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 経済学と理論 

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問題 2-20

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  • 先週やり残した 第1講 問題7から話をはじめます。

「理論的に答える」とは

  • はじめに、回答のしかたについていくつか注意をしておきます。
問題 2-1
160 人の生徒が身長をはかって, cm 以下を四捨五入した。 最高が150cm であって、最低は 120cm であった。 同じ身長に記入されたものが、少なくとも6人あることを証明せよ。
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解答と解説 2-1

解答

  • もし、すべてが5人以下と仮定すれば、全体の人数は$5\times(150-119)=155$人以下となる。これは生徒の人数が160人であることと矛盾する。ゆえに、同じ身長に記入されたものの「すべてが5人以下ではない」。つまり「6人以上のものが必ず存在する」。
  • もし、すべて5人以下なら、生徒の総数が160人以下になってしまう。だから6人以上のところが必ずでる。

解説

  • この問題は昔読んだ稲葉英次『群論入門』昭和32年 1957年 の81ページに載っている問1そのままです。このテキストでは、定義や例を解説した後に、このような小問がたくさんでてきます。自分で小問に答えながら読み進めるようになっています。そしてかなり圧縮された短い答が巻末に載っています。この講義もこのスタイルをちょっとまねています。
  • さて、本問2-1ですが、この回答を3分で書くのははじめはむずかしいかもしれません。たとえ二番目のように略記するとしても。
  • しかし、ポイントは「もしすべて5人以下なら」という着想です。これを思いつくのに何秒かかるでしょうか?それ自体は一瞬のことでしょう。
  • はじめは3分じゃ短い、と感じると思いますが、大事なのは短時間に集中して考えることです。こうしたトレーニングをすることで、まずポイントとなる糸口をみつけ、本質から入ってゆく思考力が身につきます。時間があると、コレもあるしアレもあるし....と羅列しがちで、単純化した論理は組み立てる力はつきません。アレコレあるなかで、迷うことなく「何がコアか?」をきめるものこそ、論理です。
問題 2-2

ついでにきいてみましょう。

「5人以下のところは、最大で(A)、最小で(B)となる可能性がある。」

(A)(B)に入る数は?式も書け。

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解答と解説 2-2

解答

  • 誤:(A)$1\times 160+(30-1)\times 0=160$,$30-1=29$
  • 訂正:(A)$1\times 160+(31-1)\times 0=160$,$31-1=30$
  • 誤:(B)$10\times 6+(30-10)\times 5=160$,$30-10=20$
  • 訂正:(B)$5\times 6+(31-5)\times 5=160$,$31-5=26$

解説

  • 式のなかにでてくる30は、$150-120$で、1cm刻みの30コの部分集合です。
  • 誤:160コの身長を表す元は、四捨五入でこの30コの部分集合のどれかに単射されます。「類別」クラス分けされます。
  • 訂正:160コの身長を表す元は、四捨五入でこの30コの部分集合のどれかに単射されます。「類別」クラス分けされます。
  • (A)は四捨五入すると全員が同じになるケース。
  • 誤:(B)はいちばんバラついたケース。$160\div(150-120)\fallingdotseq 5.3$なので、全部5じゃダメ、6も必要。$6x+5y=160,x+y=30$となる整数解を求めたわけです。
  • 訂正:(B)はいちばんバラついたケース。$160\div(150-119)\fallingdotseq 5.16$なので、全部5じゃダメ、6も必要。$6x+5y=160,x+y=31$となる整数解を求めたわけです。

After

解答の訂正。160の元を写像する部分集合の数は30ではなく31でした。

「5以下の部分集合は最大でいくつか?」「25です。」となり、「31以下だから、すべてが6人以下にはなれない」という命題が証明されるわけです。

さらにつけ加えておくと、(A)も誤りです。「最高が150cm であって、最低は 120cm」なので、全員が130cmではダメです。一人は150cmか120cm、残りの159人が120cmか150cmのときが、いちばんまとまったケースで、したがって、正解は$31-2=29$です。ここで考えている本題(証明と計算のレベル差)の大筋からいえば、些末な問題ですが。

問題 2-3

2-1と2-2(B)の中身は同じことなのですが、おそらく2-2(B)のほうが答えやすいでしょう。なぜか?

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解答と解説 2-3

解答

2-1では論理を明示しなくてはならないのに対して、2-2では論理が数式に置き換えられているから。

2-1では「すべて」の否定というロジックが用いられているが、2-2では和で合計する肯定型のロジックになっているから。

解説

  • 2-2(B)のほうが正答が多いのではないか、という予想のもとに追加した問題です。もしかすると、この予想は外れるかも...
  • ともかくこう尋ねると、「2-1は単純で、2-2は複雑だから」なんていう回答もでてくるのじゃないかと思います。事実、この種の言い換えで住まそうとする回答はよくあるのです。「やさしい:むずかしい=単純:複雑」という、知っている対語で置き換えただけ、「やさしい/むずかしい」を分ける要因、二分する契機はなにか、ぜんぜん「分析」できていません。そもそも「分析」する気がないのです。
  • 内容は「全部5じゃダメ!」という同じこと、でもそれを示すための「ロジック」の使い方が違うのだな、「論理」のレベルに差があるんじゃなか、という点に気づくことが「分析」の糸口になります。これが第一ステップ。
  • で、「じゃ、この論理構成の差をどう説明しようか」と考えることで、正答らしきものに一歩一歩近づいてゆくことになるわけです。これが第二ステップ。
  • とうことで、たとえば回答をみながら、第一ステップまでいっていれば1点、第二ステップで2点、そして第二ステップの内容がまともなら3点、のような採点が考えられるわけです。
問題 2-4

ではさらに...

「2-1と2-2と2-3、三つのなかで、いちばんむずかしいのはどれか?その理由をのべよ。」

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解答と解説 2-4

解答

2-3

2-1と2-2では、$(問題文\to 正解)$ という直接の対応がみられるが、2-3では問題文の「答えやすい」を解釈し、その内容を自分で規定しなおしてから解答を考える、$((問題文 \leftarrow 解釈・再設定)\to 正解)$という間接的な対応が必要だから。

解説

  • いちばんむずかしいのは、実はこの2-4かも。
  • ともかく、この解答は私がとっさに考えた(実は3分以上かかってしまいましたが)回答です。別の回答をいくとおりも考えることはできそうですが....
  • 解答がいくとおりも考えられるということは、問題が抽象的で、答えるためにはまず、回答できるかたちに「つくりなおす」作業、いきなり問題に答えるのではなく、抽象的に与えられた枠内で、問題を「つくる」作業が求められているのです。
  • ここで強調しておきますが、もちろん「つくる」といっても、ゼロから「つくる」のではありません。抽象的な問題文を正確に読み解き、与えられた問題のどこが答えにくいのか、みつけて、答えられるかたちに「つくる」、という操作です。これを穏当には「吟味」といいますが、なかみは「解釈と批判」です。正しく「解釈」し「批判」するのです。
  • こういうと、「そんなの、そもそも問題として失格だ」という人がでてきます。たしかに、このような問題は、入学試験にはむきません。受験勉強から離れられない小中高の教育でも、通常はお目にかかることのない「問題」でしょう。
  • でも、入試向け、受験勉強だけやっていると、永久に自分で「問題を発見する人」「新たな問いを発する人」にはなれません。いつまでたっても「きまった答えを探す人」のまま、「ちょっとでも問題づくりが必要になると、わかりません、としかいえない人」になってしまいます。
  • この2-3のような「問題」に答えるには、別に予備知識はいりません。ただ、大学に入るまで、あるいははいってからも、こうした勉強はあまりやってこなかったので、はじめは戸惑うと思います。でも、トレーニングを積むことで、ちょっとずつ、できるようになるものです。
  • こうした答が一つにならない問題にも、私なりの「解答」をつけます。これがベストの正解か、というと、もちろんそのとき私がベストだと思うものを書きますが、後から考えれば、もっと違った答え方、考え方が可能性としてはいつもでてきます。私の「解答」と一致しているかどうか、意味もわからず、ただ自分の送った回答とあってるかあってないか(とくに数値で答える問題をだすとこういう反応が顕著にあらわれますが)、で一喜一憂するのではなく、私の「解答」で本当によいのかどうか、「解答の意味」を考えてみてください。
  • その点で、次の文章を引いておきます。この講義で問題をだしてゆくときの一つの指針です。
  • 「いま、たいていの中学、高校では答案が合っているかどうか生徒にはわからない。先生が合っているといえば合っているというだけで、できた場合もできなかった場合もぼうっとしている。本当は答が合うことよりも、自分で合っていると認めることのほうが大切なのに、それがわかっていない。(中略) 答案などというものは、生徒に書かせるよりも本当は先生に書かせ、それが合っているかどうかを生徒が調べるほうがよいと思う。そうすれば自分で判断する訓練になるに違いない。答案は書けなくても意味はわかるという子供ができればそれでよいのだ。」(「わかるということ/岡潔『春宵十話』ふたたび」からの孫引き)
問題 2-22

ここまで、説明が必要なところがあればどうぞ。

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解答と解説 2-22
  1. 「120cmから150cm間のデータの数は31個ではないでしょうか。」etc. 講師曰く「はい、その通りです。訂正します。」
  2. 「もう少し論理的に考えるときのコツや具体例が知りたいです。」講師曰く「一朝一夕にはならず。この講義で実践的にトレーニングしよう。」
  3. 「証明を短時間で考えるのが難しかったです。」「3分で答えるというのはとても焦りを感じました。」講師曰く「3分は短すぎると感じるだろうが、大切なのは、逆に、3分でどうしたら答えられたか、ふりかえってみることです。この点で「復習」が大事。「あってた、あってなかった」で終わりにすると《論理で本質を把握する力》は何問やってもつきません。」

Last-modified: 2022-05-02 (月) 08:03:39