#author("2020-07-03T06:07:45+09:00","default:obata","obata") #author("2020-07-08T10:53:27+09:00","default:obata","obata") CENTER:[[前回 ◁ >2020年度/夏学期/第7講]]&color(#447CFF){第 &size(32){8}; 講}; [[▷ 次回>2020年度/夏学期/第9講]] ---- #katex CENTER:&size(25){&color(yellow,navy){ 売買型市場:売れなければ買えない };}; *表券型貨幣 [#j0e09eb7] #divregion(フィアットマネートという用語は... ,lec=8,qnum=20,admin) -教科書(『経済原論 基礎と演習』)では、商品貨幣でない貨幣モドキをフィアットマネーと呼んでいる。 -10年前の教科書です。仮想通貨なんて、まだなかった時代です。(一部マニアは使っていたかもしれませんが) -教科書(『経済原論 基礎と演習』)では、「商品貨幣でない貨幣」をフィアットマネーと呼んでいます。 -10年前の教科書です。仮想通貨など、まだなかった時代です。(一部マニアは使っていたかもしれませんが) -フィアットマネーというのは「表券型貨幣」の通称として使います。 -表券貨幣説は、商品貨幣説と対をなす学説、英語ではchartalism 、表券は charta カルタ のことです。 -ところが、最近、この仮想通貨の世界で、円とかドルとかに換えることを「フィアット化」するなどというようになり、 -また、円とかドルのような法定貨幣(法貨、legal tender)をフィアットマネーと呼ぶ人たちがふえてきました。 -要するに、仮想通貨を実際の支払に使うには、いったん「貨幣」(←これ、商品貨幣です)に換金する必要がある、つまり仮想通貨は「貨幣」はでない、といっていることになります。 -この人たちの用語法でフィアットマネーというと、商品貨幣を指すことになってしまいます。 -この講義で従来どおり、商品貨幣でない貨幣モドキをフィアットマネーとよぶのは混乱のもと。 -あっさり、フィアットマネーという用語はやめちゃうほうがいい。 -..... かな、と思いましたが、やはり、この講義では、商品貨幣でない貨幣モドキの総称として、フィアットマネーという用語を、表券型貨幣の意味で使ってゆくことにします。 -fiat の意味はインターネットで調べてみてください。 -要するに、by fiat で、つまり「法令によって」とか、「強制的に」とか、でてくるはずです。 -教科書でフィアットマネーという名称は、政府がその威信で(まー、いちおう暴力で強制するのではなく、という意味ですが)受けとらせた貨幣という意味です。 -フィアットマネーというのは、黒板にチョークでグリグリとやった点のようなもので、幾何学の定義どおりの点を意味する「表券型貨幣」ないし「国家威信型貨幣」とよぶべきものの、通称として使います。 -仮想通貨を実際の支払に使うには、いったん「貨幣」に「換金」する必要があるわけで、 -これはつまり、仮想通貨は「貨幣」はでない、といっていることになります。 -困ったことに、この人たちの用語法でフィアットマネーというと、日本銀行券のような信用貨幣を指すことになります。 -信用貨幣は、商品貨幣の一つのタイプですから、けっきょく、フィアットマネーは商品貨幣に属することになります。 -要するに、「商品貨幣でない貨幣」をフィアットマネーとした教科書の定義と、明らかに正反対の意味になるので、注意してください。 #enddivregion #divregion(理論的に考えると...,lec=8,qnum=20,admin) -商品の価値を表現するには、それ自身、商品価値と結びついた等価物が必要 -価値との結びつきをもたないモノを貨幣にすることはできない。 -国家が紙幣を発行して、 -「貨幣とは国家が貨幣と定めたものが貨幣である」として、無制限に発行する紙券では、 -- 一時的な交換の媒介物になったり、税金の支払いに使えたりすることはあっても、 -- そもそも貨幣の第一機能である価値表現(値づけ)という仕様を満たすことはできない。 -商品が存在すれば、商品貨幣は必須の存在。 -ただ、これを「補助」する、さまざまな支払手段が派生する。 -[[日本国が製造した貨幣>https://www.mof.go.jp/currency/coin/general_coin/list.htm]]には「日本国」と刻印されているが、[[一度に支払に使える量には制限>https://www.mof.go.jp/currency/coin/general_coin/list.htm]]がある。 //-商品貨幣でない(商品の存在から導出できない)「貨幣」は、フィアットマネーと''よばれる''(理論的に規定できないものなで、あえて''よぶ''とはいわない)。 //-商品貨幣が存在するときに、その周辺にさまざまなフィアットマネーが存在することある。 //-しかし、フィアット・マネーが商品貨幣を押しのけて、それだけで自立した貨幣となることはできない。 //-もっとも、フィアット・マネーがマネーの本質だ(表券主義 Chartalism) という学者(表券主義 Chartalism) もいるし、 //-[[MMT>https://ja.wikipedia.org/wiki/現代貨幣理論]] など、現実にこれを実施することを目論むひともいる。 #enddivregion #qanda_set_qst(8,1,0){{ <p>次の主張は真か偽か、理由を述べよ。</p> <p>商品が存在すれば、必ず同時にその価値を表現する商品貨幣が存在する。</p> <p>しかし、商品貨幣はフィアットマネーの存在を妨げるものではない。</p> <p>また、貨幣制度が発展すれば、商品貨幣が消滅し、フィアットマネーだけになることもある。</p> }} #qanda(8,1) #qanda_scorechart(8,1) #qanda_set_qst(8,2,0){{ <p>次の文の (A) (B) (C) にはいる適当な用語を順に、半角スペース一つで区切り、答えよ。</p> <p>いま私たちが日々用いている貨幣は、中央銀行が発行する (A) 銀行券か、市中銀行にもつ (B) か、いずれかである。</p> <p>両者はともに商品貨幣に属し、国家が発行する (C) とは範疇を異にする。</p> <p>商品が存在すれば、必ず同時に商品貨幣が存在するが、商品貨幣でない (C) が必ず存在するとはかぎらない。</p> }} #qanda(8,2) #qanda_scorechart(8,2) #divregion(仮想通貨,lec=8,qnum=2,admin) -ビットコインのような仮想通貨も、商品貨幣の仕様を満たすものではない。 --一般の商品の価値表現の用をたすものではなく --逆に商品貨幣によって値づけされ取引される商品の一つである。 -今日、資産としての性格をもつ[[さまざまな金融資産>https://nikkei225jp.com/bitcoin/]]が生まれており、同種大量性をもつ商品を集中的に商う取引所「制度」によって価値表現(値づけ)されている。 --仮想通貨取引所で売買される資産の一種であり、[[記念コイン>https://www.mof.go.jp/currency/coin/commemorative_coin/list.htm]]や記念切手と同類のアイテムである。 #enddivregion #divregion(商品貨幣論の枠組み,lec=8,qnum=2,admin) |CENTER:BGCOLOR(mediumspringgreen):態 様|CENTER:BGCOLOR(mediumspringgreen):実装方式|CENTER:BGCOLOR(mediumspringgreen):この講義の立場|CENTER:BGCOLOR(mediumspringgreen):通 説| |BGCOLOR(gold):物品貨幣|BGCOLOR(gold):金幣・銀幣 etc|CENTER:商品貨幣 =商品から&br;演繹的に導出できる|CENTER:CENTER:BGCOLOR(gold):本来の貨幣=&br;金貨本位制| |BGCOLOR(blue):COLOR(white):信用貨幣|BGCOLOR(gold):兌換銀行券|~|~| |~|BGCOLOR(blue):COLOR(white):不換銀行券|~|CENTER:BGCOLOR(silver):非本来的な貨幣=&br;管理通貨制| |BGCOLOR(silver):フィアット・マネー|BGCOLOR(silver):国家紙幣|CENTER:BGCOLOR(silver):原理的には不可能な貨幣|~| #enddivregion