流通費用について

結城です。

横から聞いていて、ちょっとわからないことがありましたので、質問させてください。

○「保管費が価値を追加する」という新井田さんの見解についての疑問。

まず、「保管費が価値を追加する」ということを、流通過程での労働が新たな価値を生むということと同義に理解してよろしいでしょうか。

保管費は商品が価値どおりに売られることによって回収されるということについて、新井田さんは「保管労働が価値をうむ根拠は、正常な商品循環の下でできる正常な在庫の使用価値の下落を防ぐという有用効果を生産しているところにある」と述べているのですが、この点がよくわかりません。有用効果を生産するということは流通過程の労働が新たな価値を生むということと同義に理解すべきですか。

確かに、マルクスは『資本論』2巻の61ページで、運輸業は生産過程そのものから分離される生産物がないために、生産的に消費されて商品の価値に追加されると述べています。ここでは、運輸業そのものが商品の生産過程に含まれているという範囲内で、有用効果を生むといっているのだと思います。そのため、生産過程から切り離しうる流通費用を、運輸業と同じ意味で、有用効果を生産する生産的なものだと理解することはできないのではないかと思います。

私は、流通費用一般は剰余価値からの控除、もっといえば、社会全体の剰余生産物からの控除だと考えていたので、どのように理解してよいかわかりませんでした。また、私は、新たな価値を生産するという価値生産的労働を、商品としての労働生産物に結実する労働という意味で理解しています。あるいは、生産過程における労働です。そのように理解しているために、流通過程における労働者は、他人の剰余生産物からの分配を受けて生活せざるを得ないということになり、剰余生産物を生産しないという意味で、価値を追加しないのではないかと考えています。

保管費について考えてみても、保管費が「正常な在庫の使用価値の下落を防ぐ」といっても、それは個別的な資本間の競争関係の中で剰余生産物の取得関係・分配関係を変更するのみで、価値を生産するとはいえないのではないかと思います。流通費用が価値を生産するといった場合、その価値の源泉はどこからくるのかということがわからないからです。

以上です。


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Last-modified: 2021-02-20 (土) 17:32:13