前回<<冬学期第9講>>次回

  • 「質問」への「回答」にポイントを与えます。
  • ポイントは30ポイントを上限とします。
  • 達成度判定試験 を70ポイントとして、合計100ポイント=100点で「成績表記」をします。

純生産物の分割・剰余生産物

今回のテーマは

  1. 「投下労働量」の計算
  2. 純生産物の分割 次回に

投下労働量

  • Def: 商品を「生産する」のに直接、間接に必要な労働量(単位は時間)
    • 間接に≡原材料の生産に必要な
    • 直接に≡原材料を加工するのに必要な
    •  質 問    1 . いま着ているシャツを生産するのに何分かかるか、アバウトでよいので答えてください。そして、どうしてそのくらいの時間だろうと推測したのか、も答えてみてください。
      • 回答:
      • 回答をみて、この質問文に難点があるのに気づきました。「生産するのに何分かかるか」というのがミスリーディングでした。せめて「生産するのに何分の労働時間がかかるか」ときくべきでした。
      • 講義時間中に回答をみて、急遽、「生産期間」と「労働時間」の違いについて、説明を補足しました。
      • たとえばウィスキーの醸造では17年も寝かすものもありますが、その間、労働はおこなわれません。生産に必要な労働時間は仕込みと蔵出しに集中します。
      • 「生産」と「労働」は違う(概念的には直交関係にある)ことを説明しましたが、ここではそれが「生産期間」と「労働時間」の違いとして、目に見えるかたちで現れています。
        2018-11-18 08:02:07
  • Aim: 純生産物の分割の「計量」

単一生産物の場合

  • 注意:大きな再生産構造をもつ経済を念頭におくこと(「一国経済」「国民経済」*1)
  • 「単一生産物」であれば異なる商品のセットを集計するという難題は、ひとまず回避できます。ひとまずこれでアウトラインをイメージしておきます。
  • 「小麦」の経済:19世紀のイギリスの経済学者たち(古典派経済学)が愛用したモデルです。
    • 「小麦」は、生産手段 かつ 生活消費物資(生活手段)です。両方になりるので、「集計問題」なしに一国の再生産モデルを描けるメリットがあります。
  • 前提:(単位を1億倍しておーきなスケールの経済をイメージしてください)
    1. 小麦2キロ → 小麦4キロ :技術的確定性がある「生産過程」
    2. コントロールに必要な労働量: 5時間
    3. 以下、これを
      \[ 小麦2キロ + 労働5時間 \to 小麦4キロ \cdots\cdots (1) \]
      と表記します。
      • \( (((小麦2キロ) \gets 労働5時間 ) \to 小麦4キロ) \) です。小麦と労働は合算できません。
      • 小麦2キロの投下労働量であれば、これをコントロールして4キロを生産する5時間の労働と合算することはできます。

生産」に必要な労働量

  • (1)の粗生産物は4キログラムの小麦だが、このうち、2キログラムは次回の原料となる。原料として使われた2キロを次回の文として取り戻すことを「補填」とよぶ。
  • \( 粗生産物=補填部分 + 純生産物 \)
  • 5時間の労働は、純生産物を生産する(「純生産する」)のに用いられたと考えると、
  • \( 5時間 \to xキロの小麦 \)となる。\( t=5/x \) となることを確かめよ。
  • 定理:\( 投下労働量 \equiv 純生産に必要な労働量 \)
    • 単一生産物の場合は自明。

複数生産物の場合

  • 複数の生産手段のセット(行列)と複数の生産物のセット(行列)をスカラーに集計して評価する必要が生じます。 「集計問題」です。
  • 「小麦」と「鉄」の経済:「1を聞いてnを知る」のは無理ですが、「2を聞いてnを知る」ことはできます。洞察力 insight があれば ...
  • 重要な仮定
    1. 技術の一定性 一定の生産方法が継続する。生産方法の変更がないケースである。
    2. 規模の伸縮性 同じ生産方法 \( input \to output \) で生産規模を拡大縮小できる。 \( input\times 2 \to output \times 2 \)
  • この仮定のもとで、次のようなケースを想定してみます。
    \begin{equation}\begin{cases} 小麦~ 2 + 鉄~ 3 + 労働~6 \to 小麦~ 8 \cdots\cdots (2)\\ 小麦~ 4 + 鉄~ 2 + 労働~4 \to 鉄~ 6 \cdots\cdots (3)\end{cases}\end{equation}
  • 純生産の図解:
    • input を負、output を正 として生産方法をベクトルで表示すると
      \[ (-2,-3)\to(8,0) \]
      \[ (-4,-2)\to(0,6) \]
    • 平面ベクトルで図示してみると...アニメーション
  • 線形代数
    • あとは、線形代数の世界。ただ、この講義では、経済学としての基礎的な考え方のほうにポイントをおく。
      +  ...
\[ \left[\begin{matrix}2 & 3\\4 & 2\end{matrix}\right] \]

*1 ただし、肝心な、これから考えようとしている、「集計問題」の考察が欠落している「マクロ経済学」といっしょにしないこと。

Last-modified: 2021-02-09 (火) 09:52:26