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概要

市場構造の変形

前回、駆け足で説明した[変形」理論について、別角度で、解説します。 前回のこの部分、復習しておいてください。

資本の概念

  • 単純な転売 G -- W -- G' より、一歩進んだ「資本」の概念について解説します。教科書の79-83頁を読み、「運動体」とはなにか、考えておいてください。
  • 「100円で買った缶ジュースを120円で売った。この100円が資本である。」というのが、プリミティブな規定。
  • 120円になった瞬間に、120円は資本ではなくなるのか。NO, これも資本
  • 買った缶ジュースは資本ではないのか。NO. これも資本
  • 物的存在視としての缶ジュースが、資本なのか?NO.
  • じゃ、何が?
    +  ...
  • G--W--G' で完結するのか? NO.
  • なぜ?
    +  ...
  • G --- W --G' -- ... と、エンドレスで、かたちを変えることを「運動体」とよぶのです。
  • では、この「かたち」って、なんのかたち?商品のかたち、貨幣のかたち?.... NO.
  • 資本は、なにかが、その「かたち」を変える運動体だ、というとき、
    • 「商品のかたち」を変えるでも、
    • 「貨幣のかたち」を変える、 でも、意味が通じないでしょう。もう一度ききます、なんの「かたち」でしょう?
      +  ...
  • したがって、資本とは、
    +  ...
    というのが定義になります。
  • この「かたち」には、商品価値の表現の「かたち」、すなわち価値形態 Wertform value form と、一般に混同されています。きちんと区別できるひとは希です。問題57の解説を読んでみてください。この解説の最後は、まだ、ちょっと問題があります。資本における、価値の「かたち」も、商品価値の現象形態も、ともにForm の訳だ、といっているようですが、これは誤り。ほんとうは、
    +  ...
    です。
  • 経済学では、定義が曖昧なまま、日常言語で、複雑な現象を語るため、混乱がはなはなしい。ユークリッドの幾何学原理とまでではゆかなくても、学問の基礎の基礎は、紛れのない用語法を確立することです。点や線の定義に相当する基本的な定義を与えられず、そのため厳密な推論(理論的説明)もできず、いわば、三角形の内角の和が180であることを、図を書いて説明するようなレベルを、経済理論は、いつまでたっても卒業できずにいます。
  • 典型的な混乱は、貨幣と資本の区別がハッキリつかない、ことです。
    • 貨幣は
      +  ...
      するもの、
    • 資本は
      +  ...
      するもの、です。 資本は、まず、某月某日に、貨幣いくら、商品いくらを、もうけるための元手にきめた、とノートに書くことで、投下されます。この元手は、明確な期日を指定した、ストックの額です。ここから、貨幣を支出すれば、費用が発生し、商品を売れば、収入が発生します。この販売と購買の繰り返しが一定期間の間に繰り返され、収入総額から、支出総額を引けば、もうけの額がでます。これは、資本価値が、そのすがたshapeを変えることから生じた、フローの累計額です。某月某日から、某月某日まで、という明確な期間が、必要条件となります。この差額は、キチンのとノートをつけていれば、元手の増加額と一致します。
  • 資本というのは、実物レベルの規定でも、貨幣や商品といった個別アイテムのレベルの概念でもありません。価値に関する価値、メタ価値レベルの概念なのです。
  • もっと簡単にいえば、価値に関する計算システムです。
  • こうした抽象的なレベルで、厳密な定義を与えた後で、実務の世界をみると、そこで実行されていることの基本原理が見えてきます。かなり難しい話をしましたが、あとは、スライドで、財務諸表との関連を説明します。
  • 配布物

    参考


    Last-modified: 2021-02-09 (火) 09:52:26