前回<<冬学期第9講>>次回
- 「質問」への「回答」にポイントを与えます。
- ポイントは30ポイントを上限とします。
- 達成度判定試験 を70ポイントとして、合計100ポイント=100点で「成績表記」をします。
純生産物の分割・剰余生産物
今回のテーマは
- 「投下労働量」の計算
純生産物の分割 次回に
投下労働量
- Def: 商品を「生産する」のに直接、間接に必要な労働量(単位は時間)
- 間接に≡原材料の生産に必要な
- 直接に≡原材料を加工するのに必要な
- 質 問 1 . いま着ているシャツを生産するのに何分かかるか、アバウトでよいので答えてください。そして、どうしてそのくらいの時間だろうと推測したのか、も答えてみてください。
- 回答:
- 回答をみて、この質問文に難点があるのに気づきました。「生産するのに何分かかるか」というのがミスリーディングでした。せめて「生産するのに何分の労働時間がかかるか」ときくべきでした。
- 講義時間中に回答をみて、急遽、「生産期間」と「労働時間」の違いについて、説明を補足しました。
- たとえばウィスキーの醸造では17年も寝かすものもありますが、その間、労働はおこなわれません。生産に必要な労働時間は仕込みと蔵出しに集中します。
- 「生産」と「労働」は違う(概念的には直交関係にある)ことを説明しましたが、ここではそれが「生産期間」と「労働時間」の違いとして、目に見えるかたちで現れています。
単一生産物の場合
- 注意:大きな再生産構造をもつ経済を念頭におくこと(「一国経済」「国民経済」*1)
- 「単一生産物」であれば異なる商品のセットを集計するという難題は、ひとまず回避できます。ひとまずこれでアウトラインをイメージしておきます。
- 「小麦」の経済:19世紀のイギリスの経済学者たち(古典派経済学)が愛用したモデルです。
- 「小麦」は、生産手段 かつ 生活消費物資(生活手段)です。両方になりるので、「集計問題」なしに一国の再生産モデルを描けるメリットがあります。
- 前提:(単位を1億倍しておーきなスケールの経済をイメージしてください)
- 小麦2キロ → 小麦4キロ :技術的確定性がある「生産過程」
- コントロールに必要な労働量: 5時間
- 以下、これを
\[ 小麦2キロ + 労働5時間 \to 小麦4キロ \cdots\cdots (1) \]
と表記します。
- \( (((小麦2キロ) \gets 労働5時間 ) \to 小麦4キロ) \) です。小麦と労働は合算できません。
- 小麦2キロの投下労働量であれば、これをコントロールして4キロを粗生産する5時間の労働と合算することはできます。
「純生産」に必要な労働量
- (1)の粗生産物は4キログラムの小麦だが、このうち、2キログラムは次回の原料となる。原料として使われた2キロを次回の文として取り戻すことを「補填」とよぶ。
- \( 粗生産物=補填部分 + 純生産物 \)
- 5時間の労働は、純生産物を生産する(「純生産する」)のに用いられたと考えると、
- \( 5時間 \to xキロの小麦 \)となる。\( t=5/x \) となることを確かめよ。
- 定理:\( 投下労働量 \equiv 純生産に必要な労働量 \)
複数生産物の場合
- 純生産アプローチ
- 生産規模を変化させると、(2),(3)の 労働量も比例的に増減する。
- 純生産の図解:
- input を負、output を正 として生産方法をベクトルで表示すると
\[ (-2,-3)\to(8,0) \]
\[ (-4,-2)\to(0,6) \]
- 平面ベクトルで図示してみると...アニメーション
- 線形代数
- あとは、線形代数の世界。ただ、この講義では、経済学としての基礎的な考え方のほうにポイントをおく。
+
| | ... |
- 行列やベクトルをつかって表記すると簡素化できる。
\begin{equation}\begin{pmatrix}2&3\\4&2\end{pmatrix} \to \begin{pmatrix}8&0\\0&6\end{pmatrix}\end{equation}
という問題は
\[ A= \begin{equation}\begin{pmatrix}1/4&3/8\\2/3&1/3\end{pmatrix} \to E = \begin{pmatrix}1&0\\0&1\end{pmatrix}\end{equation} \]
に「標準化」できる。
- 投下労働量アプローチ
\[ \bm t = \begin{pmatrix}t_1 \\t_2\end{pmatrix}, \;\bm l = \begin{pmatrix}6\\4\end{pmatrix} \]
として、「投下労働量」は以下の連立方程式の解となる。ただし E は単位行列。
\[ A\bm t + \bm l = \bm t\\ \bm l = E \bm t -A\bm t \\\therefore t=(E-A)^{-1}\bm l \]
- 縮尺行列Qを用いた純生産アプローチ
\[ Q=\begin{pmatrix}q_1&q_2\\q_1'&q_2'\end{pmatrix} \]
純生産物\( (E-A) \)をQ倍に拡縮した結果、それが単位行列になる。
これが、\( (q_1,q_2) \)で小麦だけが1キロ純生産され、
\( (q_1',q_2') \)で鉄だけが1キロ純生産されるケースにあたる。
\[ Q(E-A) = E \\Q=(E-A)^{-1}, \\\therefore Q~\bm l=\bm t \]
|
\[ \left[\begin{matrix}2 & 3\\4 & 2\end{matrix}\right] \]