前回<<冬学期第7講>>次回
概要
分業
- 分業という言葉は広く用いられているが、division of labour の訳語。文字通りにとると労働の分割ということになりますが、企業と企業の間でも、国と国の間でも、division of labour です。
- Adam Smith が『国富論』の第1章から普及したもので、そこでは、ピン工場の例で分業のメリットが説明され、目に見えにくいが、実は、同じ効果が工場と工場の間でも生じると拡張の効果が述べられています。
定義
- 分業は、生産物を媒介にして違う人の間で労働と労働がつながること。
- Aの労働の成果 --> B の労働の対象
- A と B が直接コミュニケーションをする必要はない。
- A がつくった毛糸でも A' がつくった毛糸でも、ちゃんと規格通りにできていれば、Bは編むことができる。
- B がちゃんと編んでくれれば、Cはこれをカーデガンにすることができる。....
- 教科書の図 II.1.5 分業の基本構造
効果
- ヒント:奥が深い問題です。さしあたり、思いつく理由を枚挙してみてください。
- スミス型分業とバベッジ型分業:
- ピン生産の仕事場で10 人の職人が1 日に48000 本のピンを生産している.
- しかし職人の仕事を観察すると,ピン生産には多くの工程があり,
- そのうち,材料の針金を運んできたり,製品を包装したり,
- 後片づけをしたりする工程は職人でなくてもできる.
- 職人がやっていたこれらの工程は8人の補助労働者にまかせれば,
- 職人を4人に減らしでも1 日48000 本のピンが生産できる.
- 職人の日当は4 シリングだが,
- 職人だけのケースA と,
- 次の間いに答えよ.
ケースA | | 職人10人 | 4s/人 | | | → | 48000本 |
ケースB | | 職人4人 | 4s/人 | 補助8人 | 2s/人 | → | 48000本 |
- 質問 2. 1人あたりの1 日の生産量はどちらが多いか.
- 質問 3. 1本あたりの日当はどちらが多いか.
- 質問 4. 熟練度はどちらが高いか.
資本主義における労働組織
- 質問 5. 協業がベースか、分業がベースか?
- 両方が結びついている、というのは現実だが、理論的にどっちが必須なのか、という論理的問題です。
- 協業の定義を抽象化、一般化して考えてみてください。コミュニケーションを通じた目的の共有。
ここまで講義で話しました。次の二つの問題は自由に考えてメールで回答してみてください。
- 質問 6.
AIの発展は労働組織にどのように影響するか?
- XがYに影響を与える、という場合、①まずXの定義を正確に与えることが前提です。
- ②次にYの構造もしっかり分析しておく必要があります。この場合、Yの労働組織ほうは「協業+分業」であると分析しました。
- 「いわゆるAIは....という影響を与えるそうです」というのではなく、③「AIの最大の特徴は....であり、それゆえ、....という影響を及ぼす」という具合に分析的な推論をしてみてください。
- この講義でみなさんに伝えたい、理論的に考えるというのは、こういうものです。
- 質問 7.
インターネットの発達はどうでしょうか?
- コンピュータ・サイエンスの発展、あるいはAI の発展と同じ影響をあたえるのでしょうか?
- インターネットとコンピュータ・サイエンスという対比は不充分かもしれません。
- しかし、インターネットは、やはりAIとは違った側面をもっています。
- この特徴が労働組織に与える影響を考えてみてください。