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情 報 技 術 の 歴 史 3
コンピュータの基本 †
コンピュータをきちんと理解するにはそれなりの勉強が必要ですが、
ここではコンピュータを使うようになった経済社会について考えることが目的。
この目的に必要なかぎりで、「コンピュータの基本の基本」をおさえておこう。
コンピュータに関する最低限の技術的理解なしに、その影響だけをレポートする現象論の虚しさ。
今回の講義をきいて、
コンピュータは、ソロバン→電卓と、決定的に違うこと(不連続性)
どこが違うか、この断絶面がハッキリいえるようになれば、OKです。
コンピュータ †
演算装置 †
とはいえ、コンピュータも出自はやはり「計算機」
ソロバン→電卓と同じ連続面をもつ。どこが?
コンピュータのコアは、CPU 中央演算装置。その基本は電卓と同じ演算装置。
記憶装置 †
「電卓は、演算装置(レジスタ)だけ、コンピュータには記憶装置(メモリ)がついている!」
「でも電卓にだって、メモリボタンがついていますよ!」
たしかに読み書きができる(書き換えができる)メモリがついています。
普通の電卓についていますよ。1個だけだけど.....
M/RM というボタン。なににつかうか、しっていますか?
似たものどうし †
問題 7-1
電卓にはMとRM というボタンがついているものがある。Mを押すと現在表示されている数が記憶され、RMを押すとそれが呼びだされる仕掛けになっている。
さて、この電卓で
(7+8)÷(9-6)
を計算するには、どのような順番でボタンを押したらよいか。
4 + 3 M 5 RM .... = のように、順番にならべてください。
7-1 の回答を +
8/42 ...1点以上 19%
▶解答
▼解答
$9 - 6 M 7 + 8 \div RM =$
▶解説
▼解説
$9 - 6 $の計算を先にして、その結果を一度メモリに記憶し、後で呼びだして、その値で割っているわけです。
ただ実際に電卓をつかう人をみてると、このメモリボタンはほとんど利用されていないようです。
もっと複雑なカッコ付きの計算も、一個のメモリボタンを使ってできるよ、と書いてある本がありますが...
すごくアタマを使って手順を考えないとなりません。
それなら、単純な計算結果を紙にメモして、慣れた式の順に、アタマらかシッポに向かって、計算したほうがいいや....と思うでしょうね。
問題 7-2
メモリ [M] [RM]ボタンがたくさんついた電卓がないのはなぜか?きっと不便なのでしょう。どこが?
7-2 の回答を +
94/95 ...1点以上 99%
▶解説
▼解説
メモリボタンが10個とか20個とかあれば、便利そうです。
たとえば、$7+8$ を$M1$ にしまい、$9-6$を$M2$ にしまい、$M1$ をよびだして、÷ を押し、M2 を呼び出して、=をおす。
これなら、あとの$9-6$を先に計算するなんて、コンガラかったことをせずに、式の順番に計算ができます。
しかし、$M1,M2,M3,.... $にしまった数値がなんの数だったか?人間が記憶するのは大変、かえってコンガラかっちゃいそうです。
けっきょく、これはどの式の計算結果か、紙にメモしておくほうが、使い勝手がいいのでしょう。
それなら、メモリボタンに、例えば$sum1$,$sum2$とか、しまうたびに適当な名前をつけることできればいいのでは?と思うかしれませんが、
これも名前を指でインプットしなくてはらなず、たいへんそう。
.... というわけであまり利用されていないメモリボタンですが、計算機能をするレジスタ=半導体素子のほかに、データを書き込み読みだすことができるメモリが存在するという事実は、コンピュータとはないか、知るうえで重要です。
問題 7-3
ここまでくれば、(7+8) ÷ (9-6) という計算の手順も覚えさせたくなります。
7+8 M1 9-6 M2 M1 / M2 このように順番にボタンを押すと、これが記憶されてゆき、最後に = をおしたとき、計算がはじまって、15と表示されるようにする。
さて、この計算のボタンを押した順序も記憶できるようになった電卓。便利そうですが、ないですね。どうしてでしょうか。
7-3 の回答を +
17/75 ...1点以上 23%
▶解答
▼解答
使い切りだから。
長い計算手順を記憶しても一回=を押したらおジャンになるなんて...
じゃ、もう少し、改良して、メモリに名前をつけられるようにして、さらに計算手順も記録できるようにしたらどうだろう。
たとえば、
sum1 = 7+8
sum2 = 9-6
print sum1/sum2
と書いておくと、問題7-3 のようなボタンを押したのと同じような動作をする仕掛けにするというのは。
これ、いちおうプログラム・コードですが。
コンピュータらしさ †
問題 7-4
1から10までの奇数を足したらいくらになりますか。カンタン!答は25です。では、その計算、自分がどのようにしたのか、説明してみてください。ちゃんと説明してもらうため、自分の記憶力がゼロ(なにも覚えられないから暗算はナシ)としてみます。ぜんぶメモ用紙(ただしたとえば、1と書いてある紙に2を足したとき、1を消しゴムで消して、3と書くことができる)に記録しておかなくてはならないものとします。このメモ用紙に書いてない数は使ってはいけません。このメモ用紙4枚 M1,M2,M3,M4 をつかって、計算の手順を書いてみましょう。
M1 に0と書く(ここに合計値が書かれてゆきます) M2 に1と書く(「1から」というのだから) M3 に2と書く(「2ずつ」足すのだから) M4 に10と書く(「10まで」というのだから) M1 にM2を足した値を書く M2 に①を足した値を書く ② がM4 以下なら ③行目にもどり、M4以上なら終わりにする。 M1 に書いてある値を答とする。 ①②③はなんでしょうか。順番に答えのみでOKです。
7-4 の回答を +
27/49 ...1点以上 55%
▶解答
▼解答
▶解説
▼解説
M1の値は $0,1,4,9,16,25....$と変化する。
M2の値は $1,3,5,7,9,....$と変化する。
むずかしいのは、10以下でしょう。繰り返し計算$5 \to 6 \to 5 \to 6....$ は計算機には簡単です。
問題はいつやめるかの判断です。7行目の「どこでやめるか」の''判断'です。
まとめ †
問題 7-5
電卓とコンピュータの本質的な違いはなにか?
7-5 の回答を +
47/87 ...1点以上 54%
▶解答
▼解答
さきに、まとめの結論を書いておきます。
第7講のあらすじは
1.ソロバンと電卓は見かけは違っているが「道具をつかった計算」という意味では本質は同じである。
2.電卓とコンピュータは、半導体スイッチによる「計算機」という意味では同じだが、決定的な違いがある。
3.その違いは「条件分岐」ができるかどうかにある。
の3点です。とくに3を理解するために、質問1-4をだしてみました。
▶解説
▼解説
例によって、Xとはなにか?という定義問題はむずかしい。
実際につかっているコンピュータは、ずっーとずっと複雑。
いろいろなタイプのものもある。スマホは?デジカメは?....もちろんパソコンは?...
原論的アプローチでゆきますか....
考え方として、これがないとコンピュータとはいう意味がない、という最小限の要素を絞り込む。
電卓をコンピュータと定義すべきか?
解答①:電卓も立派なコンピュータだ。というのは、どんなコンピュータも最低限もっているあるものをチャンともっているから。それは... on/off のbitが組み合わさった繰り上がりできるレジスタCPUをもっているから。
ただCPUだけではなにもおこらない。
そうですね... では、定義1:コンピュータ=CPU +入力装置+出力装置。これを定義として、電卓も立派なコンピュータだ、ということにします。
解答②:いや、その定義はあまい。演算ができるレジスタがあればOKというだけでは広すぎる。半導体素子のレジスタだって、ソロバン玉だって、物理的な装置。人がソロバン玉を機械的に操作するのと、電卓のボタンを押すのと、基本的な違いはないでしょう。
コンピュータ=操作手順を人の指から離せる計算の道具。7と8を入れれば、+や=のボタンをおすという操作をしなくても、画面に15がでてくるとき、コンピュータとよぶ。つまり、入力のまえに、操作の手順を指定できる計算の道具。要するに、プログラミンができること。これで、労働者=ユーザーの視点から、ソロバンや電卓 vs コンピュータという区別がハッキリする。
解答③:いやいや、解答②ではまだあまい。ただあらかじめ手順をプログラムしておくか、アタマのなかのプログラムにしたがて、ボタンを押すか、だけでは決定的な違いにはならない。
じゃ、どう区別するの?
労働者がおこなっている「判断」(の一部)ができるかどうかだ。
たとえば、その数が10以下かどうか、で計算を続けるかどうか、判断するように.....
労働者の「注意力」というのは、状況を観察して「判断」すること。
だからこの「判断」つまり、「条件分岐」が可能かどうか、がポイントになります。
同じ道具(「演算装置」)でもソロバン、電卓と、コンピュータはこの点が決定的に違います。
▶補足
▼補足
むずかしいのは、ある条件によって、Aにするか、Bにするか、切り替えることです。
xとyで、どっちが大きいか小さいかは、引き算してみればわかります。
同じなら x- y = 0 となります。
コンピュータが条件分岐ができるかどうか。
if P then Q という論理操作ができるか。
もし ① x と y の比較。もし同じ(でない)値なら ② 操作に戻る(移る)という二つのことをレジスタをつかってやれるようになったとき、コンピュータとよぶ。
人間が目的意識的活動=労働をおこなうことができるのは、目的にあっているかいないかを「判断」できるから。もし、あっていれば続ける、あっていなければ修正する・やりなおす・やめる ということができるから。
この「判断」の部分の一部を代行させることができるようになった電子装置がコンピュータ。だから、ソロバンとも電卓とも違う。
計算機ではなく、論理装置になったとき、コンピュータとよぼう。これが解答③の本音です。
この講義ではこれから、解答③の意味でコンピュータという用語をつかっていきます。