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この講義では、小問に答えてゆくかたちで進めています。
数学の教科書にも小問がならんでいますが、この講義の小問の並べ方とは少し違っています。
小問を解いてゆくのは同じですが、この講義の小問をとくほうがむずかしい(と感じられる)のはどうしてでしょうか?
「AIの発達で労働はなくなるか」が「答えがでない欠陥のある問題である」と主張する人がいたとする。この人の立場にたって、その理由を明らかにせよ。
「AIの発達で労働はなくなるか」に、あなたがyesかnoかをきいているのではありません。
「この問題、ちょっとヘンじゃない」というしたら、どんな理由が考えられるか、尋ねているのです。
動物のカラダはモノの反応過程という性格をもち,人間もこの面を共有している. しかし,人間の活動には他の動物にみられない特徴がある. 内的な欲求というレベルでは,人間も他の動物と大差ない. しかし,人間は何を欲しているかを意識し,対象として自覚する. 空腹感の充足は,生肉にかじりつくようなかたちで充足されるのではなく,何かしら特定の料理のかたちを経由する. 欲求は目的として客観化されその目的を実現することで満たされる.
このような欲求の対象化・客観化は,(1) 個々の主体の間で,目的の共有 や調整をはかることを可能にする. これには,人間が広義の言語を発展させ弾力的なコミュニケーションの能力を具えていることが深く与っている.さらに,(2) 欲求を意識することは, 目的と手段の分離を促す. この分離は,何層にも深化する. 目的に対する手段もまた目的化され,その実現のための下位の手段が生みだされ,さまざまな手段は複雑な連鎖をつくりだす. 両効果は, 後に述べるように, (1) 協業と (2) 分業という労働組織の座標軸をきめる.
このように目的を設定し,それを意識的に追求し達成することを,目的意識 的とか,合目的的とかいう. 他の動物では, このような目的と手段の分離は明確ではない. 刺激と反応という,本能的行動に支配されている.むろん人間の活動にもこうした側面はある. 人間も睡眠中や休息時には, 目的を意識することから解放される. 授業中など何となくボーッと過ごしていることもある. しかし,1日24時間,これで過ごせる幸せな人はいないだろう. ただ, 目的が労働主体の欲求と直結している場合には,その目的は必ずしも強く意識されない. 自分の食欲を満たすために,調理し食事をする活動では,何をつくり, どう食べるかなど,いちいち考えなくてもすむが,お客様をもてなすとなるとこうはゆかない. 目的意識的な活動は,直接的な欲求から距離のある手段を生みだす場合に強く求められる. 不測の事態に備えて食料を備蓄する場合には,直接的な欲求なしに,将来の状況を想像して活動する. こうした場合に活性化する,人間に特有な目的意識的な活動を労働とよぶ.(教科書 103-4ページ)