主体の財の構成が入れ替わる。 --物々交換ので、当然、貨幣は実在しない。 -&color(red){この講義では「市場 := 財と財の交換の場」という考え方はしない。}; --以後、「財」（「財・サービス」）という用語は用いない。消去！ -次回から、商品を出発点にして貨幣を規定し、「交換の場」としてでなく「売買の場」として市場の構造を組み立ててゆきます。 **まとめ [#t6fe0a57] -最後に確認のための質問 #qanda_set_qst(3,9,0){{ <p>「はかれるモノは商品になる。」</p> <p>真か偽か、理由を述べよ。</p> }} #qanda(3,9) #qanda_solution(3,9){{ <h4>解答</h4> <p>偽</p> <ul> <li>はかれることは商品の必要条件であるが十分条件ではない。</li> <li>はかれるモノが商品になるには「他人のための使用価値」という、より厳しい条件が必要。</li> </ul> <h4>解説</h4> <ul> <li>$ True : 商品\to モノ, False : モノ\to 商品$</li> </ul> }} #qanda_scorechart(3,9) #qanda_set_qst(3,10,0){{ <p>「有用なものは、はかれる。」</p> <p>真か偽か、本を例に説明せよ。</p> }} #qanda(3,10) #qanda_solution(3,10){{ <h4>解答</h4> <p>偽</p> <ul> <li>本のページ数は数えられるが、書いている「内容」ははかれない。しかし、有用なのは「内容」のほうである。</li> <li>厚ければ厚いほど役にたつとはかぎらない。</li> </ul> <h4>解説</h4> <ul> <li>この講義で定義した情報 := メディア＋コンテンツ を思いだしてみよう。</li> </ul> <h4>After</h4> <ul> <li>この講義で定義した用語は定義どおりに使おう。本に書いてある内容（コンテンツ）のことを「情報」とよんでいる回答がいくつかありましたが、減点しました。本は紙媒体のメディアであり、本のコンテンツは、何が書いてあるか、その事柄です。講義のなかで、そう使おうと約束したルール、約束事です。</li> <li>「使用価値」という用語もチャンと定義しました。本のコンテンツのことを、本の「使用価値」とよんでいる人もかなりいました。紙に印刷され閉じられた形状の媒体は、どこでもすぐ開けるといった、独自の「機能」をもっています。内容だけが「使用価値」ではありません。紙媒体もりっぱな「使用価値」をもっています。「コンテンツがはかれない」という問題と、「使用価値がはかれない」という問題は同じことではありません。</li> <li>もう少し補足します。ある紙媒体の本が、電子化された場合、コンテンツは同じですが、メディアが印刷物から磁気媒体に変わるわけです。読みたいのはコンテンツのほうでしょうが、紙媒体としてのメリット／デメリット、磁気媒体としてのメリット／デメリットがあります。メリット／デメリットがあるということは、媒体にもそれなりの「使用価値」があるのです。コンテンツだけが「使用価値」だといってはならいこと、おわかりいただけたでしょうか。もうち一度言います、言葉は厳密に正確に使おう。</li> <li>反対に、さまざまな意味に使われる用語を、未定義な状態でキーワードに使うのはやめよう。「価値」がその代表です。「本の価値はコンテンツがある」というのは、日常会話ならOKでしょうが、この「価値」はまだ未定義です。「役にたつ」と意味で「本の価値はコンテンツがある」といいたいのであれば、すでに定義した「使用価値」のほうを使うべきです。そして、この「使用価値」がコンテンツと同じでないことは、いま説明したとおりです。たとえば解析学なら、「連続」という用語をきちんと定義し一貫して使うことで、「微分できるかできないか」を考えます。定義にぬきに「価値」という言葉をふりますのは、「連続」の定義ぬきに何でも「ほぼ微分できる」ですますようなもの、点や線の定義ぬきに幾何学の証明を試みるようなものです。</li> <li>...ということで、さっそくカチカチ山の「価値」の定義に入りましょう。</li> </ul> }} #qanda_scorechart(3,10) ----- #qanda_set_qst(3,23,0){{ <p>ここまでで、さらに説明が必要点があればどうぞ。</p> }} #qanda(3,23) #qanda_set_qst(3,11,0){{ <p>「本一冊分のコンテンツ」と書いた場合、コンテンツははかれたことになりる。</p> <p>真か偽か、理由を述べよ。</p> }} #qanda(3,11) #qanda_solution(3,11){{ <h4>解答</h4> <ul> <li>偽</li> <li>ある「本一冊分のコンテンツ」は、二冊になっても、三冊になっても、相変わらず「本一冊分のコンテンツ」のままだから。</li> <li>一冊というのは、媒体として本の単位であり、内容の単位ではないから。</li> </ul> <h4>解説</h4> <ul> <li>「情報:=メディア＋コンテンツ」の具体例です。メディアはモノだが、コンテンツはモノではありません。</li> <li>同じ本を数えるときには、「冊」のかわりに「部」（発行部数の「部」です）という単位を使います。</li> <li>千部刷っても、一万部刷っても、内容は同じハズです。</li> <li>違う本も1冊、2冊と数えら、加算できる集合を構成します。理科大葛飾キャンパスの図書館の蔵書冊数がどのくらいかは知りませんが、仮に十万部あっとしても、それはメディアとしての本を数えているので、違う本の内容を「足す」ことはできません。</li> <li>情報としての本について考えておけば、インターネット上の情報の特徴もわかります。</li> <h4>After</h4> <p>コンテンツの量という意味で「情報量」という用語を使っている回答は減点。未定義の用語を外から持ちこまないようにしよう。</p> <p>情報 := メディア＋コンテンツ であり、量としてはかれるのはメディアの量、というのが基本。</p> <p>次の問題も同様に処理。</p> }} #qanda_scorechart(3,11) #qanda_set_qst(3,12,0){{ <p>①本（たとえば教科書）と②Webの記事（たとえばこのホームページ）の最大の違いは何か？</p> }} #qanda(3,12) #qanda_solution(3,12){{ <h4>解答</h4> <p>メディアとコンテンツの結合の程度</p> <p>①はコピーに手間暇がかかるが②は簡単</p> <h4>解説</h4> <p>二番目の解答はまだ目につく現象の記述したレベルのもので、一番目まで抽象化、一般化できて3点、というところでしょうか。</p> <p>「最大の」といっているので、あれこれ羅列するのはダメ。ズバッと本質から入りましょう。</p> }} #qanda_scorechart(3,12)
