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問題 4-100 未公開
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 知識と所有物 

概要

  • 問題3-4について「知識に新しいアイディアも含まれそれには知的財産権が生じるため、知識は発見者の私有に値すると思う」という質問がありました。
  • せっかくの機会ですから、ちょっと踏みこんでみましょう。
  • モノ→商品という本筋から若干横道に逸れるかもしれませんが、今日の市場の姿、そして将来の市場のあり方を考えるうえで重要な問題です。

「知的財産」

  • 知識に関して今の社会では 知的財産 intellectual property という権利が認められている。
  • その代表は、特許権と著作権。他に種苗法にいう育種者の権利、商標権など、ひっくるめて知的財産と言われるようになった。
問題 4-1

いろいろなものを知的財産とひっくるめて総称することで生じる効果は何か。

このように総称する必要はあるのか(後者は、価値観の問題になるなので、採点対象外ですが、あなたの立場を述べてください。)

3mini
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解答と解説 4-1

解答

  • 効果:知的活動の領域における私的財産権 property の拡大
  • 必要ない(と私は考えます。proprietary の過度の拡張は、共有を基本とする人間の知的活動における自由を阻碍するからです)。

解説

  • 資本主義経済が拡大するなかで、私権の対象外とされてきた知的活動の領域に、利得追求型の行動原理が急速に拡大。
  • 共有圏 public domain が、私的に囲い込まれる傾向。
  • 共有されているもの(たとえば”ことば”)をつかって書かれたもの(この”ホームページ”)が著作権をもつか?
  • 知的活動の成果を、有体物に認めてきた「財産」property という概念で保護しようというのは、資本主義の「イデオロギー」(当人は理由を意識しないが、まわりがみんなそういっているからそうなのだ、と思い込む通念)。

注意

  • この解説で書いた内容は、あくまで私の価値観によるものです。
  • この内容は、現在、世の中で広く受け容れらているものとは逆の方向のものです。
  • このように考えること自体は自由ですので、思うとおりに書いてみました。
  • ただ、考えることと、行なうこととは別です。
  • 自分が正しいと思うとおりに行動すると、法律を犯すことになり、損賠賠償を請求されたり、刑罰を受けることになります。このこと、くれぐれも注意してください。私が講義で、著作財産権など不要だ、インターネットが発達すればますます、その矛盾が拡大する、といったから、刊行物全体をコピーしたのだ、などと、責任転化することはしないでください。因みに私は違法コピーはいたしません。

After

  • みなさんの回答を次の3つの基準で、0,1,2,3 の四段階に評価してみました。
    1. 「ひっくるめて総称する」効果に対する答えになっているかどうか。財産権一般の効果、知的財産の効果をきいているのではありません。
    2. 総称の効果が、総称がない場合との比較で、適切に述べられているかどうか。知的財産という考え方は重要だ、という程度では、総称の効果を説明したことにはなりません。
    3. 総称の効果が、知的財産の範囲、領域を一般化し「拡張」する点にあることを明確にしているかどうか。ただ、総称の効果が、知的財産の「保護」や「周知」だというだけでは、不充分です。
  • 総称の効果は、例えば、「基本的人権」という包括的な概念の存在を思いだせばわかります。「基本的人権」というかたちで、身体の自由とか、表現の自由といった自由権と生存権から、さらに教育を受ける権利とか、環境権とか、さまざまな社会的な権利に、対象が拡大されてきました。一般的な総称を設けることが、その対象の拡大に効果的であることがわかると思います。ただし、逆に基本的な概念を明確にすることで、従来漠然とそこに含まれていた要素が、厳密に考えれば不適格だと排除され、対象が限定されることもありうるので、単純に一般化するのは禁物です。
  • 最後の「拡張」の効果、というか「意図」については、この講義のなかで文化庁のホームページをみながら、口頭で示唆しました。いちおう、この説明をきいた、という前提で採点しました。

著作権

  1. 著作物を通して表現されている著作者の人格をまもるための「著作者人格権」
  2. 著作権者が著作物の利用を許可してその使用料を受け取ることができる権利としての「著作権(財産権)」
問題 4-2

著作者人格権と著作権(財産権)は切り離すことはできない。前者が認められるなら必然的に後者も認められるべきだ。

この主張は正しいか。理由を述べよ。

3mini
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解答と解説 4-2

解答

  • 正しくない。
  • 現行法でも、著作権(財産権)は著作者の死後、ある期間有効だが、著作者の死亡すれば人格も消滅し著作人格権は消滅する。
  • 著作権(財産権)は第三者に譲渡できるが、その場合でも、著作物人格権は著作者に残る。

解説

  • 著作権に関していえば、保護されるべきなのは、著作者と著作物との一意の対応(剽窃はなし、著者を明らかにしないコピペもダメ、等)
  • ただで読まれたら、あるいは勝手に海賊版がつくれたら、著作者は生活できない、等々というのは、著作物を売買して生活するスタイルだけを自明の前提にしている。
  • 大学で研究活動を続け、論文を書いてきたという(私の狭い)環境からいえば、著作財産権は無用。ただ、守ってほしいのは、私が書いた論文は私の書いた論文であってほしい、できればしんだあとも、という著作人格権だけ。
  • 他人の書いたものを、自分が書いたものだ、というのは、読み手をだますことであり、これは財産権として保護しなくても、りっぱな詐欺行為であり、民法 civile law ではなく刑法 criminal lawで対処できる。商標権も似たところがある。

After

  • 「著作者人格権と著作権(財産権)は、著作物に対する異なる権利の側面を表す概念ですが、それらは法的には別々の概念です。著作者人格権は、著作者に著作物の権利と保護を与えるものであり、著作権(財産権)は、著作者に著作物を制御し、利用するための経済的な権利を与えるものです。」というような回答実はこれ、あるときのchatGTPの答えです。は2点止まりとしました。
  • ここまでは、インターネットで調べれば、書けることです。そこからもう一歩踏みこんで、「だから、たとえばこういう一致しない事例が現実に出てくるじゃないか」と具体的に考えて説得力のある回答を送ってくれた人もいました。
  • 本問の「解答」で書いたような、一致しない現状、事例まで踏みこんで書いてあれば、3点としました。

特許

  • 「特許法第2条に規定される発明、すなわち、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものを保護の対象とします。したがって、金融保険制度・課税方法などの人為的な取り決めや計算方法・暗号など自然法則の利用がないものは保護の対象とはなりません。また、技術的思想の創作ですから、発見そのもの(例えば、ニュートンの万有引力の法則の発見)は保護の対象とはなりません。」
  • ある化学物質Xを「発見」しても特許権は申請できないが、その新しい製造方法P(X)の「発明」なら特許権を申請できる。
  • 共有の知識を基礎に、それに何かをつけ加えただけで、特許で保護される、というのは不合理(だと私は判断します。これは、私のイデオロギーで、客観的学問的な主張ではありません。つけ加えたことをもって、「創りだした」とか、「創造した」とか、いうことができるか、疑問です。)
問題 4-3

「発見は、今まで世の中に知られていなかったものを見つけ出すこと。 発明は、今まで世の中になかったものを新たに作り出したり、考え出したりすることである。 特許法では、発見者ではなく、発明者に特許を受ける権利がある。」

この主張の問題点を列記せよ。

発見と発明を区別して、特許は発明に対してのみ与えられるという説明は、色々なところで見かける。

しかし、発見と発明の区別は、どれをみても、例示によるもので、定義が明示されているとはいえない。

それでも、発見と発明を区別して、特許は発明のみ、というのはなぜか、このような説明の背景にある理由を説明せよ。

4mini
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解答と解説 4-3

解答

    1. 発見 vs 発明 という対比
    2. 見つけだすことと創りだすことの区別
    3. なぜ、発明だけが保護されるのかの理由
  • 知的な探求の成果全体(発明+発見全体)は共有されるという原則を維持したうえで、その一部をなんとか切り取り、私的な権利の対象にしようというネライ。
  • 共有の世界に私的な権利を拡張しようとする意図。

解説

  • このHPからコピーしました。
  • 対象を限定しようという意図はわかるのですが、それを発明と発見で二分するのは無理。
  • 特許法第2条でいえば、「創作」(「発明」というのはこの言い換え)という観点か、ら限定を加えるのではなく、「自然法則を利用した技術的思想」という観点から限定している点がポイント。
  • つまり「技術」「手段」が必要な要件であり、実際には産業として実利があるものに限定するという主旨である。
  • この背景としては、知的活動の成果は、無形であり、使っても壊れる(つくりなおす必要がある)ようなものではない。だから、原則、だれでも自由に使えるもの。
  • ただ、それを産業として利用して利得が生じるような、モノの作り方である場合には、特例として、一定期間、独占を許可する、というのが特許。
  • 特許は特例措置であり、特別に許す、ものです。
  • だからまず、「申請」しないと「許可」もありえないわけです。
  • 特許については、既得権を保護するだけで、新しい発明をうむインセンティブになる、という根拠は乏しい(あるいはその面のみ注目するから、そうみえるだけの思い込み)(と私は思います)。
  • こうした特許反対論、特許対象限定論は昔からあるようです。どんな議論があったのか、その歴史については、たとえば森村進「知的財産権をめぐるリバタリアンの議論」などを見てください。あるいは実例に関してはミケーレ・ボルドリン他『<反>知的独占』をみると、たくさんの反例があがっています。

コピーレフト

  • コピーレフトとは
  • コンピュータの世界では、昔から、反特許の運動が活発に進められてきた。
  • インターネットの発達のなかで、プログラミングコードを自由に使いあう環境が広がっている。
  • 共同作業のための道具としての、たとえば git
問題 4-4

多くのプログラマーが、互いに、プログラミングコードの著作権を放棄し、だれでも自由に利用し改良してもよいようにすれば(パブリックドメインにおけば)、共有のプログラミングツールが増えて便利になる。

しかし、著作権を放棄するだけでは、パブリックドメインのソフトウェアが実際には増えない。

なぜ、簡単には増えないのか、その理由を述べよ。

ヒント:プログラミングされたソフトウェアを販売する業者なら、パブリックドメインのソフトウェアが増えてゆくのをみたとき、どうするか、考えてみよ。

3mini
4-4 の回答を 
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解答と解説 4-4

解答

  • パブリックドメインにおかれた、無料のソフトウェアに多少の改良を加えて、特許をとり、優良にする。
  • その結果、著作権放棄したオリジナルのソフトウェアが、次々に有料化されてゆく。

解説

  • このようなタダ乗りを防ぐのが、コピーレフトの考え方のもとにあるようです。

After

  • 「ソフトウェアを販売する業者が、オープンになったコードに少しの改良を加えて新たな著作物として著作権を取得してしまい、そこで著作物の新進が止まってしまうから。」(回答33)
  • この回答はかなりよくできていました。正解です。

まとめ

知識の共有と情報の私有 proprietary

  • 原則1:知識はだれでも自由に使うことができる。public domain
    • 特則::発明物や著作物に対して、一定の期間、発明者や著作者に利用制限が許可される。この特則を原則と混同してはならいない。(← これはこの講義の講師の価値観によるもの。世間一般ではこれを原則と見なす人たちのほうが多いようだ。今の時代の「イデオロギー」にすぎないのだが...)
  • 原則2:情報は、モノとしての一面をもち(メディア、データ)、このかぎりで、伝える側が伝えられる側に対して、一定の制限を加えることがことが許される(モノに私的所有を認めるかぎり、でという条件があるかぎり)。
  • しかし、市場の原理を自然なものとして受け容れる傾向が強い今の社会では、情報のレベルだけではなく、知識のレベルにおいても、私有を拡張する力が強くはたらいている。

Last-modified: 2023-05-27 (土) 10:31:25