ちょっと変わったまんまの経済原論

6年前にまとめた『経済原論』ですが、そろそろ思い切って変えなきゃ、と思いつつ、つまらぬ学派的シガラミにとらわれ、グズグズしています。早くしなくっちゃ….

ところで、この本をだしたときに、コマーシャルのために書いた雑文、読めくなっているよ、とご注意くださった方がいらっしゃいました。1992年から永らくご愛顧いただきましたサーバー http://georg.e.u-tokyo.ac.jp は勤務先のセキュリティ管理がきつくなったので廃盤としたため、この間しばらく読めないままになっておりました。ここの「ちょっと変わった経済原論」(『UP』445, 東京大学出版会 2009年11月号)に貼ってあります。コンテンツはこちらの公開ページに移しました。

さて、この雑文の41頁で次のように書いたのですが、これが「マルクス経済学に一言」に対する私の「一言」ということになります。

ところが、二〇世紀末にはじまった冷戦体制の崩壊は、プレートそのものの大転換であった。新たなプレートを突き動かすマグマは、冷戦体制のもとで右からも左からも低開発を強いられてきた地域・国家における資本主義的発展であった。これをグローパリズムとよぶとすると、社会主義諸国の崩壊と先進資本主義国を席捲した新自由主義の台頭は、みなこの同じプレート上での地殻変動であった。

「雑文」を口実に、いろいろ言いたいことは言ってしまった感じです。「どうもあいつは何を考えているのかわからない」という方は、ひとまずこれをご覧ください。賛否はともかく、私が考えようとしている方向はわかるはずです。今は昔、なんて「そんなことは知りたくない」と思っている人を除けば…

今は昔…

5月30日に世界資本主義フォーラム で話してきました。あらかた一期一会の方々でしたが、いくつかコメントをいただきました。

「マルクス経済学に一言」に一言

私の記憶に誤りがなければ、東欧社会主義に関する論文を次々に雑誌に掲載されていたのを、十代の頃から拝見してきたように思います。大先輩からご意見をいただけるとは思っていませんでした。

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『資本論』第1巻を読む II 第2回

第2節「一般的定式の諸矛盾」

「資本の一般的定式」について、前回議論してみました。資本とは何か、一般的な概念を提示するべき箇所です。『資本論』Das Kapital という書名で刊行した以上、まさに中心中の中心の概念であるはずです。商品からはじめて、貨幣を導出してきたのも、資本の概念を明確にする下準備だったといってよいでしょう。生産ではなく、市場の観点から、まず資本を規定した点は重要なポイントです。しかし、そのうえで、資本の概念をしっかり打ちたてるには、ただ「資本とは自己増殖する価値の運動体なのだ」と、お経のように繰り返してすますべきではありません。考察は、この規定で終わるのではなく、ここからはじまるのです。「自己」とは何か、「価値増殖」とは何か、「価値の運動体」とは何か、貨幣が資本に「転化」するとはどういうことか、全部平明に答えてゆかなくてはなりません。

…ということで、前回は 転化すなわち変身 Verwandlung, transformation をめぐる、むずかしい話になりました。今回のところは、ある意味では簡単なので、前回の議論に結びつけ、資本の概念を深めてゆきたいと思います。

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「資本主義の世界史的発展段階をどうとらえるか」

5月30日に世界資本主義フォーラム というところで、話をするように依頼を受けました。

  • 「世界資本主義批判」
  • 当日のペーパーです。基本的な報告内容はこれにまとめてあります。

    頼まれれば、時間の許すかぎり、どこへでもうかがうつもりです。「資本主義の世界史的発展段階をどうとらえるか」というのは私がつけた論題ではなく、仮題としていただいたものです。私にはちょっと大きすぎるテーマなので、ききたいトピックを教えてください、とお伝えしたところ、次の4つの宿題をいただきました。

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    『資本論』第1巻を読む II 第1回

    第4章 「貨幣の資本への転化」

    第1節「資本の一般的定式」

    資本とは何か、これは Das Kapital という書物の主題でしょう。商品、貨幣の規定をうけて、第4章はこの問いに答えるものです。第1節「資本の一般的定式」は、これに簡潔に答えているようにみえますが…

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