_genron_00054_ 小幡さんの,資本分割と利潤率計算,に関連して

送信者 : taaosai@ybb.ne.jp
送信日時 : 2004/12/19 23:11:27

本文

小幡ゼミ関連各位へ
  from  青才@信大経済

以下の文,小幡HP,Wiki 2004.12.11,+12  と,青才ブログにも,搭載しておきます。

●●小幡文書  資本分割と利潤率計算  例解2
小幡,HP,Wiki 2004.12.11,+12

A.小幡さんは,HP,Wiki 2004.12.12,で次のように書いておられます。
  「 X-Yの意味するもの †
obata (2004-12-12 (日) 20:06:20)

資本分割すると、毎期20万投じてその分の産出が得られるから、Y=20(1=R)[◆ここは,
Y=20(1+R)の誤植でしょう]でよいのではないか、というとやはり、そうはいかな
い、ということになりそうです。仕掛品が毎期必要なのですから、これがない場合と
同じような価格では平均利潤が得られないでしょう。」

◆私も,そうだと,思います。

B.「資本分割・並行生産で考えると」[◆以下の点については,青才『利潤論の諸問
題』第1章補説?「資本の回転について」[4](54-61頁)を,参照]
  a.「資本分割・並行生産」の場合を考えましょう。
      Z(製品の販売価格)=20(フロー量としての費用)+30(投下資本)×r’(利潤
率)
            となります。
 「資本分割・並行生産」の場合には,当該年度において,生産工程第一(1年間)に,10が
投下され,生産工程第二(1年間)には,当該年に新規に投下された10+前年度に生産工程
第一に投下され・現在は生産工程第二に仕掛品として存在する10  = 20 が存在する
が故に,投下資本=10+20=30,となります。
  また,生産工程第一に投下された資本の回転期間は2年,生産工程第二に投下された資
本の回転期間は1年です。
 b.本来の利潤率(r’)と,商品当たりの利潤率(r”)
     年利潤額は,貸借対照表で,本来の投下資本に対する利潤の率(r’)で表現する
と,
        年利潤額=30×r’,となります。(式1)
     年利潤額を,損益計算表で,商品当たりの利潤率(r”)=いわゆるマークアップ率
で      表現すると,
    年利潤額=20×r”,となります。(式2)
年利潤額=式1=式2ですから,
  30×r’=20×r”,となり

 故に         
        r’=r”×(20/30)

すなわち,利潤率(本当の意味での利潤率はこれでしかない,投下資本あたりの利潤率)
=商品あたり利潤率×いわゆる平均回転(数),
20/30=フロー量としての費用(価格)÷stockとしての投下資本量=平均回転(数)
です。

[実際の企業統計においては,「商品あたりの利潤率」(利潤/費用(価格))の代わりに,
「販売価格あたりの利潤率」(売上高経常利益率=経常利益/売上高))が,「いわゆる
平均回転数」(費用(価格)/投下資本)の代わりに,「総資本回転率」(=売上高÷総資
本)が用いられます。
      
     r’(利潤率)=(経常利益/売上高)×(売上高÷総資本)=経常利益÷総資本,
         となるのは,当然のことです。
          例解の場合の数値等を入れると次のようになります。
             経常利益=20×r”  ,  売上高=20(1+r”),総資本=30  ]

c.ついでながら,平均回転(数)を,個々の資本構成部分の回転数の加重平均,という形
で,表現しておきましょう。

平均回転数=Σ{(個々の資本構成部分/投下資本額)×各々の回転数}
当該例解の場合,平均回転数=20/30
生産工程第一に投下された資本部分については,
   (20/30)×(1/2)
生産工程第二に投下された資本部分については,
   (10/30)×(1)

平均回転数=消費資本/投下資本=20/30
          =個々の資本構成部分の回転数の加重平均
          = (20/30)×(1/2)+(10/30)×(1)  =  20/30

C.小幡さん,HP,の,リカード流,X,の場合
生産工程第二で投下されている10が,翌年度,貨幣形態で遊休するかどうかが問題にな
るでしょう。
a.「資本分割・並行生産」の場合,
       上記Bとなるでしょう。
b.遊休する場合,すなわち,「資本分割・並行生産」がない場合,
1.この場合には,生産工程第二に投下された資本10の回転期間も,2年になります。販売
がなされた翌年は,生産工程第一が稼働するのみなので,生産工程第二に投下され回収
された資本は,1年間遊休せざるを得ないからです。
2.とすると,私の上記Bでの計算式では,製品価格X=20+20×r”,となります。
3.ですが,毎年販売があった上記Bの場合と異なり,この場合には,年販売額は,生産工
程第一のみがなされている年には販売はないので,X/2,となります。
4.とすると,年利潤率(r’)=年利潤{(20×r”)/2}÷20,となるでしょう。
5.とすると,r’=r”×平均回転(=1/2),となります。
 平均回転=生産工程1に投下された資本の回転数=生産工程2に投下された資本の回転
数=1/2,だからです。
c.小幡さんの式の,複利の問題,10(1+R)(1+R),は,何を意味しているのでしょう
か。
  不確かですが,これは,以下の点に関連したことではないか,と思っています。
 1.上記B等における,投下資本は,文字どおり最初に「投下」された時点での資本額を
意味して  います。ですが,貸借対照表における,投下資本(当該問題では,債務を考え
ていないので,=自己資本)は,資産であるが故に,正確に言うと,当該年度に実現された
利潤を含んでいます。配当を行なう前だとすると,配当+当期未処分利益,を含んでい
る訳です。
2.故に,毎年販売を行い毎年利潤を得ている通常の資本を想定すると,投下資本は,正確
に言うと,文字どおり投下された最初の資本×(1+r)――さらにより正確にいう
と,[年当初の投下資本(α)+年末の投下資本{α(1+r)}]÷2 =(すなわち年央の投下
資本)――,となります。
3.とすると,年末の資産は,投下資本[10(本当に最初の投下資本)×(1+r)]×(1+r)
となる,と,資本家の計算としては,発想されるのではないでしょうか。  
4.複利の問題, 10(1+R)(1+R),の問題は,この辺の事情にあると思います。
数学的に厳密に言うと,「資本分割・並行生産」を想定すると上記Bの計算式も正確な
ものではない,という点,私自身30年前頃から意識しつつも面倒なので言わなかった問
題が,関連することと思います。

[☆青才高志 <aosai@econ.shinshu-u.ac.jp>
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Last-modified: 2021-02-20 (土) 17:32:13