駒澤大学 現代経済事情
2020年度 小幡道昭
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第13講
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訪問者:氏名不詳
情報通信技術とメディア産業
今回のテーマ
†
情報通信技術の歴史的発展をふまえて、紙媒体の情報通信をになってきた産業の現状と将来を考えてみます。
書籍出版・新聞発行などは、知識の社会的な持ち方・扱い方を左右してきたことを確認します。
情報通信技術は、知識にかかわる産業に強いインパクトを与えています。
今回は、書籍出版を中心に、メディア産業全体の変容の意味を考えてゆきます。
↑
資本主義の境界領域
†
資本主義は営利企業が利潤追求の競争をおこなうことで発展してきました。
しかし、営利企業に完全には委ねられない領域があります。
だた、この境界性は揺らいできました。
たとえば、医療や介護などは境界領域。
カネがないなら死ねとはさすがにいえない。しかし、タダで医療も成りたたない。
20世紀の福祉国家。
教育も境界領域。
義務教育はだれでもうける(うけられる)権利義務
しかし高等教育になると、高額の学費負担が求められる。
カネのかかる受験制度。
ビジネスとしての教育。
学問研究も真理の探求ではすまない。「社会への貢献」すなわち間接的に「利益」をもたらすこと。
問題
13-
1
教育も出版も、知識を伝えるという基本的役割は同じである。
出版は、出版社という営利企業でちゃんとやってこれた。
教育も、同じく営利企業の原理で運営できるし、すべきである。
この意見についてコメントを加えよ。
13-1 の回答を
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▶解答
▼解答
出版の一部と教育の一部が設定をもつというだけ。
部分の重なりを全体の一致と勘違いしてはいけません。
教育の基本は学生が自ら考え学ぶこと。一方的な知識の伝達ではありません。
教科書をよめ、だまって講義をきけ、ではすまないはず。本来は .... ですが。
出版は、べつに教科書のような知識の伝達だけが本来の役割ではない。(教育は教科書をこえるないようのもですが)
出版で「もうかる」のは、もともとエンターテインメントの性格をもつから。「おもしろければ売れる」というのが原理。
ただ両者が、重なる領域をもつことはだいじです。とくに、出版の原理と似たものが教育の領域でも求められるようになる。
↑
これまでの書籍出版業
†
印刷技術がベース。
*1
知識を伝えるという意味では、「書籍出版」は「教育」と共通する面をもっています。
ただ「教育」とちがい、出版業界はもともと営利企業が中心。基本は、利潤目当。売れる本が大前提です。
メディア産業:つまり、書かれている内容(コンテンツ)とはべつに、媒体(メディア)が本業。
出版社は、本の外形(メディア)をつくるだけで、本の中味(コンテンツ)を書いているわけではない。
*2
別に著者がいて、その著作物=コンテンツを、読者に届けるだけ。
しかし、荷物の配送業者と同じ顔をもちながら、出版には大きな違いある。それは...
問題
13-
2
荷物の配送業者と同じ顔をもちながら、大きな違いある。最大の違いはどこにあるか?
13-2 の回答を
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▶解答
▼解答
個別の多対多を媒介する配送業者。
出版は一対多の関係を媒介。
マスメディアの性格をもつ。
出版にアクセスできるひとは、多数の読者に対して影響力をあたえられる。
さらに、出版社のほうがこの影響力を背景に、著者にも影響力をもちうる。
マスメディアのもつ力。「権威」「メジャー」であること。
自分ではなにも「書かない」が、
著者に「書かせる力」「書かせない力」をもつ。
↑
変わりゆく書籍出版業
†
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メディア産業の変容
†
印刷技術ベースの書籍出版に対して、電気通信ベースのラジオ・テレビなどが登場(20世紀前半からすでに)
ラジオ・テレビなどが普及しても、書籍のもつ意義が薄らぐことはなかった。
この講義では、この根拠を技術論レベルから原理的に考えてきた。
眼下では、インターネットベースの新しいメディア産業が誕生しつつある。
知識・情報をめぐる大きな環境変化のなかで、書籍出版業は大きく変容。
メディアの全体がかわっている。マスメディア型がそもそも存続するのか(すべきか)という問題。
そのなかで、インターネットと結びついた巨大企業が簇生。
この巨大企業は「資本」なのか、「資本」の規定にまでさかのぼる興味深い原理的問題がある。
製造業とも、商業資本とも、銀行業資本とも異なる存在。
↑
書籍という商品の取引
†
書籍(印刷された紙ベースの)商品は、どのように「売買」されてきたのか。
取次
脱取次店
書店減少
出版業の規模
新聞発行部数
インターネットの普及は、この「売買」のしくみを直撃。
↑
書籍のコンテンツの「製作」
*3
†
書籍のコンテンツは、「知識」「情報」とよんでおく。この厳密な定義はむずかしいが
「知識」「情報」と商品売買
そもそも売買できるのか
売買すべきなのか
*1
マルクス経済学者なら「物質的基礎」:-)というかも。
*2
新聞・雑誌では少し違うが
*3
「計量可能」で「再生産」できるモノの「生産」produce, production とは区別するために、「つくる」 make という意味で「製作」といっておく
Last-modified: 2021-02-20 (土) 19:13:40