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2005.11.11 大学院演習に岡部洋實氏を迎えて、泉正樹氏の報告で議論をして気づいた点です。

重複する等価物を知るということ

  1. 予め共通の等価物が重複範囲として存在して、それを<知る>、探し出す、という立場
  2. 共通物を探し出す過程で、等価形態の商品リストが組み替えられてゆくとすれば、はじめの共通物とは異なるものが生みだされるのではないか、という立場

おそらく、知るということは、知るものを創りだすという面を含んでいる。そもそも、合意というのは、はじめから合意内容がきまっていて、それを探し出すというのではない、というべきかもしれない。

泉氏の<幻実性>というのは、悪いシャレだが、内容はこの共通物を探す過程で、等価形態の商品リストに組み替えが発生し、結果的に始めにとはずれた、あるいは始めには存在しなかった、新たな等価物が創出されるという性質をいっているように解された。

外部注入

  • 岡部氏の貨幣はけっきょく「外部から注入される」という考え方には二重の意味がある。
  1. さまざまな商品のうちの一つに法貨規定を与えるという弱い意味
  2. 商品以外のものを、貨幣として商品のなかに投下するという強い意味
  • 後の場合は、追加された「貨幣」は追加的な購買力を形成することになるが、前者の場合、もともとの商品量は変わりないのであり、ただ、そのうちの一つの価格表示の単位という特権が付与されただけで量的に購買力が追加されるわけではない。前者は認める論者もいようが、後者はちょっと難しい。
  • たとえば、岡部氏のいうように、リンネル12ヤール=10ポンドという価値の価格表示がおこなわれていると仮定しよう。他に、上衣1着=10ポンド、茶10キロ=10ポンドという価格表示がなされいるとすれば、合計30ポンドの3商品が存在するわけである。ここに外部から、単一商品が必要だからという要請に基づいて、外部から貨幣が注入されるという場合、たとえば商品でもなんでもなかった政府紙幣が追加的に10ポンドの購買力を持つものとして入り込むのかどうか、という問題です。もしそうなるなら、30ポンドの諸品ストックが、40ポンドの商品+貨幣ストックに増大しうる、と考えることになります。
  • 岡部説はこう主張するのかどうかです。外部への要請というが、強弱、二通りに考えられる、というのは、この点に関してです。もし、3商品が対等に価値物としての一般性を主張して決着がつかない状態だ、これでは価格表示が統一的になされないという困難、その打開を外部に委ねるほかないという、岡部氏流の要請論を認めるとしても、それはたとえば、茶1キロを1ポンドとよぶ、という価格の度量標準の規定、法貨規定をもって足るわけです。これが法貨規定という、狭義の外部からの注入でしょう。これをこえて、実物として10ポンド紙幣を強いい意味で外部から注入することができるのだ、ということになると、その可能性は疑問です。なぜ、10ポンドなのか、いくらでも可能なのか、総じて、無価値な貨幣の注入に懐疑的な、マルクス経済学者の意見です。貨幣それ自身には価値がなくてもいいのだ、という考え方に対しては、岡部説はもう少しがんばってほしいところです。
  1. W1, W2, W3 ---> W1, W2, W3G なのか、Σ30 ---> Σ30
  2. W1, W2, W3 ---> W1, W2, W3 G なのか Σ30 ---> Σ40

貨幣価値の安定性

青才高志さんがいうように、貨幣商品の絞り込みには価値の安定性という性格が強く作用する。一般に素材的に耐久性があること(沖公祐さんの指摘するようにこの耐久性が蓄蔵の対象となる第一条件だろうが)、その結果、ストックとして市場に滞留する(貴金属のように消耗することがないのだから)。ストックがあつく形成される結果、需要供給というフローの変動から相対的に独立した安定した価値をもつことになる。これがだいたい通説だと思う。

しかし、ひとたび貨幣となると、その商品は即時にどの商品にもかわりうるということになるから、結果的にすべての商品在庫と同じ量のストックという性質が付帯するようになる。すなわち、市場におけるすべての商品在庫が貨幣ストックの量と同じ意味をもつようになる。貨幣価値が安定するのは、それが貨幣としてなんでも返るからだ、という面があるのではないか、とobataは考えている。

この問題は、

  1. その価値が安定的だから、その商品が貨幣となるのか、
  2. 貨幣になったから、価値が安定するのか、

という一種のchicken or egg problem になるのではないか、と思う。


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Last-modified: 2021-02-20 (土) 17:32:13