資本の概念:売買でもうける

講義の予定

  • 前半では、
    • 販売期間の不確定性について、補足問題を解き復習します。売買がいくつかの変形をもつ理由を知るポイントになります。
    • 変形のなかで現れる貸借に関して、さらに広い観点から「売買と貸借」について考えてみます。教科書72-75ページ。
  • 後半では、
    • 売買を繰り返すことで増殖する「資本」の定義を与えてゆきます。

商品売買の目的

  • はじめに、なぜ、売買をするのか、その動機を考えてみよう。
    問題 11-1

    「100円の菓子パンを売って、その100円で缶ジュースを買った。

    これはけっきょく、100円の商品と100円の商品を取り替えているだけで、実は意味のないことだ。」

    この主張に賛成or反対?理由を述べよ。

    11-1 の回答を 
      +  
    29/95 ...1点以上  31%

      分
    2 min

    解答と解説 11-1

    解答:パンの売り手にとっては、100円の菓子パンより100円の缶ジュースのほうが、使用価値がある。

    等価交換なのだから、当然、価値では得をしていない。しかし、使用価値で得をしている。


    解説:ということは、使用価値は価値の大きさをきめる要因ではない、ということだ。

    自分にとって菓子パンと缶ジュースとどっちがいいか、という相対的な比較はできる。

    でも、自分にとってのジュースの使用価値と、相手にとっての菓子パンの使用価値が同じかどうか、そんな比較はできない。

    蓼食う虫も好き好き


    問題 11-2

    100円の菓子パンを売って100円の缶ジュースを買う等価交換を通じて、使用価値で得できる。売買の動機はこれにつきる。

    この主張は適切か。

    2 min

    解答と解説 11-2

    解答:「これにつきる」は早計。安く買って高く売ることで、利益を得ようとする活動が広く観察される。

    解説:「市場の変形」のところでみたように、「在庫と貨幣が実在する市場」のなかには追加的な利得を得るチャンスが存在している。

    このため、価値を増やす目的で、買って売る転売活動が広く観察される。

    11-2 の回答を 
      +  
    22/91 ...1点以上  24%

      分

資本

  • 市場は、売買を通じて「もうける」活動を生みだす。
  • 商品売買の変形のなかで、安買って高く売る G --- W --- G' という取引が登場。
    • ただし、この貨幣 G を資本と考えてはいけない。貨幣は貨幣、資本ではない。
    • 単純に G --- W --- G' という形式を資本とよぶのでも不充分。
    • できれば安く買いたい、できれば高く売りたい、という動機は、だれもみなもっている。
    • しかし、どれだけもうかったかは、買いと売りの二つを結びつけないとわからない
    • しっかりした計算システム、フレームワークが必要。
  • 売買を通じて、ふやす目的であらかじめ定められた金額を資本という。
  • この金額を決める行為が、資本の投下である。
    問題 11-3

    資本の投下はまず貨幣でなされる。

    真か偽か、判断の根拠を述べよ。

    2 min

    解答と解説 11-3

    解答:偽。金額はもつものは、貨幣か商品。したがって、資本は貨幣か商品か、いずれかのかたちでおこなわれる。

    解説:貨幣で投下する場合、額面は明瞭。商品の場合は、その商品が買える価格、売れる価格で額面が算定される。

    11-3 の回答を 
      +  
    50/95 ...1点以上  53%

      分
  • 「ふやす」ものは、厳密にいうと、そのときどきの金額で表されている価値。
  • 資本は、価値増殖を目指す売買の連鎖。

費用と収入

  • 投下された資本で、商品を買えば、貨幣が費用として支出される。
  • W を取得するのに必要な支出を、Wの費用価格 cost price 原価 という。
    • 資本の投下と貨幣の支出をしっかり区別しよう。
    • 資本を G -- W -- G' だといってしまうと、貨幣の支出が資本の投下であるかのような錯覚を生むので注意。
  • 資本を構成する商品を売れば、貨幣が収入としてはってくる。
  • 原価以上の売値(販売価格)で売ることで、その商品の販売でいくらもうかったかがわかる。この差額をマージンという。

    売値 - 原価 = マージン

    • 売値は、商品一個あたりの価格。原価も一個あたりで計算できる。
    • たとえば、牛丼の原価とマージンは?

流通費用

  • 事前に1個あたりいくらと計算できる費用のほかに、そうできない費用がある。
  • インターネットのサイトの広告料は、何個売れても、定額。たくさん売れれば、結果的に一個あたりの広告費は小さくなるし逆なら逆。
  • 販売のための店舗のテナント料なども同じ。何個売れても、ショップの家賃は定額。
  • 売買される商品の原価は、@1000円のよう単価がきまるのに対して、事前に単価計算ができない、売買を促進するための費用が存在。この費用を流通費用とよぶ。

期間概念

  • 流通費用の効果は、一定期間継続する。
  • 商品は市場にもちこまれた瞬間に売れるわけではない。
  • 価値を実現するには、ランダムな期間がかかる。
  • 流通費用は、一定期間にわたる費用。

利潤

  • 買って売ることで生じる差額(マージン)がもうけの源。
    粗利潤 = 一定期間の売上総額 - 一定期間の原価総額
  • しかし、この差額をだすのには流通費用が必要。
    純利潤 = 粗利潤 - 流通費用総額
  • 簡単化のために、同種の商品、同じ原価で買い同じ売値で何度も売買するケースを考えれば
    純利潤=(売値-原価)x 一定期間の販売数量 - 一定期間の流通費用
    となる。
  • これを
    純利潤=(売値-原価-1個あたり流通費用)x 一定期間の販売数量
    と考えてはならない。「1個あたり流通費用」は事後的には計算できるが、もうけの真のすがたを示すものではない。

フローとストック

問題 11-4

タンクに1000リットルの水が入っている。このタンクに毎分30リットルの水が流れ込み、毎分28リットルの水が流れ出す。

1時間に流れ込んだ水の量と流れ出した水の量は何リットルか。

タンクの水の量は何パーセント増加したか。

2 min

解答と解説 11-4

解答:$30 \times 60 = 1800リットル$。 $28\times 60 =1360リットル$。$(1800-1360)/1000=0.44, 44パーセント$

解説:ばからしい問題ですが

$1800リットル$や$1360リットル$は、タンクに流出入する「流量」でフローとよぶ。

これに対して、ある時点でタンクにたまっている水量をストックとよぶ。

フローは''期間''に依存する概念、ストックは''時点''に依存する概念です。

11-4 の回答を 
  +  

  分
問題 11-5

資本はフローかストックか?判断の理由を述べよ。

2min

解答と解説 11-5

解答:ストック。貨幣か商品のすがたで、特定の時点で金額に相当する対象が実在するから。

11-5 の回答を 
  +  
24/92 ...1点以上  26%

  分

利潤率

  • 利潤は、その期の資本の増殖分と位置づけられ、利潤額を資本額でわった利潤率として、つねに資本と関係づけられる。
問題 11-6

利潤はフローかストックか?判断の理由を述べよ。

2 min

解答と解説 11-6

解答:ストックであり、フローでもある。

利潤は、フロー マイナス フロー であり、

ある時点にその量で実在するという意味ではストック

ただし、ある期間の差額であるという意味では、期間に依存したフロー

売買によって形成されるフローと、資本というストックを関係づける項目である。

11-6 の回答を 
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63/97 ...1点以上  65%

  分
問題 11-7

単純化した例を考えてみよう。

月末に店の家賃10万円を払うことにして、20万円を用意して商売をはじめた。

週のはじめに20万円で商品を仕入れ、週末に23万円で売りきるかたちで4週間営業した。

1月4週間営業して、予定どおりに商品が売買でき、月末を迎えた。

さて、今月の利潤率は何パーセントか。計算式を示せ。

2 min
  • 解答の数字が見えない人は第15講?のサプリをみてください。

解答と解説 11-7

家賃の10万は月末払いなので、投下資本は20万円。

$23 \times 4 -20 \times 4=12$ これが売買差額つまり粗利潤

$12-10 =2$ 粗利潤から流通費用を引いたものが純利潤

$\displaystyle \frac{2}{20}=0.1$

利潤率は$10パーセント$

11-7 の回答を 
  +  
20/72 ...1点以上  28%

  分

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Last-modified: 2021-02-09 (火) 09:52:26