「リカード派社会主義」

固有の意味でのリカード派社会主義というのは見いだしにくい。マルクス以降、一括してこう称されてきたが、実体はリカードの投下労働価値説のもとで、労働全収権論を主張する論者がいるかというと、その典型は見いだしがたい。実体は、スミス派であり、基礎は支配労働価値説にも依拠している、というようなはなしでした。この点は、頭にいれておきます。

労働証券論

労働貨幣論者は、金属貨幣に反対する立場であり、恐慌回避・不況脱却策としてペーパーマネーの必要を説くAtwoot などバーミンガム学派に通じる立場にたっている、というのは注目すべきなのかもしれない。

賃金へのペッグ

Gray の労働証券が、平均賃金ないし最低賃金へポンドという貨幣単位をペッグするものだ、というのがどういうことを意味するのか、その中身がよくわからない。支配労働一定というように解釈できそうだが、実際にはどのようにこれを実現するのか、労働1時間1シリングというように、時給を固定するということはどのようにしてなされるのか。


2007-03-17 (土) 23:16:58

「1ポンド=60時間」というように、貨幣賃金を固定する。これは、「貨幣の価値」を一定に保つためである。時間を通じて、一定の貨幣額で雇用できる労働量はつねに同じであるようにすれば、貨幣の支払いが猶予され、信用が与えられても、有利不利は生じない、ということを念頭においているようである。

一般に貨幣の価値という場合は、貨幣が諸商品に対して有する購買力が一定である、という意味で用いられる。しかし、グレイの場合は物価水準を一定に保つことでこれを実現しようというのではく、賃金ペッグをもって主張しているようである。

であるとすると、貨幣賃金を一定に保っておいて、もしそれで購買される諸商品の価格を変化させるなら、賃金か特赦は物価の変動によって、実質賃金率が絶えず変化することになる。w/p が実質賃金であり、これは支配労働量 p/w の逆数である。貨幣賃金率を一定にしておいて、商品価格を変化させるとすると、実質賃金が変化することになる。

もし、支配労働量 p/w を一定にするということであれば、実質賃金率w/p を一定にすることになる。しかし、この場合の支配労働量というのは、商品の支配労働量であり、貨幣に支配労働量という概念を適用できるか、再考してみる。

複雑労働

市場は、労働を単純化するという考え方に対して、市場こそ分知を促し熟練を促進するというのが、市場主義者である。市場社会主義者のグレイのなかにこの一面は宿っているのか。マルクスのように、市場ー分業促進ー機械の導入-単純労働化、とは異なる市場社会主義者の立場にグレイは立つ。

市場社会主義論争

今日の観点から、市場社会主義の一つのタイプとして整理してみるという手がある。グレイは、市場による清算編成が不況や不完全雇用をうむという、いわばタテの調整不全を内包する点を批判していた可能性がある。市場社会主義は、通例、部門間のヨコの調整が、市場によって可能である、という議論が軸になっている。これに対して、20世紀の福祉国家型の市場社会主義が、市場のもつタテの調整不全に焦点を合わせ、これを解決するような管理された市場の形成を説いた。グレイはこうした流れの隠れた源泉かもしれない。


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Last-modified: 2021-02-20 (土) 17:32:13