#author("2020-08-06T10:29:14+09:00","default:obata","obata")
#author("2020-08-07T21:55:57+09:00","default:obata","obata")
CENTER:[[前回 ◁ >2020年度/夏学期/第10講]]&color(#447CFF){第 &size(32){11}; 講};  [[▷ 次回>2020年度/夏学期/第12講]]
#katex
#qanda_mathjax
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CENTER:&size(25){&color(yellow,navy){ 資本の概念:売買でもうける };};
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*講義の予定 [#d0b01c07]
-前半では、
--販売期間の不確定性について、補足問題を解き復習します。売買がいくつかの変形をもつ理由を知るポイントになります。
--変形のなかで現れる貸借に関して、さらに広い観点から「売買と貸借」について考えてみます。教科書72-75ページ。
-後半では、
--売買を繰り返すことで増殖する「資本」の定義を与えてゆきます。


**商品売買の目的 [#g7dab3c9]
-はじめに、なぜ、売買をするのか、その動機を考えてみよう。
&br;
#qanda_set_qst(11,1,0){{
<p>「100円の菓子パンを売って、その100円で缶ジュースを買った。</p>
<p>これはけっきょく、100円の商品と100円の商品を取り替えているだけで、実は意味のないことだ。」</p>
<p>この主張に賛成or反対?理由を述べよ。</p>
}}
#qanda(11,1)
RIGHT:2 min
#qanda_solution(11,1){{
<p>解答:パンの売り手にとっては、100円の菓子パンより100円の缶ジュースのほうが、使用価値がある。</p>
<p>等価交換なのだから、当然、価値では得をしていない。しかし、使用価値で得をしている。<p>
</br>
<p>解説:ということは、使用価値は価値の大きさをきめる要因ではない、ということだ。</p>
<p>自分にとって菓子パンと缶ジュースとどっちがいいか、という相対的な比較はできる。</p>
<p>でも、自分にとってのジュースの使用価値と、相手にとっての菓子パンの使用価値が同じかどうか、そんな比較はできない。</p>
<p>蓼食う虫も好き好き</p>
}}
#qanda_scorechart(11,1)
&br;
#qanda_set_qst(11,2,0){{
<p>100円の菓子パンを売って100円の缶ジュースを買う等価交換を通じて、使用価値で得できる。売買の動機はこれにつきる。</p>
<p>この主張は適切か。</p>
}}
RIGHT:2 min
#qanda_solution(11,2){{
<p>解答:「これにつきる」は早計。安く買って高く売ることで、利益を得ようとする活動が広く観察される。</p>
<p>解説:「市場の変形」のところでみたように、「在庫と貨幣が実在する市場」のなかには追加的な利得を得るチャンスが存在している。</p>
<p>このため、価値を増やす目的で、買って売る転売活動が広く観察される。</p>
}}
#qanda(11,2)
#qanda_scorechart(11,2)

***資本 [#ebe96dee]
-市場は、売買を通じて「もうける」活動を生みだす。
-商品売買の変形のなかで、安買って高く売る G --- W --- G' という取引が登場。
--ただし、この貨幣 G を資本と考えてはいけない。貨幣は貨幣、資本ではない。
--単純に G --- W --- G' という形式を資本とよぶのでも不充分。
--できれば安く買いたい、できれば高く売りたい、という動機は、だれもみなもっている。
--しかし、どれだけもうかったかは、''買いと売りの二つを結びつけないとわからない''。
--しっかりした計算システム、フレームワークが必要。
-売買を通じて、ふやす目的であらかじめ定められた金額を''資本''という。
-この金額を決める行為が、資本の''投下''である。
#qanda_set_qst(11,3,0){{
<p>資本の投下はまず貨幣でなされる。</p>
<p>真か偽か、判断の根拠を述べよ。</p>
}}
RIGHT:2 min
#qanda_solution(11,3){{
<p><font color="#008000">解答:</font>偽。金額はもつものは、貨幣か商品。したがって、資本は貨幣か商品か、いずれかのかたちでおこなわれる。</p>
<p><font color="#008000">解説:</font>貨幣で投下する場合、額面は明瞭。商品の場合は、その商品が買える価格、売れる価格で額面が算定される。</p>
}}
#qanda(11,3)
#qanda_scorechart(11,3)

-「ふやす」ものは、厳密にいうと、そのときどきの金額で表されている価値。
-資本は、価値増殖を目指す売買の連鎖。


***費用と収入 [#x13f630a]
-投下された資本で、商品を買えば、貨幣が''費用''として''支出''される。
-W を取得するのに必要な支出を、Wの''費用価格'' cost price ''原価'' という。
--資本の投下と貨幣の支出をしっかり区別しよう。
--資本を G -- W -- G' だといってしまうと、貨幣の支出が資本の投下であるかのような錯覚を生むので注意。
-資本を構成する商品を売れば、貨幣が''収入''としてはってくる。
-原価以上の売値(販売価格)で売ることで、その商品の販売でいくらもうかったかがわかる。この差額をマージンという。
>
売値 - 原価 = マージン
<
--売値は、商品''一個あたり''の価格。原価も''一個あたり''で計算できる。
--たとえば、牛丼の原価とマージンは?

***流通費用 [#na6e217a]
-事前に1個あたりいくらと計算できる費用のほかに、そうできない費用がある。
-インターネットのサイトの広告料は、何個売れても、定額。たくさん売れれば、結果的に一個あたりの広告費は小さくなるし逆なら逆。
-販売のための店舗のテナント料なども同じ。何個売れても、ショップの家賃は定額。
-売買される商品の原価は、@1000円のよう単価がきまるのに対して、事前に単価計算ができない、売買を促進するための費用が存在。この費用を''流通費用''とよぶ。

***期間概念 [#nf9eb1b9]
-流通費用の効果は、一定期間継続する。
-商品は市場にもちこまれた瞬間に売れるわけではない。
-価値を実現するには、ランダムな期間がかかる。
-流通費用は、一定期間にわたる費用。

***利潤 [#f21ebbb4]
-買って売ることで生じる差額(マージン)がもうけの源。
CENTER:''粗利潤'' = 一定期間の売上総額 - 一定期間の原価総額
-しかし、この差額をだすのには流通費用が必要。
CENTER:''純利潤'' = 粗利潤 - 流通費用総額
-簡単化のために、同種の商品、同じ原価で買い同じ売値で何度も売買するケースを考えれば
CENTER:純利潤=(売値-原価)x 一定期間の販売数量 - 一定期間の流通費用
LEFT:となる。
-これを
CENTER:純利潤=(売値-原価-1個あたり流通費用)x 一定期間の販売数量
LEFT:と考えてはならない。「1個あたり流通費用」は事後的には計算できるが、もうけの真のすがたを示すものではない。


#null{{
-1万円の元手でも、これで毎日商品を買い、それをその日に1.2万円で売り切ることを30日続ければ、元手は1万円で、原価x数量は30万円。1万円という同じ金額が、何回も支出され回収され''回転''する。
-資本は元手であり、原価x数量、原価総額がではない。
-もうける目的で、事前に定めた金額を資本という。この元手をきめることを''投下''という。
-資本は''投下''される''金額''である。
-投下されるのは金額であって、貨幣ではない。一定の価格で表示される価値をもつ商品でも投下することは可能。
-この資本から、原価も流通費用も''支出''される。
-支出されるの貨幣である。貨幣は投下されるのではなく、費用として支出されるのである。
-''支出''の対をなすのは、''収入''。
-買うことで、貨幣が''費用''として''支出''され、売ることで貨幣が''収入''として入ってくる。
}}

***フローとストック [#z0aee1c1]
#qanda_set_qst(11,4,0){{
<p>タンクに1000リットルの水が入っている。このタンクに毎分30リットルの水が流れ込み、毎分28リットルの水が流れ出す。</p>
<p>1時間に流れ込んだ水の量と流れ出した水の量は何リットルか。</p>
<p>タンクの水の量は何パーセント増加したか。</p>
}}
RIGHT:2 min
#qanda_solution(11,4){{
<div style="font-family:'Haruhi Gakuen'">
<p>解答:$30 \times 60 = 1800リットル$。 $28\times 60 =1360リットル$。$(1800-1360)/1000=0.44, 44パーセント$</p>
<p>解説:ばからしい問題ですが</p>
<p>$1800リットル$や$1360リットル$は、タンクに流出入する「流量」で<span style="font-weight:bold;color:#ff4444;">フロー</span>とよぶ。</p>
<p>これに対して、ある時点でタンクにたまっている水量を<span style="font-weight:bold;color:#ff4444;">ストック</span>とよぶ。</p>
<p>フローは''期間''に依存する概念、ストックは''時点''に依存する概念です。</p>
</div>
}}
#qanda(11,4)
//#qanda_scorechart(11,4)

#qanda_set_qst(11,5,0){{
<p>資本はフローかストックか?判断の理由を述べよ。</p>
}}
RIGHT:2min
#qanda_solution(11,5){{
<p>解答:ストック。貨幣か商品のすがたで、特定の時点で金額に相当する対象が実在するから。</p>
<!---
<p>解説:では、利潤は?</p>
<p>フロー - フローで、ある時点にその量で実在するという意味ではストックです。</p>
<p>ただし、ある期間の差額であるという意味では、期間に依存したフローになります。</p>
--->
}}
#qanda(11,5)
#qanda_scorechart(11,5)

***利潤率 [#o05de8c5]
-利潤は、その期の資本の増殖分と位置づけられ、利潤額を資本額でわった利潤率として、つねに資本と関係づけられる。

#qanda_set_qst(11,6,0){{
<p>利潤はフローかストックか?判断の理由を述べよ。</p>
}}
RIGHT:2 min
#qanda_solution(11,6){{
<p>解答:ストックであり、フローでもある。</p>
<p>利潤は、フロー マイナス フロー であり、
<p>ある時点にその量で実在するという意味ではストック</p>
<p>ただし、ある期間の差額であるという意味では、期間に依存したフロー</p>
<p>売買によって形成されるフローと、資本というストックを関係づける項目である。</p>
}}
#qanda(11,6)
#qanda_scorechart(11,6)

#qanda_set_qst(11,7,0){{
<p>単純化した例を考えてみよう。
<p>月末に店の家賃10万円を払うことにして、20万円を用意して商売をはじめた。</p>
<p>週のはじめに20万円で商品を仕入れ、週末に23万円で売りきるかたちで4週間営業した。</p>
<p>1月4週間営業して、予定どおりに商品が売買でき、月末を迎えた。</p>
<p>さて、今月の利潤率は何パーセントか。計算式を示せ。</p>
}}
RIGHT:2 min

-解答の数字が見えない人は[[第15講>2020年度/夏学期/第15講]]のサプリをみてください。

#qanda_solution(11,7){{
<p>家賃の10万は月末払いなので、投下資本は20万円。</p>
<p>$23 \times 4 -20 \times 4=12$  これが売買差額つまり粗利潤</p>
<p>$12-10 =2$ 粗利潤から流通費用を引いたものが純利潤</p>
<p>$\displaystyle \frac{2}{20}=0.1$</p>
<p>利潤率は$10パーセント$</p>
}}
#qanda(11,7)
#qanda_scorechart(11,7)

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