#author("2023-06-15T09:51:03+09:00","default:obata","obata")
CENTER:[[前回 ◁ >2023年度/夏学期/第7講]]&color(#447CFF){第 &size(32){8}; 講}; [[▷ 次回>2023年度/夏学期/第9講]]
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#qanda_setstid(2023-06-08 16:20:00,100)
#author("2023-06-28T16:40:35+09:00","default:obata","obata")
CENTER:[[前回 ◁ >2022年度/夏学期/第5講]]&color(#447CFF){第 &size(32){6}; 講}; [[▷ 次回>2022年度/夏学期/第7講]]
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#qanda_setstid(2022-06-30 16:10:00,90)
#qanda_who
#qanda_mathjax
------

CENTER:&size(25){&color(yellow,navy){ 物品貨幣 };};
#qanda_points_chart
#qanda_points_hist

✔ REC ON&br;
#contents

✔  REC ON&br;
✅ 接続チェック

#qanda_set_qst(8,100,0){{
------

#qanda_set_qst(6,20,0){{
<p>&#x2714; 接続状態をおしえてください。</p>
<p>氏名不詳になってしまった人がいれば教えてください。</p>
<p>今日 5月26日の講義は、たぶん今までで、いちばんむずかしい内容になるかな、と思います。覚悟はいいですか?</p>
}}
#qanda(8,100)
#qanda(6,20)

**本講のネライ [#m3e3faa7]
+「商品貨幣」は、等価物の構成のしかたによって、異なるタイプに分かれる。
+そのうちの一つである「物品貨幣」の代表として金鋳貨をとりあげ、そのしくみを説明する。

CENTER:&size(25){&color(yellow,navy){&nbsp;物品貨幣&nbsp;};};
#contents
------
**概要 [#ce74c646]
-物品貨幣の代表をなす金属貨幣,金貨幣について学ぶ。
**商品貨幣の変容と多態化 [#m217ea68]
-商品の価値を表現できる貨幣を「商品貨幣」と定義した。
-商品貨幣は、それ自身が実物の商品の価値とに結びついた貨幣である。
-この結びつけ方には、直接型、間接型の二つがある。それぞれ「物品貨幣」「信用貨幣」と名づける。
-どちらのタイプになるかは、これまでの抽象レベルで演繹的に説明することはできない。
-分岐を決める外的条件が必要になる。外的条件によって、抽象的な「コア貨幣」である「商品貨幣」は「物品貨幣」あるいは「信用貨幣」になって現れる。このすがたが変わって現れることを「変容」とよぶ。
-これまでの貨幣の歴史をみると、物品貨幣の代表は金鋳貨であり、信用貨幣の代表は中央銀行券である。
-商品貨幣が実装体である金貨幣あるいは中央銀行券をもとに、さらに特定の機能に特化した貨幣が派生する。この派生を「多態化」とよぶ。
-コア貨幣→変容→多態化の順で目に見える世界に現れる。現象として認識できるのは、ゴチャゴチャした多態化した世界。現象をいくら詳しく分析しても、そこからコア貨幣に遡ることはできません。演繹的に基本の定義から推論して理論を組み立ててみる意味があるわけです。

**二つの実装方式 [#n1990004]
-商品貨幣は、物品貨幣と信用貨幣という二通りの実現のしかたがある。
#divregion(商品貨幣の実装方式,admin,lec=8,qnum=1)
***原理的要請と外的条件 [#ne28d7ef]
#divregion(スペックと実装,admin,lec=6,qnum=20)
|BGCOLOR(blue):COLOR(yellow):|CENTER:|CENTER:|CENTER:|CENTER:|c
|>|>|>|>|BGCOLOR(yellow):↓ 外的条件(貨幣制度、科学技術、情報通信技術、取引対象、etc) ↓|
|派生体|>|>|>|補助通貨、兌換銀行券、当座預金、クレジットカード、仮想通貨....|
|実装方式|金貨幣|不換銀行券|[[中央銀行デジタル貨幣>https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/money/c28.htm/]]?| .... |
|スペック|>|>|>|すべての商品価値を統一的に、かつ持続的に&color(red){表現};できること|
|基本原理|>|>|>|商品には直接知覚できない価値が&color(red){ある};|
|>|>|>|>|BGCOLOR(yellow):↑原理的要請(多種類の商品が大量に存在)↑|
#enddivregion



#divregion(貨幣の変容の概念図,admin,lec=6,qnum=20)
&aname(basicStructure);
#qanda_raw{{
<div id="money-polyphormism2"></div>
<script src="https://unpkg.com/konva@8/konva.min.js"></script>
<script src="./js/konva/coordinate.js"></script>
<script src="./js/konva/connect-node.js"></script>
<script src="./js/konva/2021/money-polyphormism2.js"></script>
  <div id="money-polyphormism2"></div>
  <script src="https://unpkg.com/konva@8/konva.min.js"></script>
  <script src="./js/konva/coordinate.js"></script>
  <script src="./js/konva/connect-node.js"></script>
  <script src="./js/konva/2021/money-polyphormism2.js"></script>
}}
#enddivregion

**物品貨幣とは [#l5cbf264]
-物品貨幣:特定の商品種のモノを等価物とする貨幣。
-価値表現に必要な、任意可分性、耐久性などの、物理的・化学的特性が等価物となるモノには求められる。貴金属が貨幣となる傾向。西ヨーロッパでは、金 銀、とくに金になる傾向。これには、イギリスの金本位制の影響が強い。銀を貨幣とする貨幣制度が駆逐される歴史。
**物品貨幣(金属貨幣) [#ba8907ef]
#divregion(定義,admin,lec=6,qnum=20)
***教科書の定義 [#ja048e7c]
-「特定の商品の商品体がそのまま貨幣の素材となった貨幣を''物品貨幣''という。 例えば,タバコそのものが貨幣商品「[[タバコ>https://www.google.com/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=&cad=rja&uact=8&ved=2ahUKEwidgbf7uYbxAhWTP5QKHc4nB_IQFjAEegQIChAD&url=https%3A%2F%2Fopera.repo.nii.ac.jp%2F%3Faction%3Drepository_action_common_download%26item_id%3D11498%26item_no%3D1%26attribute_id%3D19%26file_no%3D1&usg=AOvVaw1VZ8vX-UbA5N8C5SLwO97K]]」
になり,茶そのものが貨幣商品「茶」となるような場合である。」
-商品体の定義は「他人のための使用価値になっても,モノの自然的属性 には影響はない. 商品におけるモノ自体のほうを商品体という.商品体は「商品」という修辞がついてはいるが,モノ一般に通じる規定である.」にある通りです。この講義では「商品体」という用語は使わず「モノ」ですませてきました。
#enddivregion

**金属貨幣のための追加条件 [#v9190a87]
#qanda_set_qst(6,1,0){{
<p>教科書の定義(特定の商品の商品体がそのまま貨幣の素材となった貨幣を物品貨幣という。 例えば,タバコそのものが貨幣商品「タバコ」になり,茶そのものが貨幣商品「茶」となるような場合である。)は、この講義をずっと聴いてきたみなさんは、ちょっと???なのではないでしょうか。</p>
<p>どの言葉が???の原因でしょうか。どうしてでしょうか。</p>
}}
#qanda(6,1)
#qanda_solution(6,1){{
  <h4>解答</h4>
  <ul>
    <li>引っかかるのは、「商品体がそのまま」とか、「タバコそのものが」「茶そのものが」というところ。</li>
    <li>どうしてかというと、この講義では、貨幣は等価物の発展した姿であるとされており、その等価物とは、商品体<strong>そのもの</strong>、モノ<strong>そのもの</strong>ではなく、実物の商品をベースに、モノと価値を結びつけ、新たにこしらえた、独自の<strong>構成体</strong>であることが強調されていたから。</li>
  </ul>
  <h4>解説</h4>
  <ul>
    <li>難問です。教科書の不十分な点をいえ、というのですから。</li>
    <li>「解答」の通りでなくてもOKです。だいじなのは「これで本当によいのか?」と疑い、自分のアタマで考えみることです。</li>
    <li>「だって教科書に書いてあるから...」が通用するのは、せいぜい大学入試まで。</li>
  </ul>
  <hr>
  <p>rivised: 特定の商品の物量で直接、商品の価値を表現するタイプの貨幣(商品体、貨幣商品を用いない定義)</p>
}}

//#divregion(金属貨幣,admin,lec=5,qnum=1)
//-持続性をもつ一般的等価物になる「特定の商品」には、たとえば
//[[タバコ貨幣
//のようなものもあったが、
//-多くの場合、金属がその役割を果たしてきた。[[貨幣の歴史>https://www.imes.boj.or.jp/cm/history/]]。
//-金属は分割可能性とか、耐久性とか、といった物理化学的性質において貨幣量の単位に使いやすいため、さまざま//な商品の価値(全面的だが潜在的な交換可能性)の大きさを表現する材料に使われてきた。
//#enddivregion

-金属貨幣を実装 implement するためには、価値表現という内在的な力に、次のような外的要因が加わる必要があった。
+本位貨幣=「正貨」specie 規定:価格単位の制定(特殊な度量衡法である貨幣法による「円」の定義)
+自由鋳造制:本位貨幣の実体化:金貨を&qanda_tooltip(「鋳造」する){鋳造は「貨幣」をつくることではない。素材の品位を鑑定・保証するにすぎない。「鋳造」しても金量が増大することはない。そのすがたが変わるだけ};こと。造幣局
Mint の設立。
+法貨規定:「強制通用力」を与えること。貨幣単位で表示された負債に対する最終決済力をもつ貨幣を制定すること。「強制通用力」を「無理矢理に買うことができる力」などと誤解してはならない。あくまでも、自由な価格で売買契約を結んだ後に必要となる支払手段として、強制力をもつ(裁判で支払を主張できる貨幣=法貨。100万円の郵便切手をもっていっても支払を拒否されることはあるが、100万円の日本銀行券をもってゆけば、相手は拒絶できないということ。
>
#region
①本位貨幣=「正貨」specie 規定:価格単位の制定(特殊な度量衡法である貨幣法による「円」の定義)
#endregion
#region
②自由鋳造制:本位貨幣の実体化:金貨を&qanda_tooltip(「鋳造」する){鋳造は「貨幣」をつくることではない。素材の品位を鑑定・保証するにすぎない。「鋳造」しても金量が増大することはない。そのすがたが変わるだけ};こと。造幣局 Mint の設立。
#endregion
#region
③法貨規定:「強制通用力」を与えること。貨幣単位で表示された負債に対する最終決済力をもつ貨幣を制定すること。「強制通用力」を「無理矢理に買うことができる力」などと誤解してはならない。あくまでも、自由な価格で売買契約を結んだ後に必要となる支払手段として、強制力をもつ(裁判で支払を主張できる貨幣=法貨。100万円の郵便切手をもっていっても支払を拒否されることはあるが、100万円の日本銀行券をもってゆけば、相手は拒絶できないということ。
#endregion
<
***物品貨幣の原理 [#x355cc76]
-商品の価値を表現できる貨幣(商品貨幣)は、モノの量と商品価値とリンクしていなくてはならない。商品価値とリンクしていない貨幣(フィアット・マネー)では価値表現はできない。
-ただし、貨幣の価値も、それ自身の大きさは
>
#region
知覚
#endregion
<
できない。
-しかも、一般の商品にように、何円というように、単一の単位をもちいて
>
#region
表現
#endregion
<
することもできない。
-貨幣の価値の大きさは、
>
#region
多数の商品の価格&qanda_tooltip(ベクトル){ベクトルの大きさはどのように測られるのか?$p_1>p_2$ はいえても、同じように $P>P'$ ということはできない。どうしたらよいか、ちょっと自分で考えてみてください。};$(p_1,p_2,....p_n)$
#endregion
<
として現象する(知覚可能な世界に現れる)。
-金貨幣の場合
--①金の重量は
#region
知覚可能(計数化できる。金貨何枚というように...)
#endregion
だが、
--②その「価値の大きさ」は
#region
&qanda_tooltip(不可測で、しかも変化する){不可測な対象について、「変化」という概念が適用できるか?考えてみてください。};
#endregion
--③ただ
#region
大量のストックがある
#endregion
ので安定した大きさの価値を保つ。
<

**歴史と制度 [#a6f7254e]
#aname(june30)
-----
CENTER:&heart; &color(red){6月30日の講義はここから};
-----

***歴史と制度 [#w411a51a]
-[[お金の歴史(日銀貨幣博物館)>https://www.imes.boj.or.jp/cm/history/]]
-[[造幣局>http://www.mint.go.jp/operations/exam/operations_certification-01.html]]
-[[ロイヤルミント>http://www.royalmintmuseum.org.uk/history/index.html]]
-[[makgin money>https://www.royalmintmuseum.org.uk/journal/history/making-money/]]
-[[Isaac Newton and the royal mint>https://blog.sciencemuseum.org.uk/isaac-newton-and-the-royal-mint/]]
-----
-[[貨幣法(原文)>http://gken.jp/tus/pub/2018/M0000000000001738005_023710101734.pdf]]
-[[貨幣法(旧)>https://ja.wikisource.org/wiki/%E8%B2%A8%E5%B9%A3%E6%B3%95]]
//-[[度量衡法(旧)>https://ja.wikisource.org/wiki/%E5%BA%A6%E9%87%8F%E8%A1%A1%E6%B3%95]]

#qanda_set_qst(9,1,0){{
  <p>「金貨 コインを鋳造できるのは国家だけである。したがって、国家はコインを鋳造することで、貨幣の量を自由に増やすことができる。」</p> 
  <p>真か偽か,理由を述べよ。</p>

#qanda_set_qst(6,2,0){{
<p>「貨幣法」にしたがって製造された金貨は商品貨幣か否か?その理由を述べよ。</p>
}}
#qanda(9,1)
#qanda_solution(9,1){{
<h4>解答</h4>
<ul>
  <li>偽</li>
  <li>金貨をつくるのには、金属としての金が必要。鋳造はただその金属の量と純度を保証する刻印をうっているにすぎない。だから、材料となる金属の量がふえないかぎり、コインの量をふやすことはできない。</li>
</ul>
#qanda(6,2)
#qanda_solution(6,2){{
  <h4>解答</h4>
  <p>商品貨幣である。一円を表わす金の量が定められており、この物量が金の価値量と結びついているから。</p>
  <h4>解説</h4>
  <ul>
    <li>金貨を溶かせば二分(0.75グラム)の金になります。この金は商品としてこの重量に対応する価値を持っています。</li>
  </ul>
}}

-[[通貨法>https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=362AC0000000042]]

#qanda_set_qst(6,3,0){{
<p>「通貨法」にでてくる「貨幣」「通貨」「銀行券」の関係のは?「AとBでcになる」を「$C=A+B$」と表記することにして答えよ。</p>
}}
#qanda(6,3)
#qanda_solution(6,3){{
  <h4>解答</h4>
  <p>通貨=貨幣+銀行券</p>
  <h4>解説</h4>
  <p>この法律にでてくる「貨幣」は、造幣局で製造される硬貨のことです。</p>
  <p>この硬貨と中央銀行券の単位が「円」だと規定しているわけです。</p>
  <p>この講義で規定した《貨幣》は、商品貨幣でした。</p>
}}
#qanda_set_qst(6,4,0){{
<p>「通貨法」にしたがって製造された500円硬貨は商品貨幣か否か?その理由を述べよ。</p>
}}
#qanda(6,4)
#qanda_solution(6,4){{
  <h4>解答</h4>
  <p>否。五百円硬貨の金属素材の物量と、この金属素材の価値が結びつけられていないから。</p>
  <h4>解説</h4>
  <p>素材の金属素材を商品としたとき、500円にはならない。</p>
  <p>五百円硬貨2枚を溶かしてその金属を取り出しても、それを法貨である千円札にする方法はない。</p>
  <p>この金属を商品として値付けをしても、値付けに使われる日本銀行券で1000円にはならない。日本銀行にもっていっても、千円札に変えてくれるわけではない。</p>
  <p>では値付けの基準になっている、日本銀行券の価値ってそもそもなになの?これは次の講義で....</p>
}}

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