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経済学における「理論」の特徴

経済学と経済理論

  • 経済学の特徴は、○○経済(労働経済、農業経済、国際経済 etc.、日本経済、アメリカ経済、... 、経済史、.. )だけではなく、
  • 一般な経済理論が存在する点にある。他の社会科学に比較すると、一般理論の優位が伝統的に維持されてきた.... 最近は崩れつつあるようだが...
  • 一般理論は「経済原論」ともよばれてきた。

「原論」とは何か?

  • ユークリッドの幾何学原理、ニュートンのプリンピキアのような演繹体系 if A then B スタイルの演繹
  • 人間の社会が、演繹的な理論の対象になるという驚き
  • 個人の行動は意図的なもの、法則に支配されているわけではない。強制されることはあるが、基本的には自由に変えられる。
  • なぜ、人間の社会に演繹的法則が作用している(ようにみえる)のか?
  • 無数の人間が影響を与えあう場=市場の存在。だれも「意図」しなかった「結果」がうみだされる。「意図せざる結果」の存在が、演繹理論の適用を可能にする。
  • 「市場」が社会編成の基本となるという条件のもので、経済理論は成立・発展。
  • この条件は、歴史的な特殊な状況のもとではじめて満たされる。人間の社会が始めから終わりまで、経済理論の対象になるわけではない。
  • この条件が満たされた社会を「資本主義」とよぶ。

経済「理論」にはどんなタイプものがあるのか。

  • 古典派経済学
  • ミクロ経済学(新古典派)
    • 一般均衡論
    • ゲーム理論
  • マクロ経済学(ケインズ経済学) などあるが、
  • この講義ではマルクス経済学(政治経済学、社会経済学)の理論を紹介する。
    • 古典派経済学の伝統に強く依拠する理論だが、
    • 歴史的な条件や、構造変化(変容)を重視。
    • その点で、ミクロ理論・マクロ理論のような今日のメインストリームのeconomicsとは異なる
    • political economy である。political の意味は複雑。単純に「政治」「政策」を意味するのではない。
    • マルクス経済学を、古典派経済学・新古典派経済学と区別する最大の特徴は、「歴史的な観点から資本主義を解明する」点にある。

この講義の特徴・ポイント

  • 経済現象における多様性・変化・変容を解明する
  • 貨幣、労働、商業機構、信用制度を主たる対象に(できれば自然環境=「地代」も含めて)
  • 見た目は変わるが(たとえば金貨幣といまの日本銀行券のように)基本的な機能は同じ。
  • 見た目=現象 - 「抽象化」=理論化することで -> 変わらぬ機能 =本質
  • 歴史的に新しい現象がでてくれば、それだけ抽象のレベルを上げなくてはならない。
  • 資本主義社会は、新しい現象を次々に生みだし、段階的に成熟してゆく。充分成熟しきった段階で、その生命を終え、別の社会に移行する(だろう:<--客観的・学問的にはいえない憶測)。

変容する対象を理論的に捉える方法

  • 教科書9頁から15頁までの「経済原論の方法」を読み解説します。ここが今回のメインテーマです。
  • メカニズム(的思考)とシステム(的思考)の違いについて補足的な説明をしました。スライドの最後の2頁もみてください。
  • メカニズムではなく、システムとして経済社会を捉える必要がある、という話をしました。

講義用スライド


Last-modified: 2021-02-09 (火) 09:52:26