#author("2023-11-29T18:37:51+09:00","default:obata","obata") #author("2023-11-29T18:43:07+09:00","default:obata","obata") CENTER:[[前回◁>2023年度/冬学期/第8講]]&color(#447CFF){第&size(32){9};講};[[▷次回>2023年度/冬学期/第10講]] ----- #qanda_setstid(2023-11-09 16:20:00,90) #qanda_who #qanda_mathjax //#qanda_points_chart //#qanda_points_hist #qanda_points_chart #qanda_points_hist ✔ REC ON&br; ✅ 接続チェック #qanda_set_qst(9,100,0){{ <li>✔ 接続状態をおしえてください。</li> <li>先週、みなさんに <a href="https://www.geogebra.org/">Geogebra</a> を使った経験があるかどうか、たずねたのですが、そのあと、さわってみましたか。</li> }} #qanda(9,100) CENTER:&size(25){&color(yellow,navy){ 生産力をはかる };}; #contents ------ **前回のまとめ [#qf8e462a] -再生産とは、アウトプットがインプットにフィードバックする生産 -再生産が持続するには、インプット < アウトプット が必要。 -再生産が縮小しないためには、一定以上の生産力が前提となる。 -たくさんの生産物が連鎖している社会的再生産では、さまざまな生産過程で投入されている生産手段の総量が、その生産手段の粗生産物以下になることが必要。生産過程間のバランスが求められる。 **今回のネライ [#eac9a31f] -「生産力」とはなにか、 -それは、どのように「はかる」ことができるのか、学ぶ。 -「生産力」という言葉は、わかっているようで、厳密に考えると、わかっていないことがわかるはず、自分のアタマでしっかり考えてみよう。 -価格、価格ベクトルの概念、生産価格の概念の糸口になる。これについては次回以降。 ***生産力 [#z1fc1fc6] -生産力 productivity は 生産性ともいう。 -次のようなケースで基本的な原理を考えてみよう。 --case1 $$\begin{cases} \text{小麦生産 } & P : & {\color{red}{(1,1)} } \to (4,0)\\ \text{鉄生産 } & Q : & (2,1) \to (0,5) \end{cases}$$ --case2 $$\begin{cases} \text{小麦生産 } & P' : & {\color{red}{(1.2,0.8)} }\to (4,0)\\ \text{鉄生産 } & Q : & (2,1) \to (0,5) \end{cases}$$ --投入はマイナス、産出はプラスと銘記して、つぎのようにベクトルを定めると $$a_0=(-1,-1),b=(4,0)$$ $$c=(-2,-1),d=(0,5)$$ $$a_1=(-6/5,-4/5)$$ --case1 $$\begin{cases} P : & a_0 &\to &b\\ Q : & c &\to &d \end{cases}$$ --case2 $$\begin{cases} P' : & a_1 &\to & b\\ Q : & c &\to & d \end{cases}$$ #qanda_set_qst(9,1,0){{ <ul> <li> $$\begin{cases} \text{小麦生産 } & P : & {\color{red}{(1,1)} } \to (4,0)\\ \text{鉄生産 } & Q : & (2,1) \to (0,5) \end{cases}$$ が $$\begin{cases} \text{小麦生産 } & P' : & {\color{red}{(6/5,4/5)} }\to (4,0)\\ \text{鉄生産 } & Q : & (2,1) \to (0,5) \end{cases}$$ となった。</li> <br> <li>つぎのようにベクトルを定める。</li> <li>$a_0=(-1,-1),b=(4,0)$</li> <li>$c=(-2,-1),d=(0,5)$</li> <li>$a_1=(-6/5,-4/5)$</li> <br> <li>case1 $$\begin{cases} P : & a_0 &\to &b\\ Q : & c &\to &d \end{cases}$$ </li> <li>case2 $$\begin{cases} P' : & a_1 &\to & b\\ Q : & c &\to & d \end{cases}$$ </li> <hr> <li>このとき、小麦生産の生産力は上昇したのだろうか、下落したのだろうか。</li> <li>はじめに、生産力とはそもそもどのようにして計算できるのか、case1 についてみてみる。</li> <li>次の文の空欄[A]から[E]を埋めながら考えてみよう。 </li> <hr> <li>小麦生産の産出は$(4,0)$で変わらないのに、投入は$(1,1)$ から$(-6/5,-4/5)$に変わっている。</li> <li>ただ $(1,1)$から$(-6/5,-4/5)$の変化が、増大なのか減少なのか、見た目ではわからない。</li> <li>しかし、鉄生産Q があるから、$小麦x \to 鉄 1$ という生産ができる。</li> <li>$q = c + d = [A]$ だから $q_s = q \times [B] = (x,1)$ となる。</li> <li>つまり$x =[C]$。 この関係をつかえば、$ a_0 = ([D],0)$となる。</li> <li>したがて、小麦生産P: $([D],0) \to (4,0)$ となり、アウトプットをインプットで割った生産力は[E]となる。</li> </ul> }} #qanda(9,1) #qanda_solution(9,1){{ <h4>解答</h4> <ul> <li>[A] $(-2,4) \quad\because\, (-2,-1)+(0,5)$</li> <li>[B] $1/4$</li> <li>[C] $-1/2 \quad\because (-2,4)\times 1/4 = (-(1/2),1)$ $つまり小麦1/2を鉄1に変えられるのだ。$</li> <li>[D] $-3/2 \quad \because 鉄1 = 小麦1/2 だから、a_0 =(-1,-1)=(-1-(1/2),0) = (-3/2,0)$</li> <li>[E] $8/3 \quad\because 4\div 3/2$ </ul> <h4>解説</h4> <ul> <li>鉄生産というのは、要するに、小麦を減らして鉄をふやすプロセスです。</li> <li>だから、「小麦生産Pで投入される鉄も、さかのぼれば、鉄生産Qで小麦からつくられた」と考えられる。</li> <li>けっきょく、小麦生産Pで投入された鉄も、小麦に置き換えることができる。</li> <li>通してみると、鉄(だけ)で小麦をつくる小麦生産P は、$小麦 (\to 鉄 ) \to 小麦$となり、</li> <li>間を飛ばしてしまえば、$小麦 \to 小麦$ となる。</li> <li>こうなると、投入も産出も同種の小麦だから、$小麦 \div 小麦$ で何倍になったか、計算できる。というわけで、生産性がはかれるわけです。</li> </ul> <h4>After</h4> <ul> <li>$\color{red}{(-6/5,-4/5)}$ は $\color{red}{(6/5,4/5)} $ のミスタイプでした。</li> <li>以下の問題でも同じミスタイプが続きます。</li> <li>ただその後のcase1, case2 の説明はミスタイプではありません。</li> </ul> }} #qanda_set_qst(9,2,0){{ $$\begin{cases} \text{小麦生産 } & P : & {\color{red}{(1,1)} } \to (4,0)\\ \text{鉄生産 } & Q : & (2,1) \to (0,5) \end{cases}$$ が $$\begin{cases} \text{小麦生産 } & P' : & {\color{red}{(6/5,4/5)} }\to (4,0)\\ \text{鉄生産 } & Q : & (2,1) \to (0,5) \end{cases}$$ となった。 <br> <ul> <li>つぎのようにベクトルを定める。</li> <li>$a_0=(-1,-1),b=(4,0)$</li> <li>$c=(-2,-1),d=(0,5)$</li> <li>$a_1=(-6/5,-4/5)$</li> <br> <li>case1 $$\begin{cases} P : & a_0 &\to &b\\ Q : & c &\to &d \end{cases}$$ </li> <li>case2 $$\begin{cases} P' : & a_1 &\to & b\\ Q : & c &\to & d \end{cases}$$ </li> <li>case2 について、生産力を計算し、case1 と case2 のどちらが生産力が高いか、判定せよ。計算の過程も示せ。</li> </ul> }} #qanda(9,2) #qanda_solution(9,2){{ <h4>解答</h4> <ul> <li>case2の小麦ベースの生産力:5/2</li> <li>case1 のほうが生産力は高い(case1 $\to$ case2 で生産力は低下した)。</li> </ul> <h4>解説</h4> <ul> <li>小麦1/2を鉄1に変えられるのだから $$a_1=(6/5,4/5) \sim (6/5+4/5\times 1/2,0) = (8/5,0)$$ となる。 </li> <li>小麦生産 P'$(6/5,4/5) \to (4,0)$は$$(8/5,0) \to (4,0)$$となる。</li> <li>したがって、小麦ベースでみた小麦生産の生産力は$$4\div 8/5=5/2$$</li> <li>$8/3 > 5/2$ となり、生産力はcase1のほうが高いことになる。</li> </ul> }} #qanda_set_qst(9,3,0){{ $$\begin{cases} \text{小麦生産 } & P : & {\color{red}{(1,1)} } \to (4,0)\\ \text{鉄生産 } & Q : & (2,1) \to (0,5) \end{cases}$$ が $$\begin{cases} \text{小麦生産 } & P' : & {\color{red}{(6/5,4/5)} }\to (4,0)\\ \text{鉄生産 } & Q : & (2,1) \to (0,5) \end{cases}$$ となった。 <br> <ul> <li>つぎのようにベクトルを定める。</li> <li>$a_0=(-1,-1),b=(4,0)$</li> <li>$c=(-2,-1),d=(0,5)$</li> <li>$a_1=(-6/5,-4/5)$</li> <li>case1 $$\begin{cases} P : & a_0 &\to &b\\ Q : & c &\to &d \end{cases}$$ </li> <li>case2 $$\begin{cases} P' : & a_1 &\to & b\\ Q : & c &\to & d \end{cases}$$ </li> </ul> <br> <hr> <ul> <li>小麦生産の生産力の次に、今度は鉄生産のほうの生産力についてみてみよう。</li> <li>次の文の $\fbox{ A }$ から $\fbox{ C }$ に適当な数値、数式を入れながら考えてみよう。</li> </ul> <hr> <ul> <li>鉄の生産方法は変わらなくても、小麦の生産方法が変われば、間接的な影響をうけて、鉄生産の生産力も変わる。これがポイントだ!</li> <li>case1 のとき</li> <ul> <li>小麦1を生産するのに必要な鉄の量は $\fbox{ A }$ であるから、</li> <li>Q: $(2,1) \to (0,5) \implies (0, \fbox{ B } ) \to (0,5)$ となり、</li> <li>鉄生産の生産力は $\fbox{ C }$ となる。</li> </ul> </ul> }} #qanda(9,3) #qanda_solution(9,3){{ <h4>解答</h4> <ul> <li>$\fbox{ A }: 1/3, \fbox{ B }:5/3, \fbox{ C }:3$</li> </ul> <h4>解説</h4> <ul> <li>$(-1,-1) \to (4,0)$ $a_0+b =(3,-1)$</li> <li>つまり鉄1を減らすことで、小麦3がふえる。小麦1ふやすには、鉄1/3を投入すればよい。$\cdots \fbox{ A }$</li> <li>$(-2,-1) \implies (0,-2\times 1/3-1) = (0,-5/3) \cdots \fbox{ B }$</li> <li>$5\div 5/3 = 3 \cdots \fbox{ C }$</li> </ul> }} #qanda_set_qst(9,4,0){{ $$\begin{cases} \text{小麦生産 } & P : & {\color{red}{(1,1)} } \to (4,0)\\ \text{鉄生産 } & Q : & (2,1) \to (0,5) \end{cases}$$ が $$\begin{cases} \text{小麦生産 } & P' : & {\color{red}{(6/5,4/5)} }\to (4,0)\\ \text{鉄生産 } & Q : & (2,1) \to (0,5) \end{cases}$$ となった。 <br> <ul> <li>つぎのようにベクトルを定める。</li> <li>$a_0=(-1,-1),b=(4,0)$</li> <li>$c=(-2,-1),d=(0,5)$</li> <li>$a_1=(-6/5,-4/5)$</li> <li>case1 $$\begin{cases} P : & a_0 &\to &b\\ Q : & c &\to &d \end{cases}$$ </li> <li>case2 $$\begin{cases} P' : & a_1 &\to & b\\ Q : & c &\to & d \end{cases}$$ </li> </ul> <br> <hr> <ul> <li>小麦生産の生産力の次に、今度は鉄生産のほうの生産力についてみてみよう。</li> <li>次の文の$\fbox{ A }$から$\fbox{ C }$に適当な数値、数式を入れながら考えてみよう。</li> </ul> <hr> <ul> <li>前問の続きです。</li> <li>case2 のとき</li> <ul> <li>小麦1を生産するのに必要な鉄の量は$\fbox{ A }$であるから、</li> <li>Q: $(2,1) \to (0,5) \implies (0, \fbox{ B }) \to (0,5)$ となり、</li> <li>鉄生産の生産力は$\fbox{ C }$となる。</li> </ul> </ul> }} #qanda(9,4) #qanda_solution(9,4){{ <h4>解答</h4> <ul> <li>$\fbox{ A }: 2/7, \fbox{ B }:11/7, \fbox{ C }:35/11$</li> </ul> <h4>解説</h4> <ul> <li>$(-6/5,-4/5) \to (4,0)$ $a_1+b =(4-6/5,-4/5)$</li> <li>つまり鉄4/5を減らすことで、小麦14/5がふえる。ということは、比例的に考えて、小麦1の投入は、鉄2/7の投入に置き換えることができる。$\cdots \fbox{ A }$</li> <li>$(-2,-1) \implies (0,-2\times 2/7-1) = (-11/7,0) \cdots \fbox{ B }$</li> <li>$5\div 11/7 = 35/11 \cdots \fbox{ C }$</li> <hr> <li>$case1の生産力:3 \to case2の生産力:35/11=3.18181818$</li> </ul> }} #qanda_set_qst(9,5,0){{ <li> $$\begin{cases} \text{小麦生産 } & P : & (1,1)\to (4,0)\\ \text{鉄生産 } & Q : & (2,1) \to (0,5) \end{cases}$$ が $$\begin{cases} \text{小麦生産 } & P : & (1.2,0.8)\to (4,0)\\ \text{鉄生産 } & Q : & (2,1) \to (0,5) \end{cases}$$ となった。</li> <ul> <li>このとき、全体で生産力は上昇したか、下落したか。理由を述べよ。 </li> </ul> }} #qanda(9,5) #qanda_solution(9,5){{ <h4>解答</h4> <ul> <li>不可知</li> <li>きまらない</li> <li>ベクトルの大小を直接比較することはできないから。</li> </ul> <h4>解説</h4> <ul> <li>「全体で」ということは、けっきょく、$P+Q :(3,2)\to (4,5)$と$P'+Q: (3.2,1.8)\to (4,5)$ を比較することになります。</li> <li>つまり、同じアウトプット$(4,5)$をもたらす二つのベクトル、$(3,2)$と$(3.2,1.8)$とを比較して、大きくなったから小さくなったか,という問題になります。</li> <li>ノルム $\sqrt{3^2+2^2}=\sqrt{13}$と$\sqrt{(16/5)^2+(9/5)^2}=\sqrt{337}/5$で大小はきまる、と思うかもしれませんが、ノルムの大小がインプットの大小に対応する保証はありません。もともと、インプットのベクトルの大小は、鉄生産や小麦生産を表すベクトルに依存しているわけですから。</li> <li>小麦生産の生産力をはかるときには、鉄生産のネットを表すベクトルを基準に使い、鉄生産の生産力を量るときには、小麦生産のネットを表すベクトルを基準につかっているわけです。</li> <li>つまり、違う基準を使って、小麦だけ、鉄だけのインプットにしてきたわけです。</li> <li>だから、小麦生産のほうを基準に考えれば生産力が下落したように、鉄生産のほうを基準に考えれば、上昇したように「現れる」わけです。</li> <li>両者に共通なベクトル$(s,t)$をきめてやれば、内積 $(3,2)(s,t) \gtreqqless (3.2,1.8)(s,t)$ というスカラー値で大小は判定できます。</li> <li>しかし、$(s,t)$を決める客観的な理由が、ここまでの条件には含まれていない、これが問題の根本です。</li> <li>いつでも足せば全体になるだろうと考えるの安易です。「足す」というのはけっこうむずかしいのです。「全体で」という言葉は、そう軽々しく使うわけにはいきません。</li> <li>....ということで、生産力を「はかる」とはどうすることなのか、図解してみます。 <iframe src="https://www.geogebra.org/classic/wbqd8nkp?embed" width="800" height="600" allowfullscreen style="border: 1px solid #e4e4e4;border-radius: 4px;" frameborder="0"></iframe> <hr> <li>さて、それにしても、「$a_0 \to a_1$が、小麦生産の生産力を低下させ、鉄生産の生産力を上昇させる」というのは、なにを意味しているのでしょうか?」</li> <li>これを問題にだしてもよいのですか、たぶん、ひと言で答えるのはむずかしいでしょう。</li> <li>そこで、次にちょっとした「補助線」をひいて、これをヒントに考えてゆきましょう。</li> </ul> }}