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問題 11-100 未公開
11-100 の回答を + 0/5 ...1点以上 0%
利潤率
利潤率の定義
- 営利企業(:=資本)がコストを支出し利益を追求して競争している経済(:=資本主義経済)を想定する。
- 資本はつねに、利潤率を最大化する行動をとる。
- ここでは簡単に
$$利潤 = 売上額 - コスト総額 = (売値 p - 原価 k) \times 販売数量$$
$$利潤率\, r = \frac{利潤}{コスト総額} = \frac{売値 - 原価}{原価} = マージンレート(一個あたりのもうけの割合)$$
とする。
- 販売にかかる時間や費用がまちまちであり、生産にかかる時間も違うので、通常は $利潤率 \neq マージン$ となる!!
- しかし、ここではこうした要素を省き単純化して生産技術→価格の基本原理を考える。
$$ p =k(1+r)$$
一般的利潤率
- 資本は、利潤率が相対的に低い生産から、高い生産にたえず移動する。
- このため、利潤率は結果的に均等となる。
- すべての商品生産において均等な利潤率が成立するとき、この利潤率を一般的利潤率とよび、そのときの価格を生産価格とよぶ。
- 前回、前々回と同じ数値例を使って、続けて考えてゆこう。(今回はcase1だけ使う。)
- case1
$$\begin{cases}
\text{小麦生産 } & P : & {\color{red}{(1,1)} } \to (4,0)\\
\text{鉄生産 } & Q : & (2,1) \to (0,5)
\end{cases}$$
- case2
$$\begin{cases}
\text{小麦生産 } & P' : & {\color{red}{(1.2,0.8)} }\to (4,0)\\
\text{鉄生産 } & Q : & (2,1) \to (0,5)
\end{cases}$$
- 投入はマイナス、産出はプラスと銘記して、つぎのようにベクトルを定めると
$$a_0=(-1,-1),b=(4,0)$$
$$c=(-2,-1),d=(0,5)$$
$$a_1=(-6/5,-4/5)$$
- case1
$$\begin{cases}
P : & (-1,-1) &\to &(4,0)\\
Q : & (-2,-1) &\to &(0,5)
\end{cases}$$
- case2
$$\begin{cases}
P' : &(-6/5,-4/5) &\to & (4,0)\\
Q : & (-2,-1) &\to &(0,5)
\end{cases}$$
問題 11-1 $$\begin{cases}P : & (1,1) &\to &(4,0)\\Q : & (2,1) &\to &(0,5)\end{cases}$$
- $価格ベクトル = (小麦単価,鉄単価)=(p_1,p_2)$ とする。小麦生産$P$, 鉄生産$Q$ における利潤率$r_1, r_2$ を表す式を書け。
11-1 の回答を + 2/6 ...1点以上 33%
解答と解説 11-1解答$$r_1=\frac{4p_1}{p_1+p_2}-1$$$$r_2=\frac{5p_2}{2p_1+p_2}-1$$ 解説 - $p_i = (1+r_i)k_i$ ということは $r_i = p_i/k_i -1$だから
- ベクトルの内積でかけば $$\displaystyle r_1 = \frac{(4,0)(p_1,p_2)}{(1,1)(p_1,p_2)} -1$$ $$\displaystyle r_2 = \frac{(0,5)(p_1,p_2)}{(2,1)(p_1,p_2)} -1$$
問題 11-2 $$\begin{cases}P : & (1,1) &\to &(4,0)\\Q : & (2,1) &\to &(0,5)\end{cases}$$
- 一般的利潤率が成立している、つまり$r_1=r_2$ であるとする。
- $p = p_2/p_1$ とおく。
- $p$ を未知数とする方程式をたてよ。
11-2 の回答を + 1/5 ...1点以上 20%
解答と解説 11-2解答解説 - $\displaystyle\frac{4p_1}{p_1+p_2}=\frac{5p_2}{2p_1+p_2}$
- $\displaystyle\frac{4}{1+p}=\frac{5p}{2+p}$
- 因みにchatGTPに解かせてみたら、間違えてくれましたね。 $$5p^2+p-8=0$$ が$$5p^2-p-8=0$$になっていました。Bing もまったく同じ間違いをしてくれました。数式処理のような作業は生成AIではなく、まだ、別のソフトでやるほうがよさそうです。 (講義のとき、ミスプリになっていました。うえの式の$+p$と$-p$が逆になっていました。)
- ともかく、$$5p^2+p-8=0$$を解の公式で解いてもらったら$p\fallingdotseq 1.17, p \fallingdotseq −1.37$ だそうです。
- $p_1>0, p_2>0$ だから、生産価格比は、$p\fallingdotseq 1.17$ のほうで、このとき $$ r \fallingdotseq 0.84$$ となる。
- つまり、$p_2/p_1 \fallingdotseq 1.17$ のとき、小麦生産でも鉄生産でも利潤率は同じ$84\%$になるという話でした。
問題 11-3 $$\begin{cases}P : & (1,1) &\to &(4,0)\\Q : & (2,1) &\to &(0,5)\end{cases}$$
- 「生産価格比は、
- 総純生産物の総額が小麦生産にも鉄生産にも均等に分割される価格比
- つまり、問題10-15の図で、$\overline{OG}:小麦生産の利益 = \overline{OH}:鉄生産の利益$ となる価格比
- つまり、直線EFに直交する直線上の価格ベクトル
である。」 - 真か偽か、理由を述べよ。
11-3 の回答を + 2/5 ...1点以上 40%
解答と解説 11-3解答 - 偽
- 利潤額は、小麦生産でも鉄生産でも同額になるが、この価格で両者のコストも同額になる保証はないから。
解説 - 因みにどうなるか、計算してみよう。 $${4p_1}-{p_1+p_2}={5p_2}-{2p_1+p_2}$$ $$5p_1=5p_2$$ つまり、$p_2/p_1 = 1$ ということ。
- これは直線$EF$の傾きが-1だから、これに直交する原点を通る直線の傾きが1になるので、図からもわかる。
- 純生産物を、小麦生産と鉄生産で均等に分け合ったら、利潤率が等しくなる、という具合にはゆかないのですね。
- 2023年12月14日の講義は、ここから
- しっかり復習しておいてください。
利潤率をめぐる競争
- 一般的利潤率と生産価格比は、生産物ごとにことなる$input \to output$の構成:=生産技術によってきまる。
- ある生産物に対する需要が増大しすると、その生産物の価格が生産価格以上に上昇する。
- この価格比のもとでは、この生産に携わる資本の利潤率$r_i$は、一般的利潤率$r^*$を上まわる。
- その結果、他の生産に携わる資本が、この生産に移動してくる。
- この生産物$i$の供給が増大し、価格が引き下げられて生産価格に一致し、利潤率 $r_i$ は一般的利潤率 $r^*$ に引き戻される。
- 小麦と鉄という二つの生産物で構成された経済で説明してみよう。
問題 11-4 - 小麦と鉄の経済で考えてみよう。
- もし小麦生産における技術がcase1からcase2に変化したとする。
- case2における生産価格比 $p = p_2/p_1$ をきめる方程式を求めよ。$
case1$$\begin{cases}P : & (-1,-1) &\to &(4,0)\\Q : & (-2,-1) &\to &(0,5)\end{cases}$$ case2$$\begin{cases}P' : &(-6/5,-4/5) &\to & (4,0)\\Q : & (-2,-1) &\to &(0,5)\end{cases}$$
11-4 の回答を + 2/2 ...1点以上 100%
解答と解説 11-4解答解説 - $\displaystyle\frac{4p_1}{(6/5)p_1+(4/5)p_2}=\frac{5p_2}{2p_1+p_2}$
- $\displaystyle\frac{4}{(6/5)+(4/5)p}=\frac{5p}{2+p}$
- 因みに、chatGTPはまた間違えてくれました。
- で、この方程式を解いてもらったら、$p\fallingdotseq 1.186, -1.686$ だそうです。
- $p=1.186$ のとき$売値/コスト\displaystyle\frac{4}{1+p}=\frac{5p}{2+p}\fallingdotseq 1.857$ になるとのこと。
- したがって、一般的利潤率は約$85.7\%$となる。
問題 11-5 - 小麦生産における技術がcase1のとき、$$生産価格比p\fallingdotseq 1.17$$ $$一般的利潤率\fallingdotseq 0.84$$であった。
- このとき、case2のような小麦の新しい生産技術が開発されたとする。
- case2の$$生産価格比 p\fallingdotseq 1.186$$ $$一般的利潤率 r^*\fallingdotseq 0.857$$ である。
- case1 の状態でcase2の技術が発見されたとすると、どのようなことが生じるだろうか。
case1$$\begin{cases}P : & (-1,-1) &\to &(4,0)\\Q : & (-2,-1) &\to &(0,5)\end{cases}$$ case2$$\begin{cases}P' : &(-6/5,-4/5) &\to & (4,0)\\Q : & (-2,-1) &\to &(0,5)\end{cases}$$
11-5 の回答を + 5/6 ...1点以上 83%
解答と解説 11-5解答 - case1で成立してた生産価格比のもとでは、case2 の小麦生産が有利となる。
- なぜなら、旧来の生産価格比$p=1.17$ は、case2 の生産価格比 $1.186$より低いから。
- 鉄生産から小麦生産に資本が移動して入ってくる。
- この結果、小麦の供給量が増加し、鉄の供給量は減少し、相対的に鉄価格が上昇する。
- 市場価格比が生産価格比$1.186$まで上昇したとき、この移動圧力はやむ。
- 新たな技術が普及することで、一般的利潤率は$84\%$から$85.7\%$に上昇する。
解説 - 資本主義経済のもとでは、単に需要の変化に供給が後追いで対応するだけではありません。
- 問題11-4,5 でみたように、利潤率を高めるための技術革新の競争を通じて、生産価格が変更され、産業の構成比率が変化してゆきます。
- この後のほうの側面が、実は重要なのですが、たいていの教科書は第一の面ばかり強調されているのは残念なことです。
一般的利潤率の正体
問題 11-101 未公開
11-101 の回答を + 0/8 ...1点以上 0%
- input を負、output を正 として生産方法をベクトルで表示すると
$$(-1,-1)\to(4,0)$$
$$(-2,-1)\to(0,5)$$
- これを行列をつかってまとめて表記すると
$$
\begin{equation}
\begin{pmatrix}1&1\\2&1\end{pmatrix}
\to
\begin{pmatrix}4&0\\0&5\end{pmatrix}
\end{equation}
$$
となる。さらに output が 1 になるように規準化すれば
$$A= \begin{equation}\begin{pmatrix}1/4&1/4\\2/5&1/5\end{pmatrix} \to E =
\begin{pmatrix}1&0\\0&1\end{pmatrix}\end{equation}$$
あとは、線形代数の世界。
- 一般的利潤率を $r$ 生産価格ベクトルを$p=(p_1,p_2)$とすると
$$Ap(1+r)=Ep$$
- さらに$\lambda= 1/(1+r)$とおけば
$$Ap=\lambda p$$
- 一般的利潤率と生産価格は、行列$A$の「固有値」と「固有ベクトル」に対応している。
- 行列$A$ は非負の正方行列であり、このタイプの行列の特性については、すでに多くことが知られている。
- 確率を要素とする行列:マルコフ過程など
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