#author("2024-01-19T17:17:15+09:00","default:obata","obata")
#author("2024-01-19T17:17:58+09:00","default:obata","obata")
CENTER:[[前回◁>2023年度/冬学期/第13講]]&color(#447CFF){第&size(32){14};講};[[▷次回>2023年度/冬学期/第15講]]

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#qanda_setstid(2024-01-18 16:20:00,90)
#qanda_who
#qanda_mathjax
#qanda_points_chart
#qanda_points_hist

✔ REC ON&br;
✅ 接続チェック

#qanda_set_qst(14,100,0){{
<ul>
  <li>&#x2714; 接続状態をおしえてください。</li>
</ul>
}}
#qanda(14,100)

CENTER:&size(25){&color(yellow,navy){&nbsp;生産に必要な労働時間&nbsp;};};
#contents
------
**ネライ [#o2e98907]
-商品1単位を生産するのに、直接間接に必要な労働時間 $t$ の計算方法を考える。
-この時間 $t$ は、社会全体の純生産物の分配率(剰余価値率)をはかるのに役立つ。

**簡単な例 [#gbaf4a09]
-簡単な例として、小麦を生産手段として、小麦を生産する経済を想定
$$
小麦10kg + 2時間の労働 \longrightarrow 小麦30kg
$$
-これは
$$
1000兆円分の「生産手段」+ 5000億時間の労働 \longrightarrow 1500兆円分の「生産物」
$$
という関係を、超単純化したもの
-「生産手段」や「生産物」は実はベクトル。
-小麦の例は、ベクトルの集計問題をパスするためのもの。

#qanda_set_qst(14,1,0){{
  $$
  小麦10kg + 2時間の労働 \longrightarrow 小麦30kg
  $$
  <p>小麦1kgを生産するに必要な労働時間を$t$とおき方程式をたて、$t$の値をもとめよ。</p>
}}
#qanda(14,1)
#qanda_solution(14,1){{
<h4>解答</h4>
  $$10t + 2 = 30t$$
  $$t = 1/10時間$$
}}

#qanda_set_qst(14,2,0){{
  $$
  小麦10kg + 2時間の労働 \longrightarrow 小麦30kg
  $$
  <p>純生産物を求めよ。式も書くこと。</p>
}}
#qanda(14,2)
#qanda_solution(14,2){{
<h4>解答</h4>
<ul>
  $$30kg - 10kg = 20kg$$
  $$小麦20kg$$
</ul>
<h4>解説</h4>
<ul>
  <ul>
    <li>はじめから$10kg$ の小麦は存在したのだから、$20時間$の労働が生みだしたのは純生産物である$小麦20kg$</li>
    <li>$労働2時間 \to 小麦20kg$ ということは、小麦$1kg$を生産するのに必要な労働時間は$2/20=1/10$時間。</li>
    <li>問題14-1 の$t$の値に一致する。</li>
  </ul>
</ul>
}}

#qanda_set_qst(14,3,0){{
  $$
  小麦10kg + 2時間の労働 \longrightarrow 小麦30kg
  $$
  <p>$小麦30kg$を生産するのに、直接的に必要な労働時間は$2時間$である。</p>
  <p>では$小麦30kg$を生産するのに、間接的に必要な労働時間は何時間か。式も書くこと。</p>
}}
#qanda(14,3)
#qanda_solution(14,3){{
<h4>解答</h4>
  $$10kg \times 1/10\, 時間/kg = 1時間$$

<h4>解説</h4>
<p>
$$
小麦10kg + 2時間の労働 \longrightarrow 小麦30kg
$$
は、すべて労働時間で表示すれば
$$
1時間 + 2時間 \longrightarrow 3時間
$$
となる。
</p>
}}

#qanda_set_qst(14,4,0){{
  $$
  \begin{array}{rcrcrr}
    kg && 時間 &&kg&\\ \hline\\
    10 &+& 2 &\longrightarrow& 30& \\
    10/3 &+& 2/3 &\longrightarrow& 10& \\
    10/3^2 &+& 2/3^2 &\longrightarrow& 10/3& \\
    \cdots&+&\cdots &\longrightarrow& \cdots &(+ \\
    \hline\\
    & \framebox[8em]{A} &  &\longrightarrow& \fbox{ B }
  \end{array}
  $$
  <p> </p>
  <p>$\framebox[8em]{A},\fbox{ B }$を埋めよ。</p>
}}
#qanda(14,4)
#qanda_solution(14,4){{
<h4>解答</h4>
  $$A = 2+2/3+2/3^2+\cdots$$
  $$B = 30$$
}}

#qanda_set_qst(14,5,0){{
  <p>$2+2/3+2/3^2+\cdots$ の値を計算せよ。</p> 
}}
#qanda(14,5)
#qanda_solution(14,5){{
<h4>解答</h4>
<ul>
  $2\times 1/(1-1/3)=3 時間$
</ul>
<h4>解説</h4>
<ul>
  <li>$2+2/3+2/3^2+\cdots$ は直接的労働だけの合計値。</li>
  <li>$小麦10kg$の生産に必要な間接的労働は、次々にまえにさかのぼってゆくことで、すべて直接的労働に「還元される」。</li>
</ul>
}}

#qanda_set_qst(14,6,0){{
  <p>(A)間接的労働は、次々にまえにさかのぼってゆくことで、すべて直接的労働に「還元される」。</p>
  <p>(B)直接的労働だけで小麦は生産できる。</p> 
  <p>「(A)ということは(B)ということである」は真か偽か。理由を述べよ。</p>
}}
#qanda(14,6)
#qanda_solution(14,6){{
<h4>解答</h4>
<ul>
  <li>偽</li>
  <li>どこまでさかのぼっても、直接的労働だけで小麦を生産する生産過程に行きつくことはない。</li>
  <li>いくら労働しても、小麦の種がないところから、小麦を育てることは不可能。</li>
</ul>
<h4>解説</h4>
<ul>
  <li>$n$段階までさかのぼってみると
    $$10/3^n + 2/3^n \longrightarrow 30/3^n$$
    であり、生産手段としての小麦の量も直接的労働の量も比例的に小さくなっている。
  </li>
  <li>極限まで考えると、生産手段としての小麦の量がゼロに収束して、なくなるように思われるが、それは小麦だけではなく、直接的労働のほうもゼロに収束している。</li>
  <li>比率としては、はじめの $小麦10kg + 2時間の労働 \longrightarrow 小麦30kg$ のミニチュアがあらわれるだけ。顕微鏡で拡大してみればわかる?</li>
  <li>労働だけあれば、どのような生産物でも生みだせるというのは、大いなる錯覚。</li>
  <li>「すべての商品の価値は、その生産に必要な労働時間で決まる」という労働価値説は、こうした錯覚を生むので注意しよう。</li>
</ul>
}}

#qanda_set_qst(14,7,0){{
  $$
  小麦10kg + 2時間の労働 \longrightarrow 小麦30kg
  $$
  <p>労働者は$2時間$はたらいて$15kg$の小麦を取得した。</p>
  <p>労働者が支出した労働時間と取得した労働時間の比率
    $$\frac{支出した労働時間}{取得した労働時間}$$
    を求めよ。
  </p>
}}
#qanda(14,7)
#qanda_solution(14,7){{
<h4>解答</h4>
  $$\frac{2}{15\times 1/10} =4/3$$
<h4>解説</h4>
<ul>
  <li>小麦$1.5kg$を生産するのに必要な労働時間が「取得した労働時間」になる。</li>
  <li>労働者は$2時間$はたらいて$1.5時間$分の小麦を手に入れた。この差$2-1.5=0.5時間$を <b>剰余労働時間</b> 。$1.5時間$のほうを<b>必要労働時間</b>という。</li>
  <li><b>剰余価値率=剰余労働時間/必要労働時間</b>は分配率に相当する。この場合は$1/3$</li>
</ul>
}}
------
&size(20){&color(red){第15講(Ⅰ月18日)の講義は、ここから};};
-----
**複数の生産物がある場合 [#kabbba56]
-これまで考えてきた単一生産物 小麦だけのケースでは、労働時間と小麦の物量は一対一で対応。
-複数の生産物のケースでそれらを集計して比較する必要がでてくる。
-次のような小麦と鉄の二種類のケースで考えてみる。N種類あるとしても基本原理は変わらない。
$$
\begin{array}{rcrcrcr}
小麦10kg &+& 鉄10kg &+& 労働2時間 &\longrightarrow& 小麦40kg\\
小麦20kg &+& 鉄10kg &+& 労働3時間 &\longrightarrow& 鉄50kg
\end{array}
$$

#qanda_set_qst(14,8,0){{
  $$
  \begin{array}{rcrcrcr}
    小麦10kg &+& 鉄10kg &+& 労働2時間 &\longrightarrow& 小麦40kg\\
    小麦20kg &+& 鉄10kg &+& 労働3時間 &\longrightarrow& 鉄50kg
  \end{array}
  $$
  <p>小麦1kgを生産するのに必要な労働時間を$t_1$,鉄1kgを生産するのに必要な労働時間を$t_3$ とした方程式を立てよ。</p>
}}
#qanda(14,8)
#qanda_solution(14,8){{
<h4>解答</h4>
$$
\begin{array}{rcrcrcr}
  10t_1 &+& 10t2 &+& 2 &=& 40t_1\\
  20t_1 &+& 10t2 &+& 3 &=& 50t_2
\end{array}
$$
<h4>解説</h4>
<ul>
  <li>これを解くと
    $$t_1=11/100,t_2=13/100$$
    となる。
  </li>
</ul>
}}

#qanda_set_qst(14,9,0){{
  <p>
  $$
  \begin{array}{rcrcrcr}
    小麦10kg &+& 鉄10kg &+& 労働2時間 &\longrightarrow& 小麦40kg\\
    小麦20kg &+& 鉄10kg &+& 労働3時間 &\longrightarrow& 鉄50kg
  \end{array}
  $$
  のもとで、労働者は生活物資として$(小麦5kg, 鉄20kg)$を受けとるとする。
  </p>
  <p>剰余価値率を求めよ。式も書くこと。</p>
}}
#qanda(14,9)
#qanda_solution(14,9){{
<h4>解答</h4>
  $$\displaystyle\frac{5}{(5,20)(11/100,13/100)} -1 = 37/63$$
<h4>解説</h4>
<ul>
  <li>$$剰余価値率=\frac{剰余労働時間}{必要労働時間}=\frac{総労働時間-必要労働時間}{必要労働時間}=\frac{総労働時間}{必要労働時間}-1$$</li>
  <li>$37/63$はおよそ$$60\%$$</li>
  <li>$$\displaystyle\frac{必要労働時間}{総労働時間}=\frac{1}{1+剰余価値率}=\frac{1}{1+37/66}=66/101\fallingdotseq 0.65$$</li>
  <li>1時間はたらいとして、そのうちの$65\%$ つまり約$40分$は自分のために、残りの$20分$は資本家のためにはたらいたことになる。</li>
</ul>
}}

#qanda_set_qst(14,10,0){{
  <p>
    $$
    \begin{array}{rcrcrcr}
      小麦10kg &+& 鉄10kg &+& 労働2時間 &\longrightarrow& 小麦40kg\\
      小麦20kg &+& 鉄10kg &+& 労働3時間 &\longrightarrow& 鉄50kg
    \end{array}
    $$
    のもとで、労働者は生活物資として$(小麦5kg, 鉄20kg)$を受けとるとする。
  </p>
  <p>このとき一般的利潤率を$r$, 小麦と鉄の生産価格を$p_1,p_2$, 賃金率を$w$とする。</p>
  <hr>
  <p>小麦40kgの生産コストを表す式を書け。</p>
}}
#qanda(14,10)
#qanda_solution(14,10){{
<h4>解答</h4>
  $$10p_1+10p_2+2w$$
}}

#qanda_set_qst(14,11,0){{
  <p>
    $$
    \begin{array}{rcrcrcr}
      小麦10kg &+& 鉄10kg &+& 労働2時間 &\longrightarrow& 小麦40kg\\
      小麦20kg &+& 鉄10kg &+& 労働3時間 &\longrightarrow& 鉄50kg
    \end{array}
    $$
    のもとで、労働者は生活物資として$(小麦5kg, 鉄20kg)$を受けとるとする。
  </p>
  <p>このとき一般的利潤率を$r$, 小麦と鉄の生産価格を$p_1,p_2$, 賃金率を$w$とする。</p>
  <hr>
  <p>次の関係を表す方程式をたてよ。
    $$小麦40kgの生産コストに均等利潤を加えた価格=小麦40kgの販売額$$</p>
}}
#qanda(14,11)
#qanda_solution(14,11){{
<h4>解答</h4>
  $$(10p_1+10p_2+2w)(1+r)=40p_1$$
}}

#qanda_set_qst(14,12,0){{
  <p>
    $$
    \begin{array}{rcrcrcr}
      小麦10kg &+& 鉄10kg &+& 労働2時間 &\longrightarrow& 小麦40kg\\
      小麦20kg &+& 鉄10kg &+& 労働3時間 &\longrightarrow& 鉄50kg
    \end{array}
    $$
    のもとで、労働者は生活物資として$(小麦5kg, 鉄20kg)$を受けとるとする。
  </p>
  <p>このとき一般的利潤率を$r$, 小麦と鉄の生産価格を$p_1,p_2$, 賃金率を$w$とする。</p>
  <hr>
  <p>次の関係を表す方程式を書け。
    $$鉄50kgの生産コストに均等利潤を加えた価格=鉄40kgの販売額$$
  </p>
}}
#qanda(14,12)
#qanda_solution(14,12){{
<h4>解答</h4>
  $$(10p_1+20p_2+3w)(1+r)=50p_2$$
<h4>After</h4>
問題文にミスがありました。「鉄40kgの販売額」は「鉄50kgの販売額」の誤記です。
}}

#qanda_set_qst(14,13,0){{
  <p>
    $$
    \begin{array}{rcrcrcr}
      小麦10kg &+& 鉄10kg &+& 労働2時間 &\longrightarrow& 小麦40kg\\
      小麦20kg &+& 鉄10kg &+& 労働3時間 &\longrightarrow& 鉄50kg
    \end{array}
    $$
    のもとで、労働者は生活物資として$(小麦5kg, 鉄20kg)$を受けとるとする。
  </p>
  <p>このとき一般的利潤率を$r$, 小麦と鉄の生産価格を$p_1,p_2$, 賃金率を$w$とする。</p>
  <hr>
  <p>労働者は全体で$2+3=5$時間、労働する。これで得た賃金額で$(小麦5kg, 鉄20kg)$を購買する。このとき、次の関係を表す式を書け。
    $$労働者の総収入=総支出$$</p>
}}
#qanda(14,13)
#qanda_solution(14,13){{
<h4>解答</h4>
  $$5w =(5,20)(p_1,p_2)=5p_1+20p_2$$
}}

#qanda_set_qst(14,14,1){{
#qanda_set_qst(14,14,0){{

\begin{array}{rcr}
(10p_1+10p_2+2w)(1+r)&=&40p_1 \\
(10p_1+20p_2+3w)(1+r)&=&50p_2 \\
5w =(5,20)(p_1,p_2)=5p_1+20p_2 \\
\end{array}

<p>$w$を消去せよ。</p>
}}
#qanda(14,14)
#qanda_solution(14,14){{
<h4>解答</h4>
<ul>
$$
\begin{array}{rcr}
  (12p_1+18p_2)(1+r)&=&40p_1\\
  (13p_1+32p_2)(1+r)&=&50p_2
\end{array}
$$
</ul>
<h4>解説</h4>
<ul>
  $$
  \begin{array}{rcr}
  (10p_1+10p_2+2(p_1+4p_2))(1+r)&=&40p_1\\
  (10p_1+20p_2+3(p_1+4p_2))(1+r)&=&50p_2
  \end{array}
  $$ 
</ul>
}}

#qanda_set_qst(14,15,0){{
  $$
  \begin{array}{rcr}
  (12p_1+18p_2)(1+r)&=&40p_1\\
  (13p_1+32p_2)(1+r)&=&50p_2
  \end{array}
  $$
  <p>$p_1/p_2=p$ とおき、$r$を消去せよ。</p>
}}
#qanda(14,15)
#qanda_solution(14,15){{
<h4>解答</h4>
<ul>
  $$\displaystyle\frac{12p+18}{40p}=\frac{13p+32}{50}$$
</ul>
<h4>解説</h4>
<ul>
  <li>これを解くと
 $$\left\{ p = \frac{-\sqrt{1459} - 17}{26}, p = \frac{\sqrt{1459} - 17}{26} \right\} $$
  </li>
  <li>$p>1$だから$p\fallingdotseq 0.82$</li>
  <li>およそ $p_1:p_2\fallingdotseq 4:5$ となる。</li>
  <li>ちなみに $t_1:t_2=11:13$, $t_1/t_2=11/13\fallingdotseq 0.85$</li>
  <li>つまり、$p_1:p_2 \sim t_1:t_2$</li>
  <li>生産価格の比$p_1:p_2$は労働時間$t_1:t_2$の比から若干ズレるが、かなり近い値になる。</li>
  </ul>
<h4>まとめ:投下労働量と生産価格</h4>
  <ul>
    <li>生産に直接間接に必要な労働時間 $t_i$ を投下労働量という。</li>
    <li>「商品の価値は投下労働量で決まる」という学説を投下労働価値説という。</li>
    <li>投下労働価値説によれば、商品は投下労働量に比例した価格で売買されることになる。</li>
    <li>しかし、このとき、各商品に生産で利潤率は不均等になる。</li>
    <li>資本の競争によって利潤率が均等になるとすれば、商品は投下労働時間に比例した価格(価値価格)ではなく、生産価格で売買される。</li>
    <li>しかし、投下労働時間は、生産価格を計算するのに用いたのと同じ条件で計算できる。</li>
    <li>そして、資本家と労働者の間の分配関係(剰余価値率:搾取率)をはかるには、投下労働量による集計が有効である。</li>
    <li>「何時間はたらいて、何時間で生産できる生産物を手に入れたか」というシンプルな時間の差で表示できるからである。</li>
  </ul>
}}

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