#author("2022-05-26T15:22:44+09:00","default:obata","obata")
#author("2022-05-26T15:41:07+09:00","default:obata","obata")
CENTER:[[前回 ◁ >2022年度/夏学期/第3講]]&color(#447CFF){第 &size(32){4}; 講}; [[▷ 次回>2022年度/夏学期/第5講]]
-----
#qanda_setstid(2022-05-19 16:10:00,90)
#qanda_setstid(2022-05-26 16:10:00,90)
#qanda_who
#qanda_mathjax
------

CENTER:&size(25){&color(yellow,navy){ 商品の二要因 };};
#qanda_points_chart
#qanda_points_hist

✔  REC ON&br;
✅ 接続チェック

------

#qanda_set_qst(4,20,0){{
<p>&#x2714; 接続状態をおしえてください。</p>
}}
#qanda(4,20)


**本講のネライ [#m3e3faa7]
+商品の定義から、商品の特性を導きだすこと。
+価値の定義を明確に理解すること。
+価値、使用価値、物量の関係を整理すること。

**使用価値 [#p6f7f4b9]
-使用価値の厳密な規定は教科書にあるが、要するに
-商品の使用価値は「他人のための使用価値」である、というのが結論。
-この講義では、《その使用価値が「完全に」他人のためになりきっているモノ》を「商品」と定義。
-ある程度は自分のためであり、ある程度は他人のためである、という「財」の存在は捨象する。
-なぜなら&qanda_tooltip(...){それぞれ、異なる市場の理論に分かれるから。売買型市場の理論と交換型市場の理論。純粋な商品の定義は、ユークリッド幾何学の「点」や「線」の定義のようなもの。};

#qanda_set_qst(4,1,0){{
<p>店頭にならべられたモノが、「完全に」他人のための使用価値しかもたないのはなぜか?</p>
}}
#qanda(4,1)
#qanda_solution(4,1){{
<h4>解答</h4>
<ul>
  <li>はじめから売ることを目的で手に入れたモノだから。</li>
</ul>
<h4>解説</h4>
<ul>
  <li>「これってかわいい!」なんて自分の好みで品揃えをしてもダメ。</li>
  <li>「なんでこんなのがいいんだ?」と思っても顔にはださず、「みんながいいというんだからいいんだ」と割り切るのが商売のコツ。</li>
  <li>しかし、すべてが商売じゃありません。少なくとも、学問の世界がこれじゃこまるでしょう....</li>
</ul>
}}
-問題4-1は採点対象外(解答がさきに表示されていたため)
-----
CENTER:&heart; &color(red){5月12日の講義はここまで}; 次回は問題3-23から話します。
-----

**価値 [#efeec402]
***定義 [#d81c0fe2]
-「商品 := 他人のための使用価値を&color(red){もつ};モノ」という定義は「商品 := 自分にとっては使用価値を&color(red){もたない};モノ」という否定形の定義。
-肯定形で「商品 := 自分にとっては$X$を&color(red){もつ};モノ」というとき、この$X$に当たるのが&color(red){価値};
-&color(red){価値};とは...
#divregion(教科書の説明,admin,lec=4,qnum=1)
「他の商品と交換できるという一般的性質,交換可能性,すなわち 交換性を価値とよぶ. 」
#enddivregion
#qanda_set_qst(4,2,0){{
<p>「他の商品と交換できるという一般的性質,交換可能性,すなわち 交換性を価値とよぶ. 」という定義に関する次の説明文の(A)(B)(C)を適切な単語で埋めよ。</p>
<p>「他の商品と交換できる」といっても、商品$P$が商品$Q$と(A)に交換されるのをみたことはない。しかし、無数の商品が存在する市場では、$P$は$O$から交換を求められており、$O$は$N$から、$N$は$M$から、交換を求められている、というようにさかのぼると、どこかで$Q$にたどりつく(B)がある。「一般的性質」というのは、交換を求める関係がつくりだすネットワークのなかで、どの商品も他のすべての商品と同等な性質を(C)にもつ、という意味で「一般的」なのである。</p>
}}
#qanda(4,2)
#qanda_solution(4,2){{
<h4>解答</h4>
<p>(A)直接 (B)可能性 (C)共通</p>
<h4>解説</h4>
<ul>
  <li>(C)は「対等」などでも可。</li>
  <li>「交換可能性」というのは、いつでもすぐに、直接「交換<strong>できる</strong>」という意味ではない。</li>
  <li>逆に、すぐには「交換<strong>できない</strong>」という意味であることに注意しよう。</li>
  <li>大事なことなので、繰り返す。先取りすれば、商品どうしは「交換できない」から、「何か」が必ずでてくる、というのが話の筋。この「何か」とはなにか?</li>
</ul>
}}

#divregion(商品のネットワーク,admin,lec=4,qnum=2)
-乱数をつかって配列をつくってみる。
-0,1,2 .... 番目の持ち主が、色で示された自分の商品で、順に下の配列の持ち主がもつ商品と交換を求めているとみなす。
#qanda_raw{{
    <form id="form1" action="#">
      <label for="item_number">品目数:</label>
      <input type="text" id="item_number" maxlength="2" size="2">
      <input type="button" onclick="getItemNumber()" value="click">
    </form>
    <link rel="stylesheet" href="./css/konva/2021/barter-circle.css">
    <div id="barter-circle-ransu"></div>
    <div id="barter-circle"></div>
    <script src="https://unpkg.com/konva@7.0.7/konva.min.js"></script>
    <script src="./js/konva/coordinate.js"></script>
    <script src="./js/konva/2021/barter-circle.js"></script>
}}
-色のついた円をドラッグして、商品のつながりを探してみよう。
-中心あたりをクリックすると新しい乱数の配列がつくられます。
-品目数をかえて考えてみよう。
--複雑な関係を見た後で、品目数を絞ってゆくと、基本原理がわかる。抽象化の直観がつく。
#enddivregion

#divregion(注意,admin,lec=4,qnum=2)
+この「価値」を「交換価値」とよんではいけない。「交換価値」というのは、財と財を交換するときの物量比率($ミカン3個/リンゴ2個=ミカン1.5個/リンゴ1個$のような)の意味で使われているので、この講義では使わない。
+「価格」という用語は「価値」をベースにこの後定義する。未定義な「価格」とここで定義した「価値」を混同してはいけない。
#enddivregion

***価値存在 [#z546687e]
-価値のあり方について考える。
-(1) 知覚できない存在
--価値は直接みたり触ったりできる対象ではない。
--つまり、価値は「知覚」perception の対象ではない。知覚をこえた(超越的な)存在。
--しかし、知覚できない存在(超越的存在)は普通に受け容れられている。あなたの後ろ側は見えないが、なにも存在しない虚無の世界だとは思っていない。昨夜寝たベットは今は見えないが、昨夜存在してたのは確かだと思っているはず。
-(2)性質としての存在
--価値は独立したモノとして存在するのではない。あくまで商品の性質の一つとして、「他人のための使用価値」と対をなすものとして、存在するのである。
--「商品には価値が''ある''」というのは「商品は価値を''もつ''」というのと同じ意味。
--「商品には」を取り除いて、ただ「価値が''ある''」という文は成りたたない。
--「モノが商品という状態におかれると、価値という性質を帯びる」のであり、したがって「モノが商品でなくなれば価値も消える」。
-1分問題
#qanda_set_qst(4,3,0){{
「モノが商品でなくなれば価値は消える」が、それでも「変わらずにある」ものはなにか?
}}
#qanda(4,3)
#qanda_solution(4,3){{
<h4>解答</h4>
<p>モノのとしての性質</p>
<h4>解説</h4>
<p>教科書では「自然的属性」となっています。</p>
<p>商品のベースとなるモノのことを「商品体」といいます。教科書にでてきますが、ふつう見かけない言葉なのでこの講義では使いません。これを使うなら「商品体」$Warenk\"orper$ (の性質)、となります。</p>
<p>小麦が商品でなくなれば価値もなくなるが、1kgの小麦は商品であろうとなかろうと、相変わらず1kgである。</p>
<p>使用価値は微妙。「他人のための使用価値」から「自分のための使用価値」に変わるので...</p>
<p>コンビニのおにぎりは、棚にならんでいるときは、「他人のための使用価値」しかもっておらず、その代わりに100円と表示された価値(「価格」や「表示」の意味については次回説明します)をもちます。買った人のもとでは「自分のための使用価値」はもちますが、もう価値はもちません。そして、コンビニなかでも外でも、おにぎりはおにぎりのまんま、店を出る瞬間に味やにおいが変わるわけではありません。</p>
<p>商品というのが、人と人の間に生じる、モノのあり方、独自の状態であること、OKでしょうか。</p>
}}
-(3)種の属性としての存在
--ここでは同じ種類の商品が大量に存在し、それが無数の主体によって所有されている状態:「同種大量性」を仮定する。
--はかれるモノは、基本的にこの条件を満たす。
--逆に、この世に一つしかないようなものは、以下での考察の対象から外す。したがって、固有名詞でよばれるような美術品は対象外だが、そのレプリカは対象となる。
--多数の主体が同種の商品を競争的に売りあう状況を想定すると、どの主体も、同種の商品のうち、自分のもっている部分が、特別扱いされると期待することはできない。つまり、混ぜたら区別がつかない「''同種の商品はみな同じ価値をもつ''」という命題が成りたつ。
--これは「価値という性質は、所有者に属するのではなく、同種の商品全体に属する」ということと同じである。
--これを「価値は商品に''内在''する」という。あるいは簡単に「商品には価値が''ある''」という。
--これはまた「商品は価値を''もつ''」といっても同じである。
--「同じ商品でも、個々の所有者ごとに、別々個別的価値をもつ」という言い方はしない。

-----
CENTER:&heart; &color(red){5月19日の講義はここまで};
-----

***価値量 [#d8ee84ec]
-「価値」は商品の属性の一つだが、異なる商品の間で、その「交換できる性質」の程度を「量」として示すことができる。ただし、特殊な表し方、はかり方で....
-もう一つの属性である「使用価値」は、異なる商品の間で「使用価値」つまり「役立ち」の程度を&qanda_tooltip(比較する){これよりあっちのほうがよい、というように...};ことはできるが、それぞれの「よさ」を量として示すことはできない。
-価値だけが、とくに「量」として示される属性であるのはなぜか?
--「商品の価値とは、他のすべての商品と潜在的に交換できるという性質である」という定義文のなかに鍵がある。
--「交換」という言葉は、モノの「比率」を含んでいる。A3個とB2個が「交換可能」ということは、A,Bには同じ種類の属性a,bがあり、$a:b=2:3$ ということ。
--「すべて」という言葉は、この比率がバラバラではない、ということ。$a:b=2:3$ かつ $b:c=4:5$なら$a:c=8:15$となるような、同種の属性を、商品A,B,C,... はもつとうことだ。
--つまり、$15a=10b=8c$という等号関係を成り立たせる共通の「量」としての属性が存在する。■
-物量の比率となって現れる価値の程度を、ここでは「価値の大きさ」ないし「価値量」とよぶ。
-何度も繰り返すが、直接はかれない(つまり&qanda_tooltip(単位がない){「価値の単位は円とかドルじゃない?」って...それは貨幣量の単位、価格の単位です。「価値」と「価格」の関係はこの後話します。もうちょっとまってください。};)対象に「量」という用語を用いている点に注意。
-だから、価値にはたしかにある@「大きさ」があるが、その大きさ(量)は特殊なはかられ方をされることになるのだ。これがこの後の課題。

#qanda_set_qst(4,4,0){{
<p>「同じ商品でも、多くもてば、一つあたりの価値の大きさは減少する。」</p>
<p>真か偽か、理由を述べよ。</p>
}}
#qanda(4,4)
#qanda_solution(4,4){{
<h4>解答</h4>
<ul>
  <li>偽</li>
  <li>商品の価値は、市場に存在する商品種全体の属性であり、だれがどれだけもつかに左右されるような性質ではない。</li>
  <li>「価値という性質は、所有者に属するのではなく、同種の商品全体に属する」ものだから。</li>
</ul>
<h4>解説</h4>
<li>一言でいって、価値と使用価値の混同。</li>
<li>自分で使う目的でもっているモノなら、余計にもてば役立ち、有用性、効用、それがもたらす満足度、などが、相対的にさがる、ということはある。</li>
<li>比較において、少ししかないときよりも、たくさんあるときのほうが、ひとつあたりの満足度はさがる。</li>
<li>しかし、これは商品の使用価値に関すること。商品の使用価値は他人のための使用価値であり、自分にとっての使用価値が影響することはない。</li>
<li>財と財の交換を考える経済理論では、相対的に余計な財を交換して効用を高める場として市場を捉えるが、これは商品の売買の場として市場を捉える経済理論とは、何度も繰り返すが、別物。
<li>財投どうしの交換から出発する理論では、貨幣(らしきもの)が登場するが、それは一貫した交換価値を計算する基準にすぎない。財どうしが交換されるので、交換の場に貨幣がでてくることはない。</li>
<li>これに対して商品から出発する理論は、商品価値の存在から、貨幣の実在を導くものであり、市場では「交換」ではなく、商品が花柄に対して売られ、貨幣で商品が買われる売買。両者をゴチャゴチャにしないこと。</li>
}}

#qanda_set_qst(4,21,0){{
<p>ここまでで、さらに説明が必要なところがあればどうぞ。</p>
}}
#qanda(4,21)

**まとめ [#s6f16874]
-商品の二要因:使用価値と価値
-「商品には価値がある。」(この文の意味を納得がゆくまで考えよう。)

トップ   編集 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS