宇野三段階論の歴史的限界

段階論的要請からの原理論の純化

宇野弘蔵の経済学方法論は、戦後の日本のマルクス経済学の方向に大きな影響を及ぼした。それは、原理論を基礎に資本主義の歴史的発展を解明する段階論を構成し、これに基づいて資本主義の現状分析を試みるという三段階論として広く知られている。しかし、これは後から分かりやすくまとめた一般的解説であり、この方法の必要性を理解するうえで、必ずしも適切とはえいない。この方法の原点、したがってまた核心をなすのは、段階論、とくに帝国主義論にあったといってよい。

「マルクスの場合は、なお資本主義がその末期的現象を呈するということが明らかにされえなかったので、資本主義の発展は益々純粋の資本主義に接近するものと考えられ、それによって原理論の規定が与えられたのであって、資本主義が新たなる第三の段階を迎え、資本主義的純化の傾向を阻害されることになることによって、原理論を段階論から純化する*1ということもできなかったのである。修正派に対する正統派の争いは、ヒルファディングの『金融資本論』、さらにまたレンニの『帝国主義論』によって、その正しい解決の方向を与えられたのであるが、しかしこの帝国主義論の段階論的規定は、当然に『資本論』自身の原理論的純化を要請することになるのであって、ヒルファディングやレニンのようなマルクス主義の実践的運動かによって容易になされることではなかったのである。しかしこの分離の不充分なることは、現在もなおマルクス主義の理論にとっては勿論のこと、実践運動にとっても決して影響のないものとはいえない。」(宇野弘蔵『経済学方法論』56頁)

典型論と類型論

「資本主義は、最初から世界史的な発展をなすのであるが、この世界史的発展は、いずれかの国を指導的な先進国として展開されてきたのである。(中略)十九世紀におけるドイツ並びにイギリスにおける金融資本の形成による帝国主義の段階というように、いずれもその時代を代表し、後進諸国にその指導的影響を及ぼす先進国の資本主義としてあらわれたのである。」(宇野弘蔵『経済学方法論』45頁、なお51頁、54頁)

段階論の難点

原理論の展開方法


*1 この純化するということに意味は、分離するということであろう

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