純粋資本主義論の再考

2005年6月10日 演習報告

「3分類」は積極説にあらず

obata (2005-06-13 19:58:02 (月))

ということで、山口さんの「ブラック・ボックス」というのが多義的で、そのままつかうわけにはゆかないことを示す目的で、とりあえず、違うものが混在していることを指摘したものです。小幡自身は、ブラック・ボックスという考え方も用語法もつかおうと思ってはいません。

方法論は副題にもっていって、商品貨幣なり不換銀行券なりを主題に論文をまとめることを勧めます。

ブラック・ボックスの3分類の理解の仕方についての再考

izumi (2005-06-13 04:02:01 (月))

報告を終えて,検討すべき箇所がおぼろげに自覚できそうだという感想から一歩進んで,具体的な修正の方向性を以下のように考えてみています。

  • 報告の後半部分では,山口・小幡論争を見ました。その際,小幡先生が行なわれているブラック・ボックスの3分類についての私の理解の仕方に問題の根源があるのではないかなと思っています。
  • 草稿11-2頁にかけて,小幡先生が山口先生のブラック・ボックスを3つに分類していること,そしてそれは実質的には二つの極に位置するものである旨を書いています。具体的には,

    「小幡は,「純粋資本主義論」(この用語を使うことには問題ありと演習で指摘されました)をあたかも自立するかのごとく説くことを可能にしているブラック・ボックスに入れられる中身はさまざまであるとし,そうした多義的な諸条件が入れられるブラック・ボックスを3つに分類した。すなわち,「外面的ブラック・ボックス」/「規定的ブラック・ボックス」/「暫定的ブラック・ボックス」である。ただし,このようにブラック・ボックスは3つに分類されているが,その分類基準は,純粋資本主義論の内部で問題にしうる諸条件が収められているブラック・ボックスなのか,それとも純粋資本主義論の内部では問題にしえない諸条件が収められているブラック・ボックスなのかという点にあるといってよい。つまり実質的には,一方の極に「規定的ブラック・ボックス」と「暫定的ブラック・ボックス」が位置し,他方の極に「外面的ブラック・ボックス」が位置するという関係にある」(草稿11-2頁)という部分です。

    この軸の取り方自体には変更の必要性を感じていませんが,単眼的です。もう一つの軸と組み合わせた方が,私の問題関心が「規定的ブラック・ボックス」にあること,その関連で不換銀行券の問題を「おわりに」で提示したことの意味も理解してもらえるかもしれないと思います。
  • 上記草稿での軸の取り方は,原理論(草稿では「純粋資本主義論」ないし純粋資本主義論と使いましたが)の内部で問題にしうる/しえない,というものでした。

    〔原理論内で論じうる〕      〔原理論内で論じえない〕
     「暫定的BB」・「規定的BB」    「外面的BB」

    ただ,もう一つの軸の取り方としては,原理論の展開にとって外面的か/外面的でないか,という視角もあり,これも山口・小幡論争で問題とされたことでした。この観点から3つのブラック・ボックスを二極に位置付けると,

    〔原理論の展開にとって外面的〕   〔原理論の展開にとって外面的でない〕
     「外面的BB」・「規定的BB」      「暫定的BB」

    となります。この二つの軸を組み合わせると,「規定的ブラック・ボックス」だけが収まりが悪いことが分かります。「規定的ブラック・ボックス」は,〔原理論内で論じうる〕条件が収められたブラック・ボックスであり,かつ〔原理論の展開にとっては外面的〕な条件が収められたブラック・ボックスという,内と外という両義的な意味を持つことになります。この点と,「開口部」の議論を組み合わせて修正していこうと考えています。 

純粋資本主義というタイトル

obata (2005-06-11 06:33:55 (土))

タイトルがよくない、でしょう。
「純粋資本主義論の再考」というのが、内容を表していない。論文の骨格になる泉氏の基本的主張がまだ固まっていない、という気がします。青才さんが指摘されていた、

  • 「純粋資本主義」
  • 純粋資本主義
  • 純粋な資本主義
    というのも、論点が煮詰まっていないために、対抗軸が鮮明になっていないために、類似した用語が用いられているのではないか、と思います。
  • かなり煮詰めたつもりでしたが,報告してみて,自分の考えていることを整然と説明できなかったということは,まだ煮詰まっていなかったということを意味すると思います。タイトルを含め,後半の類似の用語の問題については,再検討する必要があると感じました。 -- izumi 2005-06-12 01:34:20 (日)

自立性と自律性

obata (2005-06-11 06:22:43 (土))

橋本さんからの質問ですが、宇野派の原論では、自立性ということで、それ自身ですべての要因が充足できる、という資本主義像が強く打ちだされてきます。再生産とか、経済原則とかいう場合に、とくに問題になる点です。

しかし、労働力に関しては、演習で再三、論じてきたようにかなり微妙な転化があります。労働者個人の維持はともかく、人口の維持や増大がないと、自足的でないかどうか。自立性というのは、拡大再生産でないといけないのか、単純再生産でもよいのか、あるいは縮小再生産でも自律的な運動はしているのだ、というかどうか。

これはもっと抽象的な次元では、剰余をめぐる弾力性、自由度の議論にもつながります。余裕のあるものの自立とはどういうことか、あらゆる社会に共通なものを最低限満たしているかぎり、というは、考えると曖昧な議論だと思います。

純化・純粋化について

obata (2005-06-11 06:08:06 (土))

泉草稿4ページの註について議論:
「対象を模写する方法をも対象に模写する」というのは、理論の展開方法になっていない、というが山口さんの最終判断。「歴史的な事実」(そもそも事実に反するというのが実証家の批判だが)をもって、理論的内容を根拠づけることはできない、という意味だと、小幡は理解。

純化論は、理論展開の前提条件づくりの<方法(A)>。たとえば、三大階級、とか、非独占状態とか、を想定する根拠。この条件のもとで展開される原理論の内容は、たとえば、商品経済的な行動原理で説明できるかどうか、といった独自の<方法(B)>で構成する。対象を構成する<方法(B)>を、対象に模写する<方法(A)>で根拠づけるわけにはゆかない、ということである。この点では、小幡も同意する。(局所的な「事実」で理論を批判したり、それを無理に盛りこんだり、あれやこれやの具体例に理論を拡散したり、というのはうんざり)。閑話休題。

問題はこの先にある。純化の<化>のほうの問題である。このような<方法>としての純化論の否定は、純粋状態を想定してそこで繰り返される関係だけを扱うのだ、ということは同義ではない。純化論の否定が、同時に変容論の否定を意味するとすれば、それは行き過ぎだ、というのが、演習のときに小幡が主張したポイントです。原論は、それ自身かたちを変える、資本主義の多様な相を解明するところに、歴史を理論的に解明する(のだと、という関心のもとに研究されてきた)マルクス経済学の特徴もある。『資本論』の場合、「傾向法則」というとらえ方が特徴的である。宇野の原論は、この傾向法則はおおむね否定。傾向法則のもつ資本主義的発展の定向性が、帝国主義段階の特徴を解明できない、というのがその理由だろう。これ以来、宇野派の原論には、変化を扱う理論一般を拒否する風潮が支配、ちょっとでも<変容>というと、それは「段階論」の問題だ、と鸚鵡返しに答える、理論的感覚の鈍磨。

しかし、原論のなかみをみてみると、実際には変容や多相性を扱う理論的な方法が豊富にある。これは、マルクス経済学としての関心が自ずと涵養した<方法>、たまもの(賜)。ただ、この賜に関しての自覚が欠落。実際にはつくっていながら、<方法>としての自覚が足りない。”わかっているけど、やめられない”の対偶で、”やっているのに、わかっていない”という現象。この方法を対象化して自覚的に洗いだしてみようとしたら、そんな変容を扱う、多様性を同時に示す原論があったらお目にかかりたいものだ、とある先生からいわれて、それって、先生がたがおやりになっていることでしょう、と、あっけにとられた覚えがあります。

ということで、その具体的な理論内容として、演習のときには、貨幣の多様性(金貨幣と不換銀行券)、協業・分業・機械制大工業とか、考えてみたわけです。これらは、傾向法則論とは論理構成の方法は異なります。が、こうした理論は、たとえば表式論とか生産価格論をやるときはだいぶ様子が違うと思うのです。展開方法そのものが違うのです。なんといえばいいのか、分化=発生論というのは一面です。もう少し、おおきな体系構成の方法があって、それが対自的・分析的に明示されていないわけです。

ちょっと論点からそれたかもしれませんが、ポイントは、

純化論 = (方法模写説=事実依存・没理論)+(方法論的変容論)

という二面があり、前者の負の側面を否定するにしても、後者の側面は自覚的にとりだして、批判的に発展させるべきだ、と申し上げたつもりです。

Counter: 485, today: 1, yesterday: 0

トップ   差分 バックアップ リロード   一覧 検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2021-02-20 (土) 17:32:13