抽象的人間労働と単純労働 †
- 抽象的人間労働への還元(1)=有用形態の捨象
- 単純労働への還元(2)=複雑労働が社会的に単純労働に還元される
共通に「還元」という考え方が使われており、抽象的人間労働=単純労働(=生理学的意味での人間労働)という解釈をうむ。
私的労働とは †
ただ、独立に行われていて互いに依存し合っていない私的労働Privatarbeitenの生産物だけが、互いに商品として相対するのである。(S.57)
社会の生産物が一般的に商品という形態をとっている社会では、すなわち商品生産者の社会では、独立生産者の私事Privatgeschaefteとして互いに独立に営まれるいろいろな有用労働のこのような質的な相違が、一つの多肢的体制に、すなわち社会的分業に、発展するのである。(ibid.)
「私的労働」というのを、個人でやっていると考えると、独立小生産者が売る商品を想定しているように読めるが、そう考えるのはいかがなものか。
とすれば、資本家的生産の下での「私的労働」とはいかなるものだろう。
- 私的所有権が適応される範囲での「私的労働」:工場内では、複数人の生産者の手を渡っていても、その生産物は一人の資本家の所有物であるから、「私的労働」によって生産されたと言える。
- 他者に対して対等、という意味での「私的労働」:工場内では、生産過程に応じて労働者は決められた位置を占めるので、互いに対等なのではなく、オーダーがある。工場内の労働者は、ある単一の目的に向かって生産するという点で一つのまとまりを有し、そうしてはじめて他者に対する対等性を有する。だから労働組織も「私的労働」と呼べる。私的労働は他者との関係がフラットなので、特定の位置づけを持たない。私的労働に対して社会的労働は、工場内のように、他との関係が固定されている。
cf.
- 私法private law
- 私益または対等な市民の生活関係について規定した民法・商法などの法律の総称。(広辞苑)
価値形態論に入っても出てくる概念なので、引き続き考える。
ehara