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問題 10-100
  • ✔ 接続状態をおしえてください。
  • 前回の「生産力を計測する」という話、むずかしかったですか。
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     価格ベクトル 

    前回のまとめ

    • 複数の原材料$(a_0,a_1,\cdots)$で一つの生産物$b_i$をつくる生産過程で、生産力が上がったか、さがったか、どのように比較したらよいか。
    • 複数の原材料も、その生産過程にさかのぼると、生産物と同じ種類のモノの量に変換できる。
    • $$(a_0,a_1,\cdots) \to b_i \implies (0,0,\cdots,a_i,0,\cdots) \to b_i$$ なら、生産力= $b_i/a_i$
    • あるいは $$(小麦x, 鉄y) \to 小麦b \implies (小麦x + ky, 鉄0) \to 小麦b$$ なら、生産力は $b/(x+ky)$ で表せる。
    • 同じ投入ベクトルの変化でも、小麦では生産力が低下、鉄では生産力が上昇、といった一見パラドキシカルな現象も発生する。
    • なぜだろうか?「補助線」を引いて考えてみるのが、今回のネライ。

    変換比率

    • 前回と同じ数値例を使って、続けて考えてゆこう。
      • case1 $$\begin{cases} \text{小麦生産 } & P : & {\color{red}{(1,1)} } \to (4,0)\\ \text{鉄生産 } & Q : & (2,1) \to (0,5) \end{cases}$$
      • case2 $$\begin{cases} \text{小麦生産 } & P' : & {\color{red}{(1.2,0.8)} }\to (4,0)\\ \text{鉄生産 } & Q : & (2,1) \to (0,5) \end{cases}$$
      • 投入はマイナス、産出はプラスと銘記して、つぎのようにベクトルを定めると $$a_0=(-1,-1),b=(4,0)$$ $$c=(-2,-1),d=(0,5)$$ $$a_1=(-6/5,-4/5)$$
      • case1 $$\begin{cases} P : & a_0 &\to &b\\ Q : & c &\to &d \end{cases}$$
      • case2 $$\begin{cases} P' : & a_1 &\to & b\\ Q : & c &\to & d \end{cases}$$
    問題 10-1
    $$\begin{cases} \text{小麦生産 } & P : & {\color{red}{(1,1)} } \to (4,0)\\ \text{鉄生産 } & Q : & (2,1) \to (0,5) \end{cases}$$ が $$\begin{cases} \text{小麦生産 } & P' : & {\color{red}{(6/5,4/5)} }\to (4,0)\\ \text{鉄生産 } & Q : & (2,1) \to (0,5) \end{cases}$$ となった。
    • つぎのようにベクトルを定める。
    • $a_0=(-1,-1),b=(4,0)$
    • $c=(-2,-1),d=(0,5)$
    • $a_1=(-6/5,-4/5)$
    • case1 $$\begin{cases} P : & a_0 &\to &b\\ Q : & c &\to &d \end{cases}$$
    • case2 $$\begin{cases} P' : & a_1 &\to & b\\ Q : & c &\to & d \end{cases}$$

    • 小麦の生産力を計測するとき、小麦生産のインプット$a_0=(-1,-1)$を、鉄を含まない$(\fbox{ A },0)$に変換した。
    • このとき、小麦x量と鉄y量の比率 $x:y=\fbox{ B }:\fbox{ C }$となる。
    • A,B,Cに当たる数値を答えよ。
    10-1 の回答を 
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    解答と解説 10-1

    解答

    • $$A: -3/2, B:4, C:2$$
    • 比率なのでもちろん $$A: -3/2, B:2, C:1$$ などでも可。

    解説

    • 問題9-1でみたように $$Q:(2,1) \to (0,5)$$ は結果だけみると小麦2を投入して(減らして)、鉄$5-1$を産出する(ふやす)過程とみなすことができる。つまり、 $小麦2\to 鉄4$という比率で小麦を鉄に変換できる。
    • だから、鉄1をふやすには、小麦$1/2$減らせばよい、わけです。
    • $x:y=2:1$ ということは、変換比率を表す直線$$y=(1/2)x \cdots\cdots l_1$$を想定しているということになります。
    問題 10-2
    $$\begin{cases} \text{小麦生産 } & P : & {\color{red}{(1,1)} } \to (4,0)\\ \text{鉄生産 } & Q : & (2,1) \to (0,5) \end{cases}$$ が $$\begin{cases} \text{小麦生産 } & P' : & {\color{red}{(6/5,4/5)} }\to (4,0)\\ \text{鉄生産 } & Q : & (2,1) \to (0,5) \end{cases}$$ となった。
    • つぎのようにベクトルを定める。
    • $a_0=(-1,-1),b=(4,0)$
    • $c=(-2,-1),d=(0,5)$
    • $a_1=(-6/5,-4/5)$
    • case1 $$\begin{cases} P : & a_0 &\to &b\\ Q : & c &\to &d \end{cases}$$
    • case2 $$\begin{cases} P' : & a_1 &\to & b\\ Q : & c &\to & d \end{cases}$$

    • 変換比率を求めたときの鉄生産のネットのベクトル $c+d$ は小麦の量を$x$軸、鉄の量を$y$軸としたとき、どのような直線上にのっているか。直線を表す式を書け。
    10-2 の回答を 
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    解答と解説 10-2

    解答

    • $y=-2x$

    解説

    • $c+d=(-2,4)$ だから、このベクトルは原点を通り傾き-2の直線$$y=-2x \cdots\cdots l_2$$上に位置する。
    問題 10-3
    • 直線$l_1$と$l_2$の関係をひと言で述べよ。
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    解答と解説 10-3

    解答

    • 直交

    解説

    • 傾きの積 $(1/2)\times -2 = -1$ により直交。
    • つまり、この直交する変換比率を表す直線 $l_1$ が「補助線」になるのです。
    • ということで図をかいてみると....
    問題 10-4

    $$\overline{OG}:\overline{OB} = \fbox{ A } : \fbox{ B }$$

    $\fbox{ A }, \fbox{ B }$ を図中の記号を使ってうめよ。overline はつけなくてよい。

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    解答と解説 10-4

    解答

    $$\overline{OH}:\overline{OI}$$

    解説

    $$\triangle{OHG} \mathrel{\unicode[sans-serif]{x223D} } \triangle{OIJ}$$
    問題 10-5

    直線 $l_1$ 上に、長さ1のベクトル $\vec{p}=(p_1,p_2)$ をつくる。

    内積 $\vec{p}\cdot\vec{b}$ の値に相当する線分を図の記号を使って示せ。

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    解答と解説 10-5

    解答

    $\overline{OJ}$

    解説

    $\angle\mathrm{JOB} = \theta$ とおくと $$\vec{p}\cdot\vec{b} = |\vec{p}|\,|\vec{b}|cos\,\theta =1\times\overline{OB}\,cos\,\theta=\overline{OJ}$$
    問題 10-6

    内積$(-1,-1)(p_1,p_2)=p_1-p_2$

    の絶対値を表す線分を図中の記号でしめせ。

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    解答と解説 10-6

    解答

    $\overline{OH}$
    問題 10-7

    $\overline{OI}\div\overline{OH}$は何を意味するか。

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    解答と解説 10-7

    解答

    小麦生産における小麦ベースの生産力

    解説

    • $\overline{OG}:\overline{OB} = \overline{OH}:\overline{OI}$であった。
    • 左辺は投入$(-1,-1)$をすべて小麦$(-3/2,0)$に変換して、何倍になったか、比較している。
    • 右辺は$(-1,-1)(p_1,p_2)$ と$(4,0)(p_1,p_2)$を比較していることになる。
    • どっちも比が同じにある、といっているのだ。
    • 小麦に変換するほうは、何をしているか、意味がわかるが、内積を比較する、というのは、何を意味しているのだろうか。
    問題 10-8

    内積を比較する、というのは、何を意味しているのだろうか。

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    解答と解説 10-8

    解答

    1. 小麦と鉄に異なるウェートをつけている。
    2. 小麦1を$p_1$と評価し鉄1を$p_2$と評価して足せるとしている。
    3. 小麦1に$p_1$円という価格をつけ、鉄1に$p_1$円という価格をつけて、内積で合計金額を計算している。

    解説

    • 解答の3.までくれば、何をしているか、その意味はハッキリしますね。
    • 単位は円でなくてもかまわないのです。小麦と鉄の相対的な評価が問題なのですから。また、$\vec{p}$の長さが1である必要もありません。長さが$k$ならすべての価格が$k$倍になるだけです。

    • ということは、ある商品の組$Q(x個,y個)$があったとして、それぞれの単価がが$(p_1,p_2)$なら、その総額は$(x,y)(p_1,p_2) =xp_1+yp_2$は、ベクトル$\vec{p}$がのっている直線 $l$ に点Qから下ろした垂線の足になる、ということです。
    • いいかえると、直線$l$の垂線上にある商品の組合せ$(x,y)$は、単価が$p_1,p_2$のとき、同じ金額になる、ということです。
    問題 10-9

    小麦,鉄の単価が$p_1,p_2$のとき、$A(-1,-1)$と$G(-1.5,0)$が同額であったとする。

    価格比$p_2/p_1$を求めよ。

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    解答と解説 10-9

    解答

    • 1/2

    解説

    $$(-1,-1)(p_1,p_2) = (-1.5,0)(p_1,p_2)$$ $$-p_1-p_2=-1.5p_1$$ $$p_2/p_1=1/2$$
    • 点Aから直線$y=1/2x$に下ろした垂線の足と、点Gから下ろした垂線の足がともに点Hになっているのがわかるであろう。
    • 要するに、(-1,-1)も(-1.5,0)も、$\vec{p}$と内積をつくり、スカラー化すれば、同じ値(金額)になるわけである。
    • 商品の単価で構成されたベクトルを価格ベクトルとよぶ。
    • 必要がある場合は、その長さが1になるように基準化した価格ベクトルを基準価格ベクトルとよぶ。

    11月30日の講義はここからです。
    第9講および第10講のここまでは「積み上げ方式」になります。
    前の部分がわからないと、30日の講義も理解できません。
    しっかり復習しておきましょう。

    純生産物の分割

    問題 10-10

    いま価格ベトルを$\vec{p}=(2,1)$とおく(仮に単位を円とする)。

    このとき、鉄生産$(-2,-1) \to (0,5)$ における支出金額、収入金額は、それぞれいくらになるか。

    10-10 の回答を 
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      分

    解答と解説 10-10

    解答

    • 支出金額: (2,1)(-2,-1) =-5円
    • 収入金額: (2,1)(0,5)=5円

    解説

    • 「支出=収入」ということは、価格ベースで考えると、利益がでない、ということ。
    • $(2,1)(-2,-1) + (2,1)(0,5) = (2,1)(-2,4)$
    • $(-2,4)$ というのは $\vec{OF} = \vec{c}+\vec{d}$ です。
    • 点Fから $\vec{p}$ がのっている直線に下ろした垂線の足は原点 $O(0,0)$ になります。
    • 要するに、$\vec{c}+\vec{d}$ に直交する価格ベクトル $\vec{p}$ というのは、鉄生産で「支出=収入」となるギリギリの価格比だったのです。
    • では、このとき、小麦生産の収支は、価格ベースで考えるとどうなるのでしょうか。
    問題 10-11

    価格ベトルが $\vec{p}=(2,1)$ のとき、小麦生産における利益額(収入ー支出=生産総額-費用総額)を求めよ。

    10-11 の回答を 
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      分

    解答と解説 10-11

    解答

      $5円$

    解説

    $$生産総額-費用総額 = (2,1)(4,0)-(2,1)(1,1)=5$$
    問題 10-12

    小麦生産Pと鉄生産Qを合わせた社会的再生産が生みだす純生産物のベクトルを求めよ。

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    解答と解説 10-12

    解答

      $(1,3)$

    解説

    $$(\vec{a}+\vec{b})+(\vec{c}+\vec{d})= \vec{OE}+\vec{OF} = (-1,-1) +(4,0) +(-2,-1)+(0,5) = (1,3)$$
    問題 10-13

    価格ベトルを$\vec{p}=(2,1)$のとき、純生産物の総額はいくらになるか。

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    解答と解説 10-13

    解答

      $5円$

    解説

    $$(2,1)(1,3)=5$$
    問題 10-14

    問題10-10から問題10-14までを通してみて、わかったことをひと言でのべよ。

    10-14 の回答を 
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      分

    解答と解説 10-14

    解答

    小麦生産による純生産物の独り占め

    解説

    • 鉄生産の利益額はゼロ。鉄生産の利益額=純生産物の総価額。
    • $小麦生産の利益額 E_1 + 鉄生産の利益額 E_2 = 純生産物総額 E$
    • $E_2 = 0 \implies E = E_1$
    問題 10-15

    小麦生産の利益額がゼロになるような価格ベクトルを求めよ。

    10-15 の回答を 
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    解答と解説 10-15

    解答

    $(1,3)$

    解説

    $$\vec{a}+\vec{b} = (3,-1)$$ $$(p_1,p_2)(3,-1)=0$$ $$3p_1-p_2=0$$
    • たとえば $\vec{p}=(1,3)$であればよい。
    • 因みにこのとき $$鉄生産の利益総額 = (1,3)(-2,4)=10$$ $$純生産物の価額 = (1,3)(1,3)=10$$ $$鉄生産の利益総額 = 純生産物の価額$$ で、今度は鉄生産の独り占めになっている。
    • 要するに$2 \geqq p_1/p_2 \geqq 1/3$の範囲なら、小麦生産も鉄生産も黒字。
    • でも、$ p_1/p_2 \geqq 2$ まで小麦価格が上がると、鉄生産は元が取れず赤字になり、
    • 逆に、$ 1/3 \geqq p_1/p_2$ まで小麦価格が下がると、小麦生産は元が取れず赤字になる、というわけです。
    • 図解しておきます。
    • $\overline{OG}:小麦生産の利益$
    • $\overline{OH}:鉄生産の利益$
    • $\overline{OI}:純生産物の価額$
    • 右下の ▶ ボタンをクリックすると価格ベクトル $\vec{p}$ が変化します。

    Last-modified: 2023-12-07 (木) 12:35:39