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生産の基本概念
前回のまとめ
情報通信技術
- 今回の講義(第6講)は、とくにプログラミングと労働に絞ってその関連を説明した(「情報通信技術=データ通信+情報処理」の領域はずっと広いのだが...)
- 労働の構造を抽象化して分析すると、プログラミングの要素が存在すること。
- この要素が、今日の生成AIでどこまで外部化(コンピュータによって処理)されようとしてるか、chatGTPで実験してみた。
- 「コンピュータは、人間が書いたプログラムにしたがって高速処理するが、コンピュータ自身でプログラムを書いて(=自動で)作動することはない」という命題から、「コンピュータによる処理領域が広がれば、広い意味で、プログラミングするタイプの労働が増える。」という命題を、簡単に導くことはできないことを示した。
- プログラミングの全体がコンピュータに取りこまれるのではないが、そのある領域を人間の作業から、コンピュータの側に移すことは可能であり、この移行が急激に進みつつあることを実感できたのではないか。
- 「情報通信技術と労働」に関しては、まだまだ話すべきトピックがあるのだが、時間の関係で「労働」の節はひとまずこれで閉じる。
今回のネライ
- 生産の基本概念について分析する。
- 今年度の講義では、とくに「自然」という言葉が正しく使えるようになるように心がける。
- 「生産過程」という捉え方(枠組み)を知る。
- 「粗生産物」「純生産物」の区別を理解する。
- 「再生産」という概念を学ぶ。
- 「社会的生産」(=生産過程と生産過程の関連)について考える。
- 「社会的再生産」という捉え方の人為性(人間による「トリミング」)を自覚する。
生産過程
- 「生産」という概念に必須な要素は「ふえる」であることはすでに説明したとおり。
ー「ふえる」という概念に必須な要件は?
問題 7-1 「ふえる」ということがいえるためには、最低限(A)ことができなくてはならない。 (A)にあてはまる動詞を一つあげよ。
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解答と解説 7-1 解答 解説 - 客観的に「はかる」ことができる対象を「モノ」と定義したのでした。
- 「生産」とはモノの量が増えることであり、「消費」とはモノの量が減ることでした。
- 「つくる」make 労働と、「ふえる」生産 produce の区別をもう一度思いだそう。
問題 7-2 生産はつねに生産過程として実現される。 「生産過程」と「過程」というのは、物理でいう物体の「運動過程」とか、化学でいう物質の「反応過程」とか、いう場合と(ほぼ)同じである。 この「過程」ということばが、かならず必要とする「対」がある。それはなにか。
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解答と解説 7-2解答解説 - 「はじめ」と「おわり」がきまるので、その間が「過程」となるわけです。
- 連続的に$$.........$$とエンドレスに続くのではなく、$$....|.....|....$$ と「節」を設定することで「過程」ということばが使えるわけです。
- 「はじめ」と「おわり」はどのようにしてきまるのか、という問題はむずかしい。
- 観察者がきめるのか、それとも自然にきまっているのか?
- 自然科学でしたら、一般に「それは自然にきまっているのだ」となるかもしれません。
- この「自然に」という 意味だれがやっても基本的に同じように区切るという意味でしょう。は....
- しかし、経済学の場合、人間が決める面がつよくなります。
- とくに目的意識手な活動としての労働と結びついたときには...
問題 7-3 - 生産過程において「おわり」を決めるのは(A)である。
- (A)にはいる名詞を答えよ。
- (ヒント)「労働」の基本的な構成要素を、もう一度思いだそう。
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解答と解説 7-3解答解説分節化の人為性 - 「生産過程」の特徴は、人間が「目的」をきめ、そこから、ふりかえるかたちで、出発点になりそうな「節」を探すところにあります。
- もちろん、「節」には自然にきまるところがあります。金槌を動かしている途中で切れ目を入れる、なんていうことは無理ですし、当然しないでしょう。
- ただ「生産過程」というときには、その切れ目に「人為性」が強く作用する点に注意してください。
- そして、一つの「生産過程」もその内部にさらに下位のいくつもの「生産過程」を含んでいることにも。
過程の線形性 - 生産はモノがふえる過程でしたから、終点のモノがきまれば、これに対する出発点のモノもきまります。
- 通常の「生産過程」では、生産の目的となるモノ(生産物とよぶ)は一つです。これに対して、手段となるモノ(生産手段とよぶ)は複数になります。
- さらに、線形性を想定します。
- 生産物 $i$ を生産する生産過程のアウトプットを $$\mathbf{b_i}=(0,0,\cdots,b_i,\cdots,0)$$ 生産物 $i$ を生産するためのインプットを $$\mathbf{a_i}=(a_{i1},a_{i2},\cdots,a_{in})$$ のように数ベクトルとして表現できるとします。
- これは強い仮定です。インプットを $k倍$ すればアウトプットもを $k倍$ になるからです。
- また、二つの生産過程を一つにまとめることもできるということです。 $$\mathbf{a_i} \to \mathbf{b_i} \land \mathbf{a_j} \to \mathbf{b_j}\,\, \Longrightarrow \mathbf{a_i}+\mathbf{a_j} \to \mathbf{b_i}+\mathbf{b_j} $$
生産技術 - input $\to$ output, $\mathbf{a_i} \to \mathbf{b_i}$ が1回かぎりの偶然的な関係ではなく、だれがいつやっても同じ過程となるとき(再現性がある)、生産物 $i$ には生産技術が存在するという。
- 再現性といっても、実際にはそのたびごとにブレが避けられませんが、こうした誤差の存在も、以下では度外視し確定的な関係が繰り返せるものと仮定して話を進めます。
生産期間 - 生産手段が生産物になる $\mathbf{a_i} \to \mathbf{b_i}$ には、一定の「期間」がかかります。生産手段と生産物は「同時に」実在することはできません(局所性)。
- $\to$ は時間の経過を表しています。この期間の長さは、生産過程によって長短さまざまです。
- しかし、生産期間の存在を、モノの量の変化と同時に処理しようとすると、問題はかなり複雑になります。ここでは、すべての「生産期間」は同じであると仮定し、必要なところで、その違いの影響を考えることにします。以下ではひとまず、線形性をもった計量可能な「モノの量」(物量)の違いに絞って考えてゆきましょう。
フローとストック - たとえ「すべての生産期間は同じである」と仮定したとしても、期間の存在を考えるということは、フローとストックの区別を必要とします。
- アウトプットはある期間の増加量ですから、インプットもこの期間に消費されてなくなったフローの量になります。
- 生産手段のうちには、チャーハンをつくるときのフライパンのように何回も使えるものが存在します。ある生産期間で消滅しないストックとしての生産手段については、その一部分だけがインプットのベクトル成分を構成するというように処理することにします。チャーハンを1000回つくるとフライパンが使えなくなるとすると、$1/1000個$のフライパンがフローの生産手段ベクトルを構成すると考えるわけです。
問題 7-4 「フローとストック」のところで説明したフライパンのフロー化は、$i$をチャーハン、$j$$をフライパンとすると、次のようになります。 $$(a_{i1},\cdots, 1/1000a_{ij},a_{in}) \to (0,0,\cdots,b_{i},\cdots,0)$$ では、つぎのように表記したとき,これは何を意味するでしょうか。ちょっと考えてみてください。 $$(a_{i1},\cdots, a_{ij},a_{in}) \to (0,0,\cdots,b_{ii},\cdots,999/1000 b_{i,j},\cdots,0)$$
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解答と解説 7-4解答 - 生産手段としてフライパンを1個をつかって、生産物として、チャーハン$b_{ii}$ と $1- 1/1000個$のフライパンが産出された。
- フライパンを全部フローとして表示した。
解説 - いままで、生産物は単一だ、という了解のもとで考えてきたのですが、ちょっとヘンですが、ここでは複数の生産物、つまり「チャーハン+中古のフライパン」を考えることになっています。 $$(冷やご飯,タマネギ,ピーマン,ベーコン,タマゴ,塩,油,フライパン,\cdots) \to (0,\cdots,チャーハン,フライパン’)$$
- 複数の生産物がでてくる生産過程を結合生産とよびます。
- 厳密に考えようとすると、$999/1000$ のフライパンとはなにか、むずかしい問題になります。フライパンは1個ではじめて使いものになるはずです。新品の(フライパンA)に対して、1度使った(フライパンB)のように別のモノとして処理するほうが正しいでしょう。
- いろいろ工夫する必要があるのですが、期間の存在はストックの処理を必要とする、このことはアタマに入れておいてください。
- このストックの問題、結合生産の考え方は、このあと「自然環境」について考えるとき、重要ない意味をもってきます。
粗生産物と純生産物
問題 7-5 生産過程はかならず生産物をもたらすが、それだけをみて、単純に「ふえた」ということはできない。なぜか?
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解答と解説 7-5解答 - インプットされた要素が減っている(生産手段が消えてなくなっている)から。
- 正味でふえたかどうか、考えなくてはならないから。
解説 - ふえたかどうかは、アウトプットからインプットを差し引いて考えないといけない。
- 生産過程の結果としての生産物を粗生産物とよぶ。
- この差し引いた残りを、粗生産物に対して純生産物とよぶ。
- ただ生産手段が複数あるため、ベクトルの引き算 $\mathbf{b_i - a_1}$では、ふえたかどうかは判定できない。
- 複数の生産手段の存在は、増減を生産手段も生産物も同じモノであれば、増減はすぐにわかる。
問題 7-6 次の生産過程において,粗生産物、純生産物はいくらになるか? $$小麦12kg \to 小麦25kg$$
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解答と解説 7-6解答 - $粗生産物:25kg$
- $純生産物:25-12=13kg$
社会的生産
問題 7-7 二種類の生産物からなるベクトル$(小麦,鉄)$を考える。小麦とか鉄とかに理論的な意味はありません。n種類あるという関係を2つに抽象化しているだけです。$a_{1\,2}とか書くかわりです。単位は$kg$とする。次のような小麦、鉄の生産過程を想定する。 $$\begin{aligned} \text{小麦生産 } P : (1,1)\to (4,0)\\ \text{鉄生産 } Q : (2,1) \to (0,5) \end{aligned}$$ PとQを同時におこなったときに純生物物のベクトルは?
7-7 の回答を + 0/11 ...1点以上 0%
解答と解説 7-7解答解説 $$\overbrace{(4,0)+(0,5)}^{粗生産物} - \overbrace{(1,1) + (2,1)}^{生産手段} = \overbrace{(1,3)}^{純生産物}$$ 図解
問題 7-8 $$\begin{aligned} \text{小麦生産 } P : (1,1)\to (4,0)\\ \text{鉄生産 } Q : (2,1) \to (0,5) \end{aligned}$$ Pの過程をs倍、Qの過程をt倍して、両者を同時におこなったときに純生物物のベクトルは?
7-8 の回答を + 0/6 ...1点以上 0%
解答と解説 7-8解答解説 $$\overbrace{(4,0)s+(0,5)t}^{粗生産物} - \overbrace{(1,1)s + (2,1)t}^{生産手段} = \overbrace{(3s-2t,-s+4t)}^{純生産物}$$ 図解 - 純生産物を表す点Nを移動させてみよう。
- ONを小麦生産と鉄生産に分解すると...
- さらにこれを投入ベクトルと産出ベクトルに分解する...
問題 7-9 $$\begin{aligned} \text{小麦生産 } P : (1,1)\to (4,0)\\ \text{鉄生産 } Q : (2,1) \to (0,5) \end{aligned}$$ Pの過程をs倍、Qの過程をt倍して、両者を同時におこなったときに、小麦$1kg$だけが純生物物となるようにしたい。このときの$s,t$は?
7-9 の回答を + 0/9 ...1点以上 0%
解答と解説 7-9解答解説 $$\begin{cases} 小麦\,純生産物 &\, 3s-2t &=& 1\\ 鉄\,純生産物 &\,-s+4t &=& 0 \end{cases}$$
問題 7-10 $$\begin{aligned} \text{小麦生産 } P : (1,1)\to (4,0)\\ \text{鉄生産 } Q : (2,1) \to (0,5) \end{aligned}$$ Pの過程をs倍、Qの過程をt倍して、両者を同時におこなったときに、鉄$1kg$だけが純生物物となるようにしたい。このときの$s,t$は?
7-10 の回答を + 0/10 ...1点以上 0%
解答と解説 7-10解答解説 $$\begin{cases} 3s-2t &=& 0\\ -s+4t &=& 1 \end{cases}$$
問題 7-11 問題7-7 以降の計算からわかったことを簡潔にまとめよ。
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解答と解説 7-11解答 - 複数の生産過程を組み合わせることで、単一種類の純生産物だけを生みだすことができる。
解説 - 二種類のモノに絞って、平面ベクトルで図示してみると、見通しがよくなる。やってみよう。
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