#author("2023-11-30T15:41:51+09:00","default:obata","obata") #author("2023-12-07T12:35:39+09:00","default:obata","obata") CENTER:[[前回◁>2023年度/冬学期/第9講]]&color(#447CFF){第&size(32){10};講};[[▷次回>2023年度/冬学期/第11講]] ----- #qanda_setstid(2023-11-30 16:20:00,90) #qanda_who #qanda_mathjax #qanda_points_chart #qanda_points_hist ✔ REC ON&br; ✅ 接続チェック #qanda_set_qst(10,100,0){{ <li>✔ 接続状態をおしえてください。</li> <li>前回の「生産力を計測する」という話、むずかしかったですか。</li> }} #qanda(10,100) CENTER:&size(25){&color(yellow,navy){ 価格ベクトル };}; #contents ------ **前回のまとめ [#b71263f7] -複数の原材料$(a_0,a_1,\cdots)$で一つの生産物$b_i$をつくる生産過程で、生産力が上がったか、さがったか、どのように比較したらよいか。 -複数の原材料も、その生産過程にさかのぼると、生産物と同じ種類のモノの量に変換できる。 -$$(a_0,a_1,\cdots) \to b_i \implies (0,0,\cdots,a_i,0,\cdots) \to b_i$$ なら、生産力= $b_i/a_i$ -あるいは $$(小麦x, 鉄y) \to 小麦b \implies (小麦x + ky, 鉄0) \to 小麦b$$ なら、生産力は $b/(x+ky)$ で表せる。 -同じ投入ベクトルの変化でも、小麦では生産力が低下、鉄では生産力が上昇、といった一見パラドキシカルな現象も発生する。 -なぜだろうか?「補助線」を引いて考えてみるのが、今回のネライ。 **変換比率 [#adec508b] -前回と同じ数値例を使って、続けて考えてゆこう。 --case1 $$\begin{cases} \text{小麦生産 } & P : & {\color{red}{(1,1)} } \to (4,0)\\ \text{鉄生産 } & Q : & (2,1) \to (0,5) \end{cases}$$ --case2 $$\begin{cases} \text{小麦生産 } & P' : & {\color{red}{(1.2,0.8)} }\to (4,0)\\ \text{鉄生産 } & Q : & (2,1) \to (0,5) \end{cases}$$ --投入はマイナス、産出はプラスと銘記して、つぎのようにベクトルを定めると $$a_0=(-1,-1),b=(4,0)$$ $$c=(-2,-1),d=(0,5)$$ $$a_1=(-6/5,-4/5)$$ --case1 $$\begin{cases} P : & a_0 &\to &b\\ Q : & c &\to &d \end{cases}$$ --case2 $$\begin{cases} P' : & a_1 &\to & b\\ Q : & c &\to & d \end{cases}$$ #qanda_set_qst(10,1,0){{ $$\begin{cases} \text{小麦生産 } & P : & {\color{red}{(1,1)} } \to (4,0)\\ \text{鉄生産 } & Q : & (2,1) \to (0,5) \end{cases}$$ が $$\begin{cases} \text{小麦生産 } & P' : & {\color{red}{(6/5,4/5)} }\to (4,0)\\ \text{鉄生産 } & Q : & (2,1) \to (0,5) \end{cases}$$ となった。 <br> <ul> <li>つぎのようにベクトルを定める。</li> <li>$a_0=(-1,-1),b=(4,0)$</li> <li>$c=(-2,-1),d=(0,5)$</li> <li>$a_1=(-6/5,-4/5)$</li> <li>case1 $$\begin{cases} P : & a_0 &\to &b\\ Q : & c &\to &d \end{cases}$$ </li> <li>case2 $$\begin{cases} P' : & a_1 &\to & b\\ Q : & c &\to & d \end{cases}$$ </li> </ul> <hr> <ul> <li>小麦の生産力を計測するとき、小麦生産のインプット$a_0=(-1,-1)$を、鉄を含まない$(\fbox{ A },0)$に変換した。</li> <li>このとき、小麦x量と鉄y量の比率 $x:y=\fbox{ B }:\fbox{ C }$となる。</li> <li>A,B,Cに当たる数値を答えよ。</li> </ul> }} #qanda(10,1) #qanda_solution(10,1){{ <h4>解答</h4> <ul> <li>$$A: -3/2, B:4, C:2$$</li> <li>比率なのでもちろん $$A: -3/2, B:2, C:1$$ などでも可。 </li> </ul> <h4>解説</h4> <ul> <li>問題9-1でみたように $$Q:(2,1) \to (0,5)$$ は結果だけみると小麦2を投入して(減らして)、鉄$5-1$を産出する(ふやす)過程とみなすことができる。つまり、 $小麦2\to 鉄4$という比率で小麦を鉄に変換できる。 </li> <li>だから、鉄1をふやすには、小麦$1/2$減らせばよい、わけです。</li> <li>$x:y=2:1$ ということは、変換比率を表す直線$$y=(1/2)x \cdots\cdots l_1$$を想定しているということになります。</li> </ul> }} #qanda_set_qst(10,2,0){{ $$\begin{cases} \text{小麦生産 } & P : & {\color{red}{(1,1)} } \to (4,0)\\ \text{鉄生産 } & Q : & (2,1) \to (0,5) \end{cases}$$ が $$\begin{cases} \text{小麦生産 } & P' : & {\color{red}{(6/5,4/5)} }\to (4,0)\\ \text{鉄生産 } & Q : & (2,1) \to (0,5) \end{cases}$$ となった。 <br> <ul> <li>つぎのようにベクトルを定める。</li> <li>$a_0=(-1,-1),b=(4,0)$</li> <li>$c=(-2,-1),d=(0,5)$</li> <li>$a_1=(-6/5,-4/5)$</li> <li>case1 $$\begin{cases} P : & a_0 &\to &b\\ Q : & c &\to &d \end{cases}$$ </li> <li>case2 $$\begin{cases} P' : & a_1 &\to & b\\ Q : & c &\to & d \end{cases}$$ </li> </ul> <hr> <ul> <li>変換比率を求めたときの鉄生産のネットのベクトル $c+d$ は小麦の量を$x$軸、鉄の量を$y$軸としたとき、どのような直線上にのっているか。直線を表す式を書け。</li> </ul> }} #qanda(10,2) #qanda_solution(10,2){{ <h4>解答</h4> <ul> <li>$y=-2x$</li> </ul> <h4>解説</h4> <ul> <li>$c+d=(-2,4)$ だから、このベクトルは原点を通り傾き-2の直線$$y=-2x \cdots\cdots l_2$$上に位置する。</li> </ul> }} #qanda_set_qst(10,3,0){{ <ul> <li>直線$l_1$と$l_2$の関係をひと言で述べよ。</li> </ul> }} #qanda(10,3) #qanda_solution(10,3){{ <h4>解答</h4> <ul> <li>直交</li> </ul> <h4>解説</h4> <ul> <li>傾きの積 $(1/2)\times -2 = -1$ により直交。</li> <li>つまり、この直交する変換比率を表す直線 $l_1$ が「補助線」になるのです。</li> <li>ということで図をかいてみると....</li> </ul> <iframe src="https://www.geogebra.org/classic/brvzmaw6?embed" width="800" height="600" allowfullscreen style="border: 1px solid #e4e4e4;border-radius: 4px;" frameborder="0"></iframe> }} #qanda_set_qst(10,4,0){{ <p>$$\overline{OG}:\overline{OB} = \fbox{ A } : \fbox{ B }$$</p> <p>$\fbox{ A }, \fbox{ B }$ を図中の記号を使ってうめよ。overline はつけなくてよい。</p> }} #qanda(10,4) #qanda_solution(10,4){{ <h4>解答</h4> $$\overline{OH}:\overline{OI}$$ <h4>解説</h4> $$\triangle{OHG} \mathrel{\unicode[sans-serif]{x223D} } \triangle{OIJ}$$ }} #qanda_set_qst(10,5,0){{ <p>直線 $l_1$ 上に、長さ1のベクトル $\vec{p}=(p_1,p_2)$ をつくる。</p> <p>内積 $\vec{p}\cdot\vec{b}$ の値に相当する線分を図の記号を使って示せ。</p> }} #qanda(10,5) #qanda_solution(10,5){{ <h4>解答</h4> $\overline{OJ}$ <h4>解説</h4> $\angle\mathrm{JOB} = \theta$ とおくと $$\vec{p}\cdot\vec{b} = |\vec{p}|\,|\vec{b}|cos\,\theta =1\times\overline{OB}\,cos\,\theta=\overline{OJ}$$ }} #qanda_set_qst(10,6,0){{ <p>内積$(-1,-1)(p_1,p_2)=p_1-p_2$</p>の絶対値を表す線分を図中の記号でしめせ。</p> }} #qanda(10,6) #qanda_solution(10,6){{ <h4>解答</h4> $\overline{OH}$ }} #qanda_set_qst(10,7,0){{ <p>$\overline{OI}\div\overline{OH}$は何を意味するか。</p> }} #qanda(10,7) #qanda_solution(10,7){{ <h4>解答</h4> <p>小麦生産における小麦ベースの生産力</p> <h4>解説</h4> <ul> <li>$\overline{OG}:\overline{OB} = \overline{OH}:\overline{OI}$であった。</li> <li>左辺は投入$(-1,-1)$をすべて小麦$(-3/2,0)$に変換して、何倍になったか、比較している。</li> <li>右辺は$(-1,-1)(p_1,p_2)$ と$(4,0)(p_1,p_2)$を比較していることになる。</li> <li>どっちも比が同じにある、といっているのだ。</li> <li>小麦に変換するほうは、何をしているか、意味がわかるが、内積を比較する、というのは、何を意味しているのだろうか。</li> </ul> }} #qanda_set_qst(10,8,0){{ <p>内積を比較する、というのは、何を意味しているのだろうか。</p> }} #qanda(10,8) #qanda_solution(10,8){{ <h4>解答</h4> <ol> <li>小麦と鉄に異なるウェートをつけている。</li> <li>小麦1を$p_1$と評価し鉄1を$p_2$と評価して足せるとしている。</li> <li>小麦1に$p_1$円という価格をつけ、鉄1に$p_1$円という価格をつけて、内積で合計金額を計算している。</li> </ol> <h4>解説</h4> <ul> <li>解答の3.までくれば、何をしているか、その意味はハッキリしますね。</li> <li>単位は円でなくてもかまわないのです。小麦と鉄の相対的な評価が問題なのですから。また、$\vec{p}$の長さが1である必要もありません。長さが$k$ならすべての価格が$k$倍になるだけです。</li> <hr> <li>ということは、ある商品の組$Q(x個,y個)$があったとして、それぞれの単価がが$(p_1,p_2)$なら、その総額は$(x,y)(p_1,p_2) =xp_1+yp_2$は、ベクトル$\vec{p}$がのっている直線 $l$ に点Qから下ろした垂線の足になる、ということです。</li> <li>いいかえると、直線$l$の垂線上にある商品の組合せ$(x,y)$は、単価が$p_1,p_2$のとき、同じ金額になる、ということです。</li> </ul> }} #qanda_set_qst(10,9,0){{ <p>小麦,鉄の単価が$p_1,p_2$のとき、$A(-1,-1)$と$G(-1.5,0)$が同額であったとする。</p> <p>価格比$p_2/p_1$を求めよ。</p> }} #qanda(10,9) #qanda_solution(10,9){{ <h4>解答</h4> <ul> <li>1/2</li> </ul> <h4>解説</h4> $$(-1,-1)(p_1,p_2) = (-1.5,0)(p_1,p_2)$$ $$-p_1-p_2=-1.5p_1$$ $$p_2/p_1=1/2$$ <ul> <li>点Aから直線$y=1/2x$に下ろした垂線の足と、点Gから下ろした垂線の足がともに点Hになっているのがわかるであろう。</li> <li>要するに、(-1,-1)も(-1.5,0)も、$\vec{p}$と内積をつくり、スカラー化すれば、同じ値(金額)になるわけである。</li> <li>商品の単価で構成されたベクトルを<b>価格ベクトル</b>とよぶ。</li> <li>必要がある場合は、その長さが1になるように基準化した価格ベクトルを基準価格ベクトルとよぶ。</li> </ul> }} ------- CENTER:&size(20){&color(red){11月30日の講義はここからです。};}; CENTER:第9講および第10講のここまでは「積み上げ方式」になります。 CENTER:前の部分がわからないと、30日の講義も理解できません。 CENTER:しっかり復習しておきましょう。 ------ **純生産物の分割 [#d075586e] #qanda_set_qst(10,10,0){{ <p>いま価格ベトルを$\vec{p}=(2,1)$とおく(仮に単位を円とする)。</p> <p>このとき、鉄生産$(-2,-1) \to (0,5)$ における支出金額、収入金額は、それぞれいくらになるか。</p> }} #qanda(10,10) #qanda_solution(10,10){{ <h4>解答</h4> <ul> <li>支出金額: (2,1)(-2,-1) =-5円</li> <li>収入金額: (2,1)(0,5)=5円</li> </ul> <h4>解説</h4> <ul> <li>「支出=収入」ということは、価格ベースで考えると、利益がでない、ということ。</li> <li>$(2,1)(-2,-1) + (2,1)(0,5) = (2,1)(-2,4)$</li> <li>$(-2,4)$ というのは $\vec{OF} = \vec{c}+\vec{d}$ です。</li> <li>点Fから $\vec{p}$ がのっている直線に下ろした垂線の足は原点 $O(0,0)$ になります。 </li> <li>要するに、$\vec{c}+\vec{d}$ に直交する価格ベクトル $\vec{p}$ というのは、鉄生産で「支出=収入」となるギリギリの価格比だったのです。</li> <li>では、このとき、小麦生産の収支は、価格ベースで考えるとどうなるのでしょうか。</li> </ul> }} #qanda_set_qst(10,11,0){{ <p>価格ベトルが $\vec{p}=(2,1)$ のとき、小麦生産における利益額(収入ー支出=生産総額-費用総額)を求めよ。</p> }} #qanda(10,11) #qanda_solution(10,11){{ <h4>解答</h4> <ul> $5円$ </ul> <h4>解説</h4> $$生産総額-費用総額 = (2,1)(4,0)-(2,1)(1,1)=5$$ }} #qanda_set_qst(10,12,0){{ <p>小麦生産Pと鉄生産Qを合わせた社会的再生産が生みだす純生産物のベクトルを求めよ。</p> }} #qanda(10,12) #qanda_solution(10,12){{ <h4>解答</h4> <ul> $(1,3)$ </ul> <h4>解説</h4> $$(\vec{a}+\vec{b})+(\vec{c}+\vec{d})= \vec{OE}+\vec{OF} = (-1,-1) +(4,0) +(-2,-1)+(0,5) = (1,3)$$ }} #qanda_set_qst(10,13,0){{ <p>価格ベトルを$\vec{p}=(2,1)$のとき、純生産物の総額はいくらになるか。</p> }} #qanda(10,13) #qanda_solution(10,13){{ <h4>解答</h4> <ul> $5円$ </ul> <h4>解説</h4> $$(2,1)(1,3)=5$$ }} #qanda_set_qst(10,14,0){{ <p>問題10-10から問題10-14までを通してみて、わかったことをひと言でのべよ。</p> }} #qanda(10,14) #qanda_solution(10,14){{ <h4>解答</h4> <p>小麦生産による純生産物の独り占め</p> <h4>解説</h4> <ul> <li>鉄生産の利益額はゼロ。鉄生産の利益額=純生産物の総価額。</li> <li>$小麦生産の利益額 E_1 + 鉄生産の利益額 E_2 = 純生産物総額 E$</li> <li>$E_2 = 0 \implies E = E_1$</li> </ul> }} #qanda_set_qst(10,15,0){{ <p>小麦生産の利益額がゼロになるような価格ベクトルを求めよ。</p> }} #qanda(10,15) #qanda_solution(10,15){{ <h4>解答</h4> $(3,1)$ $(1,3)$ <h4>解説</h4> $$\vec{a}+\vec{b} = (3,-1)$$ $$(p_1,p_2)(3,-1)=0$$ $$3p_1-p_2=0$$ <ul> <li>たとえば $\vec{p}=(1,3)$であればよい。</li> <li>因みにこのとき $$鉄生産の利益総額 = (1,3)(-2,4)=10$$ $$純生産物の価額 = (1,3)(1,3)=10$$ $$鉄生産の利益総額 = 純生産物の価額$$ で、今度は鉄生産の独り占めになっている。 </li> <li>要するに$2 \geqq p_1/p_2 \geqq 1/3$の範囲なら、小麦生産も鉄生産も黒字。</li> <li>でも、$ p_1/p_2 \geqq 2$ まで小麦価格が上がると、鉄生産は元が取れず赤字になり、</li> <li>逆に、$ 1/3 \geqq p_1/p_2$ まで小麦価格が下がると、小麦生産は元が取れず赤字になる、というわけです。</li> </ul> <ul> <li>図解しておきます。</li> <li>$\overline{OG}:小麦生産の利益$</li> <li>$\overline{OH}:鉄生産の利益$</li> <li>$\overline{OI}:純生産物の価額$</li> <li>右下の ▶ ボタンをクリックすると価格ベクトル $\vec{p}$ が変化します。 </li> </ul> <iframe src="https://www.geogebra.org/classic/dtxynqcs?embed" width="800" height="600" allowfullscreen style="border: 1px solid #e4e4e4;border-radius: 4px;" frameborder="0"></iframe> }}