#author("2023-07-11T10:33:19+09:00","default:obata","obata") #author("2023-07-12T19:43:02+09:00","default:obata","obata") CENTER:[[前回 ◁ >2023年度/夏学期/第9講]]&color(#447CFF){第 &size(32){10}; 講}; [[▷ 次回>2023年度/夏学期/第11講]] ---- #qanda_setstid(2023-07-06 16:20:00,100) #qanda_setstid(2023-07-13 16:20:00,100) #qanda_who #qanda_mathjax #qanda_points_chart #qanda_points_hist ✔ REC ON&br; ✅ 接続チェック #qanda_set_qst(10,100,0){{ <p>✔ 接続状態をおしえてください。</p> }} #qanda(10,100) CENTER:&size(25){&color(yellow,navy){ 価値尺度 };}; #contents ------ **概要 [#ce74c646] -商品貨幣が果たす三つの機能のうち、価値尺度の機能について学ぶ。 -価値の表現に対して、価値の大きさを「はかる」ための追加条件を理解すること。 **貨幣(商品貨幣)と商品が実在する市場 [#a08c6066] #qanda_raw{{ <link rel="stylesheet" href="./css/konva/2022/money-circle.css"> <div id="money-circle-ownerTable"></div> <div id="money-circle"></div> <script src="https://unpkg.com/konva@7.0.7/konva.min.js"></script> <script src="./js/konva/coordinate.js"></script> <script src="./js/konva/2022/money-circle.js"></script> }} **売るということ [#o775b5ca] #qanda_set_qst(10,1,0){{ <p>100円硬貨があれば、100円という価格がつけられた商品は何でも、すぐに買える。</p> <p>しかし、100円で買った商品を100円で売ろうとしても、すぐには売れない。</p> <p>すぐに売ろうと思えば、90円とか、80円とか、価格を下げなければならない。</p> <p>ということは、商品の100円は、貨幣の100円より価値が小さいのだ。</p> <hr> <p>さて、以上の推論は妥当か。理由を述べよ。</p> }} #qanda(10,1) #qanda_solution(10,1){{ <h4>解答</h4> <ul> <li>妥当ではない。</li> <li>「すぐに」売れる価格が、商品の価値を表している、という想定が誤った推論を生んでいる。</li> <li>価値は商品種の属性であり、同種商品のなかで、価値を表す価格で売るには、確率的な変動を伴うある期間を要する。他の同種商品を押しのけて「すぐに」売れる価格が、商品価値を表していると考えている点で、この推論は妥当ではない。</li> </ul> <h4>解説</h4> <ul> <p>「すぐに」売れる価格が、商品の価値を表している、と考えてしまうのは、この講義で明らかにしてきた「商品と貨幣が実在する市場」の意味がまだよく理解できていないからです。</p> <p>「商品と貨幣が実在する市場」では、同種商品が大量に存在するなかで、その価値を表現する貨幣が持続的に存在するのです。</p> <p>同種大量の個々の商品は、どれかはきまっていませんが、100円で次々に売られてゆくわけで、たしかに種としては100円の価値があるのです。</p> <p>すぐには売れないけれども、100円の価格をつけて、売れるのを待っている商品を、ここでは<span class="tooltip">在庫<span class="dscp"><span class="text">用語上の注意!「在庫」という用語は売るつもりがないストックという意味で、商品と区別して使われることがあります。しかし、この講義の商品の定義にしたがえば、このような区別は無意味です。ここでは、商品はあまねく在庫である,という意味で、商品として存在する対象すべてを「在庫」とよびます。</span></span></span>とよびます。 </p> <p>こうした在庫が存在するから、表示された価格でなら、貨幣は何でもすぐに買えるのです。だから、逆に、すぐに必要がないかぎり、貨幣の状態で持ち続けられるので、市場には、一定量の貨幣が実在するのです。</p> <hr> <p> 需要と供給が一致するように価格がきまるという「均衡」という考え方は、このような「商品と貨幣が実在する市場」のすがたをみえなくさせます。ある価格ですべての商品の需要と供給が一致している、とすれば、すべての商品が、その価格で、すぐに全部売れるはず。だから、市場には、ここで定義した「在庫」など存在しない。したがって、貨幣も価格をつけるに使われたかもしれないが、取引がおこなわれたあとには存在しない。つまり、市場は均衡価格でカラっぽになる、というのが、均衡論的な市場の捉え方です。 </p> <p>この講義で明らかにしてきた「商品と貨幣が実在する市場」像は、需給均衡論による市場像と正反対のものです。二つをごた混ぜにしてはいけません。</p> </ul> }} **価値を「はかる」と言うこと [#n68fc069] #divregion(価値尺度の定義,admin,lec=10,qnum=1) -商品の価値は価格で「表現」される。この表現はつねに変更可能な状態にある。 -貨幣による購買は、この価格表現を在る値に確定する。 -価格を確定させる貨幣の作用を''価値尺度''とよぶ。 -商品の価値は、表現されただけではまだ「はかられた」とはいえない。 -「表現」された価格は、売買によって「実現」される(価格の実現)。 -この意味で、価値尺度機能とは、商品の価値を「はかる」機能である。 -商品のもつ、潜在的な全面的同等性として価値が、目に見える貨幣額として現れることをもって、「価格の実現」を「価値の実現」ということもある。 #enddivregion #qanda_set_qst(10,2,0){{ <p>売買とは商品と貨幣の交換だ。</p> <p>この言説で見失われる、売買の特徴を一つ語句で示し、その含意を説明せよ。</p> }} #qanda(10,2) #qanda_solution(10,2){{ <h4>解答</h4> <ul> <li>不可逆性</li> <li>交換はその語義からして可逆であるが、売買では、買った価格で必ず売れるとはかぎならい。</li> </ul> <h4>解説</h4> <ul> <li><売りと買いの「分離」>とか<表現と実現の「分離」>という解答もあるかもしれない。しかし、分離された二項の関係を明確にしている点で、不可逆性のほうが踏むこんでいる。</li> <li>時間の流れのなかで、個々の商品はバラバラに売られてゆく。この時間に沿って、価格表現は変化するが、実現れた価格は、時間軸にそってならぶ。一度実現された価格をもとに戻すことはできない。</li> </ul> }}