おもしろい報告で勉強になりました。泉君、司会ごくろうさまでした。

確率的な世界と不確実な世界

泉氏の問題提起で、確率的な世界では合理的な行動が成り立つが、不確実な世界は合理的な行動をする基準がない、という点をめぐって若干討論しました。客観的な対象の側に、確率計算可能な領域とそれができない領域という区別があるのか、それをみる主体の側が確率計算ができると考えて行動するか、できないと見なして行動するか、という態度、行動要旨の個別なのか、このあたりが問題点でした。不確実な世界では、暗黙の合意を介して行動するほかない、という議論になるのでしょう。

山口重克先生の「不確定性」についても、議論しました。販売期間の不確定性に保険的な対応は可能なのか、という問題をだしてみました。

暗黙知と暗黙の契約

斉藤氏から、両者は異なるという問題提起があり、議論してみました。暗黙知というのは、個別主体における「できるけれど」「説明できない」ということであり、暗黙の合意は、合意する内容はお互いに知っているがそれを契約書のようなかたちに表さない、ということではないか、というような問題でした。

ポラニーは、「言葉を用いたとしても、我々には語ることのできないなにものかがあとにとりのこされてしまう。それが相手に受けとられるか否かは、言葉によっては伝えることができずにのこされてしまうものを相手が発見するか否かにかかっているのである。」というそうですが、この説明をみると、暗黙知は個別主体の内部で意識されるというよりは、他者との関係で、伝達という行為を通じて、はじめてその存在が意識される、ということになりそうです。

また「人間が知識を発見し、また発見した知識を真実であると認めるのは、この能動的形成、あるいは統合こそが、知識の成立にとって欠くことのできぬ偉大な暗黙の力である」というそうですが、「人間が知識を発見し」というのは、まず個人が知識を発見して、次に他者にそれを伝え、それが相手に認めることで、「確立」するということなのか、という問題がありそうです。知識は個人が発見するものなのか、それとも、ひととひととの間ではじめて形成されるものなのか、このあたりの区別は、知識は個人に帰属するのか、社会的に共有された分知なのか、このあたりが問題になりそうです。

労働日について

生涯賃金のようなことは、おそらく考えていないでしょう。労働日はもし単純労働になりきっていると想定すれば、1日で考えても30年で考えても変わりないでしょう。

契約問題

暗黙の契約が問題になりそうな領域というのは、労働市場、信用機構、地代など、資本が外部と接したり、相互に関係を構成したりする局面に強く現れる。市場がスポット取引だけで合成できるわけではない、ということはわかったと思います。田中英明さんや清水真志さんの商業資本論も市場の組織化の議論で、繰り返しのなかで予測可能な領域を黙約的につくる理論を追求しているのではないかと思います。


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Last-modified: 2021-02-20 (土) 17:32:13